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2015/07/30

仲川麻子 「ハケンの麻生さん」 1巻 モーニングKC 講談社

 派遣社員の麻生さんは、ごく普通の、手際の良い優秀な派遣社員さんです。
 けど、ちょっと他の人と違うところがありました。

 麻生さんは昆虫が大好きだったのです。

 昆虫の話になると目がないとか、熱中しすぎて云々、ということはありません。
 オフィスの机の中で柑橘類の葉をあげながらアゲハの幼虫を飼っているところを同僚に見つかり、まあ机の中より机の上ならということで公認を戴いたりして、少しずつ理解は広がっていきますが、まあ昆虫が絶対的にダメという人も勿論いますので、そことの戦い(?)も描かれていくという。

 マニアという程ではなく、(昆虫を飼っているとか探しに行ってしまうこと以外は)普通な派遣社員さんとして描かれていますので、そこが強烈な昆虫メインの昆虫マニア系マンガとは一線を画しているかなと。

 けどまあ、、、ベランダ菜園かと思いきや、チョウの食草ばかり植えて、幼虫を飼っているとか、、、まあ・・・やっぱマニアかも(笑)。やってることは、庭にそういうもんを植えてる私と変わりませんが(爆)。
 オサ掘りなんかも、まあ普通の人は知らない採集方法ですよね。作中ではマイマイカブリを探していますが、朽ち木を冬に崩すのは、越冬するオサムシやゴミムシを採集する方法としてはポピュラーな方法です(私はカミキリ屋なので、やったことないですけど)。山中を歩いていて、なんか朽ち木がやたらボロボロ崩されているところがあったら、「ああ、誰か掘ったんだな」と、ニヤニヤしておいてください(違)。


 巻末で書かれていますが、作者は別に昆虫好きとかそういうことではなく、昆虫の知識ゼロから始めたようです。作品として調べる必要があり、ブログ等々を読み漁ったようですが、これは正解だったと思いますね。
 図鑑だけでどれだけ描写が可能かといえば、まあ正直、昆虫については難しいなんてもんじゃありません。

 生態は書いてあります。食草もあるかもしれません。けど、採集方法とかまではさすがに書いていません。どういう場所にそういう植物が生えているかも、今度は植物の図鑑を紐解かなければいけませんが、その記載内容だけでどう環境に生えているか、想像することはほぼ不可能でしょう。

 結局、フィールドに出て、「ああ、こういう場所に○○は多いんだな」、「あ、この植物はこういう水辺の影になってるところに生えるんだなあ」と、場所の風景・環境とその昆虫や植物を結びつけて記憶しないと、分からないものなんですね。 それをしないと、「どういう場所で採取できるか」は描写が非常に難しい。

 まあ、チョウであればまだ結構図鑑や本だけでも分かるかもしれません(麻生さんがチョウが好きなのも、一番情報が得られるからかも?)。一部を除けば食草もそう特殊なものはなく、庭や近所の河原に普通に生えているものも多いので、緑地もない都会でない限り、歩き回れば結構いろいろ発見できるでしょう。

 けど丹念にブログなども参考にさせていただきながら調べていけば、他の昆虫も図鑑だけではわからない、生の情報を、ある程度は得ることもできます(具体的な場所は、乱獲もあるから伏せますけど、環境とかは丁寧に解説してくれてるページは多いですね)。
 勿論、きちんとした図鑑も調べることは基本ですが、野山に取材に頻繁に行くわけにも行かないでしょうから、それをカバーする方法としては、こういう調べ方も良いと思います。まあ、それ以上にチョウとかメジャーな甲虫類以外は、生活史だけでなく、食草すら全く分からない昆虫の方が遙かに多いんですけどね、、、


 この作品の良いところは、確かにマニアックなところもしっかり押さえつつ、そういう専門知識が前面に出てくることがないことです(・・・まあ変人さ加減は十分でてますが(違))。

 そういう特殊な趣味があるという先入観を持った周囲の人達が、麻生さんの人の良さ、前向きな仕事への姿勢など、そういう人間の本質に触れて、少しずつ感じ方や考え方が変わっていくという、そういう部分を静かなオフィスの日常の中に描いた、そういう作品だなと思います。

 で、昆虫という少々マニアックな部分も、普通に楽しむならこのくらいの知識で楽しめるな、という所に抑えてあり、それでいてバックボーンの部分を必要なだけきちんと調べてあるので、”虫屋”な人(例えばわたし)から見ても、違和感なく楽しめる作品になっているなあ、と思うのです。

 調べるのは相当大変だったと思うんですが(予備知識がないなら特に)、物語の本筋の邪魔にならない範囲で、物語の小道具として十分に活かせているなあ、と思った次第。

  

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