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2016/07/15

かかし朝浩/馬場翁「蜘蛛ですが、なにか?」 1巻 カドカワコミックス・エース 角川書店

 ある日突然、ダンジョンの中の<弱小クモ(仮)>に転生してしまった女子高生の、ある意味ではゲーム三昧なサバイバルを描いた奇妙な作品です(笑)。

 何だか意味不明に転生した彼女は、不味いモンスターどもを共食いしながら、少しずつスキルやレベルを上げ、ダンジョンの中でのサバイバルをするというだけの、ゲーム実況解説?みたいな構成ではあるんですが、何にもまして<クモキャラに置き換わっている>ことと、お腹がすくこと、そして狩りをしたり戦ったりしなければ、スキルもレベルも得ることができないと。

 天の声のように「スキルを獲得しました。」のアナウンスが響くのはゲームそのものですが、とにかく食べられそうな弱々しいモンスターどもが激マズである辺りに、奇妙なリアルさを感じさせられます。

 けど、食べなければ生き残れない。。なので生でバリバリ食べるという思いっきりの良さ(笑)。
 というか、普通であればクモになんて転生したらパニックな訳ですが、元々ボッチでネトゲばかり家でやり、妙に割り切った(荒んだ)生活を送っていた彼女なだけに、無駄に考えるということは初期段階からすっぱり拒否。傷を負ってメンタル的にも挫折しそうになっても、ちょっと良いことがあればすぐに吹っ切れるという、ある意味ではサバイバル向きな性格が功を奏し、地道ではありますけどダンジョンの中で少しずつ力を蓄えていきます。

 この作品でビックリしたことは、ある意味では普通に美少女を描ける作者が、完全に<人間の絵を封印>して挑んでいることです。

 表紙には少し描かれている様に見えますけど、作中では全て肌はベタ塗り。ダンジョンの中を徘徊する<ファンタジー系のゲームに良く出てくる人間>以外、完全に封印されています(ダンジョン中の人間は、まあモンスターの一種みたいなもんで、何となく描き方も変えています)。

 そしてデフォルメされた絵柄のモンスター(クモも含む)だけが出てくるんですけど、喋れない彼女の心の中の声、つまり全て<独り言>で物語は構成されています。

 原作自体が、恐らくそういう「独り言」で綴られた物語で構成されているのでしょうけど、その<世界観>を再現するために、ある意味、リアルな絵柄のように<イメージを邪魔する要素>を封印することで、原作の趣旨というか<味>を活かそうという、そんな英断なんだろうなと思います。

 デフォルメ絵にすることで柔らかい印象が与えられ、恐らく文字だけで想像するとおぞましい”共食い”を含む食事のシーンや、リアルな蜘蛛やモンスターへの嫌悪感が和らぎ、原作の面白さであろう「ゲームの中に棲んじゃったらどんだけ大変!?」という部分が、上手く前面に押し出せている気もします。
 あと妙に割り切りのいい、最近のワカモノ的な主人公の思考回路もなかなか面白いですね。

 しかし、上手い絵を封印しているからといって、誰でも描けるかというと、そうじゃないと思います。
 物語のコマ構成とかピンチの切り抜け方、スキル獲得したけど大したことない技だった場合の脱力感など、マンガとしての構成もしっかりしてないと、この作品を面白く読めるようには描けないと思いますので。
 そういう意味では、(成人向けのギャグマンガの頃から存じ上げておりますが)この作者だからこそ面白く描けるんだろうなあ、という感じがします。

 普通、ある意味ここまで色々なものを封印しながら、原作に忠実に描こうなんてしないですよね。

 なんて書くと、実は2巻以降はメッチャ主人公が人間の姿で出てきちゃう予定だったりすると、出しにくいかもしれませんが(汗)。
 まあ、その時はその時ということで。。

   

  

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