C_自然・動植物

2018/04/27

これかわかずとも 「東京カリニク鉄砲隊」全1巻 Kadokawa comics A 角川書店

 地方では猟師さんが減ってしまい、有害鳥獣駆除も引き受け手がなく困っているという地域もあったりしますが、若い猟師=ハンターさんもそれなりには育っているとも言えます。

 この作品は、そういう銃猟の入口に立った作者の体験に基づく、誇張のない素の<狩猟の今?を描いている作品じゃないかな、と思います。といって、色々と考えさせられるとか、そんなことではなく、要するに「地に足が付いた狩猟の世界」ってとこですね。

 まず狩猟の目的が「食べる為」という点が明確です。勿論、銃を撃つ、獲物を倒すといったところに重点を置いてやっている人もいて、ゲーム性も勿論楽しんではいるもと思います。

 が、多くの人は 「自分で捉えた獲物を食べたい」、そして「(きちんと処理したら)ジビエは旨い!!」ってところが主目的であろうと思います。そこに至るまで、数々の<面倒臭い手続き(免許の取得から各種申請から、そして高い銃器の購入、さらに高い保管庫の購入整備等等)>を経るわけですが、時間も含めて全ては「美味しいジビエ」に対する投資であるわけです。

 そういうハンティングの実際を、自分の経験を元に描いていくわけですが、この中でも実は「奥さん」のポジションが、結構重要な位置を占めていたりします(笑)。
 ※表紙に描かれているのは、奥さんとは全然関係のない狩猟仲間のお一人。

 奥さんは当然、狩猟自体はせず、家で獲物を待つ立場ですが、コスト意識が高く、様々な機器の購入に大して、厳しく「コストに見合う」かどうかを査定してくれるわけです(笑)。皮を剥がすための専用ナイフの使いやすさに感動し、購入のためのプレゼンをするも、初っぱなはあえなく玉砕したり、けど諦めずに様々な試行錯誤を繰り返すという、なんとゆーか駆け引き(というか家庭内の力関係(笑))が、妙にリアルなんですね。そして思い込んだら突き進む作者と、冷静に成果(要するにジビエの肉)とを天秤に掛ける奥さんの駆け引きが繰り広げられると。

 またそれとは別に、目の前に獲物が飛び出てきた時の一瞬の判断も、非常に緊迫感とリアリティーがあって良いです。車両の通行も多い道路を挟んで斜面に現れたホンドジカを見つけた一瞬、人への危険も鑑みて、どの時点で狙い引き金を引くべきか、、、、。

 これが戦争なりバイオレンスアクションなりであれば、敵か味方かの判断以外は、先に引き金を引いたものが勝ち、という単純な世界ですが、実際の銃猟の世界では、銃を向けていい方向、角度、そして距離などがあり、見つければ遅滞なく撃てばいいという世界ではない訳です。それを一瞬のうちに判断しなければいけない、というのが、、、ある意味そこも面白いところなんでしょうね。まあ、そのお陰で滅多に獲物を射止めることも出来ない世界ですが(笑)。

 そして狩った獲物は素早く丁寧に血抜きして解体し、仲間同士で分けるという、実際の狩猟におけるコミュニティーの重要性についても、きちんと描かれています。映画みたいに一人でじっと獲物を待つ、というのはフィクションとは言いませんが、現実として日本で普通に狩猟をしている人達のリアルではないわけです。

 このコミュニティー自体、非狩猟期には有害鳥獣駆除などを請け負う窓口にもなっているので、狩猟期以外にも銃猟はされているという実態も、ある意味では丁寧に描かれていると言えます。

 ただ、これはサンデー狩猟者というか、それなりにハンター人口もある関東地方周辺だから、この人数のコミュニティーが成立しているとも言えるんでしょうね、、、
 地方に行けば、こんな猟自体が行えないほど、狩猟人口は激減していると思います。実際のところ、ホームグラウンドを離れて地方に狩猟に行く、というのも、手続きも色々あって面倒だろうとは思いますから、なかなか手伝いに地方に行く、というのも限度があるのだろうなと。。

 ただ、色々な意味でけものも増えすぎ、シカやイノシシなど、ある程度はコントロールが必要な状況が現実としてあります。単に撃ち殺してしまうゲームハンティングではなく、「それを美味しくいただく」という、こういう狩猟は受け継がれていくべきだろうなあ、と思ったりします。

 まあ、狩猟漫画もなんだか色々と随分増えてきましたけど、ノンフィクションに近いながらも上手にストーリーを作ってあり、そして妙なリアリティ(笑)もあるこの作品は、最初にも書きましたが、「地に足が付いているなあ」と思ったりしました(※個人の感想です)。

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2018/04/16

小坂泰之 「放課後ていぼう日誌」 2巻 ヤングチャンピオン烈コミックス 秋田書店

 海辺のとある高校に転校してきたばかりの手芸大好き女子高生が、何の因果か釣りや磯遊びを楽しむ「ていぼう部」に巻き込まれ(?)、苦手だった生きものたちと戯れる日々に投げ込まれ、、、、そんな阿鼻叫喚な状況から、徐々に楽しみを見いだしていく、そんな作品です。

 まったくの釣り素人、いやそういう事をやろうなどと一度も考えたこともなかった少女が、個性的で半ば強引な「ていぼう部」の面々に騙され(違)、けどやってみたら、結構奥が深くて徐々に填まっていく(堕ちていく、、とも言う)、そんなシチュエーションを楽しむ作品です。

 釣りは私は多分、不得手な方です。全く嫌いではなく、幼少の頃は田舎で叔父に釣りに行かされまくりましたが(川釣り、磯釣り、船釣りからアユの友釣りまで経験させてもらいました)、仕掛けから何から叔父任せで、自分で工夫しようとか憶えようとか、そういう気分にならなかったんですね。行けば楽しいし、釣れれば面白かったので、嫌いではないものの、何かのめり込めなかったというところでしょうか。

 なので、釣り漫画をあれこれ批評なんぞ出来る立場ではありませんが、この作品の場合は、主人公の立ち位置が私に近いというか、、、けど2巻辺りからは積極的に動き始めたりもするので、私より前向きカモですが(汗)、そういう「初めてやる人が、どういう風に楽しみを見いだしていくか(そして泥沼に填まるか(違))、そういう視点でよく描けているなあと思います。

 釣りを教えてくれる人にも色々あって、私の叔父などは、仕掛けとかに私が興味を示さなければ、何も教えずにさささっと竿と仕掛けを準備して、ほいっと渡してくれるだけでした。
 無理強いもしないし道具も全部用意してくれるので、あとは餌付けて釣って、釣れたら外してまた餌付けて(それは自力で一通り出来ます)、というのの繰り返し。小学生くらいでしたから、そうなるのも仕方ないし、釣れた時には楽しいものの、釣れるまでの準備の楽しさとか、仕掛けの理屈だとか、そういう部分を完全に端折ってしまっていたから、興味がそれ以上伸びなかったのかもなあ、と思いました。

 素人が釣りに填まっていくという漫画は、実はそういう意味で興味があって、ちょくちょく読んでいたりします。だいたいは、何かのきっかけに釣りに填まっていく人を描いている訳ですが。。。

 その中でこの作品、ここまで「釣りとは無縁で興味のかけらもない」人間を(笑)、どのような手順やイベント、その他の言葉や行動でだんだん洗脳していくのかという辺り(こらこら)、なんか鉄壁の城壁をいかに攻略するかみたいに置き換えてみると、なかなか面白いなあと思うんです。

 この作品は、特にその<攻略>の仕方がよく描けているなあと思いました。勿論、キャラの個性や設定も絶妙だからこその面白さですけど。

 それと、いきなり大物を釣るとかのダイナミックな楽しさではなく、2巻になって、やっと小アジを初めて釣ったことに歓喜するという、本当に地に足の付いた、現実的な小さいながらも大事な”楽しさ”を描いているな、と思ったりもします。

 子供相手に、生きものの観察会みたいなこともやっているので、そこでも参考になるかもなあ、と思いながら読ませていただいております。。

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2018/04/13

佐藤宏海 「いそあそび」 1巻 アフタヌーンKC 講談社

 コンビニもゲーセンも何もない、海辺の片田舎のとある街の片隅の、さらに旧道の脇の空き家に、突如<お嬢様(元)>が襲来。都会から急にど田舎にやってきて、ちょっと通常では考えられない四苦八苦(?)をしている彼女と、偶然にも出会ってしまった生きもの好きな少年との交流を描いた、生きものサバイバル系(?)物語です。

 作品自体のコンセプトもさることながら、キャラ設定が絶妙だなあと思いました。
 父親の事業失敗で、ある意味では裕福な生活からどん底の”自給自足生活”に、日本の片隅で突入した少女(中学生)ですが、田舎の海辺の自然としての当たり前が、当然ながら一人では何一つ解決できないと。
 そこに身近な自然が「あって当たり前」な上に、ちょっと生物の知識も他の子より持っている少年が、「何が食べられるか」から彼女に指南していくことになると。

 と言っても、普通であればそんな”サバイバル”な生活なんて、田舎でもしないわけです。
 けど、どん底に転落しても、人に頼らず借りも出来るだけ作りたくないという、生活力は別としてかなりしっかりとした考え方の少女と、いろいろ知ってはいたけど、それを”生きるため”に活かそうとは考えたこともなかった少年が、何とか手伝ってあげたいと右往左往するという辺りで、それぞれが「ないもの」を補完しあっているなあ、という感じがするんですね。

 作者自身、この少年のように「自分が置かれていた環境の価値」に、言われるまで気がつかなかったくらい、ドップリと田舎の自然を知らずに浴びていた訳で、その価値に気付かせてくれたのが、少女のような「それを価値と認めてくれる」人々、つまりは編集者さんだった訳ですね。

 全く違う価値観を持つ人が出会うことで、いろいろな気づきが産まれる、、、まあ勿論、ぶつかり合って理解が出来ないという悲劇も起きることはありますけど、この作品では、良い方向で「田舎の自然の良さ」に、住んでいた人達が気付かされていく、といったところでしょうか。

 まあベースが実体験と、田舎の魅力に気付いていなかった(・・・もしかしたら、まだ半信半疑かもしれませんが)御本人の価値感なので、作品の流れや生物の描写については何の違和感もなく楽しめます。それ以上に「食べる」という部分にある程度特化しつつ、いわゆる(多少流行の)狩猟系漫画とはまた少し違う、もっと地に足が付いたような流れと共に、どこか青春系の雰囲気もあるのがいいなあ、と思ったり。

 タイトルは「いそあそび」ですけど、遊びというよりは、住んでいる場所のとなりに普通にある、凄い自然というわけでもないけど、いろんな意味で豊かな”田舎の自然”を楽しく満喫できる、そんな作品かなあと。
 

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2018/04/09

イシイ渡 「水族カンパニー!」 2巻 ビッグコミックス 小学館

 とある水族館に入社した新人トレーナーと、そこに新人として同じく入ることとなった、”変態(?)”獣医師との、文字通り「日々の戦い(いろんな意味で)」を描いた、水族館コメディー作品です。

 水族館の飼育の裏側にポイントを置いていますので、舞台裏での動物の様子や関わり方(つきあい方)、そしてトラブルへの対処方法など、そういう部分に焦点が当てられています。

 その中でも特に”海獣(海棲哺乳類)”に焦点を絞っています(まあペンギンは哺乳類ではなく鳥類ですけど)。イルカにラッコ、オットセイなどなど、実際に飼育しているものだけではなく、野外で衰弱個体が見つかった場合なども扱っています。

 まあ、防水の上下スーツで身を固め、ほぼ”変態”だけどそこそこ優秀で、仕事にクールで冷淡な獣医さんに翻弄されたり、経験者から教わる様々なノウハウや試行錯誤、そして失敗談などなど、水族館で飼育を担当している人達への取材の成果がなかなか出ていて、さらに大型獣に特化しているという軸足は、悪くない感じがします。

 ちなみに、、、<完全に> 余談ですけど、2巻で出てくるキタオットセイのエピソードで、「絶滅危惧種だから手を出せない」というくだりがあります。
 ここだけ微妙に引っかかったのと、私もよく知らなかったので調べてみました。

 「絶滅危惧種」というと大雑把な言い方なんですが、大抵の場合は環境省や県などが出している「レッドデータブック(レッドデータリスト)」(略称はRDBまたはRL)に使われる呼称です。が、これには法的な縛りは全くありません(別途、条例などで保護動物などに指定していない限り)。「量的・質的に絶滅のおそれがあるかどうかのランク付けした」という意味しかないのです(とはいえ、環境省のRDBは、次に出てくる法律の種の指定における根拠として、活用されていますが)。

 法的な縛りがあるのは、通称「種の保存法」と呼ばれるもので、ここでは「国内希少野生動植物種」や、ワシントン条約掲載種に相当する「国際希少野生動植物種」などとなっています。けど、この管轄省庁は環境省ですから、本作品で語られているように水産庁(農林水産省)の許可云々とは違う話です。
 (通称:鳥獣保護管理法は、主旨がかなり異なる法律なので、ここでは割愛)

 じゃあ水産庁が管轄する法律って?というと、「臘虎膃肭獣猟獲取締法」。漢字で書くと意味不明ですが、「臘虎=らっこ」「膃肭獣=おっとせい」のことで、ラッコ・オットセイの捕獲及び毛皮製品の製造・販売について農林水産大臣が制限し、違反した場合の罰則などを定めた法律で、明治時代に国際条約に則って骨子が作られましたが(条約自体は1941年に失効)、形を変えて現在も有効な法律だそうです。

 なのでキタオットセイに限らず、オットセイやラッコは何でも水産庁の許可がないと保護も出来ない、触れない、という事態が実際に発生していて、時に浜辺に打ち上げられた衰弱個体を巡って大騒ぎになることも。それを具体的にエピソードとして取り上げたのですね。

 ただ、「絶滅危惧種だから・・・」という表現は、なんか適切じゃないなあと思うんです(一般の人には、その方が判り易いかもしれないんですが、誤解も生むなあと)。
 「法律で保護されているから・・・」と書くのが正解じゃないかなあと。細かい部分は置いておいて、この法律がキタオットセイに限らず有効とされているということは、コラム頁でも触れてもいいくらいかな、と思ったりしました。

 まあ、また細かな話をしてしまいましたが(汗)、色々な問題に触れて広めてくれることは、ある意味では啓蒙にもなって有り難いなあと思ったりします。

 作品自体は、上記のような堅苦しい法律論は書いておりませんので(汗)、普通に動物・水族館コメディーとして楽しめる内容です。ご堪能あれ。

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2018/04/06

みよしふるまち/縞田理理 「台所のドラゴン」 1巻 ジーンピクシブシリーズ KADOKAWA

 東欧「風」なとある国に留学した自然や動植物が好きな画家志望の女性が、とあるきっかけで部屋の中で見つけた卵から、トカゲとも何ともよく解らない動物が孵化してきます。  いつしか、種類も判らないその生きものと、東欧の「ドラゴ(いわゆるドラゴン)」伝説が重なっていき。。。

 偶然出会った生きもの(どう見てもドラ(ry )と一緒に、遠い東欧の片田舎の小さな小屋で一人暮らしをする少女(見た目)が、絵画学校に通いながら、狭い小屋(寝室も台所も一部屋)で日々を過ごす、そういう作品です。

 ”ドラゴン”がメインと言えばメインなのですけど、あくまで「急に現れた同居人」。ペットといえばそうなんですが、彼女にとっては先輩として部屋に棲み着いているヤモリと同等扱い。「一緒に住む隣人」といった雰囲気な気がします。ストーリーのメインはあくまで、日本を飛び出し、知人も最小限しかいない東欧のどこかの国で、自分が何をしたいのだろうという部分を探し、小さく悩みながら、「一緒に住む隣人」に癒やされる(時に振り回されますが(笑))といったところ。

 ざっくり言えば、若い女性の絵画を通じた自立への歩みと、その生活をちょっと潤してくれる、小さな”隣人”との交流を描く作品、と言った方がいいんでしょうかね。。

 原作では主人公はもう少し”年上”なのだそうで、コミックスにするに当たって、原作者も交えて年齢設定は下げたそうですけど(見た目が”小さい”のはまた別な気がしますが(笑))、どこか落ち着いて大人びた雰囲気を醸し出しているのは、その原作の雰囲気が残っているのかもしれません。

 とりあえずまあ、ドラゴンの漫画というよりは、東欧の田舎で自立を目指すレディー+可愛い動物+ファンタジー要素がほんのり、と言った塩梅の作品だと思ったらよろしいかと。
  

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2018/03/23

泉一聞 「テンジュの国」 1巻 KCデラックス 講談社

 チベット地方の小村で、主に薬草などを使った医者見習いの青年のところに、別の集落から親に背負われ、花嫁候補がやってくる。。

 アジアの山村の生活や、集落ごとに違う風習などをを紹介しつつ、親が決めた結婚とは言え、若い二人が少しずつ心の距離を縮めていく、そんな物語です。

 基本、主人公が薬草バカでのんびりした性格なところに、慎ましくおしとやかな少女がやってくる、ということで、住み込みとなった少女との間で、ギクシャクしながらも少しずつ親好を深めていく、そんな雰囲気ののんびりとしたアジアンチックなお話です。

 この系統の作品としては「乙嫁語り」がありますが、あちらは中央アジアからカスピ海までの範囲で、遊牧民的な部分が強いですね。チベットの方は放牧もしていますが、山岳地帯ということで、いわゆる山岳民族的な雰囲気があり、似ているところもありますけど、また少し違った味付けです。

 まあ、村の数だけ民族があるみたいな感じで、本当に小さな人々の集まりが独特の文化をそれぞれ育み、それでいて遠い地域の他民族との交流も盛んという、ネパールからチベットにかけては、国という単位とはまた違う世界観ですよね。

 南へ行けば印度という、これまた数百の民族がひしめき合うカオスな世界ですが(笑)、そちらは伊藤勢さんにお任せするとして(違)、とりあえずどこかのんびりとした(村の生活がのんびりというよりは、主人公がのんびりし過ぎ(笑))、そんなアジアンな雰囲気を楽しめます。

 次巻はちょっと”すれ違い”もあるような予告になっていますけど(知らない人を助けるかどうかというのは、単なる道徳的な問題だけではなく、集落への危機が及ぶかどうかという結構シビアな問題・・・?)、まあこの2人なら乗り越えられるでしょうかね。
 

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2018/03/14

草野ほうき/三島千廣 「シロクマ転生 森の守護神になったぞ伝説」 1巻 メディアファクトリー KADOKAWA

 物語自体は、アウトドア生活に精通した人間が、なぜか異世界のシロクマに転生し、野外生活などしたこともないお嬢様育ちの少女達をサバイバル技術で助ける、といった作品です。

 最初に断っておきますが、、、転生ものネタは少々食傷気味ながらも、作品のストーリー自体は面白い作品だなと思います。絵柄も可愛いですし。けど、ここからは少し辛辣なコメントになる事は御容赦下さい(マイナスな内容はあまり書きたくないんですが、こういう作品を描く上で、絵描きさんにもう少し大事なところを認識して欲しいと思ったりするので)。

 野外生活素人に対して、サバイバル術を教えるということで、動物を捕まえて解体したり、家を作るために木を倒したりといった描写が出てきます。そこの描写・・・なんですよね。。

 捉えた動物の解体。いきなり皮を剥ぎ始めるシーンからですが、、、、「血抜きは?」

 動物はどんなものでも「血抜き」をしなければ、マトモに美味しく食べる事は出来ません。それをせずに狩猟した動物を不味い状態で調理して「不味い」と誤解しているハンターもいるようです。「血抜き」はとにかく大事で、血抜きをすることを前提として、ベテランの猟師はシカなどの獲物を、尾根など水がない場所では撃たず、沢沿いに追い詰めて初めてそこで撃ち、できるだけ早く沢まで獲物を運んで首を切り、沢水に晒しながら血抜きをするそうです。そこまで迅速には出来ずとも、「血抜き」を出来るだけ速やかにすることは、狩猟した動物を美味しくいただく上ではとても大事なことです。

 皮剥などの描写はまあまあ描けているのに、一番大事なところが端折られているのが、”サバイバル術”を駆使して異世界の住人を守る、という設定の漫画としてはどうなんだろう。。。と思ってしまうわけです。

 まあここは「主人公が過去の経験が少なく、見よう見まねでやっただけで、本当の動物の解体方法は知らないアマチュアさん」という言い訳も成立しますので、私が気にしすぎで言い過ぎなのかもしれません。

 けどですね。。家を作るための樹を伐採するシーン。これはちょっとなあと。。

 斧で木を切り倒すシーン。綺麗に丸い切り株が、背景に並びますが・・・。これ斧ではこうならんのですよ。
 20cm未満の樹をチェーンソーで真横に切れば、まあこういう切り口になるでしょう。
 けど山で木を切り出している人なら、チェーンソーでもこうは切らないんです。

 ①まず斜面であれば、斜面の下側の幹に斧を入れ、くさび形に切り取る(半分まではいかない、幹の1/3くらいまで)
 ②次に丁度反対側の少し上辺りに、斧を入れていく(くさび形にこれも切っていきます)。
 ③ある程度まで行くと、樹は斜面の下方向にギギギっという感じで倒れていきます(たおれるぞー、というのはこの時点ですね)。

 最初の切り込みは、倒したい方向に付けます(木が倒れる方向に別の樹があれば、地面まで倒れずに引っかかってしまうので、倒す方向は慎重に選び、反対側からの切り込みを入れる際にも、倒す方向を意識しながら調整する)。
 チェーンソーで大きな樹を切る際にも、普通は倒す方向にまずくさび形に切れ込みを入れるように切り、それから反対側から切っていき、倒したい方向に倒していきます。基本は同じということです(細い木であれば、切り込みを入れずに倒したい方の反対側から切って時短することはありますけど)。

 このようにして斧で切った木の切り株、バームクーヘンみたいに綺麗な輪になっているでしょうかね?
 斧ではどうやったって、いわゆる絵本に出てくるような綺麗に平面な切り株の形にはならないんです。

 もっとデフォルメされた絵柄であるとか、木を切るシーンが特に重要ではないなら、こんな省略絵柄でも構わないと思うんですが、仮にも「サバイバル術を駆使して・・・」という部分をウリにしている作品なんですよね。

 狩猟(獲物の捌き方)にしても、樹の切り方にしても、専門書とまでは言わずとも入門書的なものでもある程度は網羅されています(ジビエの本とか、ブッシュクラフトの入門本など)。これから”ロープ結び”も出てくると思うんですが、そこで間違った結びを使っていたり(何か工作物を作るなら、巻き結びにねじ結び、角しばりや筋交いしばり、他にも色々な結索法が必要になります)、変な結び目を描いていたら、また幻滅してしまいます。。

 こんな事が気になる人はあまりいないとは思うんですが、やはりこういう部分は描く前にどれだけきちんと調べたかが如実にあらわれてしまいます (作者だけではなく、編集者も含めて)。今からでも幾つか書籍を購入して読まれた方が、リアリティーが出てくると思います。。

 余計な事かもしれませんが、知っている人が見れば「ああ、何も知らないで描いているんだ」と思われちゃうだけですので。。
  

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2018/02/14

椙下聖海 「マグメル深海水族館」 1巻 BUNCH COMICS 新潮社

 深海の生物を紹介し、そして水中展望所でもそれが見られる、そんな近未来の深海専門水族館の舞台裏を描く、空想科学物語です。

 まずひとつ目に、近未来=SFという形を取ってはいますが、扱っている深海生物については実在するものであり、また生態や飼育方法上の問題点なども、概ね最新の知見が生かされている感じがします(ここは細かく見てませんけど)。

 その上で、そういう深海生物を誘き寄せられれば、水族館というかは水中展望台でもある、この施設の目玉になるだろうという、そういう設定ものと、空想科学作品として描かれているのが本作といったところでしょうか。

 水族館を扱った漫画というのも、こうしてみると沢山あります。その多くは「飼育員」と、扱う生物の生態や飼育する上での苦労などのエピソードで構成されています。

 この作品も「空想科学」と言いながらも、そういう文法に倣って構成されていますが、「人がまだ多くを知らない深海世界」へのロマンと共に、そして生きものを扱うという現実についても、しっかりと描かれています。

 現在ある水族館も、様々な展示の工夫や飼育する上でのノウハウで楽しめます。そして深海生物を扱い、展示している水族館も結構あります。恐らくそういう場所でのノウハウなどについても、この作品では取材したり調べるなどして活かしていると思います。

 そういう意味で、生物好きな人でも楽しめ、そうでない人にも「生きものを見せる施設とは何か」について、とあるアルバイト(1巻では)の視線を通じて、結構根本的なところから描いている、そういう作品でもあったりするんですね。

 SF(空想科学)という衣を羽織りながら、動物園や水族館など、生きものを展示する施設の存在意義と、そこで働くためのモチベーション、そしてその施設の可能性について描いているような、そんな感じがするんですね。

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2018/01/31

緑山のぶひろ 「罠ガール」 1巻 電撃コミックスNEXT KADOKAWA

 釣りを筆頭に、様々な動物を捕らえる漫画は、ここんとこ色々と出ていますが、とうとう「わな猟」の漫画が出現してしまいましたっ(驚愕)。

 というより、この作品の場合、わな猟についてのマイナーで知る人の少ない(汗)知識を、一人の女子高生の「わな猟」を通じて上手に解説し、そして地味だけど半端なく奥が深いその魅力を、上手に描いているなと思ったりしました。

 まずもってして、銃猟は免許が必要と殆どの人が知っていると思いますが、わな猟って免許が要ることからして知らない人が多いと思うんですね。実はきちんと要るんです(勿論、罠の種類によります。法定猟法以外は自由猟法といって対象になりませんが)。

 よく害獣駆除にも用いられる、イノシシ、シカなどのくくり罠などの設置には、免許も要りますし行政手続きも要ります。そういう部分も作中で少しずつ、きちんとした解説が加えられており、農作物被害防止のために捕獲するという設定の中、地域の猟師さん達との交流も含め、ある意味では「ハンティング・ライフ」について、結構丁寧に描かれているなあという感じがしました。

 私は免許を持っていないので、描かれている事が全て正しいかどうかという部分は断言はできませんが、作者本人も田舎暮らしで農家ということのようなので、実際に狩猟をしている人に聞きながら描かれているだろうという部分も、地域の人達との交流を描く中~滲み出ている感じがします。

 まあ、うちの周辺には野生動物は居ないので、わな猟をすることは難しいんですけど、ある意味では生活を賭けた農作物被害との戦い、そして動物との文字通り”命を駆けた”かけ引きと騙し合いの世界が、リアルで丁寧に描かれている、そんな感じがします。

 農家の人達にとっては、害獣との日々の生活上の戦いはリアルな問題です。野生動物に罪はないと言っても、現実的には始まらないお話。ある程度間引くことも必要悪ですし、それを上手に処理して美味しくいただく、というのが、いまできうる最善策なのだろうなあ、と思ったりする昨今です。

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2018/01/26

仲川麻子 「飼育少女」 1巻 モーニングKC 講談社

 タイトルからも、表紙からしてももう狙う気満々という体裁ですが(笑)、担任でもない生物教師に呼び出され、「生きものの飼育」をいきなり勧められる女子高生と、そんな彼女を<観察>する意図不明な生物教師の交流を斜め上から描く、「生きもの飼育するんだけどなんかかなり変」な作品です(笑)。

 いきなり勧められるのは「ヒドラ」。ドゴラとかヘドラとかいう怪獣ではなく、クラゲやイソギンチャクと同じ仲間の淡水性の刺胞動物です。インスタントコーヒーの瓶に入れたそれに、シーモンキーを与えながら、彼女は生物飼育と観察の世界にドップリと填まっていくのです。それが罠とも(ry

 ※ちなみに表紙で持っているのは、同じ刺胞動物のイソギンチャク。他にも様々な「身近だけど変な生きもの」が出てきます。

 まあ、狙っていると言い過ぎるのもアレですが(笑)、別に少女を飼育するという漫画では少なくともありません。ただ、、、語弊はありますけど、”少女を観察する”ということはしっかりやってます。

 というより、この世間ズレ(爆)した教師が、主人公である少女のどこに、何に興味を持ち、魅力を感じたのかという部分が、生物が好きな人から見ると<とてもわかる>というか、共感を感じる部分があります(えぇえぇ。私も世間ズレした変(ry )。

 生物を見て「かわいい」という感想は子供でも言いますが、ボキャブラリーや知識がないと、それ以上の発展はありません。色々な事を感じても、「かわいい」という形容でおしまい、ということも多いです(中には少ない単語を駆使して、素晴らしい感想を述べてくれる子もいますけどね)。

 それが中学生以上になってくると、「どこが可愛い?」という部分を、他の事象等で形容ができるようになってきます。これは知識も含めて様々な刺激の記憶を紐解き、「○○みたい」という風に置き換えて表現するわけですね。ただ、実際には興味があまりない、深く観察しようとしない場合には、少々おざなりな「かわいい」という形容詞だけで終わってしまう事の方が多い、、、とも言えます。

 こういう複雑な表現というのは、本当に好きで、そして何故そうするのかなど、色々と考えながらよーく生きものを観察してみないと、なかなか出てこないんですね。時にそういう能力を「感受性」という単語で表現する場合もありますけど、あまりに独創的な表現をしてしまうと、こんどは周りの人が引いてしまう、、、と。

 なんかあまり深く考えずにただ「かわいい」としか言わない人の方が多いと思いますが(あるいは何か思っても口にしないとか?)、生物屋さんはそれでは完全に満足はできないのです(※個人の感想です)。

 このヒロインは、狙ってちょっと斜めな表現をする事が多いですが(笑)、実に巧みに自分が見た現象について、「○○みたい」と、するっと素直に独創的な表現をするんですね。狙っているとはいえ、生物以外の色々なジャンルの単語が飛び交いながらも、ある意味で「はっ」とさせられる表現が散りばめられています。そこがとても面白いんですね。

 随所にある友人や先輩との「言葉遊び(略しまくり)」も絶妙ですが、生物の魅力もあまり強く主張せずにベースとしてしっかり構成されていながら、生物の知識がない人にも楽しめるよう丁寧に解説がされ、そして多くの謎(主に謎教師)を秘めながら物語が構成されています。色々な意味で、なかなかの意欲作ではないかなあ、と思ったりします。

 何かどこかで聞いた名前だなと思ったら、「ハケンの麻生さん」の方じゃあないですか。なる程、生物の飼育等に関する描写や”生物愛”が深いわけだと思ったりしました。

 未完となっている「ハケンの麻生さん」も、この作品で勢いをつけてちゃんと続きを描いてもらえるといいなあ、と思ったりしました。。
 

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