« カワグチタケシ 「女王陛下の補給線」 1巻 講談社コミックス 講談社 | トップページ | 小野中彰大 「クミカのミカク」 1巻 リュウコミックス 徳間書店 »

2016/04/12

若木民喜 「なのは洋菓子店のいい仕事」 3巻 少年サンデーコミックス 小学館

 作る気になった時には最高の菓子を作るのだけど、滅多なことでは作る気にならず、半自由人でタバコ(のようなもの)をプカプカと吸うだけの兄と、そんな気まぐれな兄に翻弄されながらも家を仕切ろうと奔走する弟、そして幼い末っ子と3兄弟が、不安だらけに経営する洋菓子店のお話です。

 3巻に至るまでに、ライバルの和菓子店から何から、色々な登場人物・・・ほぼ例外なく”極端な変わり者”ばかりが登場し、ドタバタ喜劇を繰り返すという、コメディの王道という感じ。

 実は若木作品は、「聖結晶アルバトロス」以来だったりするんですけど(「神のみぞ知るセカイ」は読んでいなかったため)、今はこんな感じで沢山のキャラに囲まれて物語が進行するという作風になんですね。

 兄の「隠された事情」というキーワードが伏線として散りばめられていますが(概ねどういう”事情”かは巻数を重ねるごとに判ってきます)、個性的なキャラに翻弄されるドタバタ喜劇が、まだストーリーの主流といったところ。

 なんかもう異常なキャラが立て続けに投入されておりますね。極端なキャラの群像劇みたいな感じになってきましたが、謎がまだまだ色々とありますので、追々語られていくんでしょう。

 こういうコメディーは好きなんですけど、一つだけ生物屋としていただけないエピソードがあり、どうにも何か書かないと、、、という感じになってしまったので、ここから先はお見苦しいかもしれませんが御容赦下さい。

 それは飼育しているミツバチがスズメバチに襲われるというエピソードの回です。

 擬人化してミツバチとスズメバチの戦いを描いている分には、ダンゴ作戦とかよく調べているなあと思って微笑ましく読めたんですが、オチに使われていたのが「ハチクマ」(←特殊な食性の猛禽類)でした。

 あまりネタバレになるのもあれなんですが、、たった2ページのその描写が、あり得ない内容のオンパレードだったので、なんでこう昆虫と野鳥って生態に関する情報量に差があるのかなあ、、、と思ったりしたのでした。

 一応書きますけど、、、、

■ハチクマはそもそも、ハチ(スズメバチでもミツバチでも)の成虫は、好んでは食べません。
 巣そのもの+幼虫が大好物です。巣が見つからなければ、ヘビなどの小動物も食べますけど、とにかく蜂の巣が大好き。なので、養蜂場で巣箱を壊して食べてしまうこともあります(まあ、滅多にはないようですけど。木箱はなかなか壊せないので)。
 まあ、巣を襲うついでに成虫も一緒に食べてしまうことはあるようですけど、少なくとも積極的に成虫だけ捉えにはいかないでしょう。

■ハチクマは飛びながら空中でハチをつまみ取るなんて、器用な真似は出来ません。
 嘴はあくまで巣を掘ったり(クロスズメバチの巣など)、破壊し、食べるのに使うだけ。空中で餌を捕まえられる野鳥は限られた種類しかいません。猛禽類であれば、空中でトンボを捕らえるチョウゲンボウなんかは居ますが、脚で捉えます(基本的に猛禽類は、脚で餌を捕らえます)。

■そもそもハチクマは群れになりません。
 というと、渡りの時には群れるだろうと言われそうですが、あれは通勤時に駅に向かう人々と同じで、同じ目的地(方向)に行きたい個体が、同じ時間帯(時期)に同じ場所を通過しているだけです(上昇気流がある場所+時間帯が限られるので、いつの間にかそこに集まり、同じようなルートを飛ぶことになる。上昇気流のある場所の目安に、他の猛禽等を目標にはしますが)。朝の通勤時に、「サラリーマンが群れている」とは言わないですよね(宇宙人から見たら、”群れている”と見えるかもしれませんけど)。

 上記を考えれば、作中の描写に違和感がある、というのは解っていただけるかと思います。漫画なのに細かいこと気にしすぎ!というのも甘んじてお受けしますが、「嘘」はいけないと思うんですよね。

 ただ、なぜこんなオチにしてしまったか、その原因は思い当たることがあります(違うかもしれませんけど)。

 某テレビの動物番組で、東南アジア方面で非常に大きなスズメバチの巣を、ハチクマが集団で襲って食べているという映像が出ていた回がありました。この番組を見たんだろうなあと。。
 実際は上の渡りの話と同じで、大きなスズメバチの巣を食べたいが為に数羽集まってきて、別に示し合わせるでもなく、適宜巣を攻撃して壊していた、というだけでしょう。日本でも、非常に大きな巣を襲う場合には、他個体が来ても気にしないようなので、群れるというより餌を占有しない=大きければ処理にも時間が掛かるので結果的に沢山寄ってくる形になる、ってだけのような気がします。

 この番組「だけ」を見てしまうと、「ハチクマはスズメバチが好き」「集団で(巣を)襲う」という、間違ったメッセージを読み取ってしまう可能性があるかもなあ、と思って見ていたんですが、、、

 まあ、、色々と書いてしまいましたが、正直に言えば間違ってるからといって、責めてばかりもいられない気もしています。

 野鳥と昆虫と、一般向けに生態情報が周知されている度合いの差が、歴然としているなあと。

 野鳥の本は、結構本屋に並んでいるんですが、だいたいは図鑑や写真集が多く、個々の生態などを詳しく書いている図鑑は少ないんですね(分布と識別ポイントが主なものが多い)。
 昆虫は逆に、図鑑にしたら百科事典な世界なので、個々の面白い生態について、きちんとした学者が一般向けにも面白楽しく、そして正しい情報をエッセイで紹介したりしている感じです。そういう部分での差が大きい気がするんですよね。
 これは研究者層やアマチュアの層の差もありますが(昆虫類の研究は、害虫防除や農業関連で色々な研究予算等も付きやすい)、一般向けにはもっと何か必要なんじゃないかなあ、という気もします。

 と、悩んでもあれなので、資料として紹介できそうな書籍等々をあえて探してみました。

 以下に、参考になりそうな本を、幾つか紹介しておこうかと思います。

 鳥の生態について、一般向けである程度詳しいもので今でも買える本としては、以下くらいですかねえ。
 書評でも子供向けよりは少し高度と書いてありますが、監修が元日本鳥類学会会長ですから、内容(の正しさ)については折り紙付きです。

一般向けで読んで面白いのはこちらかな。
これは読み物として楽しいですし、意外な性質が書いてあったりします。

で、少々マニアックですけど、古いけど目からウロコな(個人的なお勧め)はこちら。
いわゆる野鳥の様々な繁殖戦略を、(当時の)最新知見に基づいて読みやすい文章で紹介しています。

あとは、、絶版ですけど、生態が種別に詳しく書かれているのは、日本ではこれしかないんですよね(個別であればもっと詳しい本はありますけど、まとめてというとなかなか無い)。
古本か、あとは大きな図書館でなら見つけられるんじゃないかな?


 なお、古い本だと情報が古くて最新の知見ではない場合もありますんで、そこは最新の内容もいろいろ検索して調べて見てくださいな。
 上の本は、基本的な生態情報のとっかかりにはなるんじゃないかなあと。

|

« カワグチタケシ 「女王陛下の補給線」 1巻 講談社コミックス 講談社 | トップページ | 小野中彰大 「クミカのミカク」 1巻 リュウコミックス 徳間書店 »

C_ギャグ・コメディー」カテゴリの記事

C_グルメ」カテゴリの記事

C_ラブコメ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21254/63475753

この記事へのトラックバック一覧です: 若木民喜 「なのは洋菓子店のいい仕事」 3巻 少年サンデーコミックス 小学館:

« カワグチタケシ 「女王陛下の補給線」 1巻 講談社コミックス 講談社 | トップページ | 小野中彰大 「クミカのミカク」 1巻 リュウコミックス 徳間書店 »