小林銅蟲 「寿司 虚空編」 全1巻 三才ブックス
寿司、、そう。寿司屋の場面から始まるこの作品ですが、もう1ページ目を開いて2ページ目から、全て崩壊しています。
突如始まる<グラハム数>探求の旅、そして<フィッシュ数>への数学的怒濤の展開、、あらゆる数学記号が飛び交い、数の大きさ=強さという前提で探求される数式の積み重ね、、、
要するに「巨大数」を追い求めるという数学的なプロセスを、漫画という枠を使いながら、ビジュアル的に魅せてくれるという、、、そういう漫画・・・なのかもしれない何かです。
というか、そもそも寿司屋であることが何の関連性もなく、異次元と繋がるわ、ヒロインは○○だわ、今どき珍しいくらいの崩壊型<不条理漫画>と化しているんですね。落語的な不条理ではなく、まあ吾妻ひでお的なカオスな不条理というか・・・。
けどまあ、実際読んでいても数学アレルギーな私には、内容はちんぷんかんぷんなんですが(こらこら)、関数を使いながら展開し続け、数式だけで4ページ以上ズラズラと並べることで<数学をビジュアル的に表現する>という事をしているところが、何というか凄いなあと思ったんですね。
内容は理解できなくとも、そのプロセスの面白さ、展開を続けていくと、あるとき突然、左右で消せる数字や枠が出てきて、そしてかなり単純な数字と記号の関数が導き出されてきた時、解りもしないのに(爆)、なんだか「・・・美しい、格好いいかもしれない。。。」と思わされてしまったりします。
正直、この作品はどういう人が読むべきなのか、勧める相手がよく判らないという感じがありますが、思い切って<数学アレルギー>なヒトが読んでみたら、なんか数学の見方が急に変わってくるような、そんな感じも受けるかもしれません。
・・・が、ちょっとこのカオスな不条理展開は、その部分でかなりヒトを選ぶかもしれない・・・。私はもうこの部分だけでごはんが食べられるんですけど、一般的には不条理漫画って「理解できない」ということで敬遠されてしまうんですよね。。
まあ、嫌われている数学の世界と敬遠されている不条理の世界がここで融合し、新しい世界が開けていく・・・そんなことには・・・なってないかもしれませんけど、なんか頭の中がグネグネされる、そんな漫画です。
けど、中身のメインテーマ(?)である「巨大数」については、査読まで付けて超本気モードな本です。これは御本人が好きでかなり拘ってやっていないと、ここまで踏み込み、そして噛み砕いて漫画として描くなど絶対できません。そういう意味では「巨大数とは何か」というとっかかりの入門漫画本としては、凄い本なのかもしれません。。
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