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2015/04/02

ヤマシタトモコ 「花井沢町公民館便り」 1巻 アフタヌーンKC 講談社

 生体のみを通さない見えない壁の中に隔離されてしまった、とある小さな町の物語、、いや、記録が綴られた作品ですね。

 設定的にはパッと聞くと「Under the DOME」を彷彿とさせますが、大雑把に言えばかなり設定は違います。
 生体以外は通過可能なので、物資のやり取りはできますし、電波も電気も普通に通過できます。インターネットも問題なし。そして<死体>は何の問題もなく壁を通過できます。「生きているものだけ」が通ることができない、そんな壁に囲われてしまった小さな小さな町の、気の遠くなるような時間の流れの中の物語です。

 その”見えない壁が何なのか”は、物語の中で、さして問題にされていません。
 この物語の主題は、”壁の謎”や”壁の消滅”を何とかしようとするのではなく、この半ば中途半端な隔離世界の中で、消え去ってしまう存在でしかない、そんな人々の日々の営みや事件など、その日常を描いています。

 未だに隔絶された町の規模は、正確には示されていませんが、交番があるわけでもなく、床屋も1軒程度。この程度の規模の範囲といえば、恐らく数十人程度しか住んでいない範囲じゃないかなと。。

 「最小存続可能個体数」というのがあります。一般的な哺乳類の場合、100個体を切ると種の存続が危ぶまれます。そのまま人類には当てはめられない数値ですが、100人を切っているとすれば、少なくとも増えて繁栄していくレベルではないでしょう。

 動物的な話はあれですが、どちらかといえば精神的な面での苦痛の方が、この中途半端な隔絶には効いてきています。

 この作品の主眼は、ここに置かれています。

 勿論、限られた中でたくましく生きていく人々も居ます。が、隔離されている自分達につくづく気がつかされ、自由の範囲も自ずと制限された世界での生活です。
 政府の保護下にあるとはいえ、おかしくなる人が出てきても不思議ではありません。。

 そんな制限下のシチュエーションで、人々はどのように考え、行動し、そして生きていこうとするのか。
 そんな実験室の中の出来事のような世界が、様々な時系列で紡がれている作品です。少なくともその時間スケールは、10年以上。小学生が就職する年齢くらいまで、少なくとも経過しています。

 この作品、終わりについては想像できません。この「生き物を隔絶する壁」がどうなるのか、、、もしかしたら、最後まで解決しないかもしれません。
 けど、それもそれでいいのかもしれません。正直、隔絶された世界の中で生きている人々にとって、何十年も解決されないそれは、もうどうでもいいことなんでしょうから。。

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