冨澤浩気 「戦禍のカノジョ」 1~2巻 ヤンマガKCスペシャル 講談社
この作品は、タイトルと表紙の雰囲気などから想像される内容と、実際の作品の内容には若干の誤差というか雰囲気の違いがあります。
読んだ感想としては、<災害サバイバル系漫画>というのが正しいんじゃないかしら?
ただし、あくまで2巻までの内容がそうであるだけで、この先の展開では予想だにしない内容になっていく可能性はあります。
京都への修学旅行中に突如起きた謎の爆撃により、日本及び世界は一瞬に混沌とした状況に陥ります。その日、告白しようと心に決めていた彼女と行動を共にすることになった主人公が、パニックに陥った京都から大阪を目指し、瓦礫の中を進んでいくことになります。怪我をしながらも仲間に助けられながら進む中、崩れ去った高速道路に呆然とし、瓦礫となった街に唖然としながら、その途中で出会った自衛隊に避難所に連れて行かれることになったわけですが。。
世界同時多発テロによって日本だけではなく、世界中が混乱する中、パニックに陥り、統制を失った人間が一番怖い、、そういう部分を描きたいんだろうな、というのは判ります。
爆撃の直後である状況下では、大震災のあとの無秩序状態に近い状態なので、ある意味では古屋兎丸の「彼女を守る51の方法」を彷彿とさせる部分もあります。私は読んでいないんですが「ドラゴンヘッド」にも通ずるものがあるとの感想もちらほら(これは完全に近未来都市サバイバルものですね)。
それらと違うのは、当然ながら一地域の地震ではなく、各国の主要都市の中枢を新兵器等で攻撃・麻痺させられたことで、政府も軍も全てが混乱しているということ、サイバーテロの結末がまだ見えてこないこと、などですかね。。
ちょっと思うところがあるのは、先にも書いたように、表紙やタイトルなどから想像される内容と2巻までのストーリーに、かなり乖離があるように感じることでしょうかね。。心配しすぎなのかもしれませんが。
ある意味では大風呂敷を広げてあるのだけど、2巻でも、その風呂敷のほんの端の方でまだウロウロしている。大丈夫なのかなあ?と。
情報から隔絶され、インフラもまともに機能していない都市でのサバイバルに突入しているわけですけど、自衛隊の登場と<武器>の入手というプロセスは通過し、3巻では恐らくモラルが崩壊した暴徒との戦いとなると想像されます。
けど、物語の本筋は本来、ここなのかしら?
当然ながらここは通過点だとは思うのですけど、この部分をどれだけの尺を取って描くのか、という部分がちょっと不安だなと思ったのです。3巻全部をこの暴徒とのエピソードに割くとすると、その後の物語展開のバランス的にどうなんでしょう。。週刊誌だと、こんな尺でもいいのかしら?
物語の終着点は、恐らく連載当初からきっちりと決まっていて、伏線や全体のストーリーも既に決まっているんでしょう(このスケールで描くからには当然ですよね)。
この危機を脱したあとは、延々と大阪から関東までの道のりを帰ることになるのも想像できます。その過程で、日本が、世界がどうなっていくのかが描写されていくのだとは思います。それぞれの高校生の成長物語をその中で描いていくのでしょうけど、銃がいる世界になるのかな??
(まあ、戦禍=銃ではないのかもしれませんけど)
まあそれは置いておいて、ただ単にちょっと歩みが遅すぎるんじゃ?という懸念を感じたもので。。
さらに言えば、重要と思われたサブキャラの唐突な退場や、行動力を大幅に制限する主人公の大怪我など、何が起きるか判らない世界を描いているとはいえ、どういう方向性を考えてるのか、ちょっと読めないなあと。。
まあ、廃墟都市でのサバイバルを描いていく、というのであれば別にそれはそれでもいいんです。
けど、都市サバイバルに銃が必要な状況は限られていますし(まあ2~3巻の状況は相手も武装しているのでアレですが)、物語としてどう発展していくんだろう?という疑問が沸々とわいてくるんですよね。。
本当に読ませたい本質が<サバイバル>なのであれば、未知の攻撃があったとはいえ「戦禍」という単語を使うことはどうなのかな。。私の考えすぎでしょうかね(汗)。まあそういう状況に、長いスパンで見れば日本が戦場に陥る可能性もありますけどね。。世界同時多発テロをきっかけとして。自衛隊もやばそうに描かれていますし。
というわけで、話題になっているようではあるんですが、若干煮え切らないで不安も覚えた読後感だったりする作品だったりします。
凄い作品に化ける可能性も勿論あるので、現段階で判断するのは焦燥かもしれませんけどね。
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