C_ミステリー

2018/03/16

岡野める 「殺し屋ドロシー」 1巻 マンガハック

 さて。困ったことに(別に困ることもなんですが)、この作品はTSUTAYA限定販売、となっているんですね。
 なので、一般の書店では購入ができません。無料でとりあえず一部を読むことはできますんで、そちらなども参考に。

 動物が主人公となっている街で探偵をしている耳の欠けたオオカミが、とある依頼をきっかけとして、悪人専門の”殺し屋ドロシー”と、街の裏の実力者達の抗争事件に巻き込まれていくという、ちょっとコミカルで、そしてハードボイルドな作品です。

 上記の説明はかなり端折っていますが、ドラマの構成はなかなか先が読めず、そして血を見るのが嫌いなその”探偵”の過去も、ある意味では謎に満ちている、といったところ。

 元々はWEB掲載漫画の書籍化のようですが、面白いというか言われないと気がつかない人もいるかもしれませんが、この作品はトーンを全く使っていません。陰影から何から、全てペンで描かれています。なんだか昔の同人誌を思い出してしまいました(笑)。

 正直、トーンを使わずにこれをやるには、メッチャ技量が要ると想像されますんで、これは狙った画風なんだろうなと思います。その狙い通り、ベタと網掛けだけの絵柄だけで、アメリカのギャング映画ばりな世界が、雰囲気よく描かれています。登場人物が動物に置き換えられている以外は、国や都市名は実在のまま。

 この世界観の細かなところはまだ判りませんが(人類が滅びた後とかそんなSF的な話ではなく、ただのファンタジーな設定だけという気もしますが)、何というかドラマの作り方がスピーディーで、そしてB級アクション的な展開もあり、謎や伏線が徐々に明らかになるなど、エンターテイメント作品として上質な感じがします。

 動物を擬人化して描くという作品は色々とありますが、この作品は純粋に人間を動物に置き換えて描いているだけですんで(まあ、動物の習性や性質など、結構よく描き込まれているので、そうとも言い切れない部分の法が多々ありますが(笑))、あとは伏線バリバリなドラマと演出を楽しむ、そういう作品だと思います。

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2016/06/28

倉野ユーイチ 「オネェ吸血鬼と笑わないメイド」 1巻 Ruelle COMICS 実業之日本社

 なんかもう改めて説明をしなくても、タイトルが全て表しているような、、、そんなコメディ作品ですね。

 1ヶ月という期限付きながら”吸血鬼の館”への住み込みメイドとなった鉄仮面のように無表情な少女と、オネエ風で異様に女子力が高いわ、血は吸わないわ、十字架ニンニクなんでも平気、けどコウモリは苦手という、吸血鬼としてのアイデンティティーが犬歯(牙)くらいという、不可思議な主(あるじ)との共同生活が、広い屋敷の中で始まるわけですが、、、

 吸血鬼の主ですら、常識から逸脱している状況ですが、怪力でもないのにヒロインであるメイドの破壊力(意味深)は輪をかけて半端なく(言い過ぎ)、そんな彼の秘密をつけ狙う魔女や、やたら落とし物が多いフランケンなどなど、いろんな意味でへっぽこな脇役達も絡めて、四六時中ドタバタが絶えない、そんな感じであります。

 けどまあ、吸血鬼である彼が”なぜ”血を吸わないのか、その辺りの深い謎は、後半の若干シリアスな展開の中で明かされていきます。コメディーといいながら、結構設定がしっかりしていて深いなあという感じもあり。

 というか、登場人物すべてがどう考えても「訳あり」で、メイドな彼女にも当然の如く秘密があるわけですね。。

 というわけで、ドタバタと楽しく展開しつつ、ちょっと訳ありなシリアスな設定も混ぜ込みながら楽しめる作品かなあと。

 各々のキャラ設定が、そういう裏設定に基づいているので、なかなか展開は読めないながらも安定感もあり。なかなか先が読めないながらも、・・・といいつつ、まあ、数十年前の出来事のあたりは、読んでいけば想像できる展開ではありましたが(笑)、ちょっとした謎解きも絡めて楽しめるかなあと思います。

 しかし。。。彼女の”血”はなぜあそこまで激マズなんでしょうねえ、、、

 まあ、それもそのうち解き明かされる伏線のうちの一つなんでしょう。

  

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2016/05/26

望月淳 「ヴァニスタの手記」 1巻 ガンガンコミックスJOKER スクウェア・エニックス

 19世紀のパリをベースとした架空世界設定の中、謎の魔導書「ヴァニスタの書」を巡って吸血鬼を巡る騒動に巻き込まれる、一人の”変わった青年”と、その書を駆使する自称”医者”との出会いと活躍(?)を描く、アクション作品になります。

 1巻を読み終わった後に抱く感想は。。。「目まぐるしいよ!」です(笑)。

 主人公は上記の二人なわけですけど、次から次へと沸き起こる騒動に巻き込まれつつ(なんかもうインディージョーンズ張り)、<主導権>がもの凄い勢いで入れ替わるんですよね。

 いがみ合ってどちらも主導権を譲らない、という設定ではなく、状況に応じてまあそれぞれに流れで従う感じで、何か物語の流れがその目まぐるしい”主導権の交代”で、グルグルしちゃうという(笑)。

 あまりにも凄い勢いで状況が刻々と変化(悪化?)していく中、読んでいる方はどちらが主で従なのか、だんだん混乱して判らなくなっていくという。。

 まあ、主従関係を作らず、互いにある意味では各々の能力や行動力を評価した結果、こう行動しているんだ、というところが狙いなんでしょうかね。

 物語自体は、「ヴァニスタの書」を巡る伝説と、実際のその機能とのギャップ、そしてそもそも、その書が何を目的に作られ、それを本来の目的とは違う使い方をすることで、どういう問題が起きていくのか、、といのが、これから描かれて行くのだと思います。

 まあ、2巻以降はそれぞれの役割を認識して、もう少し落ち着いた流れで進行するのかどうなのか。
 雰囲気はとても良く、また物語もジェットコースターのようで飽きない展開が続くので、それなりに楽しめるんですが、もうちょい読者が地に足を付けて眺められる方がいい。。。ような気もしないでもないかしら(※個人の感想です)。

 けどまあ、表紙と帯の雰囲気から受ける印象以上に、スピーディーで予測もつかない、伏線を散りばめながらしっかり回収しつつ進行する(そして謎は謎のまま進行するので、どんどん引き込まれる)、そんな感じで楽しめる作品になっています。

 

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2016/01/15

つばな 「ホブゴブリン 魔女とふたり」 全1巻 バーズコミックス 幻冬舎

 何でも食べてしまう魔女(老婆)に仕えて、時々サボりながらも食べ物(じゃなくても何でもいいらしい)を集めてくる、妖精「ホブゴブリン」(少女)のお話です。

 最初はファンタジー調の童話のような世界観で描かれています。が、途中からは、魔女の正体、タダの舞台装置と思われていた数々の伏線、本筋とはあまり関係ないと思われていた城のお姫様の秘密など、全てが繋がって物語の終盤を迎えるという、そんな形でまとめられています。

 結構シュールな部分もありますんで、まあ童話といっても「本当は怖いグリム童話」くらいなイメージと思った方がいいかもしれません(笑)。
 けどまあ、シリアスでシュールな場面も、ある意味で淡々と描いているところがまた味がある感じですな。。

 ただのファンタジー作品だと思って読み進むうちに、あれあれ?と張り巡らされた伏線に気がつかされ、大団円(・・・なのか?)を迎えるという感じで、なかなか楽しめる構成の作品だなあと思ったりします。

 4年もかけて描かれているそうなんですが、最初からこの物語構成は考えていたのかしら?
 まあ、あとから色々と辻褄を合わせたのだとしても、楽しく読める、ちょっとダークな童話ということで。

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2015/12/16

市川春子 「宝石の国」 5巻 アフタヌーンKC 講談社

 様々な宝石の名前を冠して、その宝石の特性を引き継いだ、人とも何とも言えない微妙な存在である少女達と、それを指揮して彼女達が月人にさらわれるのを防ぐ為に戦う、僧侶のような「先生」。

 彼と彼女達しかいないその殺風景な未来の不思議な世界空間で、砕けたりした手足を修理しながら、ただただ仏教的なビジュアルの月人と戦い続け、そしてその不思議な世界の「なぜ?」を問い始める、そんなファンタジー作品です。

 あまりにも世界観が独特で、比較するものも何もないというのが正直なところ。けど、その独特な戦いの表現や、美しく独特なビジュアルの月人など、まず絵に引き込まれます。そして謎の多い世界設定とともに、主人公である少女を通じて、それを本当に紐解いていいのか? 知ることで世界が変わるのではないか? という微妙な罪悪感のような感覚を、読者は共有できるかと思います。

 なんかこの独特なビジュアルを見ていると、何となくですが「太陽の船 ソルビアンカ 」を思い出してしまうのは、、、私が年寄りということですね。ヨボヨボ。
 まあ、あちらは「アール・ヌーヴォー調」なので、全然違うんですけど(爆)。

 見たこともない世界で、謎の襲来者と美しくきらめき戦うスレンダーな少女達に、何となく引き込まれるんですよね。けど、そもそも何で未来には、体が宝石に置き換わってしまっているのか?そして少女だけという理由も謎ですし、1種類に1人しかいないというのも謎。そもそも砕けてしまっても生きている彼女達は、人間とはとても呼べない気もしますが、一体どういう経緯があるのか。。

 謎のワンダーランド状態ですな。えぇえぇ。けど、宝石の特性など、そういう部分の裏設定はしっかり固められている印象なので、「そういう世界なんだな」と変に納得しながら、没頭することもできます。

 謎解きの多い作品で、謎が謎を呼び核心に迫るのはまだまだ先という印象でありますが、まずは独特な世界観とビジュアルを堪能しながら、そんな物語の駆け引きを楽しんでいけばよい作品かなと思います。

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2015/11/10

石川優吾 「ワンダーランド」 1巻 ビッグコミックス 小学館

 ある日の朝起きたら、小さくなっていた。

 いわゆるファンタジーの世界であれば、そこから始まる大冒険!って感じの流れになるんでしょうね。

 けどこの作品は違います。。

 ある街の人々の全てが、十数センチ程度に小さくなってしまったら、そこではどのようなことが起きうるのか、、、

 街に溢れる動物達にとって、自分らよりも小さな生き物は”餌”でしかなく、例えば飼い猫などにとってはトカゲとかと同じ、”動くおもちゃ”でしかありません。

 街中が小さな阿鼻叫喚に包まれ、隠れ逃げ惑う人々、、自衛隊も救助に来ますが、逃げてきた人を網で捕獲するなど、はてして救助といえるものなのかどうか、疑問にしか思えない状況。。

 そんな中、主人公である少女は、金髪の不思議な外人の少女「アリス」と出会います。単なるコスプレ少女にしか見えないアリスですが、彼女が何らかの鍵を握っていると。。。(このあたりはお約束)。
 そして彼女達は、行く先々で生死に関わる危機に見舞われ続けます。


 発想の転換だなあと思います。

 人間が突然小さくなるという映画や漫画はゴマンとありますけど、実際にそんな無防備な小動物が、他の動物に襲われて生き延びれるのかと言えば、余程の武器を持ってでもいない限りは難しいのが事実。
 小さな動物や昆虫等がどうしているかと言えば、「素早く逃げる」のが最善の方法。跳んだり跳ねたり走ったり。隙間に逃げ込んで隠れられれば御の字。戦うという選択肢は基本的にはないです。特に体格差がある場合には。。
 十数センチの人間が単に走って逃げたところで、追ってくる動物から逃げられるわけがありません。まあ、ジュラシックパークで恐竜達に襲われるようなもんですな。。

 そんなリアルな虐殺の場でのサバイバルと脱出ゲームなわけですが、そこには数々の解かねばならない謎と伏線が散りばめられています。

 なぜ突然小さくなったのか。。
 なぜ人間だけ小さくなったのか。。
 なぜ街が封鎖されたのか。。
 なぜ自衛隊は小さくなった人々を捕獲するのか。。
 そして捕獲された人々はどうなったのか。。
 なぜ動物達は必要以上に執拗に襲ってくるのか。。
 そして「アリス」は何者なのか。。

 小さな人々が色々なものを武器にしたり、服を作ったりしているところは可愛い感じに描かれている反面、容赦なく人々が襲われ、死んでいく様を強烈に描写しているので、その対比が恐怖をさらに演出している感じですね。

 前作の「スプライト」は、特にラストはちょっと個人的にはうーん、、という印象でしたが、今回はかなり気合いが入っていて、ある意味では怖いながらも面白くなりそうな気がします。

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2015/10/15

峠比呂・岡崎琢磨 「珈琲店タレーランの事件簿」 全2巻 宝島社

 いわゆる推理もの小説のコミカライズですが、原作は読んでいないのですけど、よくまあこんな難しい作品のコミカライズ引き受けたなあというくらい、工夫と苦労が伺える作品になっているなと感じました。

 特に殺人事件が起きるとか、そういうことはなく(まー、ストーカーは登場しますが)、喫茶店に訪れた青年が見聞きした話を、喫茶店のバリスタである主人公(女性)が聞きながら、その裏側を深く読み解き、言葉の裏に隠された謎を推理していくという作品になります。

 これが小説であれば、読者は頭の中で色々な場面を空想し、そしてその読者の空想の中の思い込みを、バリスタである主人公が滅多斬りにして(違)どんでん返しするという、そんな流れになるんだと思います。
 小説としてなら、違和感のない流れで作品になるでしょうね。

 これを漫画でやろうとすると、、、、
 登場人物の言葉だけを描写すればいい小説とは違い、状況描写は劇中劇が必要になりますね。さらに劇中劇の中には、どんでん返しのヒントとなる伏線も”絵で”入れなくてはならない(劇中の語り部の思い込みも含めて)。露骨に判るようにいれ過ぎると、推理小説としての面白さをスポイルしてしまうし、まったく伏線を入れずに種明かしだけで説明されると、漫画としての面白さは半減してしまうんじゃないかな。。

 さらに言えば、劇中劇と現実の描写を、きちんと読んでいる人が迷わず判るように描き分けないと、読んでいる方が混乱してしまいます。
 少し演劇的な演出となり、登場人物達の会話はどうしても多い描写になりますが、そういう漫画にする上で非常に難しい部分を、上手に構成して描いているなあと、改めて感じた読後感でした。

 漫画から原作の内容が想像できるわけですが、こんなネーム作るだけでも面倒で難しい作品、よくチャレンジしたなあと思います。そして、小説としての技法を駆使した作品を、映像化するというのは難しいと思うんですが、それを漫画としてきちんと表現できているところが凄いなあと思ったり。

 なんか作品自体の話をしていないぞっ Σ( ̄□ ̄;)

 静かな雰囲気の主人公バリスタと、語り部としての青年(これも最後にはどんでん返しがありますね)の、言葉の駆け引きと謎解きは、想像の斜め上をいく結末で、どんでん返しの連続になっていて、それなりに楽しめる作品でした。

 原作の小説のファンの方がどのように捉えるかは判りませんが、漫画として構成するとこういう感じになるのかあ、という感じで、同じ料理でもお店ごとに少しずつアレンジが違うんだよ、という風に思って読んでみれば、案外面白いんじゃないかなあと。

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2015/08/27

備長炭 「真実の魔法少女」 1、2巻 ヤングガンガンコミックス スクウェア・エニックス

 また魔女ものだー(棒読み)。

 とはいえ、この作品は、かなり魔女ものとしては異質な雰囲気がありますね。

 異次元からやってきた小動物(お察し)に、魔法少女に・・・ではなく、そのサポート役になってくれない?と誘われ(半ば強制的)、異世界の代理戦争のような戦いに巻き込まれていく、高校生の少年が主人公となっています。

 作品の当初は、劇中劇としての「プリキュ○」とか、謎の小型生物(劇画調)の出現で、「○どか」のオマージュのような展開で、パロディなんかいな??と錯覚して読んでしまいます。

 1巻はそんな調子で進むわけですが、1巻巻末の次号予告で触れているように、この1巻までの展開がすべて<伏線>なわけです。。

 2巻からは一気に様相を異にして、謎がさらなる謎を呼び、そして与えられた少ない情報からの推測合戦という感じで、「情報戦」のようなミステリアスな展開になっていきます。

 魔法少女が戦い、そのサポート役のような事をすることになる主人公ですが、謀略と共に、誰がどのような意図で何を仕掛けているのか、思い込みと疑心暗鬼の錯綜で、どんどんと緊迫した事態に。
 それは異次元世界の<敵>とされる集団にも当てはまり、すべてが目論見通りに行くわけでもなく、熾烈な情報戦による駆け引きが進行していきます。

 何より、誰が本当に味方か敵か、それすらが謎のまま。ミステリーのような形で、それぞれが限られた状況や言動、言葉などから、様々な可能性を模索し、いかに仕掛けられたワナを出し抜くか、神経を削りながらの戦いをしていくと。。

 魔法少女的なアクションも勿論あるんですが、その要素については全体の1割以下。どちらかと言えば戦ったら強いか弱いか、というステータスの方が戦略の中では重要であったりするので、描写は少なめです。

 魔法アクションものというよりも、上記のような謎解きミステリー的な駆け引きを楽しむ作品、と思って読んだ方がよいのであしからず。

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