C_特撮

2018/04/19

山城良文 「反逆のオーバーズ」 1巻 BEAM COMIX エンター・ブレイン

 数々の超能力を持ったヒーロー、通称「オーバーズ」達が、互いに争い、そして世界が崩壊したのち、復興しつつあるとある世界。。

 オーバーズは「悪」というレッテルを貼られ、残党は管理組織によって追われ、そして消されていく、、、そんな世界の中で、オーバーズに憧れる一人の少年が大戦を生き残った超能力者達と出会い、管理局と反逆する彼らとの泥沼の戦いに巻き込まれていく、そんなお話です。

 まあ、彼自体がこの戦いの始まりでもあり、そして”鍵”となる人物ではありますけど、ヒーロー達が反逆者として追われ、消されていくという世界観、そして平和を愛し人々を守る筈のヒーローが「そうではない」という辺り、常識的な部分を壊しながら、追われる身となったヒーロー達と、管理局に協力する”元”ヒーロー達の、壮絶な戦いが繰り広げられます。

 まあ、1巻だけではまだストーリーの全体像は見えてきませんが、ストーリーの構成や魅せ方については、アクション系少年漫画として、既に十分過ぎるくらいの領域には達しているかなと。

 物語は、かなり残酷な方向に流れていくのか、本当の意味の「正義」は何なのか、これは2巻以降の展開を乞うご期待、といったところでしょうね。流れ的には、面白いと思った人は裏切らない展開となっていくかな、と思いますが(希望的観測)。
  

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2017/05/17

上山道郎 「オニヒメ」 2巻 ヤングキングコミックス 少年画報社

 「剣豪ディスク」と呼ばれる刀の鍔(つば)に宿った剣豪達の技を引き出し、異界からの魔物と戦う、謎の出自の女子高生の戦いを描く、剣豪アクション作品です。

 簡単に説明してしまうなら、「特撮ヒーローもの」と言った方が雰囲気が伝わるかもしれませんね。最近の某ヒーローは色んなカードを装着して技を繰り出すわけですけど、この作品の場合にはそれは刀に付ける鍔状の「剣豪ディスク」な訳です。

 普通の剣術、剣道ものとは一線を画するのは、やはり「ツマヌダ格闘街」で培った、古武術に則った体の姿勢や動きなどのアクションでしょう。

 最低限の動きで、想像を超えた半端ないパワーを生み出す古代剣術を含む古武術・・。その基本は立ち姿を含む姿勢ですが、やはりそれをしっかり描けているからこそ、炸裂した時の迫力が感じられます。これ、普通に動画で見てしまうと、かえって判りにくいかもしれません。。ある意味、漫画だからこその表現である気もします。

 作品自体は、剣豪ディスク同士を使った、怪異との剣術による戦いです。主人公は剣道も習ったこともない少女ですが、その出自に秘密があったり。。もう一人のヒロインは、秘密組織に所属して怪異と戦う戦士の一人な訳ですが、こちらは語り部としての位置付けとも言えますね。

 で、、、、この作品の特筆すべき事は、過去の作品である「怪奇警察サイポリス」と世界観を共にしているということです!(←勝手に興奮しているらしい)。

 「怪奇警察サイポリス」は1995年まで「コロコロコミックス」に連載された全9巻の児童向け漫画です。細かな解説はWikipedia  に任せますが、児童向けという文法は守りつつも、正直、少年漫画として掲載されていてもおかしくないクオリティーの作品だったんですね(※個人の感想です)。

 現在、マンガ図書館Zで無料で読むことが出来ます。 ・・・というか、正直、コロコロコミックスの単行本を全部探すのは、他のコロコロ作品以上に、現在ではかなり難しいでしょう(私もかなり前、探すのにとても苦労した記憶がありますが、ここ10年くらいは古書店で1冊も見たことがありません。ネット古書店を探せばあるのかもしれませんが、、、)。

 当作品のヒロインは、サイポリスの登場人物の血を引き継いでいる、という設定となっています。そして2巻では、勿体ぶらずにモロにその登場人物達が現れるという大盤振る舞い(笑)。

 半ば打ち切りのような形で終わってしまった、20年以上前の児童漫画の設定を蘇らせたのは、やはり古武術への半端ない知識と、特撮ものへの熱い想い(作者本人の)とが融合して結晶した、と言ってもいいんじゃないでしょうか。

 ある意味、児童向けとはいえ細かな裏設定に当時から拘っていたからこそ、青年漫画とのコラボが実現したんじゃないかなあと思うと、なんか感慨深いですねぇ。。

 と、勝手に盛り上がっていますが(汗)、過去作品の下敷きがなくても、特撮ものが好きな人にも、そして古武術に興味がある人にも、それぞれの予備知識が全くなくとも十分過ぎるくらいのクオリティーで楽しめる作品になっているんじゃないかなあ、と思います。
 

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2017/04/25

風上旬/POP 「ウルトラ怪獣擬人化計画」 3巻 ヤングチャンピオンコミックス 秋田書店

 懐かしい、、、かどうかは世代によりますけど、ウルトラマンシリーズに出てきた個性的な凶悪怪獣を、怪獣墓場でなんでか知らんけど美少女(女子高生?)に変身させてしまうという、よく考えたら暴挙としか言いようがない設定を踏まえて、コミカライズされた作品です。怪獣墓場(なんだか学校になっている)から地球へまた遠征し、そこで繰り広げられるほのぼの地球侵略(ごっこ)物語、という感じになっています。

 当初、この企画はイラストとフィギュアだけでしたが、レッドキングやエレキングのビジュアルを見て、「いやあの・・・けどなんか可愛い」とか思ったのは内緒です(爆)。特にエレキングさんは狙いすぎ(笑)。

 色々とメディアミックスで展開されているようですが(コミカライズも幾つかあるようですが)、この作品ではメフィラス星人が主人公として、往年の名物怪獣が擬人化(美少女化)されて集い、地球侵略のためにまずアイドルグループを・・・という感じで、なんかこうおかしなベクトルに走りつつ、のほほんとしながらも、巨大化して戦ったりとかもすることになるとか、そもそも何で擬人化させてんだ?とかいう伏線も絡めて、案外真面目にドラマを作ってるんですね。

 正直、最初は怖いもの見たさで1巻を買ったんですが(こらこら)、(一部の擬人化怪獣の)可愛らしさをきっちり全面にも押し出しつつも、様々な怪獣達との出会いの中で、「お約束な元ネタ」のマニアックで密度の濃い挿入などで、なかなか面白いんですね。それぞれの怪獣の性格付けや癖、そしてやり過ぎ感もあるくらいの元ネタオンパレード(笑)で、結構楽しませてくれるのと(特にウルトラマンに殺られたときのシーンのネタ再現とか、様々な有名シーンからマニアックネタまで)、ドラマとしても結構よく練られているなあ、と感じたもので。

 私は多分、リアルではウルトラマンタロウとレオ世代辺りだと思うんですが(リアルで見た記憶がある)、再放送で初代とセブンをほぼ全て見ていて、そちらの方の印象の方がより強く残っています。

 この作品では、初代とセブンでの怪獣に偏っている形になるんですが(もちろん、その後のエースとかで出てくる怪獣も幾つか出てくるようです(あまりそこは詳しくない(汗))、まあその後の作品でも繰り返し出てくる怪獣もいますし、何というか初代、セブンの作品インパクトが一番大きかったとも言えますんで、ここはまあ仕方ないですよね。

 なんか読んでいると、元ネタを改めて確認したくなって、また旧やセブンが見たくなってきてしまうという妙な相乗効果も楽しめる、そんな感じの作品です。

 ※余談ですが、、、ある日、「平成セブン」なるものがあるのを知って、中年諸星ダンに感銘を受けながら、DVDを全部大人買いしてしまったのは私です(爆)。
  

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2016/09/07

田口央斗 「下町エンジェルライナー~機械式制服少女製造所」 全2巻 チャンピオンREDコミックス 秋田書店

 北海道の田舎から、伯母を訪ねて憧れの東京に上京してきた女子高生。ヒラヒラな衣装を着せられたと思ったら、それは下町の技術を集めて作られたパワードスーツであったと。。半ば無理矢理、熱血漢な相棒にも振り回されながら、ご当地ヒーローとして謎の敵と戦う、そんな作品です。

 設定だけを見てしまうと、ギャグ系かコメディー系をイメージして、敵といっても町内から世界征服でも狙うの?レベルの内容を想像してしまいそうですが、人を惑わせて怪人にしてしまうという感じで、案外ガッツリと危険で強力な敵が設定されています。けどまあ、表だっては「ご当地ヒーローショー」なノリで誤魔化したりしているといったところ。

 衣装はどー見てもフリフリ・ヒラヒラで、ヒーローと言うよりはセーラー○ー○な雰囲気ですが、シャッター商店街における下町職人の技術とテクノロジーを注ぎ込んだ(?)、見てくれとは別の、かなりしっかりとした人体強化スーツになっているので、コンクリートの破砕なども平気で出来るレベルだったりします。
 ヒツジの皮を被ったオオカミとでも言うんでしょうかね。「あんたら何者だよっっ!」とおっちゃん達にツッコミ入れたくなるような、そんな設定の中、半ばイヤイヤながら戦いに巻き込まれていくヒロイン、、といったところですね。

 SF考証も、まあ端折っているところはあるものの、案外キッチリと「機械」としてのパワードスーツとして設定されていたり、その他の伏線も含めて裏設定がかなりしっかりしている作品だったんですね。元々はガンダム等のコミカライズをされていたようですから、その辺りはよく判った上で、ヒーローもののエッセンスもしっかり入れ込んであると思います。

 楽しみにはしていたんですが、2巻で終了とはちょっと惜しい。。

 タイミングの問題かもしれませんが、展開がちょっと遅かったので、スケール感が町内からなかなか広がらなかったからですかね。。
 お嬢様キャラの投入もありましたが、インパクトが若干弱かったかなあ。。大企業のお嬢様なら、私設軍隊持っていたり(←偏見)、秘密兵器でも独自に持ち出して暴れるとかあるのかも?と、変な期待をしてしまいました(実は裏設定で、先々は登場したのかもしれませんが(汗))。
 そのポジションは、謎の美少女の登場ということで別のキャラが演じていましたが、このキャラを登場させた時点で、終了は決まってたんでしょうね。。

 表紙から受けるイメージと、中身にも若干ギャップがあったかもしれません。ヒロイン”達”を表紙にするのは当然なんですけど、裏表紙の解説等も含めて、もう少し作品の<中身>が想像できるようになっていたら、この作品は結構楽しんで読める人はいるかも。。。とか思って見たり(サービスシーンは置いておいて、ただのヒロインが戦うだけの作品というカテゴリで見られてしまうなと、、まあそうといえばそうなんですが(汗))。

 特に2巻後半で、町内のレベルから一気に世界レベルの謎組織やら新たな敵、そして思わせぶりなサポートマシーン、新たな仲間などを矢継ぎ早に投入しつつの終了は、きちんと考えてあった裏設定を全部押し込めてきたんだなあ、、という若干悲哀もあり。

 巻末には続編やら外伝やらをやるんだー!と、キャラ達の悲哀が描かれていますが。。どこまで本気にしたらいいのか、思わせぶりなだけで自虐的なアレなのかは判りませんけど、、、

 いやあ、正直あったら私は絶対読みたいです(笑)。

 サポートメカやら巨大ロボット(?)もバリバリ出す設定で、頑張ってどこかで続編お願いしますね(同人じゃ読めないので。。)。


  

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2016/07/11

矢寺圭太 「おにでか!」 1巻 ヒーローズコミックス 小学館

 冒頭は、お姫様体質のヒロインに幼なじみの男子高生が振り回されるという、まあある意味ではラブコメ一直線な展開なのかもしれないですね。
 結構、この二人の関係を説明するためのシチュエーション描写に時間を割き、そして男子高生自身が一番、彼女を甘やかしているという現実に直面した辺りから、物語は急展開を始めます。

 ある意味では”決別”を告白した彼に対して、文字通り”カミナリ”を落とした(?)彼女は、徐々に巨大化していくわけですが。。

 と、わざと文字で思わせぶりに書くとアレですけど、まあ表紙を見ればこういうことですよ、と(笑)。

 まあ、最初から巨大化するというのは単行本の裏にも書かれていますけど、SFアニメ的な動機、行動原理などの設定は、実は案外としっかりしている感があります。どういう仕組みで服まで巨大化するのかとか、そういう些末なことは置いておいて(こらこら)、少なくとも何が原動力で巨大化するのか、そして巨大化した彼女が、他の巨大化した”何か”と戦わなければいけない、その理由付けがハッキリとしている、ということですね。

 逆に言えば、その動機付けを判り易くするが為に、冒頭での王道的なラブコメ展開が必要であった、というわけですね。

 さらに言えば、特撮的なリアリティーにも結構、拘りがあるなあと思いました。巨大化した後のもっさりとした動作、動きや周囲の建物の壊れ方などからスケール感を感じさせる描写、遠方からも巨大な少女を俯瞰するカメラワークを随所に盛り込み、日本中が注目するというパニック映画の、皆がテレビを見ているシチュエーションなども上手に活かしていますね。特撮結構好きなんだろうなあ。

 そしてくだらないことで感心したんですけど、神奈川から秋葉原まで、巨大な少女が歩いて移動するという際の、時間的な経過部分を、ある意味ではリアルに描いているなあと。
ヘリって何時間飛べるんだとか、高速道路の車ってどうやって退けたんだとか、そんな些細なことはどーでもいいんで(いいのかっw)、けどこういう時間的な部分って、人の中に半ばリアルなイメージを作らなければいけないだけに、大事だと思うんですね。
 ※余談ですが、某機動戦艦アニメでも、木星と地球や火星の間を往復する際、必ずくだらないコメディー回が登場していたんですが、これは宇宙を移動するのにそれだけ時間が掛かる、ということを表現するためだ、という解説を読んで、なる程なあと感心したことがあります。

 ただ単に女子高生が巨大化して怪獣と戦うという、悪く言えば今までもアリガチな(というかコメディー等でもよくある)シチュエーションではあるのに、巨大化イメージと時間スケールという、ストーリー重視であれば半ば無視しちゃったりすることが多いこの要素を、意外なほどしっかり折り込んで作ってあるというあたりに、ちょっと楽しさを覚えたりしました。

 絵柄含めてラブコメな内容から、どんでん返しなSF展開に面白さを感じた人も多いと思いますんで、私みたいに変なところに感心する人ってあまり多くはないとは思いますが(笑)、いやあ、マンガの表現って、拘って描くとまだまだ色々とできるんですねえ。。

  

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2016/06/30

木村享平 「不思議なゆりこさん」 1巻 モーニングKC 講談社

 いわゆるコミュ障な雰囲気の女子高生ヒロインと、”不思議な”転校生ゆりこさん。不思議すぎる言動や行動を伴い、妖しすぎるオーラを醸し出しながら彼女に”迫る”ゆりこさんの正体はっ!

 って、初っぱなから「宇宙人」って言ってますけど。

 ・・・えっ???


 雰囲気については、言葉で表現するより公開されている第1話を見た方が手っ取り早いですね。

 なんかもう、最初に「・・・これ掲載誌なんだっけ?」と背表紙を見直してしまったくらい、人によっては違和感を憶えるかもしれません(笑)。一昔前なら、ガロやアックスに載っていてもおかしくない、ヘタウマ系というか、そういう作風です。まあ、モーニングにもこういう作品を受け入れる土壌は昔からあったので、改めて考えてみるとアリなんでしょうね。

 もう2ページ目から全力疾走状態で、「ゆりこさんワールド」に引き摺り込まれてしまいます。

 絵がうまい訳ではないですが(というのを褒め言葉に使うべきなのかもしれませんが)、キッチュな宇宙人がてんこ盛りで、宇宙人なので常識の概念が地球と違うってことで何でもあり、ネーミングセンスも半端ない(80年代のB級SFのセンスか、あとコメディ系の演劇でもなんか出てきそうな感じ?)、不条理な雰囲気もあるギャグ系漫画なんですが、けど案外、物語に破綻がない構成できちんとオチまで持って行くので、万人には勧められないかもしれないんですけど、抵抗がなければその不思議な世界観に取り込まれ、楽しめてしまうんじゃないかなあと。。

 正直に言えば、第1話の飛ばしすぎな破天荒ぶりに、一寸読み始めから引き気味に見ていたんですが(・・・このノリで最後まで続けられるのかな?と)、読み進めていくうちに、他の個性的なキャラだけではなく、コミュ障気味なヒロインもノリノリになってきて、新たなコミュ障やらマッドサイエンティストやら、おかしなキャラも増えてきたお陰で、逆に第1話以上にその後の流れも楽しめる感じになっています。

 雑誌で括るのはアレですが、やはりモーニング系侮り難し、です。。
 他の雑誌ではなかなか載らないだろうなあ。

 けどこれ、1巻と書いてあるんですけど、時系列的に2巻はどういう展開になるのだろう?
 
 

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2016/05/11

松本豊 「スメラギドレッサーズ」 全4巻 少年チャンピオンコミックス 秋田書店

 以前のコメントはこちら

 毎回わくわくしながら読んでいたのですが、4巻が最終巻ということで若干読む前にショックを受けていました。


 3巻から続く遊園地での死闘はクライマックスを迎え、絶対的なパワーを持った首領との戦いの末、学園生活が戻ってくる訳ですが。。。ネタバレになっちゃうので、あらすじはここまでとして(1行かよっ!)。

 秋田書店の場合、概ね4巻くらいのところで「オトナノジジョウ(仮)」が発動されることになるわけですが(出版社によって若干違いますが、4巻まで続けられれば上々の方です)、その時点で「どう終わらせるか」という難題が、作者には突きつけられます。
 この課題をクリアする方法は幾らでもあるわけですが、そこまでに積み上げてきた連載内容を、どう整理して調理するかで、その作品への読後感やその後に残る印象は、大きく変わります。
 ある人はぶち切れて中途半端な結末で尻すぼみになり、ある人は無理すぎる急展開を押し込んで駆け足のように話をまとめてしまい、、、、 けどまあ、最終巻がちゃんと出して貰えるだけマシ、という御意見もありますね(最終巻や連載分が収録されずに終わる、なんてことも実際、多々ありますので。。諸事情で)。

 この作品では、残された尺に対して、全力で<最高のクライマックスシーンを作り上げる>ことに投入してきました。そして何とか他の人に変身を代わってほしいと願い続けていた委員長の、心の成長と決意という、一番大事なものを引き出しました。

 ラストは「本当の戦いはこれからだ!」という形で締めくくられる訳ですが(勿論、賛否両論はあるでしょう)、続けようと思えば続編も作れそうですけど、この締めの潔いシーンは、「やり遂げた!」感も滲み出ているような気がします。謎も謎のまま、伏線もいろいろと畳んではいませんけど、個人的には<天晴れ>で、いい終わり方ではないかなあと。

 当初の”羞恥心”攻撃が話題となったこの作品ですが、コメディー系の絵柄で(コメディーな側面も十分盛り込まれているんですけど)、ど派手なアクションというギャップが面白かったと思いつつ、もっとセクシーさを求める方々には、微妙に絵柄的にも何かが足りなかったのかもしれません。
 まあ、男性は好奇な視線を向けるモブとしてしか描かれず、恋愛的な要素はほぼ皆無な、女の子だけの戦いの世界でしたんで(セーラー○○○的な)、まあ仕方ない部分もあり。。
 けど、この作品の根底には、様々な葛藤(羞恥心含む)や悩みを、生真面目な<助けたい>という心と<友情>で吹き飛ばす、そんな想いが込められていたと思います。なので、そういう恋愛要素を絡めなかったことによって、作品のメッセージがストレートに感じられましたんで、個人的にはこれは英断だったと思ったりします。

 この先、どういう作品を描いていくのかは判りませんが、結構めちゃくちゃな設定の割に破綻しない物語の構成力も目を引きますので、まだまだ面白い作品を描いてくれるんじゃないでしょうかね。

 いつの日か心の整理がついたら、続編への意欲もまた燃やしてほしいなあ、と思います。

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2015/10/27

新貝田鉄也郎 「怪人ようちえん」 1巻 ヤングジャンプコミックス 集英社

 実は表紙とタイトルに引かれ、読んでみたらその絵柄の可愛さと怪人の設定の異様なほどの細かさ+クオリティに、なんか凄い熱いな!って思って、改めて(表紙の崩してある)作者名を見てみたら、、、、新貝田鉄也郎さんではないですか、、(汗)。

 ロリエロの世界で活躍されていた寡作な方でありますが(、、、なんで私は寡作な人ばかり記憶しているのだろう(汗))、一般紙にも描いていたのかぁ、ってことと、いま描いていることに二度ビックリ。

 設定自体は、とある組織(お察し)に生み出された改造人間=怪人達が、まあ社会的なアレを身につけるため、幼稚園レベルから教育を受ける、というのが骨子です。
 改造されて生み出されたばかりの怪人達は、それまでの記憶はなく、変身能力もまだ身につかず、備わっている特殊能力も活かし切れない、とても中途半端な存在。そんな子供達が、幼稚園を舞台にバトル(?)を繰り広げ、成長していくという、まあそんな感じです。

 なんだか優しい保育の先生(当然、怪人)や先輩方(コレも当然)、そして謎の首領(ほのぼの系)と共に、幼児が暴れまくるわけですが、、裏設定がしっかりしているので(読めば判りますが)、なんかもう特撮アルアル的な面白さとかもあって、楽しく読める作品になっていますね。
 WEBで見てみると、特撮の世界でも実は結構活躍されていたようで、だからこのクオリティなのかあ、と思ったり。

 ギャグというかコメディーとして描かれている割に、少女達のアクションシーン(?)は実に活き活きと描かれています。ギャグマンガとしては、特に動きについてはクオリティ高いんじゃないかしら?(個人的感想)。

 なんだか懐かしい人が活躍しているのを見て、ちょっと嬉しくなったりもする、そんな気分であります。

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2015/10/26

島崎無印 「怪獣の飼育委員」 1巻 まんがタイムKRコミックス 芳文社

 沢山の怪獣が普通に出現し、そしてなぜか大人しく日常の中に存在している近未来、という設定なんですが、怪獣がでてきてここまで<ほのぼの>とした作品、見たことありません(笑)。

 突然、人類の前に出現した怪獣達は、ひとしきり暴れて街を破壊したものの、ある少女達の歌声により、飼われている猫のように大人しくなることが判明。それ以降、怪獣達を大人しくさせる飼育員「テイマー」が養成されるようになり、人間に危害を加えることなく、ある意味では”共存”しているという世界です。
 そしてその「テイマー」を養成する学校に入学した少女達の中から、学校の裏庭に住み着く「怪獣」の飼育係が決められ、面倒を見ることになる。そんなお話です。

 とはいっても、実際の所は巨大な体を持ち、単に「暴れない」、「人間に危害を加えない」、というだけの巨大な存在。保護区というか隔離区域が設けられ、基本的にはその中で生活することだけが許されています(前述の学校に住んでいる個体は、授業用の個体ですね)。
 何かを食べるでもなく”光合成”でエネルギーを蓄え、そして死ぬと石に変化すると言われている、謎の、、生き物とも何ともいえない物体です。しかしそこには確かに意志もあり、生き物のように振る舞うこともあり、少女達の歌声にうっとりと聞き惚れる、そんな存在でもあります。

 なんか設定だけ見ると、モ○ラかキン○○ーサーか、って感じですけど、若干ベクトルは違います。けどまあ、怪獣の存在自体、バラエティーもありすぎるし謎も多すぎるで、この先の展開はどうなるんだろう、となかなか気にもなりますね。

 謎に包まれた生態を持つ「生物」として、言葉は交わせないけど何かを感じ、そして考えて行動している怪獣達に、今日も飼育委員達は翻弄され続けますよ、と。

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2015/07/29

環望 「ウチのムスメに手を出すな!」 全3巻 ヤングキングコミックス 少年画報社

 アメコミのオマージュが散りばめられた、ちょっとHなダブルヒロイン(?)作品です。
 まあ、通勤電車の中で読むのはかなり無理なレベルということで(汗)。

 その昔、正義の超人として活躍したヒロインの娘が(娘には当然それは秘密)、血は争えないということで、悪の組織の復活に乗じて<正義の超人デビュー>を果たします。
 が、その復活した悪の組織は、その昔に母親が活躍していた頃から、やたらとエロい攻撃ばかりを仕掛けてくるという、いいんだか悪いんだか、、まあ悪くはないか(違)。

 けどそんな”責め”が待っているところに、おいそれと娘は出せん!ということで、陰に日向に娘をかばい、逆にエロいワナに自ら填まるという、ムチムチすぎるアラフォーな母親の活躍・・・を描いている、そんな作品です。

 まあ、設定自体はこんな感じでお色気アメコミ路線ですが、3巻以降の設定は、時間や時空を越えたお話になっており、SF作品としてもなかなか面白いまとめ方をしてます。

 3巻では一般募集した「わたしの超人」もゴマンと出てきて大乱闘になりますんで、誰々のキャラだ、と探すのもまた一興ですね。

 しかしまあ、、、親子関係がもうグチャグチャで、時空越えるからってここまでするんかい(笑)、という感じです。全てまあ繋がっていくんですけどね。なんかモラル的に登場人物達は悩まんのかな?とか逆に心配してしまいますが。

 まあラストもアメリカンテイストに溢れていますし、エンターテイメントとして、楽しめる作品だなあと思います。

 ちなみに私は娘さんくらいの方がいいです。ここまでムチムチなのはちょっと。。(違)。

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