イシデ電 KADOKAWA/エンターブレイン 2016-04-25
1巻のコメントはこちら。
主婦というキーワードだけで、様々なジャンルの物語を繋ぎ合わせたオムニバス作品集です。
初っぱなの第1話のインパクト、その後に続く強烈な登場人物や物語の意外性に惹かれるわけですが、全体的な展開が、そこから入った読者の期待感からベクトルが少しずれちゃったのかもなあ。。というのが残念至極。
物語はオムニバスでありながら、それぞれの世界観がどこかで小さく繋がっている。そして2つの登場人物がコラボするという、ある意味では極普通にオムニバス式の連作では使われる手法ですけど、私はこの手法は結構好きだし、意外性も絡めてよく考えられているなあ、と思ったりしました。
ただ、読み切りのオムニバスという形式では、やはり最後はオチというか種明かしもしなければいけない。1話単位で読み終えると「なる程なあ」と納得もできて楽しめるのですが、要は最初の登場時に、”売り”の部分を全部出し切っちゃった感があったかもなあと。。
同じ登場人物がその後の短編に出てきた時、「一発芸」で注目をかっさらってしまった後だと、「新しい芸は?」と問われる状況ができてしまったのかもなと。各々の登場時のインパクト以上の”芸”は出てこないので(どちらかといえば、裏設定をより細かく描写していくというスタイルですから)、そういう暗黙の期待に応えきるのが難しくなってしまったと。。要は2回目以降の登場時のハードルが上がってしまったということかもなあと。
主婦というキーワードからは想像できないようなインパクトのある短編を読んだあと、当然続きモノにも同じインパクトを求めちゃう読者が結構いたのかもしれません。新たな物語がどんどん綴られているうちはいいんですが、2巡目あたりで再登場すると、「・・・?なんか違う?」と感じてしまう人もいたんでしょうかね。。
さらにいえば、シリーズ物を一話完結式に順繰りに出していく、という形だったので、オムニバス短編とは若干違う感じだったかもなあと。2回目以降の登場時に、その前のストーリーの予備知識がないと、ちょっと内容が判りにくかったりするところもありましたし(雑誌購読では辛いかも)。
こういう形式のオムニバス式の短編集は色々出ていますけど、話が全てでどこか繋がっているのであれば、何か軸がほしい気もしますね。この作品的には<主婦>という軸がそれに相当しますが、その軸となる定義を<幅の広い意外性>で破壊していることが売りであるものの、却って軸受がどこにあるのか掴みにくくなっちゃった感があり、(私みたいに変な奴じゃないと)作品の主題(軸足)がどこにあるのか、ちょっと掴めなくなってしまうのかもなあと。。
私はどちらかといえば、この作者さんの持ち味は、無関係そうな物語も上手にパッチワークのように繋げていくこと、そして謎や意外性を醸しだしながら上手にストーリーを綴っていくことかなと思います(個人の感想です)。「餅巣菓さんに呼ばれる」なんかも意外性の集大成な気もしますし、「私という猫」とか叙情的な物語作りも上手いですから、2巻あたりはそういう本領部分もどんどん出てきたなあと思った矢先、終了ということで。。。
この終わり方なら続きを描くことはできると思うんですが、どうでしょう?
色々な整理に少し時間が掛かるかもしれませんが、いつか続編を期待してみたり。。
※あくまで勝手に思ったことを書いているだけなので、正しいとは限りませんのであしからず。。