C_叙情系

2017/06/27

井上知之 「はなまる魔法教室」 1巻 裏少年サンデーコミックス 小学館

 ある日、小学校に魔女の先生がやってきた。その先生の目的は、クラスの生徒の中から優秀な能力を持つ子をスカウトし、魔法使いにすること。そんな先生を巡って、空想好きの主人公や、色々な個性を持つクラスメイト達が、魔法先生の不思議に少しずつ触れていく、そんな物語です。

 魔法は契約すると共に、”種”が手の甲に印として現れ、数ヶ月もすれば孵化するということ。想像力のたくましい少年は、予想よりも早く効果が発揮されたわけですが、、、

 ある意味では、児童文学というか学校の課題図書に出てくるような内容という気もします。が、いわゆる「魔法使いの先生」は、かなりザックリとした性格で、魔女の国でも学生を教えていた(といっても2~3人程度の生徒)、生徒を教えた経験はある先生なわけですが、沢山の生徒のいる教室に憧れていて、授業することそのものが楽しくて仕方ない、そんな感じの明るい、、、、けれど何かしら秘密も秘めた人です。

 ジュブナイル系な作風と絵柄ですが、いがみ合いながらも冒険のようなものにも憧れる小学生らしい子供達と、小学生を教えるのは初めてながら、実に細かく生徒を観察している魔法先生。。

 魔法とはどういうものなのか、その実態はまだまだ謎だらけですが、それを少しずつ紐解きつつ、子供達と楽しく戯れ、普通の”先生”とは違う発想で考えて行動する、そんな個性的な”先生”を描いていく、そんな感じです。

 なんかこう、ちょっとしたワクワク感も感じられ、懐かしさもどこか感じる、そんな作品だなあと思います。

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2017/06/20

山田鐘人 「ぼっち博士とロボット少女の絶望的ユートピア」 1巻 サンデーうぇぶりSSC 小学館

 隕石の衝突がキッカケとなり、病気が蔓延して人が消えてしまった都内において、1台のロボット少女と生活を続ける、コミュ症気味な博士の日常を描く、ちょっとシュールなSF作品、、、。

 であると同時に、無表情で口が悪いロボット少女が、約1ページにつき1回、必ずツッコミを入れるというギャグコメディー作品です。

 日頃は研究所のようなところで、二人でビデオなどを見たりゲームをしたり、何かしらイベントをやってみたりしながら過ごしている、そういう日常系なノリではありますが、辺りには全く人はいません。

 生存者らの僅かな痕跡を辿り、都内を徘徊することもありますが、結局、彼らとは話をすることも出来ない・・・という前に、博士が他人と話を、コミュニケーションがとれるのかという問題が(ry

 渋谷や新宿あたりで、人のいなくなった店舗に律儀にお金を置きながら、必要物資を集めつつ徘徊します。この街に人が沢山いるという状況を見たことがないロボ子は、ある意味では無表情ながら無邪気な質問をしつつ、博士にツッコミを入れながら歩いて行く。。

 生存者は極稀にいるようではありますが、ひっそりと消えていきます。

 そして博士は、災害が起きる前の自分を追想し、現状の自分が幸せなのかを考えています。元々他人とのコミュニケーションが苦手で、ひとりぼっちで何でもやってきた、そして自分の未来に必ず幸せがあると信じて、ひたすら勉強をしてきた日々。。

 孤独に慣れているが故に、ある意味ではこの状況が、実は大して苦でも何でもない博士はいま、幸せになれたのでしょうか?

 素でお約束なボケをかますぼっちな博士と、どんどん口の悪くなるロボット少女が織りなす、近未来のサバイバル(?)漫画、、、という程、なんだか過酷な状況でもないところが、この作品の面白いところかもしれません。
 
 

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2017/05/24

横山旬 「あらいぐマンといっしょ」 上巻 BEAM COMIX エンターブレイン

 愛用していたアライグマのぬいぐるみを、彼女と一緒になるために捨てようとした際、落雷にあって意識不明のまま病室で昏睡し続けていた一人のサラリーマン、、、数年後にひょんな事から目覚めてみると。。

 奇想天外&ノンストップな、ドタバタ珍道中、といったところでしょうか。

 何を書いてもネタバレになっちゃいそうなので難しいところですが、簡単に言うならば意識のない時にも病院に通い続け、実家に”痕跡”を残していった彼女を、小さな手がかりを元に探して訪ねる、そんな”旅”物語です。”

 けどまあ、旅というかは珍道中、さらに言えば”大冒険”みたいな事になっちゃってますけどね。

 そのお供は病院で出会った、ちょっと何かが足りない大声の大男。ぶっきらぼうで”足りない”ながらも、じつに実直で真面目で人を疑うことも知らない、ちょっと扱いにくい相棒と”ぬいぐるみ”が、様々な出会いやトラブルに振り回されながら、少しずつ目的の核心に迫っていくという、、そんなお話です。

 上下巻なので次で終わるんですけど、そもそも読み始めてからのぶっ飛びぶりが半端ないですね。。

 想像を超えて展開するトラブルと、やけくそな主人公の異様なまでの”順応力”でもって、まさにジェットコースターのようにお話は進んでいきます。

 ただ、途中のトラブルやドタバタや葛藤を省いてしまえば、物語はいたってシンプルで判り易い構図でもあるので、いろいろな意味で脱線と暴走を繰り返しながらも、ストーリー自体を見失うことはありません。

 まあ、<驚愕の事実>が下巻では待ってそうな気もするのですが、、、上巻だけを読んでしまうと、どんだけ奇想天外で想像を超えた事実がそこにあっても、この主人公なら<まあいいか>って(いいかげんに)順応して乗り越えてしまいそうな、そんな気もしたりします(笑)。

 そういう意味で、暴走しまくりな物語ながら、ちょっと安心して読める、ドタバタコメディーといったところですね。
 

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2017/05/18

おざわゆき 「傘寿まり子」 3巻 KCDX 講談社

 「傘寿=80歳のお祝い」というのをあまり知らなかった私です(汗)。

 主人公はそのまま、80歳でひ孫もいる、小説家のおばあちゃんです。

 旦那さんには先立たれ、息子夫婦と同居をしていたわけですが、もの凄い理不尽な話ですが(・・・けど、実際にあり得る話なのかなあ、、)、家のリフォームを家人で検討する中、主人公の部屋は作らないという強硬な嫁の自己主張(主人公の持ち家ですよ?)に嫌気がさし、家出することにした主人公。。。

 ある意味では、部屋に籠もって小説を書き続けていたために、世間知らずで過ごしてしまい、そして義理で続いていたエッセイも打ち切り目前という現実にも打ちのめされ、、、

 ともすれば、とても暗いお話になってしまいそうなんですが、そこを乗り越えられたのは、異様な程ポジティブで好奇心旺盛な80歳の性格(笑)。ネットカフェで寝泊まりしながら、若い頃に憧れた殿方と出会い、ラブロマンスが生まれたりと、、、”老人の青春”していたりします。

 ただ、楽しいことや好奇心の赴くままに行動する中、必ずそこに立ちはだかるのは「80歳」という年齢です。。

 家出をして部屋を借りようにも、保証人のない、下手すれば何時死ぬかもわからない80歳に、すんなり貸してくれる不動産屋などある筈もなく。あらゆるところで何らかの形で老人扱いという<差別>をされ、一方的な思い込みで怒鳴り散らされ、、、

 それでも彼女は、逆境を噛みしめながらも諦めず、好奇心という武器を片手に、3巻ではとうとう「ネトゲ(ネットワークゲーム)」にまで突入することになりました。すげー!

 いろいろなことを考えさせられる作品ですが、いわゆる老人を主人公とした様々な作品と少し違うところは、主人公の考えの中には「今どきの若いもんは」とか、「昔は良かった」というような、ありがちな感情が皆無であるということですね。

 ある意味では、小説書きに没頭していたが故に、社会から隔絶されていたわけではなかったんですが、意識が社会から遠ざかってしまった期間が長すぎた、、、ある意味では、若い頃から80歳にタイムスリップしたのに近い感覚なのかもしれません。

 なので、自分の身や周囲の人々に起きる出来事を、素直にストレートに捉えて感想を述べている訳です。自分は老人であるという感覚はなくとも、廻りがそう見るという現実、同年代の人々は自分とは違う考え・立場に置かれているという現実、またある意味では、若者と何の先入観もなくコミュニケーションを取れば、いろいろなことを教えて貰え、判ってくるという現実。。

 家族のあり方、老後の過ごし方、そして老人とは一体何なのか、何ができ、何ができなくなるのか。。

 気持ちは若く、ポジティブな主人公の快活さや好奇心に救われながら、様々な重い現実とともに、ある意味では自分の思いや周囲の視線で、思い込みで作られた<老人>という殻を、客観的に捉えて見せてくれる、そんな作品じゃないかなあと思ったりしました。

 また、様々な事件や出会いが次々に発生し、出会いと別れが次々と訪れるもので、ある意味ではとてもドラスティックな旅というより、御老体の<冒険活劇>とも言えるかもしれませんね(笑)。

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2017/05/12

タイム涼介 「セブンティウイザン」 2巻 BUNCH COMICS 新潮社

 夫65歳+妻70歳。どう考えてもシルバー世代の子供のいない夫婦。

 淡々と仕事をしてきた夫は何の感慨もなく定年退職の日を迎えたその夜、70歳の妻から聞かされた大事なお話とは、、 「妊娠しました」、の一言でした。

 70歳で迎える<初産>。。。

 体外受精でも不妊治療を改めてしたわけでもなく、突然の”自然妊娠”という突拍子もない現実に、この二人はどう向き合っていくのか。。そんなある意味、<ファンタジー>とも言えますが、年齢という<現実>に厳しく立ち向かわなければいけない、二人の出産・子育て物語です。

 1巻は出産編、そして2巻は育児編(首がすわるまで)を描いています。

 とにかくあらゆる事がグルグルと頭の中を巡ってしまいます。。

 いわゆる不妊治療の一環として「体外受精」なども一般的となりつつあり、40歳を超えての出産も、まだまだ例数は少ないながらも数十年前に比べれば確実に増えてきました。

 その中で色々な問題が生じてきますが、不妊治療の辛さや成功確率がまだまだ低いことは別の体験エッセイにお任せするとして、「実際に産むことになったあと」について、コメディータッチながら、本当に真剣に考えさせざるを得ない、そういう作品になっています。

 40歳で子供を運良く授かったとして、その子が成人する頃には母親は60歳です。父親は成人するまで仕事に就いていられるか、それも真剣に考えないといけないわけです。

 ましてや70歳、、、どう考えても「おばあちゃん」の歳です。義務教育を終了するまで元気でいられるか、というより変な話、いつ何時、体調を崩して倒れてもおかしくない、そんな綱渡りしていてもおかしくない年齢ですよね。

 そんな妻を支えるのは、定年退職して悠々自適な老後を妻と凄そうと考えていた、仕事一筋のごく普通の夫です。

 ある意味、定年退職後の育児という設定にしたところは、偶然なのかも知れませんけど効果的な設定になっているな、と思いました。

 定年後に孫ならまだしも、子供が出来るなんて設定は通常あり得ないですが(笑)、あり得ないからこそ<ファンタジー>であり、極端な事例を踏まえた<高齢出産後の子育てシミュレーション>になっているわけです。

 ある意味、毎日ヒマな旦那さんを子育てのアレコレに参加させることは、夫が忙しければ全て妻がやらなければいけない手続きその他が、それがどれだけ膨大な量で面倒極まりないなのか、改めて男性からの視点からも描けているんじゃないかと思うんですね。

 大抵、この繁雑な作業は妻だけが抱え込み、愚痴ってしまうだけで終わりがちですが、高齢出産後の妻をサポートせざるを得ない立場の夫に、それを経験させつつ語らせ、考えさせているわけです。

 後期高齢化社会というだけではなく、高齢出産社会というものも、ここまで極端な事例はまずないでしょうけど、ある意味、現実問題として今後、考えていかなくてはいけないでしょう。ここでは育児という両親の問題として描かれている訳ですが、成人するまで両親が健在とは限らない、子供自身の問題についても、社会としてどう援助していくか、考えていく必要があるのだろうと思います。

 改めて高齢出産と高齢育児という現実問題にどういう心構えで取り組んでいく必要があるのか、いろいろなことを考えさせられる、けど問題は抱えつつもとても幸せそうな、そんな物語です。

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2017/04/20

小山愛子 「舞子さんちのまかないさん」 1巻 少年サンデーコミックススペシャル 小学館

 京都の舞妓さんたちが共同で生活する場を「屋形」というそうです。まあそのまま合宿所ですね。

 そんな合宿所のような場所には、当然、給仕専門のおばさんも居たわけですが、急に体調を崩してしまい、仕出し弁当の毎日に。どこか味気ない弁当に飽きて、モチベーションが徐々に落ちていく舞妓さん達を救ったのは、東北から舞子見習いとして来ていた弱冠16歳の少女でした。。

 ここに至る経緯は、物語の中で、各エピソードの合間や回想シーンに伏線として上手に組み込まれ、徐々に明らかにされていきます。結構、回想の使い方も含めて工夫がされていて読みやすいなあと思いましたが、それは読んでからのお楽しみということで。

 まあ、レシピも掲載されてはいるんですが、グルメというカテゴリーとは少し違うかもですね。おばあちゃんっ子だった少女の作る御飯は、ある意味ではありきたりの「普通の」家庭料理ばかり(レパートリーは多く、ありモノでササッと作るアレンジ力もハンパなく、こよなく糠床を愛してやみませんが(違))。
 作中でも女将さんが「地元の子ではないので味付けも違うし、特に美味というわけでもない」と感想は述べていますが、それがある意味、核心でもあります。

 どの順番で作品を組み立てているかは判りませんが、「こういうシチュエーションなら、この人はどんなものを食べたいんだろう?」という、相手の気持ちや状況、そういうものを瞬時に感じ取り、時間を掛けずに食べたそうなものを”作ってあげる”。このプロセスこそが、この作品の持ち味じゃないかなあと。

 舞妓さんは朝から出勤ですが、昼も戻ってくる人もいますし、夜はバラバラに近い感じになります。そういう意味では、四六時中、朝昼晩だけではなく、まかないを作っている感じになりますね。そしておむすびも紅が付かないよう小さく作るとか、慌ただしく忙しく、時間も読めない舞妓さん達に、日々満足してもらえる食事を作り続ける。ある意味では彼女に合った役割に、すっぽりと填まったというところでしょう。

 ただし、日々、舞妓さん達のためにまかないを作り、それはそれでとても楽しそうにこなしている彼女ですが、そもそも論で彼女は”舞妓見習い”として上京してきたわけです。彼女と一緒に出てきた同郷の幼なじみは、舞妓を目指して着々と修行を積んでいるわけです。

 ある意味、忙しいながらも充実している・・・ように見える、まったく気にしていない風な彼女ですが、ある意味では線路から外れてしまった彼女が、今後どのように心の折り合いを付けていくのかなあ、、、というのが気になります(2巻以降で、その部分は描かれていく感じのようですが)。

 ごく普通の「まかない飯」を通じて、舞妓さんの生態や規則など、そういうものもしっかり紹介されていて、どちらかといえばグルメよりは、そちらがメインと言ってもいいような気もするんですね。それを”まかない飯”という切り口から、しきたりや裏事情、苦悩などの業界的な知識も含めて、上手に伏線などをうまく使いながら、ドラマとして組み上げられている、そんな作品かなあと思います。
 

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2017/04/17

ながべ 「とつくにの少女」 3巻 BLADE COMICS マックガーデン

 とある「外」の森の中で、ある異形の人物と暮らす一人の少女。その少女を巡って、人が住む「内」と、人外のモノが棲む「外」の世界の間で起きる”何か”を描いていく、そういう物語です。

 「外」の世界を「外(と)つ国」と言い、そこに住まう人々は化け物扱いされています。その「外」の住人がどのように作られるかと言えば、実はその異形の生物に触れることで、人だけではなく獣も含めて「感染」するかのように変化していきます。

 ある意味では、「感染者のなれの果て」が隔離されているのが「とつくに」と言えるのかもしれません。城壁に囲われた「内(うち)つ国」の方が、狭い感じがしますけどね。

 表紙にも登場する異形の人物は、勿論言葉も喋れます。そして少女が感染しないよう、一緒に住みながらも決して触れないよう、そしてとつくにの住人達にも触れさせないよう、ある意味では微妙な距離感で共同生活を営んでいます。

 あどけない少女は伯母を待っていますが、実際のところは捨てられたに近い状態で、主人公が引き取り、守ってきたわけですが、3巻ではその捨てたはずの伯母が現れ、兵士に守られながら少女を「内つ国」に連れ去ってしまいます。そして少女が到着した村では、、、

 1巻、2巻では半ば謎に満ちた不思議な森と、その中で何かを恐れながら、そして互いの素性も謎のままながら、少女の落ち着いたあどけなさに救われながら日々を小さな幸せを感じながら生活する、そんな2人を描いていました。

 2巻の終わり頃から、「とつくに」と「うちつくに」の、ある意味では非情な争い事が始まり、物語が3巻に向けて大きく動き、伏線や謎が徐々に明らかになりつつあります。本当の意味での少女の<秘密>は、4巻において明かされる事になりますが、不思議な世界観だけのファンタジー作品というだけではなく、複雑な人間模様が、一気に進んでいく感じですね。

 この作品、読み始めた当初から「絵本のようだな」という印象を受けていたんですが(そういう評価もチラ見しましたが)、改めて<絵>を眺めてみると、ちょっとびっくりしました。効果線など、動きを表現する線がほぼ無いんですね。いや、全くないと言ってもいいかもしれない。。

 ある意味では全て「静止画」として描かれているんですが、意識しないとそういう”効果”を使っていないことが認識できない。動作の途中の動きが、しっかりとしたデッサンで描かれているので、それで「動いている途中」と認識するんでしょうかね。。

 そして淡々とした必要最小限の会話や心理描写のト書きなどから、想像力を掻き立てられるような、そんな感じです。ある意味、絵本というメディアも、限られたページ数の中で、静止画と文字だけで情報を読者に与えるわけですが(動きのある絵もありますが、比較的静止画が多いですよね)、それに近い表現方法なので、「絵本のようだ」という印象を受けるのかもしれません。

 そういう意味では、イメージ的な作風を見て楽しむのがメインの作品かな、と思っていたんですが、2巻、3巻以降で一気に物語が動き出し、ああ、こういう表現方法でもドラマティックな展開が描けるんだなあ、、と、改めて面白い作品だなと認識した次第です。

 余談ですが、某作品でイメージ戦略に成功したからって、あんまし「人外」って単語を使わない方がいいんじゃないかなあ、と最近思う次第です。確かこの作品も、1巻の帯は「人外×少女」だった気がします。その後、なんか猫も杓子も使い始めてしまって、この単語は食傷気味かなあと。。この作品・作風は、某作品とはまた味付けが全然違う、非常に個性的な作品だと思うんですね。3巻以降は、もっと違う独特のセンスを表現するようなキャッチコピーを考えるべきだなあと思ったりもします。。
  

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2017/04/14

関口太郎 「東京のらぼう」 1巻 角川コミックス・エース 角川書店

 東京の秘境(違)、あきる野市に移住した漫画家一家(夫婦+姉+弟+妹)の田舎暮らしの日常を描いた、プチアウトドア作品です。

 東京の秘境と書きましたが、本気で秘境なのはその西隣の「檜原村」です。何が秘境って、電車(五日市線)は、あきる野市までしかありません。その先はバスのみ。そこは行けば判りますが、東京都と言われてもにわかに信じ難い、いきなり長野の山奥みたいな雰囲気の場所になっているんですね。

 あきる野市は、その檜原村の入口にあたります。北は青梅市、南は八王子市と、それなりには田舎ながら都会に挟まれた丘陵地に相当しますが、それなりには平地があるので住宅地もありながら、やはり交通の便が微妙に微妙、、、なので、東京のベッドタウンというには少し何かが足りない、そんな秘境と都会の中間点にある街だと思ったらいいんじゃないでしょうか。

 住んでるわけではないので、ちょっとうまく説明しにくいですが、、、まあ大雪が降った場合に2~3日は除雪が来なかった、と嘆いていた知人(あきる野市在住)が言っていましたので、まあそんなところです(ちなみに知人宅には、キツネやタヌキが出没するそうで、調査に使う自動撮影装置の動作テストが捗ると言っていたような)。

 脱線しましたが、そんなあきる野市の界隈であれば、ちょっと動けば動植物が豊富な小川や水田、そして林などが沢山あると思います(まあ、案外植林地も多いんですけどね。あの辺りの山は)。一応それなりに開けていながら、ちょっと脚を伸ばすだけでアウトドア&自然を満喫できる、そんな日常生活を描いているのがこの作品。

 ある意味、自然にちょっと憧れた、けど都会の生活も完全には捨てきれない(というか漫画描くのが職業ですが(笑))、そんな感じの立ち位置なので、若干自然の知識などは初心者感がありますが、そういうところから素直に自然遊びを楽しむ、というスタンスでいいんじゃないでしょうかね。

 まあ、小さい子供に自然を守らなきゃとか、そんな話をしたってつまらないと無視されるだけです。そういうのは抜きにして、いろいろ捕まえて、いろいろ見て、いろいろ遊ぶのがいいと思うんですね。そういう意味では、自然がどうこうというより、子供を育てる環境としては、とても理想的でいいなあと思ったりもします。

 ある意味では、現代の人には丁度いい距離感で、自然を楽しんでるなあと思ったりします。

 ただ一つだけ。。この作品では全然気にならなかった部分ですが、こういう作品は本の知識とかではなく、実体験を主体に描くことを念頭に入れて戴きたいなあという希望です。「とりぱん」もそういう「自分で見たこと」を主体に描いている作品なので、デフォルメされていようが知識が乏しかろうが(笑)、多少擬人化しようが、実際に見ている行動を描いているので、あまり違和感はないんですね。
 これを実際には見ていないで、図鑑の内容やちょっと検索したネットの内容、チラ見したテレビの内容を元にしていろいろと描くと、何かしら間違った描写をしてしまうことがあり、違和感を生んでしまいます。。

 そういう「漫画の中の違和感のある生物の描写」については、また改めて書こうかと思います。

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2017/04/13

あさのゆきこ 「はんなりギロリの頼子さん」 3巻 ゼノンコミックス

 京都の少し街外れの、1件のたばこ屋さんを引き継いだ、一人の目つきの悪いバツイチさんの日常を描く、そんな物語です。

 主人公は、常に口元をへの字に曲げ、声を掛けられるとギロリと凄い形相で相手を見返してしまう、なんだか人生いろいろと損をしているような”頼子さん”です。けど、その顔つきと、面倒くさくて関わり合いになりたくないような言動とは裏腹に、色々なことを通りがかった”旅人”に限らずアドバイスしてくれる、そんな(ファーストインプレッションとは違って(笑))優しいお節介さんなのです。

 初見の人は恐れおののきますが、その的確なアドバイスと心遣いに、いつしか気がつき、感謝していきます。まあ、トラブルに巻き込まれたりした頼子さんは、はた迷惑なだけな時も多々ありますが(笑)。

 ある意味、京都という土地や京都人という言葉は、ネガティブなイメージで語られる事も多いような気もします。この作品では、一時期、東京にも住んでいた(で、出戻りな)京都人の視点を通じて、京都人の嫌なところも、本音も、そしてその行動原理も、内側から描いているような、そんな感じがします。

 まあ、3巻で触れられている住んでいる場所でのヒエラルキーなんかは、ある意味では他の地域でもある「あるあるネタ」みたいな感じで、楽しく外側から拝見させていただけましたが(笑)。

 3巻では、1巻や2巻では(伏線はあるものの)あまり触れられなかった、なぜ彼女が、どういう経緯で小さな街角の昭和な香りのするたばこ屋の看板娘をしているのか、そしてバツイチとなった原因は何だったのか、など、京都という街や人を俯瞰するという1~2漢の立ち位置から、少し彼女の生い立ちに焦点を当てた謎解きが結構出てきます。

 あのぶっきらぼうに睨み付ける表情も、実は昔からというわけではなかったと。。

 京都って、、、、誰もが認める観光都市でありながら、住んでいる人達が周囲から妙に偏見で見られている、そういう場所な気がするんですが(・・・ちなみに私、京都観光ってしたことがなく、京都出身の知人も居ないのですが(爆))、京都人から見ても嫌な癖や風習にも突っ込みつつ、ちょっとした穴場の観光名所も紹介しつつ、「中」から京都を描いているなあと感じる、そんな作品です。 

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2017/04/06

柳原望 「かりん歩」 1巻 MFコミックス フラッパー メディアファクトリー

 大学を出たはいいが就職氷河期の中、連戦連敗の心を癒やす祖父の喫茶店に出入りしていたわけですが、その祖父が突然倒れ、ひょんなことから祖父が経営していた喫茶店を引き継ぐことになった、おっとりのんびりなヒロインの苦難の道(?)を描く、そんな作品です。

 メインの話は、上記の喫茶店の経営を巡るドタバタではあります。祖父が他界したあと、突然現れた(離婚したと思われていた)祖母の介入で、喫茶店経営は右往左往のドタバタ状態。

 大型飲食チェーンを切り盛りするビジネスウーマンでもある、祖母の目的は何なのか、、、、

 妹や喫茶店の常連客などの協力を得ながら、ある意味ではマイペースで、そしてスイッチが入ると勢いで行動する、そんな彼女の行く末は如何に。

 物語のあらすじはこんな所なんですが、この作品にはもう一つのテーマがあります。それは前作「高杉さん家のおべんとう(全10巻)」のテーマと同じ、「地理学」です。地理学というのは「土地・水・気候などの自然と人間生活との関係を明らかにしていく」学問です。何だか地形とか地層とかをイメージしますけど、勿論それも一つの要素。どちらかというと「自然地理学」がその分野ですね(と、検索した内容を貼り付けてみる)。

 この作品で扱っているのは、「人文地理学」(人口・集落・経済・政治・民族など)と「地誌」(地域ごとの自然・文化・産業など)など、文系に近い、いや文系そのものの内容です。この(大学在学中はぼーっとして内容を理解していなかった(爆))「地理学」を(改めて)駆使して、問題の解決の糸口を見つけていく、というのがこの作品の醍醐味になっています。

 「地理学」は「高杉さん家のおべんとう」で、かなり深いところまで扱っていたものの、あくまで主人公の専門分野ということで、それを通じた現地調査や様々なイベントは物語中でもちろん重要な位置付けではありましたが、、、、変な話、あくまで地理学ネタは「主役」ではなく「脇役」という感じでした。

 実在の事象を踏まえた推理と考察などが面白いと思う人には、結構面白いネタが沢山ちりばめられていたと思いますが(私は結構楽しんでいました)、けど変な話、そっちを深くやり過ぎると”脱線”としか言い様がないというか、、、、「そのくだりは読まなくても物語の大筋は判るので、”余計な知識”」というか、「ト書き」に近いポジションだったような気もします。。

 それに対して、「かりん歩」では、地理学は<課題発見と問題解決のためのツール>として、実戦投入されてくるわけです。

 地理学、地理学というと判りにくいんですが、要はマーケティングに近いお話なんですね。

 スーパーを新規開店する場合、立地予定地の周辺数百mを歩き回り、住宅の状況(アパートが多い、マンションが多い、戸建てが多い、乗っている車はどんなクラス等々)や住んでいる人々を調査して、スーパーに並べるべき商品を絞り込むなど、要するに品揃えの方向性を決めていくわけです。

 私たちはその結果しか見てはいませんけど、同じ系列のスーパーでも、学生の多い街、年寄りが多い街、若い家族(子連れ)が多い街では、各店舗に並んでいる商品棚の面積配分や商品のグレード、総菜類の充実度、冷凍食品の取扱量などが結構違うんですね。都内だと、かなり露骨に店毎に商品を変えているのは、例えば「オオゼキ」なんかかな、と思います。

 作中でも、こういう出店調査に近い内容を、逆に辿っていくような作業をしていきます。こう書いていくと、なんか推理小説的な感じもあって、地理学なんて学問はちんぷんかんぷんな人でも、十分過ぎるくらい楽しめるんじゃないかなあと思ったりします。

 ちなみに時間軸としては「高杉さん家のおべんとう」の登場人物が、数年後という位置づけで”ほぼ”総出演します(喫茶店の常連客つながりで)。 そういう意味では、地理学というテイストを引き継ぎつつ、その切り口を変えた作品、とも言えるかもしれません。

 前作は主人公と姪っ子の微妙な距離感を少しずつ紡いでいくような、姪っ子オーラ全開な(違)お話でしたが、本作の方が、物語としては読者層が広くて親しみやすい、、かな?(※個人的な感想です。)
 

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