高橋しん 「あの商店街の、本屋の、小さな奥さんのお話。-初恋本屋-」 全1巻 花とゆめコミックス 白泉社
これは2年程前に出た「あの商店街の、本屋の、小さな奥さんのお話。」 という作品の続編になります。
というか、、、、タイトル長いよっ(笑)
結婚してたった1週間で旦那に先立たれ、残された小さな商店街の本屋にとり残された、農家の末っ子として要らない娘扱いだった一人の小さな奥さんの、本屋さん奮闘記になります。
先に「あの商店街の、本屋の、小さな奥さんのお話。」(長(ry )を読んだ方がいいのかもしれませんが、こちらから読んでも楽しむことができるような、そんな作りになっています。いわゆるオムニバスというか、読み切り形式の話が数話ずつ収められていますので。
奥さんは農家の食いっぱぐれみたいなものだったので、それまで文字は読めるけど本などは読んだことはなく、食事すら作ったことはないという徹底した「ないないずくし」。お向かいの八百屋さんが覗かなければ、危うく葬式後に餓死するところだったという徹底的な「何もできない人」。
それがたった1週間で未亡人になってしまったと。。旦那さんは、何を想い彼女をその”小さな本屋”に受け入れたのか、それを探る為の日々が、そこから始まります。
たった一つ、彼女には特技がありました。読んだら忘れない。辞書を引くのが面倒だからと、数日で辞書を全て暗記してしまい、作ったこともない食事も、料理の本を読んでその通りにするだけですが、本の通りに料理を再現できてしまうという、特技というより超能力に近い才能に彼女は恵まれていたのでした。
彼女には残された本屋と本棚の本しかありません。
旦那さんが作った棚の本を読みながら、旦那さんがどんなことがしたかったのか、そして旦那さん自身を知るために、街の人々に本を売るという試行錯誤が始まる、そういうお話です。
一人一人のために本棚を作る。普通ではあり得ない、そんな棚の作り方を奥さんは始めます。
理想ではありますけど、それは本屋という商売とは程遠いくらい、手間と時間、そしてその人が何を読みたいかを推理する洞察力が必要になります。それを尋常ではない記憶力と考察力、そして売る本は(こっそり全て)読んでいる、その奥さんにしかできないことでした。
続刊のこの本では、大きな図書館ができたりと、難関が次々と現れますが、ある意味では<本屋さん>や<図書館>を含めた”業界の常識”にとらわれず、「人々が何を求めているのか」という理想の本の世界への案内人として、街の中を走り回る、そんな奥さんが描かれて行きます。
ある意味では<ファンタジー>ですね。。
まさに理想を突き詰めると、こういう本の紹介の仕方が、労力を無視すればベストです。
小説の舞台となる土地に興味を持てば、土地の風土や旅行に関する本が読みたくなるかもしれませんし、同じ作家さんの本や、関連する本を芋づる式に探して読んでいく。。私たちが本屋さんで、無意識のうちに当たり前のように行っている行動ですね。
そんな行動を先取りして、興味のありそうな本を次々と並べられていったら、それだけで楽しいですし、またお勧めの中に意外な発見もあり、自分だけで探すのとは違う楽しさも見いだせるかもしれません。
本当にこれは理想なんですが、現実に何百人もの人々が訪れる大きな本屋さんではまず無理で、そして小さな本屋さんではスペースが足りないので対応できない、、、それ以上に、本をそれだけ読めるかと言えば、全てに目を通して棚に並べるなんて、今は無理ですよね。
なんせ、漫画だけでも毎月、800~1000冊は新規に出版されています。出版された本を全て並べることすら不可能なのに(小さな所じゃ配本もされない)、一体どうしろと、というのは当然の話。
それを作品の中では実現しているわけです。これを<ファンタジー>と言わずになんと言えばいいんでしょう。
私も、WEBの中でそんなことはしたいと思っています。が、現実には自分の興味のある物しか読めない(読む時間がない)し、紹介できる内容も偏りまくりです(当たり前ですが)。ただ、少し古い作家さんや作品を知っているだけの話。それも完全には程遠いと。。
ただ、人にお勧め漫画を紹介してと言われたら、必ず「どんな作品が好きですか?」と問い返しています。ジャンプ作品ばかりが出てくるようなら、多分私では楽しめる作品は紹介できないなあ、、ということで、適当に話を合わせてお茶を濁してしまいます。それ以外に何か作品が出てきたら、こういうジャンルが好きなのかな?ということで、初めて紹介ができると。
まあ、お勧め漫画は?と聞いてどういう回答を得たいのか、といえば、メジャーな作品を互いに知ってて意気投合したいのか、本気で読んだことのない作品を探したいのか、なんですが、私が紹介できるのは後者だけでしょうかね。。
話は逸れましたけど、本屋とホンダ内しかないところから、棚の中の本を読み続けることで旦那さんが何かをしたかったかを読み解き、そして本に書いていないことも沢山あるんだと知っていく、そういう小さな奥さんが小さな町で奮闘する物語。。
少女漫画誌に掲載されていたものですので、とてもほのぼのと読むことができます。
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