結構マニアックな水辺生物の採集漫画ですが、2巻にて終了とのことです。1巻の感想とコメントは
こちら。
2巻の内容はかなりマニアックというか、水辺の生物の採集の難しさを丁寧に描いている、と言ってもいいです(1巻の感想で余談で私が色々書いたことが、ほぼ網羅されてると言ってもいいくらい)。
半ば打ち切りとなってしまったようですが、改めて、こういう生物ネタの漫画の難しさってのも感じたりしました。。マニアックな正しい生物の知識に基づいて描ている、というのは、生物屋としては読んでいて安心感があるんで、とても嬉しいんですけど、その半面、じゃあ「漫画として(ドラマとして)面白いか?」という部分は、また別問題ではあるのかもなあと(上から目線で恐縮ですが、御容赦下さい。。)。
生物を扱う(ペットも含む)漫画は色々とありますけど、やはり物語として面白いか、あるいは漫画として(キャラクターなどに)魅力があるか?という要素は、「漫画という市場」を考えると、無視できない要素かもなあと。
最近の事例で言えば、「マドンナはガラスケースの中」であれば、マニアックな爬虫類飼育ネタの中に、異常性癖を持つ主人公と、本来はターゲットではない彼を翻弄する「小学生の少女」という、ドラマとしても面白い(どう転ぶかわからない)要素があって、それなりに面白いなあと思ったりします。
爬虫類系のマンガで言えば、「秘密のレプタイルズ」は、個性的(?)なヒロインと、それに翻弄される主人公のラブコメ&微萌え要素などが、結構うまく使われているのと、マニアック要素はもう別ページ扱いでしっかり説明し、ドラマはドラマできちんと描いている、という辺り、バランスがうまく取れているなあと。
昆虫ものでいえば「巨蟲列島」などは、マニアックな昆虫の性質に加えて「if」要素の解釈の追加、そしてサバイバルものとしてのドラマ作り、+なんだか繰り広げられるエロ仕様と(これは漫画としてはあった方がいいんでしょう(笑))、ドラマの中に上手に昆虫の性質が活かされているというところですね。昆虫ものでは「ベクター・ケースファイル」のような推理ものもあります。こちらも推理ドラマとしての要素の方が、ある意味ではメインですね。
それに対して「漫画として面白いかな?」というところに微妙なのが、「鷹師匠!狩りの御時間です」とかかも、、、。私はこのマニアックさと知識の奥深さに感銘を受けたんですけど、じゃあ漫画として面白いから一般の人に読めるか、と問われたら、「・・・うーん。。。」と悩んでしまうかもしれません。「野鳥が好きな人」には、確実に面白いと思うんです。けど別にそれに興味がない人や、ペットとして鳥を飼っている人とかには、面白いと思えるかどうか、冷静に考えてみると微妙なんですよね。。
そしてそれに近いものを、「ガタガール」にも少し感じたんですね。水辺の動物を採取したり研究したりしている人には、「あるあるネタ」は本当に面白いし、しっかり調べてよく知ってるなあ、と感心することしきりなんです。けどじゃあ、漫画としてどう?と言われると、いわゆる中学生のクラブ活動を通じたラブコメ、な訳ですが。。
「食べる」に執着したり、「生き物ころしたら可哀想」な性格の仲間を揃えたところまではいいんですが(色々な考え方の代弁として、こういうキャラとのやり取りって案外大事ですから)、ラブコメ要素が妙にしっくり来ないというか、、真面目なマニアック設定の方に引っ張られて、あまり頭に残らないというか。。そんな気もするんですね(※個人の感想です)。
それとヒロインの設定も、大好きなんだけどまだ勉強中のアマチュア、という設定は知らない人にも入り込み易いかもなあ、と最初は思ったんですが、これを補助する「専門家」に相当するキャラが居ないと、どこかこう空回りしちゃうのかなあ、、という気もしたり(どちらかというと、放っておけない感なのかもですが(笑))。
恐らく専門家的なキャラとして、主人公の姉(大学生)が設定されているんですけど、優しく見守る姉さん的な要素の方が強くて、解説をバリバリしてくれるタイプではなく、どうしても何か物足りなかったりとか(※これもあくまで個人の感想ですよっ)。。
ネタ的にも、生物屋さんに対しては内輪受けしそうな内容(=一般向けには微妙?)が、2巻はちょっと多かったですね。
パワーポイントで学会発表原稿作るとか、大学生、研究者、アマチュアさんであれば、「ああ、あれ大変なんだよなあ、、」と、あるあるネタとして共感できて楽しめますが(私も含めて!)、予備知識も何もない人が、アレを見てどう感じるんでしょうね?
「なんか知らない、触れてはいけない世界、、、」って感じちゃうかもなあ、と(まあ、そういう世界だということは間違いないんですが(笑))。
あと一番このネタは、、と思ったのは、踏んじゃったネタでのカニの研究ですね。あれはあれで、結構力を入れてドラマとしての構成も考え、描かれたことが伝わってくるんですが、ネタばらしとしての「ノートに付けたカニの研究内容」とその言葉の解説が、一般向けに考えると、予備知識がない人には、突然ハシゴを外された感が強かったんじゃないかなあと。。
どう描けばいいのかとか、そういうことを指南するのもアレなんですが(好き勝手書いてすみません、、、)、もっと「ビジュアル」で判るように描いたら良かったのになあ、と思ったんです。
・カニは結構水辺から離れる事がある、という話なら、そんな絵を入れるとか?
・種類によっての違いがあるか調べる、という話であれば、地図上にプロットした
絵を入れて、分布を調べてるんだよ、って判るようにした方がよかったかも?
これ、ある意味では学会のポスター発表とか、それに近い話だと思うんです。。
こういうネタが描ける知識があるなら、発表した経験の有無はわかりませんけど、身近で見たことは必ずあるはず。「自分の狭い専門分野以外興味がない多くの”研究者”」に、自分の研究内容について興味を持って貰うには、そういう「プレゼン能力」がとても重要で、必須の要素なんです。
それは、漫画自体にも応用ができるんじゃないかなあ、と思ったりもするんです。。
どちらかというとプレゼンとして捉えてしまってますんで、本来、漫画にああしろこうしろ、というのはおこがましいんですが(ホントご免なさい)、もしこれが専門委員会とか、学会とかへのプレゼン資料だというなら、こう直した方がいいじゃないかな?と、つい思っちゃうんですよ。。
まあ、あとはドラマとしてのラブコメの面白さかなあと。
ほぼ主人公以外に女性キャラしか出てこない、そして主人公を取り合う、<ハーレム系>構成のラブコメで、漫画としては普通によくある設定なんですけど、個人的に思うのは、何で主人公の強力なライバルである”生物の知識が豊富な男性キャラ”を出してないんだろうなあ?」、というのがありまして。。
アマチュアなヒロインが惹かれる要素満載ですし、マニアックな解説もさせられるキャラとしても重要な立ち位置が取れますし、ラブコメ漫画としても面白くなるんじゃないかなあ、と思ったりとか。。
ただ、もしかしたらこれは、当然の如く3巻以降で、そういうキャラの登場は計画されていたのかもしれませんので、時間だけが無かったのかもしれませんけどね(そういう意味では、本当に余計なお世話です(汗))。
コアなファンも付いているようなので、この作品、私はまだまだ続けていったら面白いんじゃないかなあと思ったりします。
水モノを扱った時点で、「特別採補許可」という超面倒くさい要素が加わるので、他の自然・生物ものに比べると、真面目に描こうとすればする程、ハードルが高くなってしまうんですけど(そこだけ、題材として扱うのは大変なのによく描くなあ、と最初思っていました)、この水辺の、調べれば調べるほど面白い、そういう世界の内容をどんどん紹介してくれる漫画として、どこかで続けて欲しい気がとてもいたします。。