C_モータースポーツ

2017/03/27

okama 「Do race? 」 1巻 ヤングアニマルコミックス 白泉社

 あらゆる科学と技術を凝縮した、宇宙空間を飛ぶことができる特殊な”ドレス”を身に纏い、命がけのレース「ドレース」を繰り広げる美少女質の物語です。

 簡単に書いてしまうとそんな感じですが、”ドレス”の変形機能や、強い加速に伴うブラックアウト現象など、SF的なリアリティーとファンタジー的な美しさを融合させたような、そんな感じの作品です。

 けど何といっても圧巻なのが、”負けたら即死”という厳しい縛りの中、縦横無尽に展開する迫力のスピードレースの描写ですね。

 レース自体は半ば完全にスピード勝負。妨害あり。体勢がちょっと独特で、<リュージュ>のように脚を突き出して仰向けで操作するのが「ドレース」の仕様。そんな宇宙空間で繰り広げられる上もしたもない高速レースの描写は、ある意味ではかなり難しい部類だと思うんですけど、コマ割の妙か、非常にすんなりと判り易く展開していくんですね。

 これは動きの方向やキャラクターの描き方など、かなり上手いから自然と読めてしまうんですが(それでも展開が早く、駆け引きも言葉のやり取りなく進むので、読み難い人もいるかもしれませんが)、ある意味、このコマ割が下手だと、もう読んでられないような状況に陥るんですよね。。

 まあ、そこまで酷い作品というのは、商業誌や単行本では滅多にお目に掛からないですが(さすがに編集さんのチェックが入りますから)、極稀に、右だか左だか、どっちが敵でどっちが見方か、読んでるうちに混乱させられるコマ割で描いている作品って、、、ごく最近もお目に掛かりましたが(以下自粛)。私は許容範囲は案外あるのでアレですが、原作付き作品を描いている、イラストレーターがメインだった人とかに、この辺りの経験不足が露呈することがあったりします。。

 空間を動き回る描写が秀逸だったものと言えば、古典としては「童夢」があります。セリフのとても少ない作品ですが、”絵”と”コマ”を使って、こんな空間表現が可能なのかと、当時はカルチャーショックを受けた記憶があります。恐らく今初見で読んだとしても、物語が面白いかは別にして”空間”の描写について、考えさせてくれるんじゃないかなあと。

 ちょっと脱線しましたけど、1巻目はまだまだ<ある少女が置かれている世界>の描写が中心となり、シンデレラガール的にいきなりドレスを譲られ、そしていきなりレースをさせられる状況に追い込まれる、という描写までになっているので、かなり狭い世界の中でのお話のみになっています。
 2巻以降でしょうね。世界が一気に広がっていくのは。

 ある意味では”お人好し”で何でも人に譲ってしまう、そんな性格の”少女”が、負けたら爆発してしまうという特殊なドレスを譲り受け、命を賭けたレースの世界に飛び込み、どう逆境を乗り越えていくのか、、その辺りが楽しみな作品です。

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2016/06/29

せきはん(大森しんや) 「グッバイエバーグリーン」 全1巻 アース/スターコミックス 奉文堂

 雑誌「RIDER」に連載されていたということで、バリバリにバイク漫画かと思いきや、実はそうでもない、ノスタルジック系の作品といった方がいいのかなあ。

 亡くなったおじいさんが経営していた古い道具の修理なんでも屋”エバーグリーン”跡地。郊外にあるその一軒家を秘密基地と称して親の反対も聞かずに出入りする高校生ヒロインは、おじいさんがよく乗っていたバイクを動かし、修理済みのまま残されていた「思い出の品々」を、各地のお客さんに届ける、そんな活動を始めます。

 彼女とバイクの距離感は、作中にも出てきますが、「馬」のようなものなんでしょう。ペットとは違う、一体感を味わうことのできる道具と言えば道具ですが、何かそれ以上の、けどあくまで「足」であると。なので跨がっているバイクは60年も前のマニアックなものですが(笑)、本人は修理とかは不得手で師匠頼みという感じのまま。けど、そんなバイクに跨がることで、バイク仲間との出会いがあり、そして荷物を届けた先での出会いもあり。

 まあ、何よりキャラの性格が、悩みつつ親とも知人とも喧嘩しつつものびのびしていて、清々しいなあと。そして、そんな彼女と2ストの古いバイクを見て、いわゆる”オジサン達”が郷愁に浸ったりするという。まあ「若い者はいいなあ」「俺にもそんな時代があった」なお話ではあるんですけど、何かこう、成長していく子供達を眺めていくような、そんな雰囲気で外側から見守る、そんな雰囲気で少し後ろからそっと眺めている、そんな感じでしょうかね。

 「恋ヶ窪☆ワークス」は、バイク店のお話のようなのでもっとバイク三昧な部分があるかと思いますけど、この作品ではあくまでバイクは脇役であり、料理で言えばメイン素材の味を邪魔しないソース的な位置付けかなあと思います。

 何となくですが、彼女を見守る世代のアラフォー以上の方がより楽しめるかも、、と思いつつ、バイクが特に好きではない若い人でも、彼女の悩みながらも出会いを通じて成長していく様は楽しめるかもなあ。。などと思いつつ。

 これも楽しかったんですけど、現在連載している田舎ものの方も巻末に触り部分が掲載されていますが、楽しそう。
 けど、、、タイリクバラタナゴって外来種なんだけど、なんでアレにリストアップされてるんだろう?という疑問も少々、、、
 これが期待と不安という奴かもしれない(汗)。

 

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2015/05/17

松田未来 「SWIFT!」 2巻 リュウコミックス 徳間書店

 昔々、某所に語学留学していた頃に、海外のテレビでやっていたクレイジーなモータスポーツレースが幾つかありまして。。

 当時、日本ではあまり紹介されていませんでしたが、何となく見ていたTVの録画中継を見ていて印象に残っていたものは3つほどありました。

 一つは「ドラッグレース」。強烈なエンジン(物によってはロケットエンジンまで)を車に積んで・・・いや、巨大なエンジンにタイヤを付けてスピードを競うという、意味不明なレースです。今ならYouTubeでも見られるので、皆さんも見たことがあるだろうと思います。特にトラックでやる奴なんかは、もう地上を走るミサイル以外の何物でもないですね。。というかタイヤ要るんかいなと。

 そしてもう一つが「パワーボード」。これも強力なエンジンを積んだモーターボート(3人乗りくらい)で、水面を飛んでるのか跳ねてるのかもう意味不明なスピードを競うものです。なんかもう羽根付けて飛んだほうがいいんちゃうか?というような凄いスピードで水面を滑っていくレースでした。

 そしてもう一つが、レシプロ機でパイロンを通過しながらタイムを競う「エアーレース」。信じられないような曲芸レースでした。しかも海上や荒野に布製のパイロンを立ち上げ(エアーゲート)、その高さ(25m以内)で通過しなきゃいけないという(それ以外にも幾つもレギュレーションあり)、死線すれすれのレースでした。

 どれもこれも、当時は信じられな世界で、しかも年中行事のようにやっているというのを見て。。まあ日本ではまず開催されることなんてないよなあ、と思ったらこれですから(汗)。ちょうど今年5月17日に「レッド・ブル・エアレース」が日本の幕張で開催されてしまいました。
 ヘリで中継されていたその映像から、もう映画の撮影にしか見えないような感じでしたけど、それが日本でねえ。。。隔世の感があります。。まあ私が昔見たのも20年以上前になりますけどね。


 この作品では、日本で行われたものとは若干違いますが(ただし、そのレースの解説も2巻の巻末でオマケ漫画で解説してくれています)、レシプロ機でスピードの極限に挑戦するレース、「リノ・エアーレース」を扱っています。
 オマケ漫画でも解説されていますが、「レッド・ブル・エアーレース」がフィギュアスケートであるならば、「リノ・エアーレース」は短距離スピードスケートといったところだそうで(まさに適切な例えですね)。

 実際には1年に1回の、ある意味気の遠くなるような一発勝負のレースです。その1回のチャンスに掛けて、資金を集めて勝負するわけで、2巻ではその「資金源」についてのエピソードが2つ掲載されています。

 死と隣合わせというのは、モータースポーツに限らず、プロアマ問わず試合ではあり得る話ではあります。飛行機が他より致死率が高い訳ではありませんけど、実際、作中でも死に直面する場面が何度か出てきますね。そして、それに納得ずくでギリギリの戦いをする人達。。その想いを次に繋げながら。。

 エンジンの付いたマシンを使うモータースポーツは、機械の精度や性能をいくら高めても、最後には操作する人間の極限の集中力が勝敗を分ける世界。その緊張感は画面中継からは想像するしかありませんけど、手に汗握るそれを共有できるところが、やはり面白いのですよね。

 なんか作品の解説があまり出来てませんけど(汗)、こういう特殊な競技の裏側(資金調達の為の出稼ぎ?)までも含め、実に真面目にエアーレースの世界が描写されている作品だなあと。。取材がしっかりしているというか、本当に好きなんだなあというのが伝わってきますね。

 そして、色んな飛行機が出てきて楽しい(・∀・)。

 飛行機は男のロマンっヽ(`Д´)ノ

 (※この発言は個人の見解であり(ry

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