« 武田一義 「さよならタマちゃん」 イブニングKC 講談社 | トップページ | 川崎直孝 「ちおちゃんの通学路」 2巻 MFコミックス メディアファクトリー »

2015/03/29

武田一義 「おやこっこ」 上下巻 イブニングKC 講談社

 前作の「さよならタマちゃん」は、作者自身の闘病エッセイ漫画だったわけですが、重い話でも読みやすく描くことができるこの絵柄で、どんなストーリー漫画を描くんだろう?というのは、ずっと気になっていました。

 で、上下巻で発売されたのがこの作品です。

 酒浸りの父親から逃れ、東京で暮らしながら結婚した主人公に、一本の電話が掛かってきます。その一本の電話がある意味、彼の人生を大きくまた変えていくわけです。。

 入院した父を訪ねざるを得ない状況、そして振り回された父に関わることへの嫌悪感、様々な考えがよぎりつつ、妻を含む他の人々とのやり取りの中で、自分のほんとうの気持ちに少しずつ気がつき、その気持はなぜなのか、さらに解らなくなり、必至に父親の存在を遠ざけようとする自分、、そしてなぜか、父親が無事となると、どこか安心している自分、、

 人の気など知らずのような父親の言動や、行動の一挙手一投足に苛立ちながら、いつしか父親が抱え続けていた”闇”の部分に触れる旅に出ることになっていたわけです。そこには様々な秘密と、そして重い重い父親の過去があったわけですが。。

 上巻は、かなり抑え目の演出になっています。父親に振り回される主人公は、何かに引っかかりながら、自分の気持ちにも戸惑いながらも行動していきます。その先々に、さまざまなキーワードが散りばめられています。
 ある意味、彼が結婚していなければ、対峙することはなかったシチュエーション。勿論そんな彼を動かしているのは、妻の存在でもあります。あれしろこれしろ、というのではなく、そこに在り、アドバイスをしてくれる存在が、物語を後押しする歯車になっています。

 上巻は抑え気味ながら、最後はどうなるんだ?というところで終わります。この辺はいい繋ぎですね。

 下巻もこんな感じで淡々と物語が進むんだろうな、と思って読み進めていたわけですが、、、

 物語は怒涛のような状況に突入します。いい意味で、思いっきり裏切られました。なんかもう、引いては寄せる浜辺のさざなみのような状況だったところに、突然津波が襲ってくるくらい、すんごいのが来ます。

 ここで一気に物語の中に散りばめられたキーワードも収斂してきます。”父”の気持ち、”子”の気持ち、”妻”への気持ち、それが培われた時の流れ、、
 走馬灯の中で見る、父親のこころの中、、過去の出来事など、、


 いい作品だと思います。久々に泣いちゃいました(最近、涙腺が弱いらしい)。

 そして大団円で物語がまとまっていくところも、ある意味救いですね。


 病気の経験が無くとも勿論、こんな作品は描ける方なのかもしれません。
 けど、様々なシチュエーションの中に、作者も通ってきた経験と葛藤のエッセンスが活かされているんじゃないかなあと思うんですよね。。

 演出力も半端ないなと、ちょっとビックリしました。もっとのんびり系で淡々と描く人なのかなと思っていたもので、とてもいい意味で裏切られた感じです。

 なんかここまで読まされちゃうと、次回作も期待せざるを得ないではないですか!ってことで。

|

« 武田一義 「さよならタマちゃん」 イブニングKC 講談社 | トップページ | 川崎直孝 「ちおちゃんの通学路」 2巻 MFコミックス メディアファクトリー »

C_叙情系」カテゴリの記事

C_日常系」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21254/61352812

この記事へのトラックバック一覧です: 武田一義 「おやこっこ」 上下巻 イブニングKC 講談社:

« 武田一義 「さよならタマちゃん」 イブニングKC 講談社 | トップページ | 川崎直孝 「ちおちゃんの通学路」 2巻 MFコミックス メディアファクトリー »