ジジ&ピンチ 「下獄上ものがたり」 1巻 ヒーローズコミックス ヒーローズ
地獄と鬼、そして苦しめられる罪人達、というモチーフ自体はセオリー通りですが、それに付随する様々な設定は独創的な、地獄ファンタジー作品といったところでしょうか。
盗み等の悪事にも殺生にも何の感慨もなく、感情の赴くままに周囲を破壊し尽くそうとするカンダタは、まるで何もわからない赤子が好き勝手気ままに殺戮を繰り返しているようなもの。さらに痛みを「快楽」と感じてしまうという異常な性質から、自分より強い者に傷つけて欲しいが為に、好き放題やりたい放題。さらに無敵に近いくらい強いんですから始末に負えません。
そんな彼が地獄に来たのも、先にも書いたとおり「自分を傷つけられる強い奴」を求めて。
そしてそのターゲットになったのは、気が進まない中で火炎地獄の獄長を努める、何故か地獄で拷問を止めたいと考えながらそれを実現できないで悩む一人の少女であったと。
何故か働けないという”呪い”が掛かり、日々サボりながら生活していた彼女は、カンダタの襲来の中、地獄で誰も出来なかった「カンダタへの必殺の一撃」を繰り出してしまい、、、、そして自分より強いと思ってしまった彼に、付きまとわれる羽目に陥ります。。
まあ、あらすじの触りを書いてみましたが、誰もがよく知っている”地獄”という舞台でありながら、誰もが何らかの”呪い”に縛られている地獄の住人達の不思議さ、そして生と死の設定などなど、かなり個性的でファンタジー要素が強い作品になっています。さらに言えば、主人公の殆ど動物並みの行動原理や、地獄のシステム自体に疑問を持ち、そしてどこか深いところで反発を持っている火炎地獄の獄長である少女、さらにその姉妹が2人、合計4人でさまざまな地獄を、まさに言葉通り”渡り歩いていく”という、そんな冒険活劇になっています。
とにかく設定が面白いんですね。地獄というシチュエーションは、色々な人が弄っていますけど、人の魂がどうなるかというシステム(名札)や、色々な”呪い”により、獄長や看守達にも縛りが存在すること、さらに言えば、物語の先が読めないというか、カンダタの暴走の仕方が半端ないというか(笑)、地獄と天国のシステム自体、この作品中ではかなり独特な設定とされているので(それもまだ全容が紹介されていない)、なかなか「次はどうなるのかな?」という部分で想像を超えてくるので、楽しめるといったところです。
ちょっとモラル面が崩壊していますが(笑)、先が読めないスリルと共に、独特な世界観で描かれた地獄巡りを楽しめる、そんな作品かなあと思います。
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