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2017/04/04

左藤真通 「アイアンバディ」 2巻 モーニングKC 講談社

 ロボットの開発を題材とした、ある天才と秀才の戦いを描く作品、、と私は解釈しました。

 主人公は、ある天才肌の科学者であり、ロボット技術に並々ならぬ情熱を傾ける男です。が、正直に言えばコミュ症とも言えるくらい、人付き合いは無頓着、お金にも無頓着、そして好意的に対応して貰っても無頓着、という、人間的にどうよ?というくらい「天才と●●は紙一重」と言っても過言ではないくらい、孤高の人という感じですね。
 多分、イメージして貰うなら「スティーブ・ジョブス」から攻撃性を省いたような、そういう人物です。そう考えていくと、彼の考え方は合理的で、まさにアメリカンな発想なのかもしれません。

 町工場の片隅に場所を借りながら開発をしつつも、何ら成果を上げられないまま資金不足に陥り、その工場の経営者である同僚(女性)から退去を命じられ、開発途中のロボット(脚だけ)の「ロビンソン」とパソコンだけを抱えて、ホームレス同然という状況に陥ります。

 起死回生の展示会での発表を通じて、彼の特異稀なる才能は、徐々に世界に”発見”されていくことになります。

 夢中になると周りが見えない、面倒な過程はすっ飛ばして「必要なことだけを順番にやっつけていく」というスタンス。同僚にしたら勘弁してよ、、な感じを受けますが(笑)、ある意味、実際に動き始めた”ロボット”の驚異的な性能を見せ付けられると、誰もが<放っておけない>と感じさせる、それも納得ができます。

 作中では、彼のライバルとして、研究を諦めて大企業へ就職していった同僚がいます。彼は一見、ロボット開発のような夢を追いかけるだけの研究は「現実を見ていない」「お金にならない」と一蹴するわけですが、実は彼の中には、大企業の人脈や開発資金を活用しながら、<ロボットを開発するための土壌作り>を虎視眈々と進めているわけです。自分の夢を実現するためには、どのようなアプローチが必要なのか、そういうベクトルで行動し、次々と課題をクリアしていく、そういう秀才肌な人物として、対照的に描かれています。

 彼から見れば、その才能はどこかで認めつつも、そんなお金の心配もせず、ビジネスも何も考えず、自分のやりたいように研究を進めながら廻りの人々を巻き込んで迷惑をかけ続ける主人公の存在は、疎ましいとしか思えません。

 資金の目処が何とか付いた天才肌の主人公と、ライバルである秀才肌の”もう一人の主人公”。目指すところは同じ場所なのかもしれません。どのような展開が待ち受けているのでしょうね。


 物語のあらすじと感想としてはこんな所ですが、この作品、1巻目では食指が動かなかったんですね。改めて表紙・裏のあらすじ、帯を見ても、パッと内容がイメージできなかったんです。2巻目の表紙やあらすじを見て、それから帯を見てから面白いかも?とやっと感じて1~2巻まとめて読んだんですが、それで「あ、結構面白いかも」とやっと”発見”した次第です。

 いわゆる今ある「ロボコン・ブーム」の先、行く末を見つめている作品だなあと思いました。

 ロボコンは私も好きですが、あそこで育まれたアイデアや情熱は、本当に日本でこれから<もの作り>に活かされていくのだろうか?という現実面を見た場合、少し不安があるんですね。物語の最前線は、ある意味では「中小の町工場」だと思うんです。最近は、その町工場の底力を題材にした番組も随分作られていますが、成功した事例というのは、そんなに多くありません。現実的には、開発などという世界は町工場にはほとんど無く、大企業の中でも<ビジネス>という名のもと、日の目を見るのはほんの一握りでしょう。

 そんな情熱や隠れた才能を、どのように今後日本で活かしていくのか。中小企業から大企業まで、色々なパターンを組み込みながら、シミュレーションしていく。。夢を夢で終わらせないためには、何をすればいいのか、そんな段取りや道順があるのかを、この作品は見せてくれてるんじゃないかなあ、と思うんです。

 ロボコンに参加している人達や、今でも趣味でもの作りをしている人にこそ、じっくり読んで貰いたいなあ、という気がします。現実の中なら”夢”を拾い上げ、それを”実現”していくまでの地道な足取り。これからどうなっていくのか、ちょっとワクワクする作品です。

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