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2016/12/13

伊藤正臣 「人魚姫の水族館」 1巻 ヤングアニマルコミックス 白泉社

 水族館を舞台にした飼育員の奮闘記・・・・と思いきや、実はベクトルがかなり異なる作品です。
 叔父の働く水族館に入ることができた元女子高生。館長であった叔父が、ある日突然失踪します。イルカ一匹と共に。

 遺言のように現れた叔父の息子、つまり”いとこ”に当たる少年ですが、そもそも叔父が結婚なんてしていることすら誰一人知らず、自称「引きこもり」なその少年も、おおよそ社会経験が皆無という雰囲気の問題児。

 館長である叔父の指示しか聞くことがなかったイルカショーの開催に向けて、月夜に途方に暮れるヒロインの前で、少年の秘密と叔父の行方が明らかに。。

 一応、ファンタジー・・・という枠組みにしたいようですけど、よく考えるとこのシチュエーション、絵柄が普通なので気にならないものの、絵柄を楳図かずおにしたら立派なホラーかオカルトです(爆)。
 そんなエグいシチュエーションなのに、「漫画とかアニメとかでファンタジー耐性はあるっ!」という超強引に<全て受け入れました!>なヒロインのお陰で、物語は水族館の存続危機回避のため、イルカショーの開催に向けた訓練へと突き進みます。

 この強引(笑)なシチュエーションをある意味消化(?)したあとは、結構真面目な動物とのコミュニケーションの難しさ、そしてそれを紐解く鍵に向かって、挫折しながらも諦めず、取り組む飼育員の物語となっていきます。

 この辺の描き方が疎かだと、ただのファンタジー作品にしかならないですし、逆に飼育員と動物(イルカ)とのコミュニケーションを手探りに描くだけだと、ただの苦労話と飼育員同士の交流の話にしかならないかなあと(勿論、それでもよいのですが)。

 水族館の飼育員ではなく、「水族館プロデューサー」の肩書きの中村元氏が監修に入っているのは、ただ単に水族館の物語を描くのではなく、エンターテイメント性も交えて水族館を運営する上での苦労、そして努力などを描いていきたい、ということじゃないでしょうかね(あくまで私が想像しただけですけど)。

 水族館とその飼育員を題材とした漫画は色々ありますけど、どこかで何というかドキュメンタリー的な感じにまとまってしまったり、動物との愛情やコミュニケーション等も、人間側の一方的な思い込みとの境界が判りにくい(表現しにくい)という壁にぶち当たることもあります。

 けど、イルカとある意味、言葉で<コミュニケーション>できるというファンタジーなシチュエーションの中で、失敗や挫折を繰り返しながらも逆境を克服していこうとするヒロインを描くことで、ドキュメンタリー感はかなり薄れ、ダイレクトに人間対動物の物語として、面白く描けているんじゃないかなあと思ったり。

  

  

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