« 西餅 「ハルロック」 3巻 モーニングKC 講談社 | トップページ | 影待蛍太 「GROUNDLESS」 3巻 アクションコミックス 双葉社 »

2015/03/08

速水螺旋人 「大砲とスタンプ」 4巻 モーニングKC 講談社

 軍部の兵站軍に所属する女性少尉(懐中汁粉が好物)の活躍を主軸に描かれる、かなり異色な戦争漫画です。
 予備知識のない人にとっても、それなりに楽しめるコメディータッチな作品ではありますが、内容をよく読んでいくと、アクションあり、暗殺あり、謀略あり、黒い駆け引きあり、破壊工作ありと、かなりハードな面もサラッと描かれていたりします。

 架空世界のお話であること、絵柄が結構かわいらしいことなどで、ちょっと騙される人がいるかもしれませんが(違)、作者は筋金入りの”軍事おたく”です。著作を検索すれば、そのマニア度は十分わかるでしょう。

 架空とはいえ、一方の軍のモチーフにしているのはソ連軍でとのこと。作中で「おいおい」というコメディーとしか思えない展開は多々ありますが、じつは実話に基づいているという、、、恐ろしくマニアックな裏設定があります。
 その上で、普通の戦争漫画では単語すら出てこない、しかし現実の近代軍事行動では、実は最も重要であり、必要不可欠な「兵站」の視点からこの作品は描かれています。軍事に精通している作者だからこそ、これがまた面白という部分でもあります。

「兵站(へいたん)」という単語は、ちょっと馴染みのない言葉と思いますが。調べてみても意味がとても広いらしい。けど、会社で言えば、総務部と会計部が一緒くたになったような、そういう部署と思っていいんじゃないかなあ。

 兵站軍(兵站部門)は、実際は前線までの補給方法や補給路の検討、軍全体の移動など(当然、燃料も食料も必要なので、その手配も)、そういう形で<軍全体を切り盛りしている部署>と言っても、過言ではないかもしれません。

 基本的に、映画でもアニメでも漫画でも、ドンパチやってる最前線が<戦争の華>みたいなところはありますが、前線で戦っている戦車も、砲弾を撃ち尽くしてしまえば、燃料が切れてしまえば、ただの鉄の棺桶。
 重いだけで、せいぜい弾除けくらいにしかなりません。
 兵士に至っては、弾丸だけ与えておけば24時間戦える訳ではありません。お腹は空くし、眠くもなる。嗜好品だってないと脱走しちゃうし、士気を維持するのも大事ってことです。

 正直、相当な知識がなければ、やはりこういう視点からの作品は描けないと思うんですね。そして、兵站を軽視したために戦争に失敗した実例など、豊富な史実の知識もあるからこそ、信じられないような展開にも、何か説得力のようなものがきっちり込められているという。。

 けどある意味、本当に兵站軍だけの日常を描くだけだったら、ちょっと退屈な作品になってしまっていたかもしれません。
 けどそこは一味違うと。平凡な日常の中に、数々の大事件や事件を、複雑な背景を織り込みながら組み込んでいるので、、、ある意味総務・経理並みの地味な兵站軍の話なのに「ダイ・ハード」張りの危機的状況が次々と投入されてきます(笑)。

 そこはやはり、話の作り方のうまい部分だと思うんですね。軍事マニア向けの仕掛けだけではなく、戦争ものや兵器好きな人にも、戦争などの知識のない人達にも、それぞれがそれなりに楽しめるように、この作品は作られていると思います。
 十分な知識に裏打ちされているからこそ、やはり面白いのだと思うのですよね。。
 まあ、それ以上に主人公ヒロインの融通のきかない、役人思考丸出しな部分や、めちゃくちゃな名言の数々がいいエッセンスにもなっているという部分も。。

 この作家さんがホビージャパン等でイラストレーターとして、また同人誌等で活躍している頃から、この人の絵柄も作風も好きだったのですけど、地味ながらもここ数年でブレイクしてくれているようで、嬉しい限りです。

|

« 西餅 「ハルロック」 3巻 モーニングKC 講談社 | トップページ | 影待蛍太 「GROUNDLESS」 3巻 アクションコミックス 双葉社 »

C_アクション」カテゴリの記事

C_ギャグ・コメディー」カテゴリの記事

C_ミリタリー」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21254/61236408

この記事へのトラックバック一覧です: 速水螺旋人 「大砲とスタンプ」 4巻 モーニングKC 講談社:

« 西餅 「ハルロック」 3巻 モーニングKC 講談社 | トップページ | 影待蛍太 「GROUNDLESS」 3巻 アクションコミックス 双葉社 »