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2016年12月

2016/12/22

島崎無印 「オークは望まない」 全1巻 ジーンピクシブシリーズ 角川書店

 兵士に追い詰められた一人の少女を、通りがかりのオークが助け、そこから2人の逃避行が始まります。  人に追われる少女には、大きな声では言えない秘密があり、それはそのオークの故郷を奪うことになった原因でもあったと。。

 ある意味では人間の都合で「悪」とされてしまった、ファンタジー世界の住人達が、住み処を追われながらも逞しく生活している、そんな感じの作品でしょうか。

 いや、もっと露骨に人間を<悪>として描かれているといっても過言ではないかなあ。小人達やオークは、森の奥に逃げ込み細々と生活し、実際には悪さもしていないのに、それを色んな理由を付けて討伐にやってくる人間、、という図式ですね。

 ある意味では、追われる人外の彼らは、害虫・害獣扱いして駆除されようとする生き物達の代弁のような気もしますね。全ては<人間側だけの都合>で悪者にされていくと。。そう、”魔女”もそういう存在です。

 前作の「怪獣の飼育委員」でも、忌み嫌われるべき怪獣を、一部の人間だけですがコントロールが可能な”動物”として描くなど、少し斜めな視点から常識を疑ってみる、という感じのスタンスで描いているようですが、この作品もそんな感じですね。

 まあ勿論、そういう視点で描かれている作品は外にも沢山ありますが、ここにどこかこう”ほのぼの感”が味付けとして加わっているのと、ストーリー自体も複雑にし過ぎず、ある意味では言いたいことや伝えたいことを、婉曲的でもストレートに伝えようとしている、そんな感じを受けるんですね。そこが持ち味じゃないのかなあと。

 全1巻とは書きましたが、もしかしたら続編は描かれるのかもしれません(若干、中途半端な終わり方ですから)。これから続く二人の旅の行く末を、もう少し読んでみたいですね。。

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2016/12/21

藤栄道彦 「妖怪の飼育員さん」 2巻 BUNCH COMICS 新潮社

 様々な妖怪を集めた動物園ならぬ「妖怪園」のようなものがあったとしたら。。

 そんな妖怪園の一つである「西東京妖怪公園」に就職した新人飼育員の奮闘を描いた作品です。

 妖怪物も色々とありますが、切り口が結構面白いんですね。妖怪といっても知能が高い、低いという区別は存在します。それについては切り分け、知能の低い、本能に従ってしか動かない小さな妖怪などは動物扱いで、生息に適した環境を再現して「飼育」となり、知能が高い妖怪については、展示に協力して貰うということで「契約」して居てもらう、というスタンスでのお付き合いとなっています。

 まあ、性質からして気難しい所も多々ある妖怪も多いですが、そこはそれに応じて対応し(時に失敗しまくり)、そんな感じで色々な妖怪が、色々なトーンで描かれて行きます。

 現在の生活風習には合わない妖怪などは「絶滅危惧種」扱いとなり、生活様式を園内に再現することで保全したり、生理的要求(?)を満たすために、あれやこれやと工夫をしてあげるという、そんな感じですね。

 ちなみに当然ですが海外の妖怪、怪物等も登場します。この2巻ではケンタウロスが登場していますが、海外にも同様の施設があるという設定で、自分の意志で引っ越してきたことになっています。

 妖怪が大暴れして大災害、というような描き方ではなく、ある種の<生物>、または<特殊な趣味趣向を持っている人>というような形で描かれていますので、なかなかホノボノとしたコント&落語的な趣のあるコメディー作品になっています。

 こういう妖怪の描き方も、面白いですねえ。

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2016/12/15

江島絵理 「柚子森さん」 1巻 ビッグコミックススペシャル 小学館

  ごく普通の女子高生が、公園で出会った女子小学生とお友達になっていく。そんな作品です。

 ・・・ってサラッと書いてしまえばそれまでですが、いわゆるロリゆりとゆーか、そういうジャンルの<危ない>作品です(笑)。

 というか、小学生の柚子森さんが<犯罪的に>可愛く描かれていて、その犯罪的な可愛さに撃ち抜かれ、どんどん挙動不審に陥っていく<犯罪予備軍>女子高生も、まあ可愛く悶えて描かれていると。
 で、そんな悶え苦しむ様に対して、それなりに「ああ、何かわかる。。」という感じで共感も持てたりーの。

 まあ、これを中年のオジサンなどとの関係で描いてしまうと(例えばこんな)、一歩踏み外せば変態というか犯罪まっしぐらですが、何かこう<女子高生が萌えてる>のであれば、何だか許されてしまうような、、、いや実力行使に至ったら、誰がやろうと犯罪なんですが(爆)、けどなんか・・・ずるい気がする!!!!(違)。

 ある意味では、可愛い動物を愛でるのとあまり心情的には変わらない気もするんですね。可愛いものを愛するというのは。うちにも一頭、トイ・プードルがいますが、これがまあ(以下略

 前作は血みどろのアクション作品だったのに対して、違う次元に引っ越したみたいな感じの作品ですけど(けど、ギャップを感じるくらいバイオレンス・アクションなのに女子高生ライフを可愛く描けていたので、ベースは整っていましたね)、終わったことは言っても始まらないですが、、、連載の順番が逆であったら、「オルギア」の連載期間も変わっていたかもしれないですねえ。。

 まあ、それはさておき。犯罪に脚を突っ込むか突っ込まないかのジレンマを垣間見つつ、何というか可愛い女子小学生を(主人公視点で)堪能できる、そんな<危険な>作品ということですね。うんうん。

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2016/12/13

伊藤正臣 「人魚姫の水族館」 1巻 ヤングアニマルコミックス 白泉社

 水族館を舞台にした飼育員の奮闘記・・・・と思いきや、実はベクトルがかなり異なる作品です。
 叔父の働く水族館に入ることができた元女子高生。館長であった叔父が、ある日突然失踪します。イルカ一匹と共に。

 遺言のように現れた叔父の息子、つまり”いとこ”に当たる少年ですが、そもそも叔父が結婚なんてしていることすら誰一人知らず、自称「引きこもり」なその少年も、おおよそ社会経験が皆無という雰囲気の問題児。

 館長である叔父の指示しか聞くことがなかったイルカショーの開催に向けて、月夜に途方に暮れるヒロインの前で、少年の秘密と叔父の行方が明らかに。。

 一応、ファンタジー・・・という枠組みにしたいようですけど、よく考えるとこのシチュエーション、絵柄が普通なので気にならないものの、絵柄を楳図かずおにしたら立派なホラーかオカルトです(爆)。
 そんなエグいシチュエーションなのに、「漫画とかアニメとかでファンタジー耐性はあるっ!」という超強引に<全て受け入れました!>なヒロインのお陰で、物語は水族館の存続危機回避のため、イルカショーの開催に向けた訓練へと突き進みます。

 この強引(笑)なシチュエーションをある意味消化(?)したあとは、結構真面目な動物とのコミュニケーションの難しさ、そしてそれを紐解く鍵に向かって、挫折しながらも諦めず、取り組む飼育員の物語となっていきます。

 この辺の描き方が疎かだと、ただのファンタジー作品にしかならないですし、逆に飼育員と動物(イルカ)とのコミュニケーションを手探りに描くだけだと、ただの苦労話と飼育員同士の交流の話にしかならないかなあと(勿論、それでもよいのですが)。

 水族館の飼育員ではなく、「水族館プロデューサー」の肩書きの中村元氏が監修に入っているのは、ただ単に水族館の物語を描くのではなく、エンターテイメント性も交えて水族館を運営する上での苦労、そして努力などを描いていきたい、ということじゃないでしょうかね(あくまで私が想像しただけですけど)。

 水族館とその飼育員を題材とした漫画は色々ありますけど、どこかで何というかドキュメンタリー的な感じにまとまってしまったり、動物との愛情やコミュニケーション等も、人間側の一方的な思い込みとの境界が判りにくい(表現しにくい)という壁にぶち当たることもあります。

 けど、イルカとある意味、言葉で<コミュニケーション>できるというファンタジーなシチュエーションの中で、失敗や挫折を繰り返しながらも逆境を克服していこうとするヒロインを描くことで、ドキュメンタリー感はかなり薄れ、ダイレクトに人間対動物の物語として、面白く描けているんじゃないかなあと思ったり。

  

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2016/12/06

高橋しん 「かなたかける」 3巻 ビッグコミックス 小学館

 都会から駅伝のメッカ、箱根近くの小学校に越してきた女の子。人の背中を追い越すのが好きという、おかしな性癖を持ちながら、実は足はそんなに速くはない。転校生の宿命を受けつつも、持ち前の”天然”ではね除け、鬼ごっこで培った仲間意識と、遅いけれど綺麗なフォルムと異常に近い持久力を携え、地区の小学生も含めた男女混合の駅伝大会に出場することになります。。

 「駅伝」を扱いながら、何といっても「小学生」から描写するというのが面白いですね。ジュブナイル的な雰囲気もさることながら(まあ、絵柄からして一番合ってますね)ある意味では体力や、精神力的な面でも未熟である彼ら。それが駅伝という競技をどう戦えばいいのか、、、そういった<制約のある中>での戦略的な面白さが描かれて行きます。

 「少女ファイト」もそうですが、スーパー選手が活躍するだけではチームは勝てない、というドラマ仕立ての楽しさがありますね。

 一人一人は万能ではなく、距離や順番に応じてその組み合わせや作戦で、それぞれの個性や特技を活かし、そして半ばプロを目指す遠征チームと互角以上の戦いをしていく。。ある意味では爽快でもあり、そして現実的な部分も描写しながらなので、とてもリアルな雰囲気を楽しめます。

 監督である小学校の女教師も、どうやら経験のある曲者ですから、かなりいい加減な作戦を練りながらも、それぞれの子供達の個性を見抜き、それに合った適切なアドバイスを与え、小学生の本質を見抜いた策略を巡らすもんですから、さらに面白い。まあこれも、作者自身が駅伝経験者であることも活かされているんでしょう(取材先には困りませんし、話が通じやすいですよね)。

 小学校駅伝編は、4巻までとなっています。そしてそれは12月28日発売。

 もう箱根駅伝に向けて、戦略的な販売計画ですねっっ!(☆∀☆)

 いやでも、これを読んでから駅伝見たら、本当に今までと見方が変わるかもしれないなあ、と思ったりしました。。

 駅伝ファンの人達には当たり前な戦略や駆け引きなのかもしれませんが、スタートとゴールしか興味ない人でも、なんか駅伝が見たくなってしまうかもしれない、、、そんな作品になっています。

  

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