C_ギャグ・コメディー

2018/06/01

伊咲ウタ 「ブキミの谷のロボ子さん」 1巻 電撃コミックスNEXT KADOKAWA

 AIの発展により、宅配便もAIロボが運び、店もレジも基本的に無人、そんな近未来で一人、人を避け、トレーダーとして生活している(いわゆるコミュ症)男の元に、法で規制されている人型AIを名乗る少女型アンドロイドが送りつけられてきます。「人間とは何か」について学習するために。

 人との関係が上手くいかず、許される限り独りで生活することを謳歌するコミュ症男に、一体「人間とは何か」の何を教えることが出来るのか?必死に”ロボ子”を追い出そうとするものの、落語のように屁理屈を並べて言葉攻撃をかわされまくります。そもそも、AIとして何だか行動がズレている上に、半端ない気合いで作られた”超美少女中学生”型の外観のため、周囲の眼もあり、、、なし崩しに同居というか「置いておく」ことになってしまった男の元には、身内である妹が突然訪ねてきて。。(いや、何日も前に一応連絡はしておりますが)。

 コミュ症の主人公から、人間とはなにかなんて学べるの?という辺りから設定がすっ飛んでいますが(笑)、妹やその家族との関係を紐解く物語の流れの中で、極端に人との関わり方を恐れ、自分の考えを人に押しつける事を躊躇するようになった主人公の行動や心情が徐々に描かれていくことになります。

 紐解いてみれば、極々ちょっとしたすれ違いや言葉の捉え方の違い程度の、そんなやり取りのズレや、些細な考え方の違いからの行き違いが過去にあっただけの話。普通にその辺に普通にいる”人間”の悩みと葛藤、そしてそこから逃れようとする逃走本能に従って行動しているだけ、、、と言うことが明らかになっていきます。

 ちょっと妹の行動と言動もブキミというか、恨みもあるのかかなり”ダーク”な部分も感じられたりしますが、それも何かのキッカケ等があっての事なんでしょう。それも追々描かれていくのだろうと思います。

 それぞれの登場の仕方から何から、結構突飛ですが(笑)、物語を薦めるに連れて、色々な謎や心に引っかかっている何かが明らかになっていき、恐らく心の中にわだかまった何かが、超天然AIな”ロボ子さん”によって、徐々に紐解かれていく、、、そんな物語になるのだろうなあ、と思ったりします。

 まあ実際のところ、”ロボ子”の目的も妹の何も、ハッキリとはしない部分もあります。そんな謎を紐解きながら、ロボ子さんの暴走を楽しむ(笑)、そんな作品なのだろうなあと。

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2018/05/30

グレゴリウス山田 「三丁目雑兵物語」 上巻 ソノラマコミックス 朝日新聞出版社

 まず始めにお断りしておかなければならないですが、ネタはマニアックで超真剣ながら(まあ趣味に任せて感がほとばしっておりますが)、ストーリーはその溢れる知識を惜しげもなく注ぎ込んだ、不条理満載(笑)のコメディー作品である、ということであります。

 物語は、平和な街にぽつんとあるアパートを引き継いだ青年(大家)の元に、ナゼか足軽(女子)が現れ、、、、、戦国時代からのトリップモノかと思いきや、、、、
 あとからゾロゾロと集まってくるのは(湧いてくるという表現の方が適切)、ヨーロッパの騎士団からアサシンからスパルタからアステカの戦士から傭兵の詰め合わせから、世界中の歴史上の「雑兵」(なぜか全部女子)がアパートに集い、家賃を滞納しながら棲み着き、アパートを壊したり街中で不貞な輩を追い回したり、、、それぞれの信条の赴くままに暴れ回る、、、という、なんかもう書いていてもカオスなお話です(笑)。

 新キャラについては、毎話ごとに追加されているという贅沢仕様。しかも1人ではなく複数現れる事もなので、無駄に溢れかえる登場人物だけでもカオス感満載です(笑)。

 さらにそこに歴女である妹君も参戦し、歴女の群れに囲まれてのマニアックな質問攻めに翻弄されてたりと、途中のそれぞれの解説(作者のフィルターが掛かってます)もさることながら、歴史もの、しかも「戦士」だけに特化したコメディーとしては、「無駄撃ち」しまくりな作品ですね(笑)。

 まあそんなカオスな状況ながら、大家である主人公が案外のほほんとした性格なので、ドタバタとのんびりのバランスが取れた、ほのぼのとした雰囲気にまとまっています。

 歴史上で名高い”戦士”と言われていた人達が、どんな装備と信条、歴史的背景を背負っていたか、楽しく学べる訳ですが(学校のテストや試験には何の役にも立たないと思いますけど(笑))、なんか足軽のくせにおにぎりよりハンバーガーが好きとか、戸籍もないのに何で学校行けるねんとか(笑)、歴史的な思い込みへの皮肉と、不条理がごった煮になっている感も満載です。

 この作品自体、単行本になるとは思っても見なかったようで、悪く言えばその場のノリで描いていた部分も多いようですが、それはそれで材料をとにかく混ぜたら何か食べれそうな料理が出来ました感が出ていて、楽しく偏った歴史的トリビアが学べるという楽しさがあります。

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2018/05/09

武月睦 「やおろちの巫女さん」 全4巻 ヤンマガKCスペシャル 講談社

.  魔王の心臓を取り戻そうと、やおろちが憑いた巫女に日夜アタックする3匹の怪物達の、緊迫もありつつ、どこかのほほんとしたやり取りを綴ったコメディー作品です。

 やられてもやられても、まるで日課のようにそれを当たり前に受け入れ、そしてまた性懲りもなく巫女に挑む怪物3匹は、高校生である巫女の先祖の代から数百年、延々とそれを繰り返しています。
 まあ、そこまで長いと色々とユルユルでもありますが、どちらかというと問題なのは”やおろち”を宿す巫女の方。どっちが邪神やねんというくらい”やおろち”は禍々しく、様々な術で抑えながらも、巫女の体を徐々に蝕んでいきます。代々”やおろち”を卸せるのは血筋の決まった家系の女性のみ。そしてそれぞれが短命に終わる宿命を背負っています。

 所々でその”やおろち”の禍々しさの方が強調されてきましたが、4巻では過去にやおろちを降ろした歴代の巫女達について、そしてそれを”見守る”怪物達の今と変わらぬ行動までを描いています。

 完全に地域の日常に溶け込んでしまい、戦っている時以外は「ウルトラファイト」の怪獣よろしく(笑)、公園やら川辺やらでのんびり時間を潰す怪物達は、長寿命であるが故に、様々な人々を看取ってきた訳ですが、、、はたしてそもそも”悪”なのかどうかも微妙な立ち位置といったところ。そもそも、宿っている”やおろち”は何としても倒して心臓を取り返したいものの、”巫女自身”を倒したいかといえば、実はそれも少し違っていると、、その辺りの雰囲気が、4巻全体を通じて直接的ではなく、長い歴史を踏まえて間接的に語られていく、という感じでしょうかね。

 最初のうちは吉本喜劇よろしく、繰り返しネタの中に、ちょっと人情的なエピソードが入って来るといった感じで、弱冠間延び感もありましたが、4巻までのエピソード全体によって、なんか彼らのその行動原理が、ストレートではなく”何となく察することができる”という感じでまとまったかなと。

 大団円といえば大団円なのかもしれませんが、けど何か全てが解決した感じもしない、少し寂しい叙情感も感じる幕引きなのかな、という気もします。
 彼らは彼らで、巫女も含めていろんな意味で時を大切にして、そして楽しみ満足しているわけですけどね。

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2018/04/23

サメマチオ 「魔法少女サン&ムーン〜推定62歳〜」 全1巻 BAMBOO COMICS 竹書房

とあるキッカケでコンパクトを手にした二人の少女は、返信する度に復活してくる大魔王と戦いうわけですけど、「変身している間は時間が止まる」というより「身体時間が変身前まで巻き戻る」事に気がつき、、

 そして数十年以上が経過したある日、ペアの一人がガンで余命三ヶ月であることが判り、年老いた彼女達は、再び<魔法少女>への変身を繰り返すという行動に出るわけですが。。

 おばーちゃんが魔法少女になる、というお話は、「××ですけど魔法少女になれますか?」でも丁度出てきたネタですし、他にも作品はあると思いますが、この物語の場合には、ベクトルが全く違う方向に向いていて、コメディーのように見えて全くもてシリアスなストーリーが展開する、魔法少女ものというより、ファンタジーSF作品と言った方がいいんじゃないかな、という。

 悪く言えば、コンパクトを使うと大魔王が復活する、というくだりは<とても雑に>扱われています(笑)。彼女達も気がつきますが、大魔王が復活するから魔法少女になれるのではなく、魔法少女に変身すると、セットで大魔王が復活し、やっつけると変身が解ける、という形です。けど、コンパクトの正体も、魔王の正体も、結局は深く語られる事もありません(そこは重要ではない、ということでもあります)。

 そして先にも書いたように、変身直後の身体時間に戻るということは、繰り返し使えば使うほど<(彼女達の)時間が止まる>ということを意味します。そして、彼女達の時間は同級生達や同年齢の人々よりも若いままの状態が維持されますが、コンパクトが記憶している「身体時間」は、ある程度時間をおくと(数ヶ月くらい?)リセットされ、次に変身した時点が”変身後に戻る時間”に更新されます。

 徐々にですけど「時間が遅れていく」事に気がつき、同じ歳なのに若々しいままである彼女達は、次第に周囲から浮いていくようになります。大学生になり、社会人になるに連れて、彼女達も変身をすることを止め、やがて人並みに結婚もして、、という段階まで行きますが、そこに至るまで、非常に紆余屈折な人生を”二人で”歩んでいきました。

 この作品では、余命3ヶ月を孫の顔を見るまでは伸ばしたい、という必死の思いのために、再び<魔法少女>に変身することを決めた彼女達の、そこまでに至る過去の履歴が綴られていく、、、そんな作品といっていいかもしれません。

 ここまで読めば概ねこの作品が「コメディーではない」という事は判ると思います。まあシニカルなコメディーとも言えないこともないですし、自分達は自分達なりに、大魔王と戦うことも一つの使命だと思っていた時期もあります。

 けど、コンパクト自体が「時間を止めるための道具」としての機能しか実はなく、その効能を判った上で再び使おうという決断に至るまで、一応62年も生きてきた彼女達は、あるときには浮かれ、あるときには悩み、人々と違う時間軸の中でそれなりに悩み、考え、そして苦労を重ねてきたと。。人生を変えた「コンパクト=魔法少女との出会い」が、本当に良かったのかどうか、そしてこれからの人生をどう生きていくのか。。非常に示唆に富んだストーリーになっています。

 彼女達は後悔のない人生を歩んだのかどうか、そんなことを色々と考えさせられる、そんな作品です。

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2018/04/16

小坂泰之 「放課後ていぼう日誌」 2巻 ヤングチャンピオン烈コミックス 秋田書店

 海辺のとある高校に転校してきたばかりの手芸大好き女子高生が、何の因果か釣りや磯遊びを楽しむ「ていぼう部」に巻き込まれ(?)、苦手だった生きものたちと戯れる日々に投げ込まれ、、、、そんな阿鼻叫喚な状況から、徐々に楽しみを見いだしていく、そんな作品です。

 まったくの釣り素人、いやそういう事をやろうなどと一度も考えたこともなかった少女が、個性的で半ば強引な「ていぼう部」の面々に騙され(違)、けどやってみたら、結構奥が深くて徐々に填まっていく(堕ちていく、、とも言う)、そんなシチュエーションを楽しむ作品です。

 釣りは私は多分、不得手な方です。全く嫌いではなく、幼少の頃は田舎で叔父に釣りに行かされまくりましたが(川釣り、磯釣り、船釣りからアユの友釣りまで経験させてもらいました)、仕掛けから何から叔父任せで、自分で工夫しようとか憶えようとか、そういう気分にならなかったんですね。行けば楽しいし、釣れれば面白かったので、嫌いではないものの、何かのめり込めなかったというところでしょうか。

 なので、釣り漫画をあれこれ批評なんぞ出来る立場ではありませんが、この作品の場合は、主人公の立ち位置が私に近いというか、、、けど2巻辺りからは積極的に動き始めたりもするので、私より前向きカモですが(汗)、そういう「初めてやる人が、どういう風に楽しみを見いだしていくか(そして泥沼に填まるか(違))、そういう視点でよく描けているなあと思います。

 釣りを教えてくれる人にも色々あって、私の叔父などは、仕掛けとかに私が興味を示さなければ、何も教えずにさささっと竿と仕掛けを準備して、ほいっと渡してくれるだけでした。
 無理強いもしないし道具も全部用意してくれるので、あとは餌付けて釣って、釣れたら外してまた餌付けて(それは自力で一通り出来ます)、というのの繰り返し。小学生くらいでしたから、そうなるのも仕方ないし、釣れた時には楽しいものの、釣れるまでの準備の楽しさとか、仕掛けの理屈だとか、そういう部分を完全に端折ってしまっていたから、興味がそれ以上伸びなかったのかもなあ、と思いました。

 素人が釣りに填まっていくという漫画は、実はそういう意味で興味があって、ちょくちょく読んでいたりします。だいたいは、何かのきっかけに釣りに填まっていく人を描いている訳ですが。。。

 その中でこの作品、ここまで「釣りとは無縁で興味のかけらもない」人間を(笑)、どのような手順やイベント、その他の言葉や行動でだんだん洗脳していくのかという辺り(こらこら)、なんか鉄壁の城壁をいかに攻略するかみたいに置き換えてみると、なかなか面白いなあと思うんです。

 この作品は、特にその<攻略>の仕方がよく描けているなあと思いました。勿論、キャラの個性や設定も絶妙だからこその面白さですけど。

 それと、いきなり大物を釣るとかのダイナミックな楽しさではなく、2巻になって、やっと小アジを初めて釣ったことに歓喜するという、本当に地に足の付いた、現実的な小さいながらも大事な”楽しさ”を描いているな、と思ったりもします。

 子供相手に、生きものの観察会みたいなこともやっているので、そこでも参考になるかもなあ、と思いながら読ませていただいております。。

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2018/04/11

坂木原レム 「ペンタブと戦車」 上下巻 まんがタイムコミックス 芳文社

 コミケ修了の帰りに会場で発生したカスミに飲み込まれ、”萌え系”擬人化戦車オタクが飛ばされたのは、昭和14年のノモンハンの日本戦車部隊の目の前。。  そこで出会ったのは、擬人化キャラに理解を示し、、、、示しすぎてコジレまくる戦車長と、自分の子孫達の面々、、、。

 兵器は好きだけど実際の戦い=殺し合いは望んでいない、そんなミリオタな主人公が逃げつつも実戦に巻き込まれ、そして”自分の存在の危機”に直面しながら、自分の能力を駆使して解決策を模索していく、そんな物語です。

 タイムスリップした先で、”擬人化戦車絵”を武器に(?)様々な騒動に巻き込まれ、さらに日本軍の戦車部隊と、当時のノモハン周辺の状況など、マニアックな軍事ネタが満載な上に、SF的にも<超変則球>を投げ込んでくる、タイムスリップSFミリタリー作品ですな。。

 この辺の時代考証は詳しい人に譲るとして(しかしまあ、軍服の襟の形から戦車自体の配備の状況から、結構細かく調べられています)、タイムスリップものとしては、ちょっと異色な流れもあり、予想をどんどん裏切っていくは、平行世界だからと歴史も微妙に変わっちゃうわ(笑)、そしてある意味、本能のままにオタ絵を量産し続けたりしながら戦う、主人公と一緒に飛ばされた先輩などなど、まあ本当に<予測不能>なSFコメディー作品です。

 本物の歴史では戦士することとなっていましたが、完全に擬人化された89式にのめり込み、「俺の嫁」にしちゃう戦車長のその後などなど、、、変な話、アンソロジーで「もし○○が××だったら・・・」とやってるような内容が、完全に本編でやられちゃってるんですから、もう変則球としか言い様がありません(笑)。

 そしてパラレルワールドでもしっかりオチも付いているという、、SFとしても変化球ながら、なかなか凝った作りの作品でもあります。

 命の取り合いである戦場でありながら、そういう面はあまり強調し過ぎず、けど主人公はそれなりに葛藤していくという、リアルな戦争というよりは少年向け&アニメ的な味付けではありますけど、当時の価値感なども踏まえた作品全体の構成は、人間模様の物語として、そしてSFとして楽しく読めるんじゃないかな、と思います。

 ちなみに、、、結局最後までペンタブ(ry

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2018/04/09

イシイ渡 「水族カンパニー!」 2巻 ビッグコミックス 小学館

 とある水族館に入社した新人トレーナーと、そこに新人として同じく入ることとなった、”変態(?)”獣医師との、文字通り「日々の戦い(いろんな意味で)」を描いた、水族館コメディー作品です。

 水族館の飼育の裏側にポイントを置いていますので、舞台裏での動物の様子や関わり方(つきあい方)、そしてトラブルへの対処方法など、そういう部分に焦点が当てられています。

 その中でも特に”海獣(海棲哺乳類)”に焦点を絞っています(まあペンギンは哺乳類ではなく鳥類ですけど)。イルカにラッコ、オットセイなどなど、実際に飼育しているものだけではなく、野外で衰弱個体が見つかった場合なども扱っています。

 まあ、防水の上下スーツで身を固め、ほぼ”変態”だけどそこそこ優秀で、仕事にクールで冷淡な獣医さんに翻弄されたり、経験者から教わる様々なノウハウや試行錯誤、そして失敗談などなど、水族館で飼育を担当している人達への取材の成果がなかなか出ていて、さらに大型獣に特化しているという軸足は、悪くない感じがします。

 ちなみに、、、<完全に> 余談ですけど、2巻で出てくるキタオットセイのエピソードで、「絶滅危惧種だから手を出せない」というくだりがあります。
 ここだけ微妙に引っかかったのと、私もよく知らなかったので調べてみました。

 「絶滅危惧種」というと大雑把な言い方なんですが、大抵の場合は環境省や県などが出している「レッドデータブック(レッドデータリスト)」(略称はRDBまたはRL)に使われる呼称です。が、これには法的な縛りは全くありません(別途、条例などで保護動物などに指定していない限り)。「量的・質的に絶滅のおそれがあるかどうかのランク付けした」という意味しかないのです(とはいえ、環境省のRDBは、次に出てくる法律の種の指定における根拠として、活用されていますが)。

 法的な縛りがあるのは、通称「種の保存法」と呼ばれるもので、ここでは「国内希少野生動植物種」や、ワシントン条約掲載種に相当する「国際希少野生動植物種」などとなっています。けど、この管轄省庁は環境省ですから、本作品で語られているように水産庁(農林水産省)の許可云々とは違う話です。
 (通称:鳥獣保護管理法は、主旨がかなり異なる法律なので、ここでは割愛)

 じゃあ水産庁が管轄する法律って?というと、「臘虎膃肭獣猟獲取締法」。漢字で書くと意味不明ですが、「臘虎=らっこ」「膃肭獣=おっとせい」のことで、ラッコ・オットセイの捕獲及び毛皮製品の製造・販売について農林水産大臣が制限し、違反した場合の罰則などを定めた法律で、明治時代に国際条約に則って骨子が作られましたが(条約自体は1941年に失効)、形を変えて現在も有効な法律だそうです。

 なのでキタオットセイに限らず、オットセイやラッコは何でも水産庁の許可がないと保護も出来ない、触れない、という事態が実際に発生していて、時に浜辺に打ち上げられた衰弱個体を巡って大騒ぎになることも。それを具体的にエピソードとして取り上げたのですね。

 ただ、「絶滅危惧種だから・・・」という表現は、なんか適切じゃないなあと思うんです(一般の人には、その方が判り易いかもしれないんですが、誤解も生むなあと)。
 「法律で保護されているから・・・」と書くのが正解じゃないかなあと。細かい部分は置いておいて、この法律がキタオットセイに限らず有効とされているということは、コラム頁でも触れてもいいくらいかな、と思ったりしました。

 まあ、また細かな話をしてしまいましたが(汗)、色々な問題に触れて広めてくれることは、ある意味では啓蒙にもなって有り難いなあと思ったりします。

 作品自体は、上記のような堅苦しい法律論は書いておりませんので(汗)、普通に動物・水族館コメディーとして楽しめる内容です。ご堪能あれ。

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2018/03/19

とよ田みのる 「金剛寺さんは面倒臭い」 1巻 ゲッサン少年サンデーコミックス 小学館

 とある穴で地獄と繋がってしまい、当たり前のように「鬼」がのんびりと人間世界に溶け込んで生活している、そんなどこか設定が”面倒臭い”世界(※ただし、そこは本編には大きく関わりのないことらしい)。

 そんな中、正論を振りかざすして「正しいと考えた行動しかしない」”面倒臭い”少女(金剛寺さん)と、思ったことは素直に言葉にしてしまう心優しいけど別の意味で”面倒臭い”鬼の青年が出会ったことで、”大きく関わりのないこと”ですけど、周囲に大いに影響を撒き散らしながらアオハルが暴走していく、、、、そんなドタバタ純愛(?)コメディーです(笑)。

 文武両道でスーパー高校生なヒロインは、あらゆる意味でとにかく面倒臭い訳ですが(笑)、その行動原理にもちゃんと理由があります(ここはある意味で核心ですから、読んで確認しましょー)。それを踏まえて、その「面倒臭そうなところが好き」と公言してしまう、悪く言えば優しいけど考えすぎでストレートな鬼の青年も、心の中にはある種の何かを抑え込んでいたりもしますが、、、、

 この作品の場合、「大きく関わりのないこと」にウェイトが掛かりすぎというか、、、(笑)。

 衝撃的な心理描写もなかなか”面倒臭い”描写ながら、その一瞬に平行してザッピングのように進行する周囲のドタバタが、半分以上を占めているというか(笑)。
 なんかもう人生がそこで転換してしまうような、そんな事件が彼らの周囲のあずかり知らぬところで進行していようとも、本編である二人の”アオハル”は暴走し続けるのです。

 一瞬が交錯する”大きく関わりのない”物語や、大袈裟に輪を掛けたような心理描写(笑)に目を奪われちゃいますけど、やはり根底にあるのは、恋愛に至る心理というか、「ラブロマ」(全5巻)の頃から秀逸だった心と言葉と”行動”の駆け引きの部分だろうと思います。

 読者の誰もが「そうそう、こういう風に感じたり考えたりするよね」という前提の心理部分がしっかりとあった上で、その斜め上を行く行動に走るから、ラブコメとして面白いんですよね。どこかこう、ドタバタの中にまさにどちらの心理も上手に描き出し、”駆け引き”のような部分の綱引きというか、両方の視点を上手に作中に描き込めているなあ、と思ったりもします。

 ある意味、どっちも面倒そうな性格の二人ですが(笑)、アオハルを暴走させて周囲を巻き込みまくりながら、きっとそうした”大して関わりのない”人々が少しずつ集まって、大きく関わっていくんだろうなあ、という気がします。

 しかしまあ、よく考えたら1巻丸々使ってここまでしか進行しないって、本当に面倒臭いカップルですよね(笑)。

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2018/03/02

伊藤勢/田中芳樹 「天竺熱風録」 3巻 ヤングアニマルコミックス 秋田書店

 中国から天竺(インド)へ、唐からの使節団として派遣された王玄策(実際人物)。そこであるクーデターに巻き込まれ、仲間と共に投獄されてしまいます。そこから脱出し、三十数名の牢屋に残した仲間をいかに救おうというのか、その大胆な策と行動力、そして魑魅魍魎な印度周辺を取り巻く小国の覇権争いを描いた、印度化計画・・・じゃないや、歴史冒険アクション活劇(+ギャグ)作品です。

 伊藤勢といえば印度でしょっ!(意味もなく断言)

 デビュー作である「ニルヴァーナパニック!!」からもう印度臭全開でしたが、あれから25年。。。全てがここに花開いているような、そんな気がします(←個人の感想です)。そういえば、3巻の表紙にもなっている女将軍って・・・(意味深)。

 もうエスニック臭というか印度臭がハンパないです。

 民衆の衣装から当時の建築物、そして風習やその他諸々、日本でも中国でもヨーロッパでもない、仏教文化だけではない様々な宗教の世界と共に描かれる、今のインドともネパールとも違う独特な<世界>が、作品の中に溢れかえっています。さらにそこに伊藤勢の渾身の”ギャグ”が隠し味のように唐突に現れたり、そして肉体を駆使した迫力のアクション・シーンまでてんこ盛りですから、ほんとに採算度外視です(←かなり言い過ぎ)。

 原作は「銀英伝」の田中芳樹ですが(こちらの挿絵はは藤田和日郎ですね)、この作品自体は全1巻で完結しています。そもそも登場人物自体は”実在の人物”であるということ、そして史実をベースとしている、ということが驚愕です。読み始めてみれば、もう見たこともない世界観から「ファンタジー?」とも思えてしまうような、エンターテイメント作品になっています。そもそも物語自体が波瀾万丈過ぎて「ホントにこんな事があったの?こんな人が実在したの!?」と、読み進みながら2度ビックリ。

 勿論、史実には人となりの詳細な記述がないため、キャラ付けから物語の進行自体には、かなり原作者の創作アレンジが入ってドラマ仕立てにはなっているようです(Wikipediaより)。私は原作を読んでいないので、この作品をさらに漫画化するに当たってどのくらい脚色されているか判りませんが、、、、作品の雰囲気を見る限りは、原作への忠実性よりも「演劇(漫画)としてのさらなるアレンジ」を楽しむことを考えた方がいいんじゃないかな、と思いました(まあ原作では、微妙な駆け引き中の微妙な表情までは描かれていないでしょうからね)。

 大好きな作家のために、ちょっと熱が入りすぎてしまいましたが(大汗)、原作自体の面白さもあるのでしょうけど、展開がドラマチック過ぎて、そして腹の探り合いのような駆け引きや、登場人物達の状況分析も面白く、そして迫力のアクションやその演出も見事でして。。1巻の時はまだ序の口だったのか、物語自体が凄い狭い世界だけだったのであれでしたが(そりゃまあ、牢屋の中のお話が主ですから、狭いですわな(笑))、2巻、3巻と続くうちにスケールが大きくなり、ほんとに冒険活劇そのものの展開になってきました。

 「ファンタジー」や「アクション」というキーワードで引っかかった人なら、存分に楽しめる作品だなと思います。

 しかしまあ、創作アレンジが入っているとはいえ、本当にこんな波瀾万丈な状況に置かれ、それを知力と行動力で解決してしまった人がいたんですねえ、、、 「事実は小説よりも奇なり」は、ある意味本当にその通りだなあと。
 

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2018/02/26

椿歩実 「××でも魔法少女になれますか?」 全2巻 裏少年サンデーコミックス 小学館

 魔法少女ものも色々とありまして、熟女や男性が何故か変身してしまう系など色々とありますが、まさに<老婆>が魔法少女になってしまう、というのがこの作品。まあ、他にも女子ではない者が”魔法少女”にされたりしていますが(笑)。

 老婆といっても”癒し系”の系統ですね。変身してしまうと若返っちゃう訳ですが、心の闇に取り憑かれた”魔人”達を、ある意味では<癒やし>て浄化してしまうという、そんな感じで活躍します。そして、そこに何故か”感情を奪い”ながら魔人を消去していく、別の魔法少女”達”が現れ、直接ではないにしろ、この二組の魔法少女達が、ついに決戦(?)に挑むことになるという。。

 部品だけを見てしまうと、他の作品でもありそうなシチュエーションも色々あるんですけど、全2巻でのまとめ方が秀逸だなあと思いました。

 変身できるようになっても、実は昔から魔法少女に憧れている孫には打ち明けられないヒロイン(88歳)。ある意味敵対している魔法少女達も、誰かを助けたいという意志で行動し、そして泥沼に填まってしまう(まあ、ダークサイドに堕ちてしまうというか。。)訳です。が、それらの伏線となっていた数々の問題を、上手に畳んで大団円に持ち込んでいるわけです。

 全2巻となった事情などは何かあるのかもしれませんけど、物語のスパン的にも、なんか”映画を一本”を見ているような、そんな丁度いい尺でまとまっている感じです。そして伏線の取りこぼしもなく、心の痛みを乗り越え、みんなある意味では”幸せ”になれる、そんな感じにまとまっているかなあと。。

 魔法少女を題材にした作品は沢山ありますが、設定を昇華しきれなかったり、持ち味(個性)を活かしきれない作品もまあ多い中、この作品は、ほのぼのとした雰囲気を最後まで活かし、ちょっとウルトラCもありますが、ドラマも一気に展開して楽しめる、全2巻に実に上手に収まっている作品かと思います。
 

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