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2018年4月

2018/04/27

これかわかずとも 「東京カリニク鉄砲隊」全1巻 Kadokawa comics A 角川書店

 地方では猟師さんが減ってしまい、有害鳥獣駆除も引き受け手がなく困っているという地域もあったりしますが、若い猟師=ハンターさんもそれなりには育っているとも言えます。

 この作品は、そういう銃猟の入口に立った作者の体験に基づく、誇張のない素の<狩猟の今?を描いている作品じゃないかな、と思います。といって、色々と考えさせられるとか、そんなことではなく、要するに「地に足が付いた狩猟の世界」ってとこですね。

 まず狩猟の目的が「食べる為」という点が明確です。勿論、銃を撃つ、獲物を倒すといったところに重点を置いてやっている人もいて、ゲーム性も勿論楽しんではいるもと思います。

 が、多くの人は 「自分で捉えた獲物を食べたい」、そして「(きちんと処理したら)ジビエは旨い!!」ってところが主目的であろうと思います。そこに至るまで、数々の<面倒臭い手続き(免許の取得から各種申請から、そして高い銃器の購入、さらに高い保管庫の購入整備等等)>を経るわけですが、時間も含めて全ては「美味しいジビエ」に対する投資であるわけです。

 そういうハンティングの実際を、自分の経験を元に描いていくわけですが、この中でも実は「奥さん」のポジションが、結構重要な位置を占めていたりします(笑)。
 ※表紙に描かれているのは、奥さんとは全然関係のない狩猟仲間のお一人。

 奥さんは当然、狩猟自体はせず、家で獲物を待つ立場ですが、コスト意識が高く、様々な機器の購入に大して、厳しく「コストに見合う」かどうかを査定してくれるわけです(笑)。皮を剥がすための専用ナイフの使いやすさに感動し、購入のためのプレゼンをするも、初っぱなはあえなく玉砕したり、けど諦めずに様々な試行錯誤を繰り返すという、なんとゆーか駆け引き(というか家庭内の力関係(笑))が、妙にリアルなんですね。そして思い込んだら突き進む作者と、冷静に成果(要するにジビエの肉)とを天秤に掛ける奥さんの駆け引きが繰り広げられると。

 またそれとは別に、目の前に獲物が飛び出てきた時の一瞬の判断も、非常に緊迫感とリアリティーがあって良いです。車両の通行も多い道路を挟んで斜面に現れたホンドジカを見つけた一瞬、人への危険も鑑みて、どの時点で狙い引き金を引くべきか、、、、。

 これが戦争なりバイオレンスアクションなりであれば、敵か味方かの判断以外は、先に引き金を引いたものが勝ち、という単純な世界ですが、実際の銃猟の世界では、銃を向けていい方向、角度、そして距離などがあり、見つければ遅滞なく撃てばいいという世界ではない訳です。それを一瞬のうちに判断しなければいけない、というのが、、、ある意味そこも面白いところなんでしょうね。まあ、そのお陰で滅多に獲物を射止めることも出来ない世界ですが(笑)。

 そして狩った獲物は素早く丁寧に血抜きして解体し、仲間同士で分けるという、実際の狩猟におけるコミュニティーの重要性についても、きちんと描かれています。映画みたいに一人でじっと獲物を待つ、というのはフィクションとは言いませんが、現実として日本で普通に狩猟をしている人達のリアルではないわけです。

 このコミュニティー自体、非狩猟期には有害鳥獣駆除などを請け負う窓口にもなっているので、狩猟期以外にも銃猟はされているという実態も、ある意味では丁寧に描かれていると言えます。

 ただ、これはサンデー狩猟者というか、それなりにハンター人口もある関東地方周辺だから、この人数のコミュニティーが成立しているとも言えるんでしょうね、、、
 地方に行けば、こんな猟自体が行えないほど、狩猟人口は激減していると思います。実際のところ、ホームグラウンドを離れて地方に狩猟に行く、というのも、手続きも色々あって面倒だろうとは思いますから、なかなか手伝いに地方に行く、というのも限度があるのだろうなと。。

 ただ、色々な意味でけものも増えすぎ、シカやイノシシなど、ある程度はコントロールが必要な状況が現実としてあります。単に撃ち殺してしまうゲームハンティングではなく、「それを美味しくいただく」という、こういう狩猟は受け継がれていくべきだろうなあ、と思ったりします。

 まあ、狩猟漫画もなんだか色々と随分増えてきましたけど、ノンフィクションに近いながらも上手にストーリーを作ってあり、そして妙なリアリティ(笑)もあるこの作品は、最初にも書きましたが、「地に足が付いているなあ」と思ったりしました(※個人の感想です)。

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2018/04/25

赤瀬由里子 「サザンと彗星の少女」 上下巻 リイド社

 地球が様々な宇宙人とも交流し、生活している数百年後の未来、他星人の居住用の小惑星の整備を生業としている青年サザンは、ロケットバイクに跨がる一人の少女と出会い、そして大冒険活劇へと巻き込まれていく事になります。。

 あらすじ云々は読んでからのお楽しみとして、この作品は非常に独特な雰囲気を醸し出しています。
 独特といっても、いわゆる雰囲気は1980年代のアニメの世界ってところでしょうか。何しろこの作品、<全フルカラーコミックス>な訳です。そしてカラーインクのような着色だなと思ったら、水彩で彩色しているっつーんですから、まあノスタルジー感を感じるのも当然でした。
 ※フルカラーで、1000円台/冊という価格帯に抑えるというのも凄いですが。

 全て彩色されているが故に、動き的にはあまり激しい描写がされるのではなく、イメージとしては昔のアニメのフィルムコミックス(アニメの画面をコマ割したもの。最近はあまり見かけませんが)といった雰囲気です。

 そこを冗長と感じるか、一周まわって新鮮と感じるかは人それぞれですが、WEBコミックとして発表され、それなりに掲載時に人気を獲得できたということは、単なるノスタルジーを感じた人だけが引き込まれた訳ではないのでしょうね。

 SF的な要素もかなり入り込んでいますが、その辺りの考証はまあ大きな問題ではなく(笑)、そういう意味では<おおらかにサイエンス・フィクションを楽しむ>というコンセプトだと言えるかなと。

 結構なスケールで離ればなれになったり、迷惑が掛かると遠ざかる彼女を追いかける、特に凄い特殊能力があるわけでもない等身大の主人公は、感情移入しやすい部分もあり(けどまあ色んな意味でムチャクチャですが(笑))、敵対する謎の飛行船のボスと彼女との、ある意味では共通点に至るまでのストーリーなど、いい意味での<スペース・オペラ>として存分に楽しめる、そんなエンターテイメント作品になっているかなあと。

 微妙な懐かしさ(笑)と引き込まれるようなストーリー、そしてアメリカ映画的な大団円など、、、最後の方はセオリー通りに「こうなるよな」って、どう読んでもわかるんですが(笑)、けどなんか判っている結果なのに、のめり込んで読んでしまっている自分がいました。

 そういう意味で、漫画ではあるんですけど、映画的な手法も使って観客を引き込むような、そんなテクニックも使われているような気がします。これは全てのページを極彩色で装飾した、そういう色彩センスの良さも大きく貢献しているのかもしれません(よく考えたら暗い宇宙の話なのに、本当に色彩豊かなんですよね(笑))。
 

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2018/04/23

サメマチオ 「魔法少女サン&ムーン〜推定62歳〜」 全1巻 BAMBOO COMICS 竹書房

とあるキッカケでコンパクトを手にした二人の少女は、返信する度に復活してくる大魔王と戦いうわけですけど、「変身している間は時間が止まる」というより「身体時間が変身前まで巻き戻る」事に気がつき、、

 そして数十年以上が経過したある日、ペアの一人がガンで余命三ヶ月であることが判り、年老いた彼女達は、再び<魔法少女>への変身を繰り返すという行動に出るわけですが。。

 おばーちゃんが魔法少女になる、というお話は、「××ですけど魔法少女になれますか?」でも丁度出てきたネタですし、他にも作品はあると思いますが、この物語の場合には、ベクトルが全く違う方向に向いていて、コメディーのように見えて全くもてシリアスなストーリーが展開する、魔法少女ものというより、ファンタジーSF作品と言った方がいいんじゃないかな、という。

 悪く言えば、コンパクトを使うと大魔王が復活する、というくだりは<とても雑に>扱われています(笑)。彼女達も気がつきますが、大魔王が復活するから魔法少女になれるのではなく、魔法少女に変身すると、セットで大魔王が復活し、やっつけると変身が解ける、という形です。けど、コンパクトの正体も、魔王の正体も、結局は深く語られる事もありません(そこは重要ではない、ということでもあります)。

 そして先にも書いたように、変身直後の身体時間に戻るということは、繰り返し使えば使うほど<(彼女達の)時間が止まる>ということを意味します。そして、彼女達の時間は同級生達や同年齢の人々よりも若いままの状態が維持されますが、コンパクトが記憶している「身体時間」は、ある程度時間をおくと(数ヶ月くらい?)リセットされ、次に変身した時点が”変身後に戻る時間”に更新されます。

 徐々にですけど「時間が遅れていく」事に気がつき、同じ歳なのに若々しいままである彼女達は、次第に周囲から浮いていくようになります。大学生になり、社会人になるに連れて、彼女達も変身をすることを止め、やがて人並みに結婚もして、、という段階まで行きますが、そこに至るまで、非常に紆余屈折な人生を”二人で”歩んでいきました。

 この作品では、余命3ヶ月を孫の顔を見るまでは伸ばしたい、という必死の思いのために、再び<魔法少女>に変身することを決めた彼女達の、そこまでに至る過去の履歴が綴られていく、、、そんな作品といっていいかもしれません。

 ここまで読めば概ねこの作品が「コメディーではない」という事は判ると思います。まあシニカルなコメディーとも言えないこともないですし、自分達は自分達なりに、大魔王と戦うことも一つの使命だと思っていた時期もあります。

 けど、コンパクト自体が「時間を止めるための道具」としての機能しか実はなく、その効能を判った上で再び使おうという決断に至るまで、一応62年も生きてきた彼女達は、あるときには浮かれ、あるときには悩み、人々と違う時間軸の中でそれなりに悩み、考え、そして苦労を重ねてきたと。。人生を変えた「コンパクト=魔法少女との出会い」が、本当に良かったのかどうか、そしてこれからの人生をどう生きていくのか。。非常に示唆に富んだストーリーになっています。

 彼女達は後悔のない人生を歩んだのかどうか、そんなことを色々と考えさせられる、そんな作品です。

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2018/04/20

【ヤブガラシ】約5年(3年?)で概ね状況終了【掃討作戦】(その3:総まとめ)

 その1その2からの続き。ヤブガラシ撲滅作戦の総まとめです。

■ヤブガラシの駆除・撲滅には、一体<何年>かかるのか?(総まとめ)

 結局、ここが一番の論点ですよね。

 5年掛も掛かるの?という風に思われそうですけど、先にも書いたとおり、最初の2年くらいは、どうやって対処したらいいか途方に暮れ、土日しか時間がない中で、適当にやっていた感が強いです。つまり<無駄撃ち>です。

 なので、私の事例については、最初の2年分くらいはカウントしない方がいいんじゃないかなあ、と思います。

 いま、これまでの実体験と、各種の資料や論文等によって得られた知識を総動員した場合、1から始めてどのくらい掛かるかを考えると、概ね2~3年見ておけばいいんじゃないでしょうかね?

 以下、パターン別に見てみましょう。

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【ヤブガラシ】約5年(3年?)で概ね状況終了【掃討作戦】(その2)

 その1からの続きです。

 昨年度で掃討終了と書きながら、実はちょっと広めの庭の中は、庭木も沢山あって、灌木の下に潜り込むのも大変なため、取りこぼしがどうしてもあったりします。
 その辺りを図示しながら整理してみました。下記の面積でだいたい20×10mくらいと思って下さい(図はフリーハンドなので適当ですが(汗))。

■庭(真ん中は防草シート+砂利、壁際や池周辺には庭木多数)・・対処中(5年目以降進行中)

 さて。庭先の状況を改めてエリア別に整理してみました。
 ポンチ絵も起こしてみました。ビジュアルの方が判り易いかと思いますので。(クリックで別窓で開きます)
 
Photo

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【ヤブガラシ】約5年(3年?)で概ね状況終了【掃討作戦】(その1)

 4月に入り、ヤブガラシ系のページにアクセスが増えてきたので、各地でまた芽が出てきているのでしょう。

 通算だと昨年で5年目、今年で6年目ですが、最初の2年くらいは、試行錯誤でほぼ無駄弾を撃っていた感も強いので、実質的には本格的に対策を始めて、3年くらいで掃討がほぼ出来た、というのが正しいかなあと。

 昨日巡回したところ、また出てきている場所が、やはり数カ所ありました。まだ何カ所かは出てくるでしょうけど、随分と全体としては落ち着いた感がある昨今です。
Imag0913


 うちでは庭をひっくり返した際、根を切り刻んだ上に埋め戻してしまって、いろいろなところに発芽箇所が分散していました(ある意味では、最悪な状況。。。)

 場所によりけりという感じなんですが、とりあえず区域によっては目に見えて戦果が出ていますので、区域別に整理してみます。

 ちなみに、昨年度は、ケイピンエースを挿せるような太根はもう残っていないので、ケイピンエースは一度も使いませんでした。50本入りが半分くらい余っちゃいましたが、結局3セットで足りたということです。

 掘るのも弱冠面倒なので、時間がない時はハサミと100円ショップのオイル入れ(ハケ付き)だけを持って、ささっと10~20分くらい庭を廻って、グリホサート処理をしてました。細根からの発芽の場合は、掘り起こすか除草剤処理の方が的確に撲滅できます。

 時間があるときはシャベルを持って廻りましたが、そもそも芽が出てくる場所が限られ、2~3週間間隔で廻っても、ちょっと芽がまた出てきたな、程度になっていたので、作業的にも精神的にも、とても楽になりました。

 ※この文章は昨年度に概ね書き上げ立ったのですけど、推敲しているうちに今頃になってしまいました(汗)。本年度の作業は殆どしていませんので書き換えたんですが、「今年の」という表現がまだ残っていたら、昨年度の話だと思って下さい。

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2018/04/19

山城良文 「反逆のオーバーズ」 1巻 BEAM COMIX エンター・ブレイン

 数々の超能力を持ったヒーロー、通称「オーバーズ」達が、互いに争い、そして世界が崩壊したのち、復興しつつあるとある世界。。

 オーバーズは「悪」というレッテルを貼られ、残党は管理組織によって追われ、そして消されていく、、、そんな世界の中で、オーバーズに憧れる一人の少年が大戦を生き残った超能力者達と出会い、管理局と反逆する彼らとの泥沼の戦いに巻き込まれていく、そんなお話です。

 まあ、彼自体がこの戦いの始まりでもあり、そして”鍵”となる人物ではありますけど、ヒーロー達が反逆者として追われ、消されていくという世界観、そして平和を愛し人々を守る筈のヒーローが「そうではない」という辺り、常識的な部分を壊しながら、追われる身となったヒーロー達と、管理局に協力する”元”ヒーロー達の、壮絶な戦いが繰り広げられます。

 まあ、1巻だけではまだストーリーの全体像は見えてきませんが、ストーリーの構成や魅せ方については、アクション系少年漫画として、既に十分過ぎるくらいの領域には達しているかなと。

 物語は、かなり残酷な方向に流れていくのか、本当の意味の「正義」は何なのか、これは2巻以降の展開を乞うご期待、といったところでしょうね。流れ的には、面白いと思った人は裏切らない展開となっていくかな、と思いますが(希望的観測)。
  

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2018/04/16

小坂泰之 「放課後ていぼう日誌」 2巻 ヤングチャンピオン烈コミックス 秋田書店

 海辺のとある高校に転校してきたばかりの手芸大好き女子高生が、何の因果か釣りや磯遊びを楽しむ「ていぼう部」に巻き込まれ(?)、苦手だった生きものたちと戯れる日々に投げ込まれ、、、、そんな阿鼻叫喚な状況から、徐々に楽しみを見いだしていく、そんな作品です。

 まったくの釣り素人、いやそういう事をやろうなどと一度も考えたこともなかった少女が、個性的で半ば強引な「ていぼう部」の面々に騙され(違)、けどやってみたら、結構奥が深くて徐々に填まっていく(堕ちていく、、とも言う)、そんなシチュエーションを楽しむ作品です。

 釣りは私は多分、不得手な方です。全く嫌いではなく、幼少の頃は田舎で叔父に釣りに行かされまくりましたが(川釣り、磯釣り、船釣りからアユの友釣りまで経験させてもらいました)、仕掛けから何から叔父任せで、自分で工夫しようとか憶えようとか、そういう気分にならなかったんですね。行けば楽しいし、釣れれば面白かったので、嫌いではないものの、何かのめり込めなかったというところでしょうか。

 なので、釣り漫画をあれこれ批評なんぞ出来る立場ではありませんが、この作品の場合は、主人公の立ち位置が私に近いというか、、、けど2巻辺りからは積極的に動き始めたりもするので、私より前向きカモですが(汗)、そういう「初めてやる人が、どういう風に楽しみを見いだしていくか(そして泥沼に填まるか(違))、そういう視点でよく描けているなあと思います。

 釣りを教えてくれる人にも色々あって、私の叔父などは、仕掛けとかに私が興味を示さなければ、何も教えずにさささっと竿と仕掛けを準備して、ほいっと渡してくれるだけでした。
 無理強いもしないし道具も全部用意してくれるので、あとは餌付けて釣って、釣れたら外してまた餌付けて(それは自力で一通り出来ます)、というのの繰り返し。小学生くらいでしたから、そうなるのも仕方ないし、釣れた時には楽しいものの、釣れるまでの準備の楽しさとか、仕掛けの理屈だとか、そういう部分を完全に端折ってしまっていたから、興味がそれ以上伸びなかったのかもなあ、と思いました。

 素人が釣りに填まっていくという漫画は、実はそういう意味で興味があって、ちょくちょく読んでいたりします。だいたいは、何かのきっかけに釣りに填まっていく人を描いている訳ですが。。。

 その中でこの作品、ここまで「釣りとは無縁で興味のかけらもない」人間を(笑)、どのような手順やイベント、その他の言葉や行動でだんだん洗脳していくのかという辺り(こらこら)、なんか鉄壁の城壁をいかに攻略するかみたいに置き換えてみると、なかなか面白いなあと思うんです。

 この作品は、特にその<攻略>の仕方がよく描けているなあと思いました。勿論、キャラの個性や設定も絶妙だからこその面白さですけど。

 それと、いきなり大物を釣るとかのダイナミックな楽しさではなく、2巻になって、やっと小アジを初めて釣ったことに歓喜するという、本当に地に足の付いた、現実的な小さいながらも大事な”楽しさ”を描いているな、と思ったりもします。

 子供相手に、生きものの観察会みたいなこともやっているので、そこでも参考になるかもなあ、と思いながら読ませていただいております。。

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2018/04/13

佐藤宏海 「いそあそび」 1巻 アフタヌーンKC 講談社

 コンビニもゲーセンも何もない、海辺の片田舎のとある街の片隅の、さらに旧道の脇の空き家に、突如<お嬢様(元)>が襲来。都会から急にど田舎にやってきて、ちょっと通常では考えられない四苦八苦(?)をしている彼女と、偶然にも出会ってしまった生きもの好きな少年との交流を描いた、生きものサバイバル系(?)物語です。

 作品自体のコンセプトもさることながら、キャラ設定が絶妙だなあと思いました。
 父親の事業失敗で、ある意味では裕福な生活からどん底の”自給自足生活”に、日本の片隅で突入した少女(中学生)ですが、田舎の海辺の自然としての当たり前が、当然ながら一人では何一つ解決できないと。
 そこに身近な自然が「あって当たり前」な上に、ちょっと生物の知識も他の子より持っている少年が、「何が食べられるか」から彼女に指南していくことになると。

 と言っても、普通であればそんな”サバイバル”な生活なんて、田舎でもしないわけです。
 けど、どん底に転落しても、人に頼らず借りも出来るだけ作りたくないという、生活力は別としてかなりしっかりとした考え方の少女と、いろいろ知ってはいたけど、それを”生きるため”に活かそうとは考えたこともなかった少年が、何とか手伝ってあげたいと右往左往するという辺りで、それぞれが「ないもの」を補完しあっているなあ、という感じがするんですね。

 作者自身、この少年のように「自分が置かれていた環境の価値」に、言われるまで気がつかなかったくらい、ドップリと田舎の自然を知らずに浴びていた訳で、その価値に気付かせてくれたのが、少女のような「それを価値と認めてくれる」人々、つまりは編集者さんだった訳ですね。

 全く違う価値観を持つ人が出会うことで、いろいろな気づきが産まれる、、、まあ勿論、ぶつかり合って理解が出来ないという悲劇も起きることはありますけど、この作品では、良い方向で「田舎の自然の良さ」に、住んでいた人達が気付かされていく、といったところでしょうか。

 まあベースが実体験と、田舎の魅力に気付いていなかった(・・・もしかしたら、まだ半信半疑かもしれませんが)御本人の価値感なので、作品の流れや生物の描写については何の違和感もなく楽しめます。それ以上に「食べる」という部分にある程度特化しつつ、いわゆる(多少流行の)狩猟系漫画とはまた少し違う、もっと地に足が付いたような流れと共に、どこか青春系の雰囲気もあるのがいいなあ、と思ったり。

 タイトルは「いそあそび」ですけど、遊びというよりは、住んでいる場所のとなりに普通にある、凄い自然というわけでもないけど、いろんな意味で豊かな”田舎の自然”を楽しく満喫できる、そんな作品かなあと。
 

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2018/04/11

坂木原レム 「ペンタブと戦車」 上下巻 まんがタイムコミックス 芳文社

 コミケ修了の帰りに会場で発生したカスミに飲み込まれ、”萌え系”擬人化戦車オタクが飛ばされたのは、昭和14年のノモンハンの日本戦車部隊の目の前。。  そこで出会ったのは、擬人化キャラに理解を示し、、、、示しすぎてコジレまくる戦車長と、自分の子孫達の面々、、、。

 兵器は好きだけど実際の戦い=殺し合いは望んでいない、そんなミリオタな主人公が逃げつつも実戦に巻き込まれ、そして”自分の存在の危機”に直面しながら、自分の能力を駆使して解決策を模索していく、そんな物語です。

 タイムスリップした先で、”擬人化戦車絵”を武器に(?)様々な騒動に巻き込まれ、さらに日本軍の戦車部隊と、当時のノモハン周辺の状況など、マニアックな軍事ネタが満載な上に、SF的にも<超変則球>を投げ込んでくる、タイムスリップSFミリタリー作品ですな。。

 この辺の時代考証は詳しい人に譲るとして(しかしまあ、軍服の襟の形から戦車自体の配備の状況から、結構細かく調べられています)、タイムスリップものとしては、ちょっと異色な流れもあり、予想をどんどん裏切っていくは、平行世界だからと歴史も微妙に変わっちゃうわ(笑)、そしてある意味、本能のままにオタ絵を量産し続けたりしながら戦う、主人公と一緒に飛ばされた先輩などなど、まあ本当に<予測不能>なSFコメディー作品です。

 本物の歴史では戦士することとなっていましたが、完全に擬人化された89式にのめり込み、「俺の嫁」にしちゃう戦車長のその後などなど、、、変な話、アンソロジーで「もし○○が××だったら・・・」とやってるような内容が、完全に本編でやられちゃってるんですから、もう変則球としか言い様がありません(笑)。

 そしてパラレルワールドでもしっかりオチも付いているという、、SFとしても変化球ながら、なかなか凝った作りの作品でもあります。

 命の取り合いである戦場でありながら、そういう面はあまり強調し過ぎず、けど主人公はそれなりに葛藤していくという、リアルな戦争というよりは少年向け&アニメ的な味付けではありますけど、当時の価値感なども踏まえた作品全体の構成は、人間模様の物語として、そしてSFとして楽しく読めるんじゃないかな、と思います。

 ちなみに、、、結局最後までペンタブ(ry

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2018/04/09

イシイ渡 「水族カンパニー!」 2巻 ビッグコミックス 小学館

 とある水族館に入社した新人トレーナーと、そこに新人として同じく入ることとなった、”変態(?)”獣医師との、文字通り「日々の戦い(いろんな意味で)」を描いた、水族館コメディー作品です。

 水族館の飼育の裏側にポイントを置いていますので、舞台裏での動物の様子や関わり方(つきあい方)、そしてトラブルへの対処方法など、そういう部分に焦点が当てられています。

 その中でも特に”海獣(海棲哺乳類)”に焦点を絞っています(まあペンギンは哺乳類ではなく鳥類ですけど)。イルカにラッコ、オットセイなどなど、実際に飼育しているものだけではなく、野外で衰弱個体が見つかった場合なども扱っています。

 まあ、防水の上下スーツで身を固め、ほぼ”変態”だけどそこそこ優秀で、仕事にクールで冷淡な獣医さんに翻弄されたり、経験者から教わる様々なノウハウや試行錯誤、そして失敗談などなど、水族館で飼育を担当している人達への取材の成果がなかなか出ていて、さらに大型獣に特化しているという軸足は、悪くない感じがします。

 ちなみに、、、<完全に> 余談ですけど、2巻で出てくるキタオットセイのエピソードで、「絶滅危惧種だから手を出せない」というくだりがあります。
 ここだけ微妙に引っかかったのと、私もよく知らなかったので調べてみました。

 「絶滅危惧種」というと大雑把な言い方なんですが、大抵の場合は環境省や県などが出している「レッドデータブック(レッドデータリスト)」(略称はRDBまたはRL)に使われる呼称です。が、これには法的な縛りは全くありません(別途、条例などで保護動物などに指定していない限り)。「量的・質的に絶滅のおそれがあるかどうかのランク付けした」という意味しかないのです(とはいえ、環境省のRDBは、次に出てくる法律の種の指定における根拠として、活用されていますが)。

 法的な縛りがあるのは、通称「種の保存法」と呼ばれるもので、ここでは「国内希少野生動植物種」や、ワシントン条約掲載種に相当する「国際希少野生動植物種」などとなっています。けど、この管轄省庁は環境省ですから、本作品で語られているように水産庁(農林水産省)の許可云々とは違う話です。
 (通称:鳥獣保護管理法は、主旨がかなり異なる法律なので、ここでは割愛)

 じゃあ水産庁が管轄する法律って?というと、「臘虎膃肭獣猟獲取締法」。漢字で書くと意味不明ですが、「臘虎=らっこ」「膃肭獣=おっとせい」のことで、ラッコ・オットセイの捕獲及び毛皮製品の製造・販売について農林水産大臣が制限し、違反した場合の罰則などを定めた法律で、明治時代に国際条約に則って骨子が作られましたが(条約自体は1941年に失効)、形を変えて現在も有効な法律だそうです。

 なのでキタオットセイに限らず、オットセイやラッコは何でも水産庁の許可がないと保護も出来ない、触れない、という事態が実際に発生していて、時に浜辺に打ち上げられた衰弱個体を巡って大騒ぎになることも。それを具体的にエピソードとして取り上げたのですね。

 ただ、「絶滅危惧種だから・・・」という表現は、なんか適切じゃないなあと思うんです(一般の人には、その方が判り易いかもしれないんですが、誤解も生むなあと)。
 「法律で保護されているから・・・」と書くのが正解じゃないかなあと。細かい部分は置いておいて、この法律がキタオットセイに限らず有効とされているということは、コラム頁でも触れてもいいくらいかな、と思ったりしました。

 まあ、また細かな話をしてしまいましたが(汗)、色々な問題に触れて広めてくれることは、ある意味では啓蒙にもなって有り難いなあと思ったりします。

 作品自体は、上記のような堅苦しい法律論は書いておりませんので(汗)、普通に動物・水族館コメディーとして楽しめる内容です。ご堪能あれ。

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2018/04/06

みよしふるまち/縞田理理 「台所のドラゴン」 1巻 ジーンピクシブシリーズ KADOKAWA

 東欧「風」なとある国に留学した自然や動植物が好きな画家志望の女性が、とあるきっかけで部屋の中で見つけた卵から、トカゲとも何ともよく解らない動物が孵化してきます。  いつしか、種類も判らないその生きものと、東欧の「ドラゴ(いわゆるドラゴン)」伝説が重なっていき。。。

 偶然出会った生きもの(どう見てもドラ(ry )と一緒に、遠い東欧の片田舎の小さな小屋で一人暮らしをする少女(見た目)が、絵画学校に通いながら、狭い小屋(寝室も台所も一部屋)で日々を過ごす、そういう作品です。

 ”ドラゴン”がメインと言えばメインなのですけど、あくまで「急に現れた同居人」。ペットといえばそうなんですが、彼女にとっては先輩として部屋に棲み着いているヤモリと同等扱い。「一緒に住む隣人」といった雰囲気な気がします。ストーリーのメインはあくまで、日本を飛び出し、知人も最小限しかいない東欧のどこかの国で、自分が何をしたいのだろうという部分を探し、小さく悩みながら、「一緒に住む隣人」に癒やされる(時に振り回されますが(笑))といったところ。

 ざっくり言えば、若い女性の絵画を通じた自立への歩みと、その生活をちょっと潤してくれる、小さな”隣人”との交流を描く作品、と言った方がいいんでしょうかね。。

 原作では主人公はもう少し”年上”なのだそうで、コミックスにするに当たって、原作者も交えて年齢設定は下げたそうですけど(見た目が”小さい”のはまた別な気がしますが(笑))、どこか落ち着いて大人びた雰囲気を醸し出しているのは、その原作の雰囲気が残っているのかもしれません。

 とりあえずまあ、ドラゴンの漫画というよりは、東欧の田舎で自立を目指すレディー+可愛い動物+ファンタジー要素がほんのり、と言った塩梅の作品だと思ったらよろしいかと。
  

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