タイトルからも、表紙からしてももう狙う気満々という体裁ですが(笑)、担任でもない生物教師に呼び出され、「生きものの飼育」をいきなり勧められる女子高生と、そんな彼女を<観察>する意図不明な生物教師の交流を斜め上から描く、「生きもの飼育するんだけどなんかかなり変」な作品です(笑)。
いきなり勧められるのは「ヒドラ」。ドゴラとかヘドラとかいう怪獣ではなく、クラゲやイソギンチャクと同じ仲間の淡水性の刺胞動物です。インスタントコーヒーの瓶に入れたそれに、シーモンキーを与えながら、彼女は生物飼育と観察の世界にドップリと填まっていくのです。それが罠とも(ry
※ちなみに表紙で持っているのは、同じ刺胞動物のイソギンチャク。他にも様々な「身近だけど変な生きもの」が出てきます。
まあ、狙っていると言い過ぎるのもアレですが(笑)、別に少女を飼育するという漫画では少なくともありません。ただ、、、語弊はありますけど、”少女を観察する”ということはしっかりやってます。
というより、この世間ズレ(爆)した教師が、主人公である少女のどこに、何に興味を持ち、魅力を感じたのかという部分が、生物が好きな人から見ると<とてもわかる>というか、共感を感じる部分があります(えぇえぇ。私も世間ズレした変(ry )。
生物を見て「かわいい」という感想は子供でも言いますが、ボキャブラリーや知識がないと、それ以上の発展はありません。色々な事を感じても、「かわいい」という形容でおしまい、ということも多いです(中には少ない単語を駆使して、素晴らしい感想を述べてくれる子もいますけどね)。
それが中学生以上になってくると、「どこが可愛い?」という部分を、他の事象等で形容ができるようになってきます。これは知識も含めて様々な刺激の記憶を紐解き、「○○みたい」という風に置き換えて表現するわけですね。ただ、実際には興味があまりない、深く観察しようとしない場合には、少々おざなりな「かわいい」という形容詞だけで終わってしまう事の方が多い、、、とも言えます。
こういう複雑な表現というのは、本当に好きで、そして何故そうするのかなど、色々と考えながらよーく生きものを観察してみないと、なかなか出てこないんですね。時にそういう能力を「感受性」という単語で表現する場合もありますけど、あまりに独創的な表現をしてしまうと、こんどは周りの人が引いてしまう、、、と。
なんかあまり深く考えずにただ「かわいい」としか言わない人の方が多いと思いますが(あるいは何か思っても口にしないとか?)、生物屋さんはそれでは完全に満足はできないのです(※個人の感想です)。
このヒロインは、狙ってちょっと斜めな表現をする事が多いですが(笑)、実に巧みに自分が見た現象について、「○○みたい」と、するっと素直に独創的な表現をするんですね。狙っているとはいえ、生物以外の色々なジャンルの単語が飛び交いながらも、ある意味で「はっ」とさせられる表現が散りばめられています。そこがとても面白いんですね。
随所にある友人や先輩との「言葉遊び(略しまくり)」も絶妙ですが、生物の魅力もあまり強く主張せずにベースとしてしっかり構成されていながら、生物の知識がない人にも楽しめるよう丁寧に解説がされ、そして多くの謎(主に謎教師)を秘めながら物語が構成されています。色々な意味で、なかなかの意欲作ではないかなあ、と思ったりします。
何かどこかで聞いた名前だなと思ったら、「ハケンの麻生さん」の方じゃあないですか。なる程、生物の飼育等に関する描写や”生物愛”が深いわけだと思ったりしました。
未完となっている「ハケンの麻生さん」も、この作品で勢いをつけてちゃんと続きを描いてもらえるといいなあ、と思ったりしました。。