C_四コマ

2017/09/30

宇佐江みつこ 「ミュージアムの女」 全1巻 株式会社KADOKAWA

 B6変形版なのがちょっと惜しい、博物館や美術館、そういう場所の展示会場の隅に、ひっそりと佇んでいる<監視係>の方々のお仕事について描く、4コマ形式の作品です。

 人間をネコに置き換え(ますむらひろし的な)、何というか、とても丁寧な語り口で、ちょっとクスッとするような言葉廻しや展開を入れてくる、読み物としてもとても楽しい作品ですが、ちょっとへりくだって監視係のお仕事や日常を描いてくれている中で、なる程というトリビアが沢山ちりばめられています。

 わたしは知識とかはからっきし無いくせに、なんか美術館とか博物館に行きたくなってしまい、地方に行くと、ちょこちょこ寄ってみたりしています。意味が判らないながらも、現代アートとか近代美術、あとは日本画なんかは好きで、、、、好きな割には作者名なんて憶えられず、毎回、絵の横に書いてある解説を読んで、「ふんふん。」なんぞと言っている、変な観客です。

 東京でもたまに企画展に行くことはあるんですが、激混みで死ぬような思いをすることも多々、、、それに比べれば、本当に地方の美術館は空いていて(こらこら)、案外、「あれ?こんな作品が?」というものが、ひっそりと置いてあって、本当にじっくりと見られるので、結構お得感もあって楽しいんですよね。

 そんな中、確かに各美術館の展示室には、ひっそり座っていたり、あるいは立っている女性の方々がいるのは気になっていましたが、その方々がどういう立場の人なのか、一日中座っていて飽きないのか(こらこら)とか、改めて考えると疑問だらけなこの部分が、この作品を読んだお陰で全て瓦解しました。

 ただのパートのアルバイトだと思っていた方々は(大変すみません。。)、学芸員資格を持った方々だったのですね。勿論、資格を持っているだけでは博物館等の「学芸員」になれる訳ではなく、ある意味、展示全体を構成する「学芸員」と、「監視係」については、作中でも非常に気を遣って丁寧にその違いを解説してくれています。美術系といわゆる文系の大学での学芸員資格の違いなども、実に判り易く解説されていました。

 何というかですね、この解説自体、色々なところに散りばめられているんですけど、とても判り易く、長文で4ページくらいで解説しているページも、本当に読みやすいんですよね。こういう部分って、やはり様々な作品の解説を読んだり、判り易く簡潔に説明してくれる学芸員の方々の言葉を吸収されることで、自然と身につけられたのだろうなあ、と思ったりもしました。

 そういえばうちの大学にも文系で美術史等を扱う学部があり、絵も描かないのに美術の勉強していることを他の人になじられ、意気消沈していた同級生もいたんですが(学芸員の資格も頑張って取っていました)、なんかこの作品を読んでから、ああ、きっと彼女達もその後、こういう道に進んで楽しく活躍している、あるいは楽しんで鑑賞をしている人もいるんだろうなあ、と改めて思ったりもしました。

 とにかく、「気になった人達が、なる程こういう人達なんだ」ということが判ったことが、本当に収穫と言えば大収穫な、そしてその日常を垣間見ながら、くすっと笑わせて貰える、そんな作品です。


 まあ、一つだけ残念なことは、冒頭にも書きましたがこの作品、変形本であることです。。

 こういう本は本屋さんなどでは、新刊コーナーには並べて貰えるのですが、1ヶ月も経つと本棚に入れられないため、そのまま返本されてしまう確率が高いのです。。
 とはいえ、4コマの横のコメント欄などのバランスを考えれば、作品の形としてはこれがベターにも見えますので、装填の際には拘ったのだと思います。

 願わくば、いろいろな美術館等のミュージアムショップなどに並べて貰えたら、本当にいいだろうなあと思います。。 きっと楽しく来場者に読んで貰えそう。。
  

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2017/03/28

ごまきち 「鷹の師匠、狩りのお時間です!」 1巻 星海社COMICS 講談社

 これは現代の鷹匠の物語といえば、まさにその通りのお話なんですが、他の鳥作品と一線を画するのは、作者本人が<鷹匠>であるということです。

 そして内容は半端ないです!!

 最初、タイトルを見てから、鷹匠と猛禽類を題材にした4コマコメディ漫画かな?と思って読み始めましたが、実はタイトル自体に重い意味が込められているのですね。。

 内容の半端なさは、その経験に基づく知識と、猛禽類という人間とは全く異なる生物と共同作業を行い、向き合う姿勢に表れています。タイトルの通り、タカと人間の関係は信頼関係もさることながら、外側から見ているのと違う、<主従関係が逆>に近いものであることが、読みながら理解していくことができます。

 動物やペットであるなら、犬と人間の関係が一般化し過ぎて、人間がヒエラルキーのピラミッドの上位に位置する、という思い込みというか<刷り込み>がある気がするんですね。

 しかし、鳥の場合には全く異なる訳です。基本的に猛禽類は単独行動ですし、群れといってもリーダーが居るわけではなく、実は結構バラバラだったりと、違うのが当然なんですが、どうも<飼う>という行為が身近な体験から一般的に認知されているなあ、、と思ったりしました。

 鷹匠の場合、人間は鷹のための”発射台”に徹する、いかに狩りがし易いよう、タイミングや獲物の状況もよく見極め、タカの反応を見ながら”合わせ”る、、、という事になるそうですが、本当にドキュメント番組を見る以上に、リアリティーをもって描かれているんですね。。

 絵柄はシンプルな4コマ系の絵柄ですし、緻密に描き込まれている訳ではないんですが(けど鳥の絵はどれもやはり上手い。特にバランスが)、飼っている猛禽の描写や行動、そして習性、彼らとの付き合い方、そして獲物tとなるキジやカモ類の性質や特徴、行動特性など、一応、鳥の調査をしている人間から見ても、「え、そんな違いがあるの!?」とか「おお、ここまで描くのか!」とか「やはり自分で触ってると違うよな。。」とか、驚愕と感心の繰り返しでした。

 本当に勉強になるというか、聞いてビックリな内容がさりげなくてんこ盛りでした。。オオタカとハヤブサの狩りの行動の違いは、それなりに結構な時間、観察もしていましたし知っていると思い込んでいましたが、嘴の形状がそれぞれ微妙に違い、そこには狩猟方法に基づく合理的な理由がある、というのをサラッと1コマで描かれていて、本当に目からウロコでした・・・。勉強になりました。

 何より、野生動物の保護施設(アニマル病院)への手伝いに行った際、保護されたオオタカの胸部や腹部の肉の付き方を触りながら、遺伝的に野生のオオタカでありながら、それが巣などから違法に捕獲されて飼育された個体だと見抜いたあたり、本気で猛禽類と付き合い、対峙し、観察しているからこそ判る、本物の”プロ”なのだなあと、ある意味では畏怖すら感じたりしました。。

 取材してというのではなく、自ら師匠について学び経験したことを描いていくわけですけど、鳥を題材にした漫画というのも色々とありますが、とにかく自分で観察した内容を描くということに勝るものはないなあ、、、と改めて思いました。

 勿論、鷹匠について本気で取材し、もの凄いリアリティーと共に描いた作品は、他にも無いわけではなりません。矢口高雄の「イワナの恩返し」の中に、オオタカでもハヤブサでもなく、クマタカを用いた、スポーツ的な鷹狩り(オオタカ)とはまた違う、”生活のための鷹匠”についての物語が描かれています。

 これがまた野生のクマタカを捕まえる所から何ヶ月もかけて訓練するところまで、実に丹念に時間をかけて行う姿が描かれている秀作です(但し、現在は種の保存法などもありますので、クマタカを使った鷹狩りは、もう行われていないですけどね。。)。

 他にも未読ですが、「はばたけ!太郎丸」もクマタカ(角鷹)を使う鷹匠を描いた作品です(これは電子書籍で読めるみたいですね)。


 脱線しましたが、とにかく4コマで少しコメディタッチで描かれているこの作品ですが、実は内容は半端ない、ということで。
 けど、マニアな人にしかその凄さは伝わらない、、、のかもしれませんね。。。
 漫画として面白いか、というよりも、コミックエッセイ的な作品と割り切った方がいいかもです(と予防線)。

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2016/08/22

高市みき緒 「むしとりニスタ」 全1巻 MFC キューンシリーズ メディアファクトリー

 JKが虫を捕る「虫とり部」を創設し、虫を狩りまくる。そんな漫画です(※注:かなり意訳です)。

 普通に女子高の学生達が、何というか虫が好きな主人公に感化され(巻き込まれるともいう)、虫を追って野山を引き摺り回される、そんな4コマ作品なんですが、まあ昆虫の描写がマニアック過ぎます(笑)。

 実のところ4コマという枠の中でそんなに昆虫の細かなところを描写するのは無理というか不可能な訳ですが、昆虫の名前が正確に記載されていることもさることながら、恐らく自分で捕ったことがあるだろうという各昆虫の習性の描写が、解る人には解るレベルで、しっかり描かれています。

 ・・・なんてことが、数コマしかない昆虫の説明でわかるんかい!・・・と思われるでしょうけど、・・・解るんですよ(にやり)。

 勿論、専門家ではない普通の虫好きな方でしょうから、アマチュアなのも当然ですけど、実際に目で見て捕まえて触っているからこそ、ほとんど昆虫自体は描写していない、説明も最小限であるにも関わらず、「・・・マニアックだ。。」と感じさせられるんですよ(汗)。

 まあ、逆に昆虫の知識がない人にとっては、よくありそうなJK四コマ(ホントに女性しか出てきませんから)として楽しめるように出来ていますが、ちょっと滲み出るマニアな香りで、ためらう人もいるかも。。ですね。

 女子がそんなに昆虫触れるんかい、と思う方々も多いとは思うんですが、実際のところ、特に小さい女の子は何でも平気で触れるんですよね(まあ勿論、どのくらい見たり触った経験があるかにはよるんですが)。

 この春、うちの庭を幼稚園から小学生低学年の女の子に開放したりしたんですね(いわゆるビーバースカウトのお手伝いの一環で)。当初の目的は、池のメダカやオタマジャクシ(アズマヒキガエル)、ヌマエビ(外来だけど)を好きに掬わせてあげる、という企画だったんですが、まあ女の子ばかりですけど喜々としてメダカを追い回すわ、オタマジャクシを掬ったら手の上の載せてやるんですが、キラキラしながらウネウネ動く様子を見入っていたりしするわ、本当に楽しそうでした。

 庭にはコンポストがあって、生ゴミや枯れ草等を詰め込んでいて、開けるとまあ<不快害虫>のような小さな虫がわんさかと沸いているんですが(基本、殺虫剤入れないので好きに繁殖させている)、念のため虫が駄目な人は覗かないでと注意して開けて見せてあげました。で、ダンゴムシやらムカデの仲間やらトビムシやら、ウネウネ動き廻る様に距、離を置いていた子まで覗き込んで見入っていました。
 中の土をバットに入れてほじらせたら、喜々として指でつつき廻してダンゴムシやらゲジやらを選り分けて遊んでいるのですよね。ほぼ9割の女の子が(勿論、ちょっと距離を置く子はいますが、興味深そうに眺めていました)。

 飼うのは難しいと念押しして説明した上で、好きなだけメダカその他は持ち帰って貰いました。まあ、ほとんどやはり死なせてしまったようですが、それもそれということで、小さな生き物を知る手だてになってくれればということなのです(自然公園とかでは、大抵は持ち帰れないですからね。今どきは)。

 脱線しましたけど、女の子だからって結構平気な子は本当に平気なんですよね。そして男子も女子も関係なく、このくらいの子供達は、これは何だと教えてやれば、普通に庭にいるような雑昆虫でもミミズでも、非常に興味を持って眺めています(うちにはそんな特別な種類はいません。昔に比べれば数も種類も半分以下に減ってるくらいですね)。

 なので、「こんなJKいるかよ!」と突っ込まれる方がいたなら「いや、、ポテンシャルを持っている子はいるよ!」と声を大にして言いたかったり(・・まあ年齢と共に避けるようになるのも、世の摂理ではありますけどね)。

 1巻で終わりになっていますが、また何か機会があったら読んでみたいなと思うと共に、生物の知識があって経験もあり、ちゃんと調べてある漫画って、とても安心して読めるなあと思う次第です。

 そういう意味で「とりぱん」とかも、自分で観察した内容に特化しているので、かえって安心して読めるんですよね。図鑑とかで読んだ内容膨らませて、想像だけで描いていないが故に。

 生き物を扱う漫画では、何が大事なのか、気をつけなければいけないのか、ちょっと考えて欲しいなと思っていたんですが、それを体現してくれている漫画がちゃんとあるんだなあ、と思ったりもしました(勿論、漫画としても面白くないといけないんで、ハードルは高いのですけどね(汗))。

   

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2016/04/21

OTOSAMA 「西遊筋」 1巻 モーニングKC 講談社

 説明するまでもなく、「西遊記」のパロディ系ギャグ四コマになります。

 表紙の勇壮な姿の筋肉マッチョな三蔵法師が、なぜか性別が女性になってるエロエロな孫悟空、猪八戒、生真面目故に振り回される沙悟浄その他を従えて、天竺を目指すという物語であります。

 若干、エロ・下品方向に振られたアレンジがされていますけど(・・・若干かなあ?)、物語の順序やベースについては原典にかなり忠実に描いている(つもり)とのこと。けど、いろんな意味で、筋肉&読経の合わせ技で破戒僧と化した無敵の三蔵法師に、積み上げたストーリーをことごとく破壊されまくりですけど(笑)。

 三国志自体、まあベースとなるキャラの性格付けがしっかりし、大体のストーリーも大方の人が(各種アレンジされた作品やパロディなども通じて)知っているので、いろいろと料理のしがいがあるタイトルではあります。

 筋肉野郎な三蔵法師というのも、そんなあまたある西遊記パロディの中には恐らくあるとは思いますけど、ある意味では純真で、それゆえに真面目バカで、お供なんて要らんやろというくらい<無敵な>三蔵法師の設定はないんじゃないかしら?
 そこに異様なくらいエロエロな悟空や八戒が、原典を踏まえたり踏まえなかったりしながら、色ものの限りを尽くすという、ある意味では破壊的な展開になっています。沙悟浄は本来の原典に近い記憶を持っているという真面目君な位置付けですが、いろいろと異様に違うこの平行世界で、逆に電波扱いされることになるという。。

 まあけど、全てが規格外の三蔵法師の存在が、この作品の全てでしょうかねえ。。
 まあ、そんな感じで色んな意味でアレンジを楽しめる作品かと。

 如意棒は一体何に使われているのかとか(お

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2015/07/01

とりのなん子「とりぱん」 18巻 ワイドKCモーニング 講談社

 鳥が好きなんだから当然読んでると思われそうですが、

 当然読んでます(・∀・)

 作者は、鳥や生物の専門知識はそんなにはないのだと思います。最初の頃は、記述内容(鳥の声)とかを間違えてて、読者に指摘されちゃった、テヘっとかいうオマケのエピソードも読者コメント漫画の中にありましたね。
 今はあまり気にならなくなりましたけど(多分、相当しっかり調べ物もしているのだと思います。そんな苦労は漫画に描いてませんが)。

 けど、凄いと思うところは、別に知識とかの問題じゃなく、、
 何が凄いかって、その観察力の確かさだと思うんですね。
 半ば「観察」に徹して開き直っているだけに、おかしな生物的な知識とか間違いが入る込む余地が逆にないんだなあと。。

 まあ動物を擬人化する漫画というのも沢山ありますが、この作品が一線を画しているのは、作者が穴があくほど対象物を細かく観察して記憶していることです。

 デフォルメされてナレーションよろしく台詞を付けられていますけど、詳細な観察に基づいたものなので、違和感がまったくありません。あくまで「傍観者」としての立ち位置を意識してキープしている。

 「この動物は、こんな生態なんだよ~」という生物の豆知識みたいなのは最低限、名前が判ればいいんです。あとの解説は詳しい図鑑に任せておけばいいわけで、徹底して「傍観者」であり「観察者」であり、自分の見たもの、見た行動以上のことは、「こんな事を考えてるのかなあ」という、<とある観察者>の想像だと判るよう、割り切って描写しているんですね。

 調査や研究の世界では、調査者の思い込みとか想像は必要ないというか御法度みたいなところがあります。
 けど、普通に人が野山の草花や動物を愛でるのに、こいつらどんなこと考えてるんだろう?と想像しては駄目なんて事はありません。
 けど、チラ見だけでは、見えないところを想像で補うしかなく、そこから妄想して何だか迷走していく人が結構多い。。まあそれを本当にポエムとかで書くならいいんですが、なんだか本来の生態からかけ離れた描写、記述になっていくことが往々にしてあったりするんですな。。。
 図鑑とか本の知識+ちょっと観察した程度で動物を漫画で描こうとする人も、この泥沼に陥りやすい・・・かも。。

 けど、この漫画を改めて読んでみて下さい(まあ思い出すでもいいですが)。殆ど全て、自分で観察した内容「だけ」しか描いていないんですよね。勿論、初登場の鳥とかの紹介はチャチャっと書かれていますが、漫画で描かれていることは、全て作者が目で見て記憶した内容。それにナレーションを付けているのみ。
 だから、誰もその内容は否定できないし、そして逆に私みたいな人間でも(?)、安心て読めると。私も見たことがないような行動が描かれていて、ビックリさせられることも多々。
 そしてとにかく「私は傍観者」という距離を常に保ち、観察し続けるという。。

 この「観察力」と「記憶力」、そして「傍観者」という武器があるからこそ、この作品は動物の知識がある人もない人も、等しく楽しく読めるのだと思います。。

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2015/05/08

鈴城芹 「ホームメイドヒーローズ」 全2巻 まんがタイムKRコミックス 芳文社

 特撮つながりということで。ただし、ベクトルはかなり違います。

 こちらは全2巻で若干不遇な状況になってしまった作品ですね。。

 家族ぐるみで地球(地域?)の平和を守るため、日々なんだかその闘いに備えて準備をする、そんな一家の物語なわけです。はい。

 読んでいけばわかりますが、作者の特撮愛は半端じゃないです。いわゆる特撮系の設定のあるあるを、まあ現実にやるならどう実現するかとか、何で必要なのか?みたいなものを含めて、その必要性をディスカッションするというか。。。

 まあそもそも、悪の組織も存在しないご近所を中心とした世界で、正義の秘密組織や戦隊を作ろう、というモチベーションを、どう維持していくのか、という辺りからして、作中でツッコミを入れつつ進むわけですね。

 2巻になり、やっと何となく<悪の組織>が出来上がりつつあるわけですが、もの凄い常識人(人智を超えた存在も含めて(笑))、「これ強力にし過ぎたら、相手も怪我しちゃうよね」とか、「ここで暴れたら商店街の人々や見学者に迷惑が」とか、ヒーローよりも考えすぎるし(笑)。

 なんかこう書いていくと、ゆるゆるな作品に見えますけど、ほんとにユルユルです。やっとヒーロースーツらしいものが完成し、登場するのも2巻の後半。殆ど最終話に近いあたり。

 お約束の「巨大化」もありますけど、なんかもう遊園地のアトラクションの域をちょっと出る程度のゆるゆるさ(笑)。

 けど、端節に出てくるセリフは深いものがあります。

 特に最終話のこれですね。

 「正義の味方ってね 悪い奴なんだよ」

 解説はしません。読んでからのお楽しみということで。

 けど、これは深い。。。と思いました。勿論、かなり議論を呼ぶ解釈だと思いますけどね。

 不遇にも2巻で終りとなりましたが、この方の作品は(作中にも友情出演しまくってますが(笑))、大体4巻くらいまでの尺がある場合、3巻くらいまではこういう「のほほん」とした日常系の言葉あそび的なノリなんです。
 なので、この作品も2巻前半までのゆっくりとした「悪役の準備」段階では、そのくらいの尺で考えてたんじゃないかなあと思うんですよね。1巻で<悪>の要素がほぼ出てきてないという辺りもあり。

 ただ、そこで読者の方が、作品の方向性を見い出せなかった、、というのが痛かったんじゃないかなあ。。
 私も1巻だけ読んで、「これどういう話になるんだろう?」という不安がよぎりましたもの。悪役が出ないヒーローものとか、そういう方向性なのか?と、本気で読んでいて、それで成り立つかなあと悩んでしまっただす(私が悩む必要ないんですが(汗))。

 せめて2巻アタマのエピソードが、1巻の巻末あたりで出てきていたら、流れが少し変わっていたかもしれませんけど、最初から3~4巻の尺を想定していたのだとしたら、確かに2巻の巻頭で登場させる、というのも演出としてアリですよね。。これも分からなくはない。

 ある意味、終わったことにウダウダ言っても仕方ないのですが、この作品、他紙に移ってでも続きを描いてほしいなあと思います。
 毎週日曜日の商店街のドタバタ劇が続くだけ、という仕掛け以外にも、色々と考えていた筈。悪役もアップグレードや試行錯誤があり、ヒーロー側もまだ体制も変身合体ロボット(爆)も、何も完成してないわけで。
 終わらせ方からしても、おそらく諦めてはいないはず。。

 この作者の作風からしても、3巻以降で盛り上がり、絶対面白くなるはずなのですよね。。ないものねだりですが、いつか実現したらいいなあ。。という願望も込めて。


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