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2017/05/15

板垣巴留 「BEASTARS」 3巻 少年チャンピオンコミックス 秋田書店

 肉食動物と草食動物が一緒に社会を作っている、そんなファンタジー社会において、学校での演劇部を中心とした青春群像劇、といったところです。

 「BEASTARS」とは、そんな演劇の頂点を極めた校内の称号ということになっています。

 一見、ディスニー映画の「ズートピア」などをイメージしてしまいそうですけど、肉を求める本能を抑えることに苦悩する肉食動物達と、そして肉食動物に対して本能的に怯えつつも表面上は仲良く振る舞い共同生活をする草食動物。。

 本来、相容れない動物達を一つの社会に無理矢理押し込むことにより、楽しいギャグ漫画やアニメの世界とは違って、根本的な問題が生じるわけです。その矛盾にどう無理矢理折り合いを付けていくのか、という辺り、社会の仕組みとして一応様々な<教育手法>が学校では取り入れられています。

 動物仲良し漫画(けものフレンズまで含めて(笑))に対して、この根本的な矛盾をリアルに表現したら一体どうなるのか、という試みの一つとして、雷句誠の「どうぶつの国」という作品がありました。この中では言葉を統一するという形でのカリスマの存在と(種族を超えたコミュニケーションは、言葉の壁があって取れないという前提で、全ての動物とコミュニケーションできる”人間”が数人だけ存在)、肉食動物でも食べられる作物を育てていくことで喰う喰われるという状況を解決していく、という形を取っていました。

 対して、この作品では、かなりシビアな”洗脳教育”のような教育プログラムによる封じ込めと、法治による社会秩序の構成によって、矛盾を孕みながらも一つの共同生活社会を形成しています。

 あまり人間社会などとの比較を行う事は野暮な気もしますが、どことなく現状、人間社会が抱えている矛盾を彷彿とさせるような、そんな錯覚も憶えさせられます。。

 作品としては、あくまで本気で<動物の習性>を理性と社会機構で押さえつけることで、果たして破綻なく成立していくのか、という部分をリアルに描いているような気がします(そういう意味では、人間社会を婉曲的に揶揄している、というのとは少し違いますね)。当然、そのはみ出した欲求のはけ口として、街中には<裏市>という戦後の闇市のようなものが非公式ながら存在が許容されていたりもするわけです。。

 そして定期的に草食動物を狩って食べてしまう肉食獣が、殺”人”犯として指名手配され、社会問題とされていくと。。ただ、殺して喰わないまでも、単なる殺人と置き換えてしまえば、現在社会でもある意味、日常茶飯事な光景とも言えなくもありません(野暮といいつつ、つい比較してしまう(汗))。

 全く文化も異なる、異質なものを法律と社会秩序だけで融合し、生じる矛盾や問題を解決していけるのかという、それをシンプルに肉食動物と草食動物を用い、ある意味壮大な<シミュレーション>をしているとも言えるんじゃないかなあと。。

 そんな中、演劇部で裏方をする灰色オオカミのレゴシは、様々な種類の動物の先輩、同級生などとの交流を通じて、本能との葛藤しつつ、自分が求めているのは何なのか、どうしたいのかを思い悩んでいくという、、、この部分は、まさに<青春物語>と言えばその通りなのかな、と言う気がします。 ←物語のあらすじこれだけかよっ!

 2本脚で服を着て歩いている動物社会という設定ですから、あまり動物の習性どうこうという部分は、リアリティーのある外観以外はそう気にならないんですが、”肉食”という本能を、どこで折り合いを付けて飲み込み、そして社会と折り合いを付けていくのか、、、その辺りを人間社会とも無意識にダブらせながら、考えさせられる作品です。

 

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