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2017/04/06

柳原望 「かりん歩」 1巻 MFコミックス フラッパー メディアファクトリー

 大学を出たはいいが就職氷河期の中、連戦連敗の心を癒やす祖父の喫茶店に出入りしていたわけですが、その祖父が突然倒れ、ひょんなことから祖父が経営していた喫茶店を引き継ぐことになった、おっとりのんびりなヒロインの苦難の道(?)を描く、そんな作品です。

 メインの話は、上記の喫茶店の経営を巡るドタバタではあります。祖父が他界したあと、突然現れた(離婚したと思われていた)祖母の介入で、喫茶店経営は右往左往のドタバタ状態。

 大型飲食チェーンを切り盛りするビジネスウーマンでもある、祖母の目的は何なのか、、、、

 妹や喫茶店の常連客などの協力を得ながら、ある意味ではマイペースで、そしてスイッチが入ると勢いで行動する、そんな彼女の行く末は如何に。

 物語のあらすじはこんな所なんですが、この作品にはもう一つのテーマがあります。それは前作「高杉さん家のおべんとう(全10巻)」のテーマと同じ、「地理学」です。地理学というのは「土地・水・気候などの自然と人間生活との関係を明らかにしていく」学問です。何だか地形とか地層とかをイメージしますけど、勿論それも一つの要素。どちらかというと「自然地理学」がその分野ですね(と、検索した内容を貼り付けてみる)。

 この作品で扱っているのは、「人文地理学」(人口・集落・経済・政治・民族など)と「地誌」(地域ごとの自然・文化・産業など)など、文系に近い、いや文系そのものの内容です。この(大学在学中はぼーっとして内容を理解していなかった(爆))「地理学」を(改めて)駆使して、問題の解決の糸口を見つけていく、というのがこの作品の醍醐味になっています。

 「地理学」は「高杉さん家のおべんとう」で、かなり深いところまで扱っていたものの、あくまで主人公の専門分野ということで、それを通じた現地調査や様々なイベントは物語中でもちろん重要な位置付けではありましたが、、、、変な話、あくまで地理学ネタは「主役」ではなく「脇役」という感じでした。

 実在の事象を踏まえた推理と考察などが面白いと思う人には、結構面白いネタが沢山ちりばめられていたと思いますが(私は結構楽しんでいました)、けど変な話、そっちを深くやり過ぎると”脱線”としか言い様がないというか、、、、「そのくだりは読まなくても物語の大筋は判るので、”余計な知識”」というか、「ト書き」に近いポジションだったような気もします。。

 それに対して、「かりん歩」では、地理学は<課題発見と問題解決のためのツール>として、実戦投入されてくるわけです。

 地理学、地理学というと判りにくいんですが、要はマーケティングに近いお話なんですね。

 スーパーを新規開店する場合、立地予定地の周辺数百mを歩き回り、住宅の状況(アパートが多い、マンションが多い、戸建てが多い、乗っている車はどんなクラス等々)や住んでいる人々を調査して、スーパーに並べるべき商品を絞り込むなど、要するに品揃えの方向性を決めていくわけです。

 私たちはその結果しか見てはいませんけど、同じ系列のスーパーでも、学生の多い街、年寄りが多い街、若い家族(子連れ)が多い街では、各店舗に並んでいる商品棚の面積配分や商品のグレード、総菜類の充実度、冷凍食品の取扱量などが結構違うんですね。都内だと、かなり露骨に店毎に商品を変えているのは、例えば「オオゼキ」なんかかな、と思います。

 作中でも、こういう出店調査に近い内容を、逆に辿っていくような作業をしていきます。こう書いていくと、なんか推理小説的な感じもあって、地理学なんて学問はちんぷんかんぷんな人でも、十分過ぎるくらい楽しめるんじゃないかなあと思ったりします。

 ちなみに時間軸としては「高杉さん家のおべんとう」の登場人物が、数年後という位置づけで”ほぼ”総出演します(喫茶店の常連客つながりで)。 そういう意味では、地理学というテイストを引き継ぎつつ、その切り口を変えた作品、とも言えるかもしれません。

 前作は主人公と姪っ子の微妙な距離感を少しずつ紡いでいくような、姪っ子オーラ全開な(違)お話でしたが、本作の方が、物語としては読者層が広くて親しみやすい、、かな?(※個人的な感想です。)
 

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