C_ファンタジー

2017/09/29

佐藤さつき 「妖怪ギガ」 1巻 少年サンデーコミックス 小学館

 色々な時代の様々な妖怪についてオムニバス形式で描いた作品ですが、切り口は結構明確です。

 江戸時代もあれば明治時代、そして現代も含めて棲息している各種妖怪について、ちょっとコミカルに、しかしある時は少々怖い展開も含めて描かれていますが、この作品の中であえて「怖い存在」として描かれているのは、<人間>の方です。

 ある時代では妖怪と称せられるものは迫害、駆除されたり。。妖怪達は勿論、人を喰うものもいますが、「自分達の与えられた仕事(?)」を、ある意味ではとても純粋にこなしている、そういう存在として描かれています。

 そんな純粋な彼らに対して、人間は平気で裏切り、そして妖怪を退治しようとするわけですね。

 ある意味では、妖怪側の視点で全てが描かれている訳です。そこからある意味では”妖怪愛”というような評価もあるようですが、あくまで<視点>、<立ち位置>の問題のような気もします。人間の視点もある程度は入って来る部分はありますが、その<妖怪からの視点>を徹底しているところが、この作品の特徴とも言えます。

 妖怪の側の視点から描けば、どう転んでもこの作品のように<人間は酷い>という描写にはなってくるかなあと。まあそもそも根本として、「なぜ妖怪が存在するのか?」という根源までは触れてはいませんけど、別にそれが判らなくても、そこらの小動物のように存在していて構わないわけです。

 そこらの小動物の視点から描けば、やはり同じように「人間って酷い生き物」ということになっちゃうでしょうね。。ただ、まあ妖怪の方がある程度、考えることが出来るというか、知能のようなものはありますので(人間型の妖怪なんかは、人間そのものですし)、物語としてはこちらの方が色々な事ができると思います。

 ある意味、、真面目で純粋な妖怪達に対して、人間って本当に身勝手で恐ろしい存在なのかもなあ、と改めて考えさせられます。。
 

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2017/09/21

西義之 「ライカンスロープ冒険保険」 2巻 ヤングジャンプコミックス 集英社

 魔物が跋扈するファンタジー世界で、様々な活躍をする冒険者達の為に保険屋を営み、「冒険保険」を生業とする、元魔法使いと”変わり身師(ライカンスロープ:要は変身する者)”の日常を描く、そんな一風変わったファンタジー作品です。

 保険と言っても単純な生命保険や対物保険とはひと味違い、いわゆるオーソドックスなファンタジー世界の中でのシチュエーションを踏まえた、冒険者をサポートする為の”オリジナル保険”です。クエストの途中で助けを求められる救出保険や、パーティーが仲違いした際の分裂保険やら、「ああ、確かに(ゲームで)こういう時に保険があったら・・・」を実現する、痒いところに手が届く様々な保険があります。

 保険の適用調査の為には、小さな映像記録用の使い魔が使われます。保険に入った人に常に張り付き、その映像記録によって保険の適用要件かの証明が可能となるという、単にファンタジー世界に保険があったら、、、というだけではない、なかなかよく練られた設定が施されています。

 1巻あたりでは、常にドタバタなコメディータッチで(笑)、何だかどう見ても儲かってない感が漂う保険屋稼業でしたが、2巻あたりから様相が変わってきました。

 突然さらわれた主人公の救出劇では、ある意味周囲を固めていた個性的な脇役達も、ダンジョンの魔物を倒すのに大活躍。そして冒険保険自体が、”魔物達”にとっても実は気になる存在となりつつあり、主人公がなぜ保険屋なるものを始めたのか、その真意も明らかになっていきます。。

 とは言いつつ、過去の冒険仲間が訪ねてきても、彼がなぜ”冒険者”をやめてしまったのか、その理由(恐らく何らかの事件がキッカケ)については、まだまだ語られぬままです。まあ、それはこの先辺りで明らかになっていくんでしょう。

 色々な伏線がしっかりと散りばめられ、”復活”によるゲームリセットの繰り返しだけではなく、時には”死”も存在し、そしてコメディー調の楽しさも忘れずに織り込まれる、結構奥が深い作品になってきたなあと思ったりしました。
 雑誌の掲載場所は変わるようですけど、3巻が結構楽しみです(・∀・)。
  

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2017/09/14

佐々木順一郎 「オオカミの子」 1巻 ヤンマガKCスペシャル 講談社

人間と魔物が共存するとある世界で、ある日、魔王軍が蜂起して人間の町を攻めてきます。それは下っ端の魔物が半ば勝手に起こした反乱。人はそれを押し返しましたが、いつしか魔王が再び攻めてくるのではと気が気ではありません。その世界では、長いこと平和な日々を過ごしたお陰で、すでに「勇者」も居ないのです。

 けどまあ、それに負けじと魔王側も平和ボケしています。特に魔王は人間に楯突いたという知らせが青天の霹靂(へきれき)。

 いわゆる温厚派で目立たず、平和主義で通してきただけに、すわ人間が城に攻めてくるかもという状況になり、とりあえず身を隠すことにします。その身を隠した場所は、、、。

 そんな世界の中、一人の剣士がとある街に、職を探しに訪れます。

 そして、そんな街で一人の威勢のいい小さな少女と出会うわけです、、、
 子供なのに大人顔負けの毒舌な「口撃力」を駆使し、”剣士”をけちょんけちょんにしながら、「勇者」として”魔王討伐”のための旅に、無理矢理彼を雇って出発することに。。

 ちょっと世間知らずだけど、至って真面目な”剣士”と、大人達も一目置き、そして口撃力とともに”嘘”も平気で繰り出す、実はちょっと謎めいた少女のドタバタコンビの旅を描く、そんなファンタジー・コメディーです。

 弱冠ヘタレで人間界の常識はまだ十分判らない、けど常識的な判断ができて腕も立つ”剣士”と、半端ない毒舌とともに、たまにズバッと本質を言いのける、そんな大人びてるけど子供な少女の掛け合いが、どこかこういい感じの作品です。

 まあ、タイトル自体が少々謎なところはありますけど、少女が平気でつく”嘘”に掛かっているのか、あるいはまだ別に秘密があるのか、読み進む内にその謎は解かれていくんでしょう。

 始まりはちょっと殺伐としたエピソードですが、実際に戦うシーンは実はなく、旅の途中で出てくる魔物も、そんなに悪いという雰囲気もなく、どこかのほほんとした感じのノリだと思って読めばよろしいかなあと。
 

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2017/07/25

岡田卓也 「ワニ男爵」 1巻 モーニングKC 講談社

 落ち着いた紳士風の出で立ちのもの書きである「ワニ男爵」と、グルメ情報をかぎつけては彼を誘いに来る(で、費用は男爵持ち)、ちょっと調子のいい「ラビットボーイ」のコンビが綴る、グルメ探訪コメディーです。

 ワニが男爵、という辺りもあれですけど、実に紳士風に、そして大人な対応に満ちあふれていながら、、、時々なんか無意識に”野生”に戻ってしまうという、お茶目(で済むのか?)な面もあり、憎めないキャラといったところです。

 対してラビット君は、若者というか小僧というか、ワニ男爵の財布をある意味では目当てにしている部分はあり、そしてつい愚痴を言ったり、他人を貶したりと決して性格がいいとは言えません。けど男爵はまったく意に介すことなく、子供じみた行為を静かに諭し、そしてラビット君もその心の広さに感銘を受ける、といった凸凹コンビを演じています。

 人間を動物に置き換えた世界観でありながら、「食い倒れ人形」はそのまんまかい!というツッコミ所もありつつーの、動物コメディーとしてもなかなか個性的な動物が次々と登場し、ワニ男爵と絡んでいきます。

 たまに野性に還ってしまうのは置いておいて(よくまあ、他の動物を食べなくて済んでいますが(笑))、ある意味では紳士に、そして人情味に溢れた男爵の対応は、ちょっといい感じです。

 全国のご当地グルメも色々と登場し、それを美味しそうに・・・・って、ワニに表情があるんかい!という部分がありながら、それなのにメッチャ美味しそうに食べさせているところが、・・・漫画の凄いところだなあ、、と改めて思ってしまいました(笑)。

 グルメ漫画として読むよりかは、人情動物コメディーと思って読む方が正解だと思いますけど、それでも色々な要素をバランスよく、そして非常にセンスよく並べた作品だなあと思います。
  

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2017/07/12

中村朝 「僕達の魔王は普通」 1巻 ガンガンコミックスONLINE スクウェア・エニックス

 もう表紙で80%くらいネタバレしておりますが、魔王への道のりを弟に譲り(勝手に言っているだけですが)、人間の保育士の道を目指そうとしてしまう、何だかベクトルが変な方向に向いてしまった魔王候補の兄を巡るドタバタ・コメディーです。

 まあ、親の教育その他で覇道を学ばされ、皆の前では<指導者を演じる>ことにも真面目に取り組む、変な話、生真面目な魔王候補が、とあるキッカケで出会った保育園児との交流を通じて、なんだか変なスイッチが入ってしまったといったところです。

 ドタバタの原因は、このどこかネジがずれた主人公もそうですが、いわゆる次男という立場に甘えて、口では「次期魔王は俺だ!」とか言いつつ、本気で譲られたらそんな面倒なものイヤや、という弟もあり、まあその従者達もどこか抜けているというか、ベクトルがそれぞれおかしいという、パワーは半端ない筈ながら、何だかゆるゆるな魔物達。。

 とにかく何というか、生真面目で髪サラサラな兄上様の、何かというと悪に肩入れしてしまうという性格というか性質が、なかなか絶妙です。絵本の読み聞かせをするというのですけど、例えば桃太郎でここまで魔に肩入れしてアレンジしちゃうか!というくらい、それが嫌な監督役の保育士との掛け合い漫才の世界に突入してしまうというか。。

 全体的に<悪魔>といっても、怖さからは無縁でほのぼのとした展開。ある意味、何に対しても気を遣い(園児にも、そして魔物の立場にも)、無表情ながら明るく人間界に溶け込もうと努力する(もう殆ど違和感がないレベルに達してますが(笑))、そんな主人公のキャラが、この作品の雰囲気の全てを作っている感じです。

 どこか歪みつつも、こういう教育もありなんじゃない?と頷いてしまいそうな保育士修業を描く、そんなコメディー作品です。
 

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2017/06/27

井上知之 「はなまる魔法教室」 1巻 裏少年サンデーコミックス 小学館

 ある日、小学校に魔女の先生がやってきた。その先生の目的は、クラスの生徒の中から優秀な能力を持つ子をスカウトし、魔法使いにすること。そんな先生を巡って、空想好きの主人公や、色々な個性を持つクラスメイト達が、魔法先生の不思議に少しずつ触れていく、そんな物語です。

 魔法は契約すると共に、”種”が手の甲に印として現れ、数ヶ月もすれば孵化するということ。想像力のたくましい少年は、予想よりも早く効果が発揮されたわけですが、、、

 ある意味では、児童文学というか学校の課題図書に出てくるような内容という気もします。が、いわゆる「魔法使いの先生」は、かなりザックリとした性格で、魔女の国でも学生を教えていた(といっても2~3人程度の生徒)、生徒を教えた経験はある先生なわけですが、沢山の生徒のいる教室に憧れていて、授業することそのものが楽しくて仕方ない、そんな感じの明るい、、、、けれど何かしら秘密も秘めた人です。

 ジュブナイル系な作風と絵柄ですが、いがみ合いながらも冒険のようなものにも憧れる小学生らしい子供達と、小学生を教えるのは初めてながら、実に細かく生徒を観察している魔法先生。。

 魔法とはどういうものなのか、その実態はまだまだ謎だらけですが、それを少しずつ紐解きつつ、子供達と楽しく戯れ、普通の”先生”とは違う発想で考えて行動する、そんな個性的な”先生”を描いていく、そんな感じです。

 なんかこう、ちょっとしたワクワク感も感じられ、懐かしさもどこか感じる、そんな作品だなあと思います。

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2017/06/13

からあげたろう 「コーヒーカンタータ」 1巻 電撃コミックスNEXT 角川書店

 幻のコーヒーを巡って、とある街にやってきた少女のスタートを描く、「コーヒー漫画の皮を被ったガッツリSF」な作品です(笑)。 まあ、SFというかはファンタジーという設定の方が馴染み易いかもですね。

 とあるコーヒーの品種である”カンタータ”で街興しをしている地方都市に、ある”目的”の為にやってきた少女が、ある意味では偶然を重ねながら”一緒に学ぶ友人”を得ていく、というところが1巻目です(その目的地に辿り着くまでに紆余屈折がありまくりなので、まだ”入り口”のところまでしか進んでいませんが(笑))。

 基本的なコーヒーの淹れ方など、そういう”うんちく”も結構満載されています。そういう視点で見れば、グルメ漫画とも言えるかもしれません。が、そこに、「カンタータ」という、ある意味では圧倒的な味を以て君臨する”究極の珈琲豆”の存在があるわけですね。

 少女が辿り着いた喫茶店では、他の沢山の観光客向け喫茶店で出す、”カンタータ”は出さず、マスターが極普通の豆(勿論、厳選されています)を使って丁寧に淹れたコーヒーを出してくれます。ある意味では、それなりに美味しいコーヒーを入れる技術は持っていた少女ですが、同じ豆を使っている筈なのに、その味の違いに圧倒されます。。

 コーヒーって本当に難しいですよね。。

 私も一時、安物の挽いた豆で、ドリップで淹れてみた時期がありましたけど、何ヶ月かやっても、何というかマトモに同じ味で淹れることすら出来ませんでした。同じ豆なのに、毎回なんだか違う味がするんですよね(ただヘタなだけですが(爆))。

 布のネルを使うとか、それで味が変わるのはある意味当たり前としても、湯の温度や注ぎ方ひとつで、千差万別の味になってしまうのがコーヒー。。

 どちらかというと紅茶派(特にミルクティー派)な私ですが、ほんと紅茶って手順とか時間とか守れば、ある程度は誰でも同じ味に持って行けると思うんです。が、コーヒーは本当に淹れる人によって全く味が変わってしまうので、ある意味ではいつも同じ味を提供できるっていうのは、プロだなあ。。。って当たり前の話ですが(汗)、凄いなあと思う次第です。

 まだまだ1巻では入口だけなのですが、これから懇切丁寧に彼女達は、コーヒーを美味しく淹れる技術を学んでいくことになります。

 ただのコーヒーを巡るウンチクだけではなく、ヒロインを取り巻く少女達の性格の違いなど、物語としても中々楽しんで行けそうな、そんな作品です。
 

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2017/05/29

阿部洋一 「新・血潜り林檎と金魚鉢男」 全2巻 アース・スターコミックス 奉文堂

 頭が<金魚鉢>の背広の紳士が唐突に現れ、金魚鉢の中の金魚が人を襲うと、その人は<金魚>になってしまう。。

 そんな恐怖に怯える街で活躍するのが、スクール水着を着た少女、”血潜り”達で、彼女達でしか金魚男の毒を処置できない。但し、その能力を使って”潜れる”のは、襲われたばかりでまだ金魚になっていない人のみ。金魚になってしまった人々は、もう金魚のままで居るしかない。。

 スク水女子が街中を走り回ってる段階で、なんかもう小さな劇団のアングラ演劇の世界を彷彿とさせますが(・・・アングラは死語かしら?)、まさにそういう雰囲気の漂う作品です。

 敵対する同士とも言える「金魚鉢男」と「血潜り」ですが、ある意味では「血潜り」も特殊な職業。金魚鉢男が消えてしまえば、存在意義は当然消滅してしまいます。既に彼女らも”人ではない”とも言えますし、そんな葛藤を巡る戦いに、話は急展開していくことになります。

 2巻ではとうとう宿敵の「金魚鉢男」を倒すことに成功はしたものの、それによって却って最悪の事態が引き起こされ、街そのものが金魚毒に飲み込まれていきます。その状況を打開するためには、ヒロインである”林檎”の存在が不可欠となる訳ですが。。

 ストーリーや設定が突拍子ないので、なかなかストーリーの説明をするのが難しんですが、この作品自体は「文化庁メディア芸術祭漫画部門」の審査委員会推薦作品にもなっています。

 ところが電撃コミックスジャパンが2012年に休刊。 その後、2015年にコミックアーススターで復活を遂げる、という経緯がありました。電撃コミックスジャパンでの既刊本(全3巻)も再版され、5冊目にしてやっと完結を迎えることになったわけです。

 どこか夏休みの終わりのような不思議な世界観と、唐突に現れる謎の<金魚鉢男>の存在が、何とも独特な雰囲気を作り出しています。

 想像を超えた意外な”結末”を迎えた作品ですが、ある意味では”この世界観を維持しつづけた”ということでもあるのかもしれません。勿論、ここに至るまでのストーリーもなかなか面白く、ワクワクとは違うかも知れませんが楽しませてくれる作品でした。

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2017/05/23

大宮宮美 「つるぎのない」 全1巻 マッグガーデンコミックス Beat'sシリーズ マックガーデン

 「ゆるゆるファンタジー」というジャンルがあるなら、まさにそんな感じの聖剣と伝説の勇者の物語です。

 そもそも論で、”聖剣が頭に刺さってる女の子”というその設定がかなり突拍子がないわけですが(笑)、その割には記憶を無くしていて、のほほんとした性格のヒロイン。そして聖剣を抜く事ができる伝説の勇者の子孫で、7人兄姉の中では妹よりも”あらゆる才能”がない、いわゆる落ちこぼれの最弱の勇者(結構荒んでいる?)が、何の因果か旅・・・というか兄妹達の追跡を振り払って逃避行を行うことになるという、そんなお話です。

 抜けないと思っていた聖剣が、なんだか意味不明なものを付けたまま抜けてきたり、色んな伝承(例えばドラゴン伝説)が、何だか話が誇張されていたり歪んでいたりして伝わっているのが徐々に判ってきたりと、兄妹達には追われながらも、いろいろな場所でいろいろな人に出会いながら、のんびりゆるゆると”海を目指して”旅を続け、、、、

 そして最後に、全ての伏線は一気に紐解かれ、事態は急展開していくことになるわけですが。。

 正直に言えば、漫画としては、幾らかつたない感じを受けるんですが(コマ割や絵の安定度など。人のこと言える立場ではないですが(汗))、物語というかドラマ自体との構成と設定、そして展開については実に楽しめる作品だなあと。

 ある意味では勇者と魔物が存在し、ドラゴンも存在し、勇者が平和を守るというファンタジー世界なんですが、<絵本>というか<おとぎ話の世界>なんですよね。最後には”魔王”も降臨する訳ですが、そこに至るまでの伏線とストーリー展開、そしてその結末は、「小さい頃に読んだ絵本の世界」に繋がる、そんな作品になっているんですね。

 描いていけば技術なんてのは後から付いてくるものですが(・・・まあ描き続ける事はとても大変な事なんですが、それは置いておいて)、こういう物語の構成力とかセンスというのは、それとは別のものだろうなあと思います。

 オチへの賛否はあるかもしれませんが、読後感はとても良かったので、他の作品もちょっと読んでみたいなあ、と思いました。
  

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2017/05/15

板垣巴留 「BEASTARS」 3巻 少年チャンピオンコミックス 秋田書店

 肉食動物と草食動物が一緒に社会を作っている、そんなファンタジー社会において、学校での演劇部を中心とした青春群像劇、といったところです。

 「BEASTARS」とは、そんな演劇の頂点を極めた校内の称号ということになっています。

 一見、ディスニー映画の「ズートピア」などをイメージしてしまいそうですけど、肉を求める本能を抑えることに苦悩する肉食動物達と、そして肉食動物に対して本能的に怯えつつも表面上は仲良く振る舞い共同生活をする草食動物。。

 本来、相容れない動物達を一つの社会に無理矢理押し込むことにより、楽しいギャグ漫画やアニメの世界とは違って、根本的な問題が生じるわけです。その矛盾にどう無理矢理折り合いを付けていくのか、という辺り、社会の仕組みとして一応様々な<教育手法>が学校では取り入れられています。

 動物仲良し漫画(けものフレンズまで含めて(笑))に対して、この根本的な矛盾をリアルに表現したら一体どうなるのか、という試みの一つとして、雷句誠の「どうぶつの国」という作品がありました。この中では言葉を統一するという形でのカリスマの存在と(種族を超えたコミュニケーションは、言葉の壁があって取れないという前提で、全ての動物とコミュニケーションできる”人間”が数人だけ存在)、肉食動物でも食べられる作物を育てていくことで喰う喰われるという状況を解決していく、という形を取っていました。

 対して、この作品では、かなりシビアな”洗脳教育”のような教育プログラムによる封じ込めと、法治による社会秩序の構成によって、矛盾を孕みながらも一つの共同生活社会を形成しています。

 あまり人間社会などとの比較を行う事は野暮な気もしますが、どことなく現状、人間社会が抱えている矛盾を彷彿とさせるような、そんな錯覚も憶えさせられます。。

 作品としては、あくまで本気で<動物の習性>を理性と社会機構で押さえつけることで、果たして破綻なく成立していくのか、という部分をリアルに描いているような気がします(そういう意味では、人間社会を婉曲的に揶揄している、というのとは少し違いますね)。当然、そのはみ出した欲求のはけ口として、街中には<裏市>という戦後の闇市のようなものが非公式ながら存在が許容されていたりもするわけです。。

 そして定期的に草食動物を狩って食べてしまう肉食獣が、殺”人”犯として指名手配され、社会問題とされていくと。。ただ、殺して喰わないまでも、単なる殺人と置き換えてしまえば、現在社会でもある意味、日常茶飯事な光景とも言えなくもありません(野暮といいつつ、つい比較してしまう(汗))。

 全く文化も異なる、異質なものを法律と社会秩序だけで融合し、生じる矛盾や問題を解決していけるのかという、それをシンプルに肉食動物と草食動物を用い、ある意味壮大な<シミュレーション>をしているとも言えるんじゃないかなあと。。

 そんな中、演劇部で裏方をする灰色オオカミのレゴシは、様々な種類の動物の先輩、同級生などとの交流を通じて、本能との葛藤しつつ、自分が求めているのは何なのか、どうしたいのかを思い悩んでいくという、、、この部分は、まさに<青春物語>と言えばその通りなのかな、と言う気がします。 ←物語のあらすじこれだけかよっ!

 2本脚で服を着て歩いている動物社会という設定ですから、あまり動物の習性どうこうという部分は、リアリティーのある外観以外はそう気にならないんですが、”肉食”という本能を、どこで折り合いを付けて飲み込み、そして社会と折り合いを付けていくのか、、、その辺りを人間社会とも無意識にダブらせながら、考えさせられる作品です。

 

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