伊藤勢/田中芳樹 「天竺熱風録」 3巻 ヤングアニマルコミックス 秋田書店
伊藤勢といえば印度でしょっ!(意味もなく断言)
デビュー作である「ニルヴァーナパニック!!」からもう印度臭全開でしたが、あれから25年。。。全てがここに花開いているような、そんな気がします(←個人の感想です)。そういえば、3巻の表紙にもなっている女将軍って・・・(意味深)。
もうエスニック臭というか印度臭がハンパないです。
民衆の衣装から当時の建築物、そして風習やその他諸々、日本でも中国でもヨーロッパでもない、仏教文化だけではない様々な宗教の世界と共に描かれる、今のインドともネパールとも違う独特な<世界>が、作品の中に溢れかえっています。さらにそこに伊藤勢の渾身の”ギャグ”が隠し味のように唐突に現れたり、そして肉体を駆使した迫力のアクション・シーンまでてんこ盛りですから、ほんとに採算度外視です(←かなり言い過ぎ)。
原作は「銀英伝」の田中芳樹ですが(こちらの挿絵はは藤田和日郎ですね)、この作品自体は全1巻で完結しています。そもそも登場人物自体は”実在の人物”であるということ、そして史実をベースとしている、ということが驚愕です。読み始めてみれば、もう見たこともない世界観から「ファンタジー?」とも思えてしまうような、エンターテイメント作品になっています。そもそも物語自体が波瀾万丈過ぎて「ホントにこんな事があったの?こんな人が実在したの!?」と、読み進みながら2度ビックリ。
勿論、史実には人となりの詳細な記述がないため、キャラ付けから物語の進行自体には、かなり原作者の創作アレンジが入ってドラマ仕立てにはなっているようです(Wikipediaより)。私は原作を読んでいないので、この作品をさらに漫画化するに当たってどのくらい脚色されているか判りませんが、、、、作品の雰囲気を見る限りは、原作への忠実性よりも「演劇(漫画)としてのさらなるアレンジ」を楽しむことを考えた方がいいんじゃないかな、と思いました(まあ原作では、微妙な駆け引き中の微妙な表情までは描かれていないでしょうからね)。
大好きな作家のために、ちょっと熱が入りすぎてしまいましたが(大汗)、原作自体の面白さもあるのでしょうけど、展開がドラマチック過ぎて、そして腹の探り合いのような駆け引きや、登場人物達の状況分析も面白く、そして迫力のアクションやその演出も見事でして。。1巻の時はまだ序の口だったのか、物語自体が凄い狭い世界だけだったのであれでしたが(そりゃまあ、牢屋の中のお話が主ですから、狭いですわな(笑))、2巻、3巻と続くうちにスケールが大きくなり、ほんとに冒険活劇そのものの展開になってきました。
「ファンタジー」や「アクション」というキーワードで引っかかった人なら、存分に楽しめる作品だなと思います。
しかしまあ、創作アレンジが入っているとはいえ、本当にこんな波瀾万丈な状況に置かれ、それを知力と行動力で解決してしまった人がいたんですねえ、、、 「事実は小説よりも奇なり」は、ある意味本当にその通りだなあと。
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