C_サバイバル

2018/03/14

草野ほうき/三島千廣 「シロクマ転生 森の守護神になったぞ伝説」 1巻 メディアファクトリー KADOKAWA

 物語自体は、アウトドア生活に精通した人間が、なぜか異世界のシロクマに転生し、野外生活などしたこともないお嬢様育ちの少女達をサバイバル技術で助ける、といった作品です。

 最初に断っておきますが、、、転生ものネタは少々食傷気味ながらも、作品のストーリー自体は面白い作品だなと思います。絵柄も可愛いですし。けど、ここからは少し辛辣なコメントになる事は御容赦下さい(マイナスな内容はあまり書きたくないんですが、こういう作品を描く上で、絵描きさんにもう少し大事なところを認識して欲しいと思ったりするので)。

 野外生活素人に対して、サバイバル術を教えるということで、動物を捕まえて解体したり、家を作るために木を倒したりといった描写が出てきます。そこの描写・・・なんですよね。。

 捉えた動物の解体。いきなり皮を剥ぎ始めるシーンからですが、、、、「血抜きは?」

 動物はどんなものでも「血抜き」をしなければ、マトモに美味しく食べる事は出来ません。それをせずに狩猟した動物を不味い状態で調理して「不味い」と誤解しているハンターもいるようです。「血抜き」はとにかく大事で、血抜きをすることを前提として、ベテランの猟師はシカなどの獲物を、尾根など水がない場所では撃たず、沢沿いに追い詰めて初めてそこで撃ち、できるだけ早く沢まで獲物を運んで首を切り、沢水に晒しながら血抜きをするそうです。そこまで迅速には出来ずとも、「血抜き」を出来るだけ速やかにすることは、狩猟した動物を美味しくいただく上ではとても大事なことです。

 皮剥などの描写はまあまあ描けているのに、一番大事なところが端折られているのが、”サバイバル術”を駆使して異世界の住人を守る、という設定の漫画としてはどうなんだろう。。。と思ってしまうわけです。

 まあここは「主人公が過去の経験が少なく、見よう見まねでやっただけで、本当の動物の解体方法は知らないアマチュアさん」という言い訳も成立しますので、私が気にしすぎで言い過ぎなのかもしれません。

 けどですね。。家を作るための樹を伐採するシーン。これはちょっとなあと。。

 斧で木を切り倒すシーン。綺麗に丸い切り株が、背景に並びますが・・・。これ斧ではこうならんのですよ。
 20cm未満の樹をチェーンソーで真横に切れば、まあこういう切り口になるでしょう。
 けど山で木を切り出している人なら、チェーンソーでもこうは切らないんです。

 ①まず斜面であれば、斜面の下側の幹に斧を入れ、くさび形に切り取る(半分まではいかない、幹の1/3くらいまで)
 ②次に丁度反対側の少し上辺りに、斧を入れていく(くさび形にこれも切っていきます)。
 ③ある程度まで行くと、樹は斜面の下方向にギギギっという感じで倒れていきます(たおれるぞー、というのはこの時点ですね)。

 最初の切り込みは、倒したい方向に付けます(木が倒れる方向に別の樹があれば、地面まで倒れずに引っかかってしまうので、倒す方向は慎重に選び、反対側からの切り込みを入れる際にも、倒す方向を意識しながら調整する)。
 チェーンソーで大きな樹を切る際にも、普通は倒す方向にまずくさび形に切れ込みを入れるように切り、それから反対側から切っていき、倒したい方向に倒していきます。基本は同じということです(細い木であれば、切り込みを入れずに倒したい方の反対側から切って時短することはありますけど)。

 このようにして斧で切った木の切り株、バームクーヘンみたいに綺麗な輪になっているでしょうかね?
 斧ではどうやったって、いわゆる絵本に出てくるような綺麗に平面な切り株の形にはならないんです。

 もっとデフォルメされた絵柄であるとか、木を切るシーンが特に重要ではないなら、こんな省略絵柄でも構わないと思うんですが、仮にも「サバイバル術を駆使して・・・」という部分をウリにしている作品なんですよね。

 狩猟(獲物の捌き方)にしても、樹の切り方にしても、専門書とまでは言わずとも入門書的なものでもある程度は網羅されています(ジビエの本とか、ブッシュクラフトの入門本など)。これから”ロープ結び”も出てくると思うんですが、そこで間違った結びを使っていたり(何か工作物を作るなら、巻き結びにねじ結び、角しばりや筋交いしばり、他にも色々な結索法が必要になります)、変な結び目を描いていたら、また幻滅してしまいます。。

 こんな事が気になる人はあまりいないとは思うんですが、やはりこういう部分は描く前にどれだけきちんと調べたかが如実にあらわれてしまいます (作者だけではなく、編集者も含めて)。今からでも幾つか書籍を購入して読まれた方が、リアリティーが出てくると思います。。

 余計な事かもしれませんが、知っている人が見れば「ああ、何も知らないで描いているんだ」と思われちゃうだけですので。。
  

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2018/01/31

緑山のぶひろ 「罠ガール」 1巻 電撃コミックスNEXT KADOKAWA

 釣りを筆頭に、様々な動物を捕らえる漫画は、ここんとこ色々と出ていますが、とうとう「わな猟」の漫画が出現してしまいましたっ(驚愕)。

 というより、この作品の場合、わな猟についてのマイナーで知る人の少ない(汗)知識を、一人の女子高生の「わな猟」を通じて上手に解説し、そして地味だけど半端なく奥が深いその魅力を、上手に描いているなと思ったりしました。

 まずもってして、銃猟は免許が必要と殆どの人が知っていると思いますが、わな猟って免許が要ることからして知らない人が多いと思うんですね。実はきちんと要るんです(勿論、罠の種類によります。法定猟法以外は自由猟法といって対象になりませんが)。

 よく害獣駆除にも用いられる、イノシシ、シカなどのくくり罠などの設置には、免許も要りますし行政手続きも要ります。そういう部分も作中で少しずつ、きちんとした解説が加えられており、農作物被害防止のために捕獲するという設定の中、地域の猟師さん達との交流も含め、ある意味では「ハンティング・ライフ」について、結構丁寧に描かれているなあという感じがしました。

 私は免許を持っていないので、描かれている事が全て正しいかどうかという部分は断言はできませんが、作者本人も田舎暮らしで農家ということのようなので、実際に狩猟をしている人に聞きながら描かれているだろうという部分も、地域の人達との交流を描く中~滲み出ている感じがします。

 まあ、うちの周辺には野生動物は居ないので、わな猟をすることは難しいんですけど、ある意味では生活を賭けた農作物被害との戦い、そして動物との文字通り”命を駆けた”かけ引きと騙し合いの世界が、リアルで丁寧に描かれている、そんな感じがします。

 農家の人達にとっては、害獣との日々の生活上の戦いはリアルな問題です。野生動物に罪はないと言っても、現実的には始まらないお話。ある程度間引くことも必要悪ですし、それを上手に処理して美味しくいただく、というのが、いまできうる最善策なのだろうなあ、と思ったりする昨今です。

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2017/08/15

さがら梨々/岡本健太郎 「ソウナンですか?」 1巻 ヤンマガKCスペシャル 講談社

 女子高生だけの無人島で遭難サバイバル、というフラグが立ちすぎなシチュエーションなんですが、中身はかなりしっかりとした<本気サバイバル>をベースにした構成になっています。

 無人島生活ネタのテレビ番組も結構多いですけど(まあ、、、本人達には過酷でしょうけど、リタイヤは出来る環境ですからね)、まあそれの超リアル版といったところでしょうか。

 飛行機が落ちて海上で干されるところから、本気のサバイバルは始まります。そして何とか陸へと辿り着けるわけですが、水すらも得るのが困難な無人島で、生き延びることはできるのか。。

 女子高生4人を主人公にする、というところは、結構当たっているなあと思います。

 うち一人は、父親に鍛え上げられた、あらゆるサバイバル術を身につけた猛者であり、彼女達の命綱でもありますが、、、当然ですが、普通の女子高生には耐えられないような<モノ>を、飲んだり喰わせたりしようとするわけですね(笑)。

 それに対して抵抗を思いっきり感じつつも、本気で死を感じながら徐々に受け入れざるを得ない、そんな葛藤の日々を、女子高生達の肌感覚を通じて伝えてくれている訳です。ここで男性がいるとまた方向性が変わってしまうと思うんですが、とりあえず皆女子高生という構成は、作品的には正解じゃないかな、と思ったりしました。

 サバイバル術に長けたスーパー女子高生も、何でもできると言えばできるっぽいですが、ある意味ではコミュ症でもあります。そういう苦手意識や距離感も含めて、4人で克服していこうという、そんな物語になっていますので、サバイバル術も本気ですけど、物語としても結構練ってあるなあ、という感じがします。

 サバイバル部分は、「山賊ダイアリー」の岡本健太郎氏なので、特に狩猟部分がかなり拘っている感が強いです(笑)。が、あえて一言だけ言えば、、、、離島にウサギって居るんかなあ?といったところだけ、引っかかりました。。

 離島であれば、野鳥の方が可能性があるような気はするんですが(この島だと海鳥の繁殖地などは微妙な気もしますが、無いとも言えないですし。そういえば、鳥の描写が殆ど無いのがちょっと不自然というか気掛かり?)。

 まあ元々は無人島ではなく、人が住んでいた可能性もあるという設定なのかもしれませんね(まだ本体は見えていませんが、恐らくアナウサギのような気もしますし。実はノウサギだったらちょっとビックリしますが(汗)。結構広い島という想定であれば、アリなのか、、、)。

 という上げ足取りみたいなことは置いておいて、、、ある意味、本気のサバイバル術を楽しく、そして常人の感覚の代弁として葛藤してくれる女子高生を通じて描いた、なかなか面白い作品な気がします。
  

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2016/10/31

高田慎一郎 「放課後アサルト×ガールズ」 2巻 メテオCOMICS ほるぷ社

 これはタイトルと表紙だけを見てしまうと「女子高生のサバゲ漫画?」と思ってしまうかもしれませんが、中身は全然違います。

 とある少女と出会うことで異世界に飛ばされてしまった女子高生達が、群れで襲ってくる兵士(ゾンビ?)と無理矢理戦う事になってしまう、そんなミリタリー・サバイバルといったところでしょうかね。。

 敵の弾に当たると「命(ライフ)」が減る(一定時間で回復?)や、兵士としての職種(突撃兵や狙撃兵、看護兵など)を選べ、”変身”ができるという、いわゆるゲーム的な要素もありつつ、楽しく戦うよりも、どこか死の恐怖を感じつつ、生き残る為にどうするか葛藤する、というような要素もあります。

 そして、転送されてきた少女達(数十人規模)が、誰もが積極的に戦おうという意志がある訳ではなく、人の形をしたものを撃ち倒すことに抵抗や躊躇を憶える女子の方が多いという(そりゃそうだ)、そんな群像的な作りになっています。

 前作の「少女政府 ベルガモット・ドミニオンズ」でも、小人の国に転送された少女達が、大統領から大蔵大臣、防衛大臣などなど、数々の役割を自分らで決めながら、迫りくる(あまり危機感があるんだかないんだか解らない)敵国と対峙しながら、法律を作ったり、お金を発行したり、選挙をしたり、そして防衛のために戦ったりといったような<国作り>をする、というお話を描いていました。

 今回はもう少しシンプルに、「軍隊組織」という限られたシチュエーションに絞って、似たようなベクトルで作品作りがされているのかな、と思います。

 ただ、「少女政府」と違うのは、状況がシンプルな上に<シリアス>であるということ。敵の正体は今ひとつ把握しにくいものの、定期的に襲ってくるので、考えてるヒマはなく、生き延びる為にはそれを振り払うしかありません。彼女達を異世界に引き込んだ(巻き込んだ?)少女も、頼りになるんだかならないんだか、謎も多くて関係も微妙ですけど、目的は何だと言ってられない状況に陥っているのも確か。

 「少女政府」 が若干、のほほんとした雰囲気すぎな感じもしていたので(あれもあれで嫌いじゃないんですが)、こういうシリアスな方向性の方が、個人的には好きだったりします。

 数十人のうち、軍人への変身を許諾しているのはまだ数人。これから、どんな役割が増えていき、ドラマが展開していくんでしょうねえ。

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2016/08/29

藤田勇利亜 「ミドリノユーグレ」 1巻 少年チャンピオンコミックス 秋田書店

 健康食品として認知されている「ミドリムシ(=ユーグレナ)」。量産のために改良されたり色々していますが、その改良ミドリムシが原因で、猟奇的な殺人が発生するようになっていく。。やがてそれは人類自体、地球自体をも変えようとする流れになっていく。。

 いわゆるバイオハザードもの、というジャンルになると思いますが、タイトルにもあるようにこの物語の”主人公”は「ミドリムシ」です(いやまあ、それと戦うことになるヒロインが本当の主人公、なんですけどね)。その研究過程を通じて、謀略や暴走事故、そしてパンドラの箱は何だったのか、少し長いスパンの時間軸で綴られていきます。

 極普通に健康食品としても出回っているそれが、いかに人類破滅への引き金となっていくかは、まあ作品を見ていただくとして(ちなみに1巻では、まださわりの部分までの描写ですね)、生物的な見地から見ると、面白い発想かなあ、と思います。

 ミドリムシの個体をいくら改良したところで、小さな細胞の生物ですから限界はあります。それを群体として構成することができたらどうなるのか、というあたりが、この物語の発想です。こういう研究(=進化)の過程をきっちりと下敷きにして追っているという辺りが(それでいて物語として読ませられてしまうよう、上手く構成されている)、丁寧な作品作りだなあと、ちょっと思ったりしました。そして若干不安な雰囲気もあり。。

 2巻後半になると、人が襲われる様になってくるのですが(ミドリムシが群体で襲ってくるのではなく、人を介在して、ですが)、この辺りはゾンビ化(感染?)した人が人を襲う的な構図になっています。ただ、それがサプリを通じて世界規模で起こり始めている訳ですから、スケールは結構大きくなる可能性が高いですね。2巻はいわゆるアクションものか、サバイバルものの流れになりそうな雰囲気もありますね(ヒーローモノにも近い流れになるのかな?)。

 現状では、その先に研究の成果は移行している様子ですが、それは2巻以降の内容になります。ここまで丁寧に<進化>を描いてきているので、理路整然とした<群体化と凶暴化のその先>を見せて欲しいものですね。

 そういう意味での不安な要素としては、ここまで丁寧に<ミドリムシの進化>に拘って物語を構築していきながら、いきなり人類滅亡に直面して何だか救世主が現れて、、、みたいな安直な(?)バイオハザードものになって欲しくないなあ。。というところです。

 ここまで丁寧に引っ張ってきて、物語の核心を端折るみたいな流れになってしまったら、ちょっとガッカリしそうなので。。そういう意味では、1巻の後半の流れを見ると少し不安要素はあるんですけど、全体として読者の予想を裏切るようなストーリー構成できちんと物語が描かれているようなので、期待と不安を胸に、2巻以降の展開に注目したいと思います。

 なんせ、巻頭の地球の状態に、一体どういう流れでなっていくのか、この段階でも想像が付かないんですよね。そういう意味で、初連載ということで若干、荒削りな部分も少しありますけど、上手に作られている作品だなあと思ったりもします。

   

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2016/08/24

REDICE/藤見泰高 「巨蟲列島」 3巻 チャンピオンREDコミックス 秋田書店

 飛行機が墜落したことにより、”無人島”に漂着した高校生達を待ち構えていたのは、人をも襲う巨大化した昆虫たちであった。。

 ざっくりと言えばこんなストーリーであり、エログロ・サバイバル・パニックB級ホラー漫画といったところでしょうかね。。

 ちなみに1巻、2巻の表紙を飾る迷彩服にベレー帽の女性は、軍事関係者でも何でもなく、昆虫採集が好きな昆虫オタクな主人公です(読むまで何かバイオハザードもので軍が関係しているというお話かと思ってたんですが、違いました(汗))。なぜ巨大化したとか、そういう謎の部分には、まだ3巻でも到達していません。とにかく次々襲われては犠牲者が増え、逃げ惑うという状況が続いています。

 掲載している雑誌の関係もあると思いますが、ちょっとエロ描写は強め(まあ青年誌ですし)、そして昆虫に襲われる様が本気でグロいですので、そこは駄目な人は要注意です。スプラッタが好きな人なら全然平気でしょうけど。

 昆虫オタクな主人公のお陰で、危機は色々と乗り越えるには乗り越えるんですが、必ず昆虫出現時には犠牲者が出ます。しかも犠牲者はほぼ<瞬殺>です。昆虫自体、襲うときはジリジリではなく速攻で急所を狙い、毒や消化液を注入し、あとは貪り喰うだけですから、その対象が”人”となると、自ずとえげつない描写になるのは必至ということですね。

 そして巨大化した昆虫は、たとえミヤマカラスアゲハ(林道でよく見かける金属光沢で綺麗な黒いアゲハ)でも吸汁という行動で人を襲えるという、もう人間は虫の”餌”以外の何者でもない世界となっています。けど、巨大化してるのは何故か虫(クモやダニ、寄生虫も含むので)ばかり。他のものは植物も含めて巨大化はしていません。

 昆虫については、もし巨大化したらどうなるだろう?という想像をも含めて、そこそこ正しい生態知識に基づいていると思われます。まあ細かなところは言い出すとアレなので、「もし○○だったら」な漫画なんですから、それなりに楽しめばいいかと思います。

 ですが、、、原作者からは、昆虫の性質や何をしたら駄目か、どうやったら逃げられそうか、という部分を渡して、物語の部分は編集さんと作画担当者で描いているのかな?と想像しますが、描いてからのチェックとかはしているのかな?という部分がちょっとありました。

 ある意味、寄生虫は専門外だから気がつかなかったのかな・・・?(ちょっとだけネタバレになります)

 2巻の作中で、カタツムリの寄生虫と同様の状態になるシーンがあるんですが、目玉が鋭角に突き出て横縞が出てくるという描写があります。

 「実際の写真」はあまりオススメはしませんが、「ロイコクロリディウム(Leucochloridium)」で検索して下さい。
 これはカタツムリの寄生虫で、緑色のシマシマ突起物状に変形した眼が何とも気色悪いですが、アメリカやヨーロッパには普通にいるそうです。

 誰もが知っているカタツムリ。眼がどういう風に付いているかは誰でも御存じと思いますが、触角のような先に眼が付いていると。この角の部分を「後触角」というそうです(Wikipedia参照)。この寄生虫に感染すると、この後触角の部分が”膨らんで”異様な形になるわけです(実際には、先の尖ったイモムシ状の寄生虫がこの後触覚に入り込んでくるので、太くなるようです)。

 判る人はすぐ気がつくと思いますけど、人間の眼球に後触角なんて無いわけです。であれば、寄生されたカタツムリのような形状になることはあり得ない筈なんですけど、なんかインパクト優先なのか、<思いっきりカタツムリのように出っ張らせて>しまってるんですよね。。まあ、寄生されているという描写を強調するために、あえて漫画的な演出なのかもしれませんけど。。

 他の昆虫の描写とかには最新の知識等も駆使して描かれているのに、何でここだけこんな描写にしちゃったのかな?と、残念でならなかったり。。まあ、絵のチェックまではしなかったのか、昆虫が専門なので軟体動物だから(恐らく寄生虫も含めて)判らなかったのか。。あまり深く考えない人なら気にならないんでしょうけど、私は妙にここだけは気になってしまいまして。

 ただ、それ以外の描写については、昆虫の知識総動員でグロさも徹底しつつ描写されているなあと感心しています。まあ、外骨格な昆虫同士の喰う喰われるは、じっくり野外で見ていてもそんなにグロくないんですが、生身の人間が襲われたら、ここまでグロくなるか。。。と変な感心もしきり。

 ちょっと異常な先生達も含めて、人間関係が破綻しすぎだろう(笑)な高校生達ですが、この残虐シーンのオンパレードで精神的に平気なのかよ!ってツッコミも出来なくもないですが。。

 どちらかというと、B級ホラー的な感覚で読むのが一番正解かもしれませんです。

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2016/06/16

からあげたろう 「わたしのカイロス」 1巻 BUNCH COMICS 新潮社

 表紙の絵柄や作者名と、中身のギャップがかなり激しい、ジュブナイル系ハードSFといったところでしょうかね。
 なかなか読み応えのあるSF作品です。

 主人公自体は、本当にそれまで戦ったことも何もない、においを嗅ぎ分ける能力が高い程度の特技しかない、ある意味では普通の少女です。
 その彼女が、首輪を填められて<罪人>として、様々な惑星に転送されつつ見ず知らずの<敵>と戦い、勝ち続けることを宿命として与えられる、そんな過酷なお話です。。

 まあ、最初に転送された惑星で、宇宙船”カイロス”と出会ったことで、何の技術もなくすぐに死んでしまってもおかしくない状況から、少しずつ運も向いてきているのかもしれませんが、どちらにしても過酷な運命をどう生き抜くか、、といったところ。

 高度な技術を持つ未来の世界という設定ながら、惑星間転送装置は<ブラックボックス>でオーバーテクノロジー的な部分もあり、社会システムも半ば奴隷制に近いものもある世界設定となっていたりと、SFとしての裏設定はかなりしっかりしている感じがします。

 けど、絵柄からくるほのぼのイメージはすぐに裏切られます。至る処に<死>の足音が聞こえ、自分自身も体の一部を失い、チーム戦に突入すれば、次々と襲われて死に至る<罪人達>を目の当たりにすることになります。
 絶望的な状況の中で、やはり心の支えとなっていくのは”カイロス”なのですよね。。

 ハードなシチュエーションの中でのサバイバル戦の中、このジュブナイル的な雰囲気が唯一の救いであり、そして壮大な世界設定の中での定点でもあるかなと。

 しかし、ほぼ放映プロデューサーの籠の中の鳥状態な<罪人>達には、どのような未来が待っているのでしょうねえ。。

  

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2015/11/10

石川優吾 「ワンダーランド」 1巻 ビッグコミックス 小学館

 ある日の朝起きたら、小さくなっていた。

 いわゆるファンタジーの世界であれば、そこから始まる大冒険!って感じの流れになるんでしょうね。

 けどこの作品は違います。。

 ある街の人々の全てが、十数センチ程度に小さくなってしまったら、そこではどのようなことが起きうるのか、、、

 街に溢れる動物達にとって、自分らよりも小さな生き物は”餌”でしかなく、例えば飼い猫などにとってはトカゲとかと同じ、”動くおもちゃ”でしかありません。

 街中が小さな阿鼻叫喚に包まれ、隠れ逃げ惑う人々、、自衛隊も救助に来ますが、逃げてきた人を網で捕獲するなど、はてして救助といえるものなのかどうか、疑問にしか思えない状況。。

 そんな中、主人公である少女は、金髪の不思議な外人の少女「アリス」と出会います。単なるコスプレ少女にしか見えないアリスですが、彼女が何らかの鍵を握っていると。。。(このあたりはお約束)。
 そして彼女達は、行く先々で生死に関わる危機に見舞われ続けます。


 発想の転換だなあと思います。

 人間が突然小さくなるという映画や漫画はゴマンとありますけど、実際にそんな無防備な小動物が、他の動物に襲われて生き延びれるのかと言えば、余程の武器を持ってでもいない限りは難しいのが事実。
 小さな動物や昆虫等がどうしているかと言えば、「素早く逃げる」のが最善の方法。跳んだり跳ねたり走ったり。隙間に逃げ込んで隠れられれば御の字。戦うという選択肢は基本的にはないです。特に体格差がある場合には。。
 十数センチの人間が単に走って逃げたところで、追ってくる動物から逃げられるわけがありません。まあ、ジュラシックパークで恐竜達に襲われるようなもんですな。。

 そんなリアルな虐殺の場でのサバイバルと脱出ゲームなわけですが、そこには数々の解かねばならない謎と伏線が散りばめられています。

 なぜ突然小さくなったのか。。
 なぜ人間だけ小さくなったのか。。
 なぜ街が封鎖されたのか。。
 なぜ自衛隊は小さくなった人々を捕獲するのか。。
 そして捕獲された人々はどうなったのか。。
 なぜ動物達は必要以上に執拗に襲ってくるのか。。
 そして「アリス」は何者なのか。。

 小さな人々が色々なものを武器にしたり、服を作ったりしているところは可愛い感じに描かれている反面、容赦なく人々が襲われ、死んでいく様を強烈に描写しているので、その対比が恐怖をさらに演出している感じですね。

 前作の「スプライト」は、特にラストはちょっと個人的にはうーん、、という印象でしたが、今回はかなり気合いが入っていて、ある意味では怖いながらも面白くなりそうな気がします。

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2015/11/04

冨澤浩気 「戦禍のカノジョ」 1~2巻 ヤンマガKCスペシャル 講談社

 この作品は、タイトルと表紙の雰囲気などから想像される内容と、実際の作品の内容には若干の誤差というか雰囲気の違いがあります。
 読んだ感想としては、<災害サバイバル系漫画>というのが正しいんじゃないかしら?
 ただし、あくまで2巻までの内容がそうであるだけで、この先の展開では予想だにしない内容になっていく可能性はあります。

 京都への修学旅行中に突如起きた謎の爆撃により、日本及び世界は一瞬に混沌とした状況に陥ります。その日、告白しようと心に決めていた彼女と行動を共にすることになった主人公が、パニックに陥った京都から大阪を目指し、瓦礫の中を進んでいくことになります。怪我をしながらも仲間に助けられながら進む中、崩れ去った高速道路に呆然とし、瓦礫となった街に唖然としながら、その途中で出会った自衛隊に避難所に連れて行かれることになったわけですが。。

 世界同時多発テロによって日本だけではなく、世界中が混乱する中、パニックに陥り、統制を失った人間が一番怖い、、そういう部分を描きたいんだろうな、というのは判ります。

 爆撃の直後である状況下では、大震災のあとの無秩序状態に近い状態なので、ある意味では古屋兎丸の「彼女を守る51の方法」を彷彿とさせる部分もあります。私は読んでいないんですが「ドラゴンヘッド」にも通ずるものがあるとの感想もちらほら(これは完全に近未来都市サバイバルものですね)。
 それらと違うのは、当然ながら一地域の地震ではなく、各国の主要都市の中枢を新兵器等で攻撃・麻痺させられたことで、政府も軍も全てが混乱しているということ、サイバーテロの結末がまだ見えてこないこと、などですかね。。

 ちょっと思うところがあるのは、先にも書いたように、表紙やタイトルなどから想像される内容と2巻までのストーリーに、かなり乖離があるように感じることでしょうかね。。心配しすぎなのかもしれませんが。
 ある意味では大風呂敷を広げてあるのだけど、2巻でも、その風呂敷のほんの端の方でまだウロウロしている。大丈夫なのかなあ?と。

 情報から隔絶され、インフラもまともに機能していない都市でのサバイバルに突入しているわけですけど、自衛隊の登場と<武器>の入手というプロセスは通過し、3巻では恐らくモラルが崩壊した暴徒との戦いとなると想像されます。

 けど、物語の本筋は本来、ここなのかしら?

 当然ながらここは通過点だとは思うのですけど、この部分をどれだけの尺を取って描くのか、という部分がちょっと不安だなと思ったのです。3巻全部をこの暴徒とのエピソードに割くとすると、その後の物語展開のバランス的にどうなんでしょう。。週刊誌だと、こんな尺でもいいのかしら?

 物語の終着点は、恐らく連載当初からきっちりと決まっていて、伏線や全体のストーリーも既に決まっているんでしょう(このスケールで描くからには当然ですよね)。
 この危機を脱したあとは、延々と大阪から関東までの道のりを帰ることになるのも想像できます。その過程で、日本が、世界がどうなっていくのかが描写されていくのだとは思います。それぞれの高校生の成長物語をその中で描いていくのでしょうけど、銃がいる世界になるのかな??
 (まあ、戦禍=銃ではないのかもしれませんけど)

 まあそれは置いておいて、ただ単にちょっと歩みが遅すぎるんじゃ?という懸念を感じたもので。。
 さらに言えば、重要と思われたサブキャラの唐突な退場や、行動力を大幅に制限する主人公の大怪我など、何が起きるか判らない世界を描いているとはいえ、どういう方向性を考えてるのか、ちょっと読めないなあと。。

 まあ、廃墟都市でのサバイバルを描いていく、というのであれば別にそれはそれでもいいんです。
 けど、都市サバイバルに銃が必要な状況は限られていますし(まあ2~3巻の状況は相手も武装しているのでアレですが)、物語としてどう発展していくんだろう?という疑問が沸々とわいてくるんですよね。。

 本当に読ませたい本質が<サバイバル>なのであれば、未知の攻撃があったとはいえ「戦禍」という単語を使うことはどうなのかな。。私の考えすぎでしょうかね(汗)。まあそういう状況に、長いスパンで見れば日本が戦場に陥る可能性もありますけどね。。世界同時多発テロをきっかけとして。自衛隊もやばそうに描かれていますし。

 というわけで、話題になっているようではあるんですが、若干煮え切らないで不安も覚えた読後感だったりする作品だったりします。
 凄い作品に化ける可能性も勿論あるので、現段階で判断するのは焦燥かもしれませんけどね。

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