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2016/08/19

上山道郎 「ツマヌダ格闘街」 全20巻 ヤングキングコミックス 少年画報社

 街全体で公式な<ストリート・ファイト>を行わせるという格闘イベントで街興しをしよう、という妻沼田市で、突然やってきたロシア系メイドさんの教えを受けながら、イラストレーター志望の青年が登録選手として戦うという、そんな物語が完結しました。

 上の説明だけだと、ゲーム系のストリートファイターを想像してしまうかもしれませんけど、中身は全く違います。というか、恐らく未読の人が想像している内容からは掛け離れているかも、と思います。

 武術指南のために突然現れたメイド姿のドラエさんは(ドラえもんじゃないよ!)、いわゆる古流武術の達人。それは日本人の祖父(拾われて彼に育てられた)から受け継いだものですが、それを運動すらマトモにできない、素人の主人公に、一つ一つ丁寧に、理屈もわかるように指南していきます。

 一見ヒヨワな主人公も、一つだけ特技があります。それはイラストレーターを目指す過程で培った<見たものを記憶する>ことと、それをトレースできる想像力。それを踏まえて、小さな事からコツコツと、少しずつのステップアップをしていくことになります。

 物語自体も第二次世界大戦後の、彼らの関係者の過去の紆余屈折やドラマが盛り込まれ、ストリートファイトも様々なタイプの相手が出てきますので、10年という連載でしたけど本当に飽きずに楽しめました。
 また、なんというかコメディー要素や何かも上手に入れてくれるので、堅苦しくなくウンチクを楽しめるというか、そんなところもあります。

 まあ、この連載が長く続いたのも、何というか古流武術やその他の格闘技の解説や、その指南を通じる中での<人体の不思議>と<人間はどこまで強くなれるか>を、非常に現実的かつ判り易く、そしてなんか普通じゃできない飛び技ではなく(・・といっても達人の繰り出す技は凡人には無理でしょうけど)、地に足の付いた”本物の格闘技”として魅せてくれたことじゃないかなあと。勿論、心理的な駆け引きまでも含めてです。

 そしてそれを支えているのは、実に破綻のない、正確な人物の姿勢や動きの描写じゃないかと思います。

 人が立っているだけの姿が、普通に立っているのと、”達人が立っている”のとでは、明らかに絵で見てわかるくらい、きっちりと描き分けられているんですね。かなり色々と取材したり、資料を穴が開くまで見て描かれているんだろうなと。。

 といっても、いくら写真や動画を見ても、人体デッサンや筋肉の付き方、関節の動きまでをよく理解してキッチリ頭に入っていないと、見ただけや想像、理屈だけじゃこうは描けないと思うんです。絵柄も劇画ではなくデフォルメされているわけですが、基礎としての人体デッサンの大事さをまざまざと見せつけられた気もします。

 そういう意味で、何というか武術・格闘技をされている人が読んだら、本当に面白いんじゃないかなあと思う次第です。

 格闘技のそれぞれの特徴や技の解説、人体のウンチク等々も実に楽しかったのですけど、この辺りを踏まえた新連載は、退魔モノでまた面白そうなので、そちらも楽しみにしております。

  

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