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2015/06/08

幾夜大黒堂 「境界のないセカイ」 1巻 カドカワコミックス・エース 角川書店


 法律により、18歳以上になると自分の性別を選択することができる近未来。。
 この作品は、ある意味そんなシンプルな設定の世界での、ラブコメな作品です。

 完璧な整形術からホルモン投与、そしてナノマシンによる体調の管理まで、ある意味ではほぼ完全に男性から女性、そして女性から男性への性転換が可能な世界。
 子どもの頃から一緒に遊んでいた従兄弟が、数年ぶりに会ったら突然女性になって泊まりに来たと。

 違和感とドキドキの連続の中で、それぞれが色々なことを考え、そして悩んでいく。。そういう物語なんですね。

 単なる男女入れ替わりものとか、薬で男から女になっちゃった(orその逆)というマンガは沢山ありますが、この作品の切り口が違うところは、「社会のシステム(法律も含め)」として、男女の性選択が可能となった世界では、どんな問題が生じるのかというシミュレーションをして見せているところです。

 この作品の場合、現段階では男性から女性になった事例で話が進められていますが、一例を挙げてみれば。。

 18歳で初めて選択をできるようにするのは何故か。
 生活する上で、(着替えなども含めて)支障が生じないか。
 別の性になった場合に、どのような体の変化等が生じるのか、体験できる仮想シミュレーションがあった場合、体験した人はどのように感じるか。
 社会では性転換者を素直に受け入れられるのか。

 単に女性の体が見たいみたいな興味本位な部分は、まあ男ならどうしてもあるでしょうけど、そんなマンガみたいな(爆)うまい話はないわけですね。特に出産に伴う痛みは、男性の想像を絶する世界と聞きますし(作中でも疑似シミュレーションがありますが)。まあ、シミュレーションで満足できるなら、恐らくそういうバーチャルなアレも可能な世界という気もしますので、それは置いておいて。。

 問題は、特に最後の「社会への受け入れ」という部分が、かなり大きいわけです。
 第1巻の後半のエピソードでは、まさにその部分に焦点を当てています。ある意味では、性転換した男性は、合コンでは「ニセモノ」扱いされますし、元男性が女性浴場に入ることに、女性の方で抵抗はないのかという疑問を抱いたりとか、宗教・モラル的な観点からの意見も、社会の中では当然ありますね(クローンですら大騒ぎになる社会ですから、、)。

 まあ、生物的にどうこうという話も出ることがありますが、正直言っちゃえば人間の頭の中だけの話です。自然界ではオスがメスに変化したり(魚とかでは有名ですが、他にも色々な生物で実例があります)、オスメスというのは、より多様な子孫を残すための手段でしかなく(その理由は割愛しますが)、最初から性が決まってない、あるいは途中で変わってしまう動物がいる時点で、生物学的には「性的には2系がある(途中で変わることもある)」というだけかなあと。
 そして両性具有な生物だっていますし(ミミズとか貝類とか。2匹いないと生殖は出来ないですが)、単為生殖も。プランクトンのような単細胞生物だけではなく、魚とか鳥、ヘビなどでも事例があります。確かに哺乳類では実験的なものしか事例はありませんけど、それでもそこそこ高等な生物でも、単為生殖ってあったりはします。

 また、オス同士・メス同士でカップルになってる動物だって観察されています(勿論、子孫は残せませんけどね)。
 まあ、人間は元々性別は変えられないだろ!と言われたらその通りですけど、生物的に見れば、そんなに重要な要素ではないと思うんですね(個人的には)。

 ということで、結局は社会的なモラルだけの問題(許すか許さないか)なのかなと。。

 そこに切り込むということ自体、確かに色々な問題をはらんでいます。某出版社が特に1巻の最終エピソードを読んだ時点で、様々な意見があり得る問題に切り込む危険性を感じたことは、どこまで批難できるかというと、、確かに微妙です。
 けど、作品の中での扱い方は、多様な考え方があることに触れることは<社会システムとして整備された生活環境>を説明する中では、避けて通れません。そしてそれを前提として物語を進めようとしていることもちゃんと読み取れます。
 そういう真面目に切り込んだ部分を除けば、作品としては切り口がちょっと真面目な、世間の逆境に立ち向かう普通のラブコメでしかないんじゃないかなあと。よくあるね。

 まあ、某出版社の会社組織のどこかの段階で、誰かが説明に詰まり、きちんとしたプレゼンが出来なかったことが、こういう結果になったんだろうなと、、まあそれだけの事だったのでしょう。

 まあ出版社を変えての再掲までの時間はびっくりするくらい早かったですし、現段階では問題無いという関連団体のお墨付きは戴いていますが、上手に色々な問題に折り合いを付けながら作品を育てていって欲しいなあと思います。

 というか、こういう切り口が面白い作品、個人的には大好きなので、逆に話題になりすぎたことがプレッシャーにならないかなあ、という心配の方があったり。。
 そこは新天地でも、うまいこと頑張っていただければなと。

 

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