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2016/08/17

信濃川日出雄 「山と食欲と私」 2巻 BUNCH COMICS 新潮社

 この作品はヤマ漫画なのかグルメ漫画なのかと問われれば、実のところ完全に前者じゃないかなと思ったりします。

 主人公は山の魅力に取り憑かれたライトな「ヤマ・ガール」です。ただ、人と登ることは基本的に拒み、女性一人での登山をしつつ、その先々で<ヤマ飯>を美味しそうに喰らうという、そんな作品です。

 確かに美味しそうに食べているのですけど、実際に調理しているのはインスタント麺であったり、レトルト食品であったり、ある意味、<山で普通によく食べる食べ物>ばかり。

 その辺の山菜を採ってきて食べるとか、そういうワイルドなこともせず、家で半加工した材料を暖めているだけだったりもします。その際も、別に野菜やら肉やら極普通の材料、スーパーでよくある食材でササッとスピード調理したような、そんな食事だったりするんですね。

 じゃあグルメじゃないのかと言えば、少し違うベクトルでの”グルメ”なのかもしれません。調味料は<景色>であり、そして他人に縛られない<自分だけの時間>であり、そのシチュエーション自体が<美味しい時間>であるんですね。そして主人公は、それらを美味しそうに頬張り、満足そうにスープを啜り、ホッとした時間を過ごすわけです。

 そういう意味で、何というか素晴らしい食材を調理して美味しく食べる、というのとは若干違うものの、「美味しく野外で(一人で)食事をすることを堪能する」という、まあ何というか「食事(個食)を楽しむ」ことに注力している、そういう作品なのかなと。

 けど実際、山で食べる食事は、たとえただの「おにぎり」でも本当に美味しいんですよね。疲れた体だからなのか、山の空気が美味しくするのか、美しい景色がオカズになるのか、そこはまあ色々ありつつもよく判らないんですけどね。

 そういう意味で<ヤマ(で食べたら何でも美味しいよね)漫画>ではあるなあ、とか思ったりします。

 一人で登山をする際の危険や、道に迷った際の対処、天候の悪化で予定通りに動けない時の諦め方(笑)などなど、基本的な山の知識もしっかりと押さえて描かれてもいるので、そういう面でも<ヤマ漫画>だな、というのもあり。

 まあ、女性の一人旅(しかも山奥)というのも、ちょっと防犯面での心配はあると思いますが(そういう部分も勿論、描かれています)、一人になれる時間というのが、ある意味では現代人には貴重だとも思うんですよね。

 そういう貴重な時間をどう作り、そしてそれをどう楽しむか。目的はモチベーションは人それぞれですが、雑音の多い街中では難しい、そういう時間を作りやすい山奥で、「山で(一人で)食べる食事もいいよ~」という、そんなお誘いをしてくれる漫画ですね。

  

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