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2018年1月

2018/01/31

緑山のぶひろ 「罠ガール」 1巻 電撃コミックスNEXT KADOKAWA

 釣りを筆頭に、様々な動物を捕らえる漫画は、ここんとこ色々と出ていますが、とうとう「わな猟」の漫画が出現してしまいましたっ(驚愕)。

 というより、この作品の場合、わな猟についてのマイナーで知る人の少ない(汗)知識を、一人の女子高生の「わな猟」を通じて上手に解説し、そして地味だけど半端なく奥が深いその魅力を、上手に描いているなと思ったりしました。

 まずもってして、銃猟は免許が必要と殆どの人が知っていると思いますが、わな猟って免許が要ることからして知らない人が多いと思うんですね。実はきちんと要るんです(勿論、罠の種類によります。法定猟法以外は自由猟法といって対象になりませんが)。

 よく害獣駆除にも用いられる、イノシシ、シカなどのくくり罠などの設置には、免許も要りますし行政手続きも要ります。そういう部分も作中で少しずつ、きちんとした解説が加えられており、農作物被害防止のために捕獲するという設定の中、地域の猟師さん達との交流も含め、ある意味では「ハンティング・ライフ」について、結構丁寧に描かれているなあという感じがしました。

 私は免許を持っていないので、描かれている事が全て正しいかどうかという部分は断言はできませんが、作者本人も田舎暮らしで農家ということのようなので、実際に狩猟をしている人に聞きながら描かれているだろうという部分も、地域の人達との交流を描く中~滲み出ている感じがします。

 まあ、うちの周辺には野生動物は居ないので、わな猟をすることは難しいんですけど、ある意味では生活を賭けた農作物被害との戦い、そして動物との文字通り”命を駆けた”かけ引きと騙し合いの世界が、リアルで丁寧に描かれている、そんな感じがします。

 農家の人達にとっては、害獣との日々の生活上の戦いはリアルな問題です。野生動物に罪はないと言っても、現実的には始まらないお話。ある程度間引くことも必要悪ですし、それを上手に処理して美味しくいただく、というのが、いまできうる最善策なのだろうなあ、と思ったりする昨今です。

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2018/01/29

水上悟志 「二本松兄妹と木造渓谷の冒険」 全1巻 ヤングキングコミックス 少年画報社

 何というか、たった1冊の単行本に、先の全く読めない物語を1本の映画のように押し込めた、一人の少女を巡る退魔師と拝み屋の次元を超えた戦い(?)を描く、冒険活劇作品です。

 全1巻に、よくもまあこれだけ色々と詰め込んだみたいな感じがします。けどそれが破綻なく構成され、様々な場所に散りばめられた伏線が、物語の流れの中で回収され、見事にまとまっているんですね。

 何というか、2クールのアニメを総集編的に映画化してギュッとまとめたみたいな、ある意味でそんなテンポの良さと、次々と現れてはきちんと回収されていく伏線の巧妙さを楽しめる感じがします。

 とにかく何というか、まずはスピード感です。それでいて実は世界観のベース設定は複雑ながら細かいんですね。退魔師と拝み屋って、そもそも似たようなもんじゃんと思われそうですが、実は(この作品の中では)明確に区別されており、そして本来は退魔師の方が偉いようなんですが(という設定)、ある”少女”を巡って彼らが敵対することになると。

 出てくる妖怪といっても、どちらかというと「神様」に近い位置付けですね。タイトルにある「木造渓谷」は、彼らの住み処とする別次元の世界といったところです。というか、退魔師の使いで大量に出てくる”スズメ”がよーわからんですが(笑)、、あ、あれは式神か。

 基本的にドタバタ・アクション・コメディーといったところですが、何というかこのスピード感とまとまり感で、ちょっと読後がすっきりな作品ではあります。

 まあ、続きは出ても出なくてもいいんですけど(けど、こんだけ贅沢に設定した世界を、単作品で終わらすのは少々勿体ない気も?大盤振る舞い?)、とりあえず「単品」で楽しめる事は間違いないかなあと。
 

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2018/01/26

仲川麻子 「飼育少女」 1巻 モーニングKC 講談社

 タイトルからも、表紙からしてももう狙う気満々という体裁ですが(笑)、担任でもない生物教師に呼び出され、「生きものの飼育」をいきなり勧められる女子高生と、そんな彼女を<観察>する意図不明な生物教師の交流を斜め上から描く、「生きもの飼育するんだけどなんかかなり変」な作品です(笑)。

 いきなり勧められるのは「ヒドラ」。ドゴラとかヘドラとかいう怪獣ではなく、クラゲやイソギンチャクと同じ仲間の淡水性の刺胞動物です。インスタントコーヒーの瓶に入れたそれに、シーモンキーを与えながら、彼女は生物飼育と観察の世界にドップリと填まっていくのです。それが罠とも(ry

 ※ちなみに表紙で持っているのは、同じ刺胞動物のイソギンチャク。他にも様々な「身近だけど変な生きもの」が出てきます。

 まあ、狙っていると言い過ぎるのもアレですが(笑)、別に少女を飼育するという漫画では少なくともありません。ただ、、、語弊はありますけど、”少女を観察する”ということはしっかりやってます。

 というより、この世間ズレ(爆)した教師が、主人公である少女のどこに、何に興味を持ち、魅力を感じたのかという部分が、生物が好きな人から見ると<とてもわかる>というか、共感を感じる部分があります(えぇえぇ。私も世間ズレした変(ry )。

 生物を見て「かわいい」という感想は子供でも言いますが、ボキャブラリーや知識がないと、それ以上の発展はありません。色々な事を感じても、「かわいい」という形容でおしまい、ということも多いです(中には少ない単語を駆使して、素晴らしい感想を述べてくれる子もいますけどね)。

 それが中学生以上になってくると、「どこが可愛い?」という部分を、他の事象等で形容ができるようになってきます。これは知識も含めて様々な刺激の記憶を紐解き、「○○みたい」という風に置き換えて表現するわけですね。ただ、実際には興味があまりない、深く観察しようとしない場合には、少々おざなりな「かわいい」という形容詞だけで終わってしまう事の方が多い、、、とも言えます。

 こういう複雑な表現というのは、本当に好きで、そして何故そうするのかなど、色々と考えながらよーく生きものを観察してみないと、なかなか出てこないんですね。時にそういう能力を「感受性」という単語で表現する場合もありますけど、あまりに独創的な表現をしてしまうと、こんどは周りの人が引いてしまう、、、と。

 なんかあまり深く考えずにただ「かわいい」としか言わない人の方が多いと思いますが(あるいは何か思っても口にしないとか?)、生物屋さんはそれでは完全に満足はできないのです(※個人の感想です)。

 このヒロインは、狙ってちょっと斜めな表現をする事が多いですが(笑)、実に巧みに自分が見た現象について、「○○みたい」と、するっと素直に独創的な表現をするんですね。狙っているとはいえ、生物以外の色々なジャンルの単語が飛び交いながらも、ある意味で「はっ」とさせられる表現が散りばめられています。そこがとても面白いんですね。

 随所にある友人や先輩との「言葉遊び(略しまくり)」も絶妙ですが、生物の魅力もあまり強く主張せずにベースとしてしっかり構成されていながら、生物の知識がない人にも楽しめるよう丁寧に解説がされ、そして多くの謎(主に謎教師)を秘めながら物語が構成されています。色々な意味で、なかなかの意欲作ではないかなあ、と思ったりします。

 何かどこかで聞いた名前だなと思ったら、「ハケンの麻生さん」の方じゃあないですか。なる程、生物の飼育等に関する描写や”生物愛”が深いわけだと思ったりしました。

 未完となっている「ハケンの麻生さん」も、この作品で勢いをつけてちゃんと続きを描いてもらえるといいなあ、と思ったりしました。。
 

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2018/01/24

イダタツヒコ/広江礼威 「築城院さんハシャギ過ぎ」 1巻 サンデーGXコミックス 小学館

 邪悪とも言い切れず、相手を言葉で翻弄する謎の女子高生「築城院さん」と、その対面する人物の視線だけが描かれ、そして一方的に築城院さんの”セリフ”だけで物語が進行する、伝奇・オカルト的な雰囲気を醸し出す、少し不思議なオムニバス作品です。

 まず最初に断っておきますが、私は原作である「RE:CREATORS」は未読です。
 というより、その作品からのスピンオフであることを、巻末の書き込みを読むまで知らなかったくらいです(爆)。なので、あえて彼女の”能力”については触れません。というか、読み終わるまで私もそれが”能力”なのか判らなかったし(笑)。

 原作での「築城院さん」の立ち位置(悪役である?)と作風は判らないんですが、そういう予備知識が全くない状態において、何か引き込まれてしまう、面白い、、、と思ってしまった次第です。

 そもそもイダタツヒコも広江礼威、どちらもも大変好きな作家さんですから、なんでこういう組合せやねん?という、ちょっとビックリした感もあったんですよね。漫画のキャリアとしてはイダタツヒコの方が長いわけで(といっても、長期連載となる作品は確かにあまりなく、最近は原作者としての作品が多いですし)、不思議な感じがしたんですが、実際に読んでみて、「ああ、これはイダタツヒコの世界観だ。。」と納得してしまいました。

 原作を知らないが故に、このキャラクターがどこまでアレンジされているのかは判りませんが、彼女の語り口や、そして話し相手の視線だけで進行するという、かなり思い切った「一人芝居」のような構成のこの作品自体は、色々な伏線や仕掛けで楽しませてくれるイダタツヒコ的な演出そのもので、原作とは異なるオリジナルな味付けかと思います。

 そしてその「舞台」に、このある意味で妖艶で濃い「築城院さん」というキャラが、完全に見事に填まっているなあ、と思う次第です。

 アニメ放映の際(そちらも見てはいませんが)、広江礼威がキャラデザインでアニメに関わっているのかな?、という浅い知識しかなかったため(実際には原作者として物語まで含めてどっぷりだと、この作品を通じて知りましたが(汗))、コミックス版も出ているのが気になりつつ、ちょっと手を出していませんでした(キャラデザという認識だったので、手に取っていなかったという食わず嫌い(汗)。。。大反省)。

 ただ、このスピンオフ作品が面白かったから、原作を読もうかなというのとは、弱冠違います。この作品は完全に<元作品とは無関係に>実験的で面白い作品になっています。

 そしてこれを通じて、広江礼威が原作としてどれだけ関わっているかという部分を改めて知ることになったので、改めて興味を持ったのです。

 正直、オカルト系が好きな人なら、原作の予備知識は全くなくとも十分過ぎるくらい楽しめるでしょう。また、物語の意外性や漫画の構成の絶妙さ加減からも、漫画好きな人でも楽しめるんじゃないかな、と思ったりしました。

 そして原作から入った人でも「同じ材料使ってるけど、カレーが肉じゃがになりました」的に、変な話、二次創作物的な感じで楽しめるのではないかな、と思ったり(・・・あくまで原作知らないので、元からどれくらい乖離してるかは判りませんけど(汗))。

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2018/01/22

ワキサカ 「アイちゃんとえほん」 全1巻 ビッグコミックス 小学館

 帯にもある「昔話がえらいことになっている」は、読んでみないと弱冠判らないかもしれませんけど、主人公はとりあえず絵本好きなアイちゃんと、その朗読に付き合うお父さんのお話が軸になっています。

 問題は、アイちゃんが持ち寄る「絵本」の中身です。まあ詳細は読んでからのお楽しみ(?)ですが、しっちゃかめっちゃかに漫才用に書き下ろされたかのようにアレンジされています(笑)。

 この”謎”の絵本を提供しているのは、アイちゃんのお話を総合すれば「謎のおばあさん」のようなのですが、まるで某諜報部員の如く、様々な場所に潜伏しながらこの「謎アレンジな絵本」をアイちゃんに提供し、そしてお父さんは、ノンストップで怒濤のようにツッコミを入れざるを得ないという。。。

 そもそも、誰もが知っているメジャーなお話を、しっちゃかめっちゃかにアレンジしまくってる訳ですが、何でか最後には「いいお話」にまとまっちゃうという、ツッコミ入れてる方も力が抜けるというか、全面的に批判できない内容であったりするんですね。その辺りが、「謎のおばあさん」の意図が最後まで読めないという「うやむや感」と相まって、妙な読後感を与えてくれるというか、そんな作品になっています。

 まあ何というか、純真無垢なアイちゃん(天然のボケ役)と、的確に延々とツッコミをせざるを得ないお父さん、そして暗躍する謎のおばあさんと、童話の主人公達をのぞけば登場人物は結構少ないんですが、それぞれのキャラが立っていて、アレンジされた童話の先の展開が全く読めないという事もあり(笑)、ぐいぐいと読まされてしまうという不思議なパワーがあります。

 有名な昔話を面白おかしくアレンジするなんて遊びは、子供の頃は誰もがよくやった経験があると思います。それを大人風に上手に”最後になんだかいいお話になるように”アレンジしてあり、そしてその語り部である2人のやり取りが天然な漫才状態となっていて面白く読ませてくれる、そういうところがちょっと新しいのかな、と思ったりもしました。

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2018/01/19

本間実 「元女神のブログ」 1巻 モーニングKC 講談社

 元神属性な存在(吸血鬼等も含む)でありながら、人と恋に落ち、そして人として生きるという選択肢をした”女性達”の、子育てとその生き様について描いていくという、少しベクトルの変わった作品です。

 ファンタジー世界の主人公達が、現代社会下で「子育て」という現実的な問題に直面していき、”自分の存在は何か”を悩み考えていく、という物語ではあるのですが、読んでいけば判りますが、これは「出産・子育てのために”退職”せざるを得なかった女性の方々」の悩みを代弁している、とも言えるかもしれません。

 泉の女神であった過去から、神々しさをどこか失い、「普通の主婦」となってしまった主人公。「最初の頃の神々しさが無くなった」という義父の言葉から、様々な思いを巡らしていくことになりますが。。

 ちなみに”元”泉の女神である彼女を中心として、様々な人間生活を頑張る元人外の「母親達」が、オムニバス形式で登場し、それぞれ個別に感じる生活の悩みなどが描かれていきます。

 ある意味、本作の救いといったらアレですが、それぞれの母親が自分の子供を「ベタ惚れ」している、という部分は有り難いなあと思います。近年人気となった「コウノドリ」でも、出産の大変さのほか、仕事への復帰の壁、育児上の様々な悩みから、「ネグレクト」を引き起こしてしまう女性なども描かれていますが、ある意味、相談相手がいなければ、誰でも陥りかねない精神状態だとも言えます。

 そんな中、そういう逆境や苦労を「子供の可愛さ」ではね除け、自分なりの生き様を見いだそうとしていくこの作品の場合は、ちょっとベタベタ過ぎるところが人によってはアレかもしれませんけど、ある意味では子育てでどうしても失う事になるものを、「子供達が補填してくれる」という、ポジティブな描き方をしてくれている、という感じがします。

 世の中、そんなに上手くいく話ばかりではないのも確かですけど、多少なりとも失ったものより、もっと大きなものを得られる、「子育て」はそういうものなんだろう、と考えさせられる部分もある、そんな物語が綴られています。

 今後の展開としては「元の仕事への復帰」という壁へのチャレンジ、という部分も描かれていくのかな、という気もしたりします。もっとドロ臭い世界だという事は重々承知の上で、様々な種族ネタを活かして、どういう物語を描いていくのか、ちょっと楽しみな作品です。

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2018/01/17

くろたま 「社畜に死神が憑く案件」 1巻 ジーンピクシブコミックス KADOKAWA

 仕事ができるが、ある意味お人好しで他人の仕事までバリバリとヘルプしまくり、いわゆる「社畜」と化したOLの家に死神が押し掛けてくる、そういう案件のお話です。

 ただし死神がやってきたのは「命を奪う」のではなく、きちんと寿命を全うするために、寿命をイタズラに縮めるだけの、彼女の<超荒れた生活>を正すため。

 一巻では「死神」の活躍の場は、家事と休日の生活までですが、結局のところ根本的な問題は、デキるが故に頼られ、そしてテキパキと仕事もこなすが故に、他人の為に残業時間が増えるだけの、彼女の会社での仕事ぶりな訳ですね。。

 死神に生活のヘルプをさせるにしても、こういう理由付けでやるんかっ、というアイデアも面白いんですが、それ以上に気になるのが、スーパー凄腕社員である彼女の活躍ぶりと、そのしわ寄せがすべて自分の生活を犠牲(本人自覚なし)にしているという点ですね。

 ある意味では、キャラとしては他の漫画であれば、本当に「優秀な切れ者社員」として描かれる存在かもしれません。けど残業で午前様が続けば、精神的にも体力的にも無理が生じるもの。そういう意味で、トラブルやその解決までの道筋も、さらっと描いてはいますけど、日常的にどこの会社でも起こり得る内容であって、とてもリアルに「なぜ(日本人は)働きすぎてしまうのか」を、婉曲的に描いている気もするのですよね。。

 単なるコメディーではあるんですが、どこかこう、実際に会社などで働いてる人にはわかる、ドキッとしたシーンが随所にあったりします。

 自分自身や、周りの状況でこういうシチュエーションあったよなとか、こうせざるを得ないだろうけど、負担ハンパないよな、、とか、妙に身につまされるとともに、そんな自分らをフォローして支えてくれる「会社ではない場所」の存在って、本当に大事だよな、、と考えさせられる、そんな作品です。

  

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2018/01/15

中村哲也 「ネコと鴎と王冠」 全1巻 ハルタコミックス KADOKAWA

 ビールはビールでも、ドイツの蒸留所に入り、ビール職人を目指すとある日本人の若者のお話であり、そして強烈にラブコメです(強調)。

 実家はそもそも造り酒屋ということで、それを踏まえての修行というわけですが、ドイツにおけるマイスター制度を踏まえた修行の日々を、ビール醸造所の人々と共に少しずつ登っていく、そういうお話ですが、ある意味では職業ものにアリガチな「チャレンジ」や「挫折」といったものは、そう大きく扱っていません。

 基本的には伝統的なヨーロッパのマイスター制度の中に見習い職人として入り込み(そういう意味では修行期間だけで数年以上の時間が必要)、その中で少しずつ色々な人々に学びながらビールを極めていく、そういう”仕組み”というか”制度”の紹介がキチンとされた上で、ドイツ娘とのラブコメが(ry

 まあラブコメを強調し過ぎるのもあれですが(笑)、漫画として、物語として面白いかどうかという部分、どうしてもこういうノウハウ系の作品では二の次になってしまう部分がある気がします(全部という訳でもありませんのであしからず)。そういう意味で、きちんとした”ビール職人”の作業を丁寧に描きつつ、そこに挑む青年と醸造所の娘のドラマも、かなりソフトな描写ではありますけどキッチリ気持ちよく描いているなあ、と改めて思った次第です。

 そういう意味で、ラブコメを読みつつビールや職人制度の奥深さ、そして歴史と共にその柔軟性のような部分までを、いつの間にか平行して描いているんですよね。

 ある意味、ドラマチックで派手なシーンがある訳でもなく、淡々とした日常をドキュメンタリー的に描いているという部分で、好みや評価も分かれるような気もしなくはないですが、私はこういうある意味”楽しめる”作品はとっても好きです。

 趣味や職業を描く作品は、なんか意外性とか人間ドラマとか、そういうものが求められていると思われがちな気もするんですけど、あくまでそれをドラマの味付けとして捉えて、登場人物の人生観やラブコメ(違)をメインに描くというのもアリだよなあ、と思ったりする次第です。

 勿論、物語としてはかなり伏線もあり、この後も物語は(時空を超えて?)連作として続いていくという事のようなので、そういうドラマの仕掛けの方も楽しめそうな、そんな作品ですね。

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2018/01/11

【年始め】2018年の漫画に思うところ

 仕事が忙しいという言い訳はありきたりですが、なかなか紹介を書けないで年を越してしまいました。2ヶ月も止まってましたね(汗)。
 このまま年度末に突入してしまいそうです(=4月まで書けないかも?)。。何冊かはコメント書きたいと思っていますが。

 今年もよろしくお願いしますと言いたいところですが、まあこんな調子なので(笑)、時間が作れた時に適宜書かせて戴ければと思います。
 読むのは読んでいるんですが、書き始めると今度は読む時間が減るというジレンマでジタバタ悩んでいる昨今でもあります。。

 で、年明けのネタとしては「このマンガが凄い!2018」の中から、自分が読んでいる作品だけピックアップしてみようかと思ってみました。コメントを既に書いている作品は、そのリンクも入れておきます。

2位 板垣巴留 「BEASTARS」 1~6巻 少年チャンピオン・コミックス 秋田書店


 過去のコメントはこちら。「本能」を「心(精神)」で抑え込むという形での動物青春群像劇といったところでしょうかね。


3位 大今良時 「不滅のあなたへ」 1~5巻 KCコミックス 講談社


 まるでアメーバのように変幻自在ながら心もない謎の”物体”から変質し、出会った動物や人と関わりながら”心”と”意志”を育んでいく謎の”存在”が、様々な出会いと”死”を通じ、迫りくる謎の敵から逃れつつ変化していく様を描く、謎に満ちたSF作品。


6位 白浜鴎  「とんがり帽子のアトリエ」 1~2巻 モーニングKC 講談社


 過去のコメントはこちら。とあるきっかけで「魔法の秘密」を知ってしまった少女が、魔法を正しく修得すべく魔法学校に入学し、様々な試練をかいくぐっていくという作品。魔法の設定がオリジナリティーがあり、ちょっと面白い。


7位 野田サトル 「ゴールデンカムイ」 1~12巻 ヤングジャンプコミックス 講談社


 過去のコメントはこちら。言わずと知れたアイヌグルメ漫画(違)。


10位 浅井蓮次/沢田新 「バイオレンスアクション」 1~3巻 ビッグコミックススペシャル 小学館


 過去のコメントはこちら。どこか普通の様に見えて、心のどこかが部分的に壊れている、そんな殺し屋少女の活躍を描く物語。


12位 武田一義 「ペリリュー 楽園のゲルニカ」 1~3巻 ヤングアニマルコミックス 秋田書店


 過去のコメントはこちら。可愛い絵柄で凄惨な太平洋戦争の中、生き残ろうと戦う日本兵達を描く、ある意味では”リアル”に戦場とその中でもがく人々を描いた作品。


14位 桑原太矩 「空挺ドラゴンズ」 1~3巻 アフターヌーンKC 講談社


 過去のコメントはこちら。言わずと知れた、竜を食べるファンタジーグルメ漫画(既視感)。


18位 鴨鍋かもつ 「魔王の秘書」 アース・スターコミックス 泰文堂


 過去のコメントはこちら。魔界を席巻し支配し、世界征服戦略を着々と進行する、人間だけど有能でどこか壊れている美人秘書の活躍(?)を描く物語。1巻しか出ていないのにこの順位、結構インパクトがあったってことでしょうね(笑)。


23位 小林銅蟲 「めしにしましょう」 1~4巻 イブニングKC 講談社


 過去のコメントはこちら。 「マツコの知らない世界」で突如メジャーになってしまった(かもしれない)、究極の低温調理系<カオス>漫画。


26位 九井諒子 「ダンジョン飯」 1~5巻 BEAM COMIX エンターブレイン


 過去のコメントはこちら。今さら言うまでもない「モンスターをいかに食すか」という発想の転換の先駆けグルメファンタジー(最近、妖怪を食べちゃう系のマンガも増殖しつつありますが)。



26位 双龍 「間違った子を魔法少女にしてしまった」 1~2巻 BUNCH COMICS 新潮社


 過去のコメントはこちら。泣く子も叩きのめし滅殺する、ギャップ系バイオレンス魔法少女マンガ


28位 藤田和日郎 「双亡亭壊すべし」 1~6巻 少年サンデーコミックス 小学館


 ちょっと最初の仕込みが長かったですが、想像力を超えた敵と藤田節で逆境を乗り切るアクション漫画


33位 二瓶勉 「人形の国」 1~2巻 シリウスKC 小学館


 まだ1巻なので何とも言えないんですが、世界観については変わらない・・・のがいい(と私は思う)SF作品です。


43位 米代恭 「あげくの果てのカノン」 1~4巻 ビッグコミックス 小学館


 他人、或いは地球人類自体の存在なんかお構いなしのストーカー少女と、戦いと再生を繰り返しながら心が壊れているヒーロー青年のゲスな恋物語と言わざるを得ない、感想を書くのをかなり躊躇っている問題作品。病的に外見だけで判るようにストーカーを描くのではなく、普通の心理の延長上にあるような、一般的には極普通の人にしか見えない、けどいろんな意味で<酷い>という部分が逆に怖いなあと思わせられます。。


44位 おかざき真里 「阿・吽」 1~6巻 ビッグコミックス 小学館


 最澄と空海という、歴史上の人物の半生を、殺伐でありつつ異様に生々しく描く、歴史人間ドラマ。


44位 冨樫義弘 「HUNTER×HUNTER」 ジャンプコミックス 集英社


 連載が云々はどうでもいいんですが(笑)、読めばそれなりに駆け引きなんかが面白い作品であったりするんですよね(困ったことに)。


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