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2015/03/03

阿久井真 「猛禽ちゃん」 4巻 裏少年サンデーコミックス 小学館

 この作品は、正直ハラハラしながら読んでいてもう4巻なのでありました。。
 多分、普通の人とハラハラしているところが違うので、それを先に書いておこうかと。。

 物語はざっくりいえば各種鳥類が人間に姿を変えて生活している、という設定の学園ラブコメです。鳥類もバラエティに富んでいて、色々なものが出てくるお話なので、当初から結構気になって読み始めたわけです。

 あまり細かいことは言わないでおこう、書かないでおこうと思いつつ、書かせて貰うと、各鳥の生態については、あまり設定として細やかに捉えられていません。小鳥と猛禽類が一緒にいるという時点で、正直相容れない設定なわけですが(人間に化けているとはいえ)、、、、
 例えば実際のところ、飼育下でスズメやヒヨドリくらいの鳥に猛禽類の剥製など見せたら、基本鳴き叫んで飛んで逃げますけど、篭の中とか逃げられないのであれば、けたたましいくらいのディストレスコールを発するか(「殺される!殺される!助けてっ!」と叫んでいるかのように悲痛に)、凍り付いて動かなくなるか、どちらかになります。同じ大きさの人間に変身すれば、まあ大丈夫なのかなあと割り引いて読んでいますが、、、
 まあそこは漫画だからいいか、と。

 けど、気になっている問題はそこではないのです(まあそこも気になるけど、漫画だしと割り引きます(汗))。。
 シマフクロウという設定のことです。
 シマフクロウといえば、日本でも最も大きな鳥の一つ。一応フクロウなので猛禽です。森の中の地面なんかに下りて休んでいることもあるそうですが、ふと見ると、小学生が膝抱えてしゃがんでるようにしか見えないくらい、そのくらいデカイ鳥です。

 でかくて猛禽類なら当然強そう、というのは一般的なイメージかもですが、実際は全く違います。
 まず、シマフクロウは魚食性です。基本的に魚を食べる鳥です。カワセミやミサゴのように漁がうまいのかというと、実はこれが下手くその極みで、普通の川で普通に魚を捕ろうとしても、9割以上失敗します。下手すると1日漁をしても1匹も捕れないことも。そんな感じですから、魚以外の動物や鳥など、襲って食べることはできないのです。飛行能力も高くないので、低くしか飛ばないため、川沿いに移動途中に、橋の上でトラックに跳ねられるという事故も多発した時期もあります(今は橋に旗を立てるなどの対策で事故は減っているようです。北海道で橋に意味もなく旗が並んでいたら、そこはシマフクロウがいるのかもしれません)。

 そんな鈍くさい鳥がなんで生き残っているのかと言えば、北海道の大自然がそこにあったからです。秋になると遡上するサケで川は埋め尽くされ、鈍くさい下手くそなシマフクロウでも、入れ食い状態で川に飛び込めばサケを掴めます。うまい具合にできているもので、ヒグマもそうですけど子育てをこのサケの遡上に合わせているので、輪を掛けて狩りが下手な幼鳥も、それなりに食料を得られて、食いだめで冬を過ごせるのです(秋の食いだめで冬を越せるらしい)。
 尤も近年は上流までサケなんて遡上してきませんから、餌が取れずに飢えて林道にしゃがみ込んでいるシマフクロウがよく保護されたりします。養魚場などに毎晩やってきては魚を失敬することで、何とか生き延びている個体が多いです(養魚場の御厚意で。恐らく保護団体からも補填費用は出されていると思いますけど)。

 ここまで読んでいくと、、、シマフクロウを「”最強”の猛禽類」と称するに値するかどうか?です。

 確かに個体としては、脚の力はさすがに強いですから、人間が腕を捕まれればタダではすみません(捕まえられれば、ですが)。他の猛禽と掴み合いをしたら、必ず負けるとも言えません。小鳥類はワシタカ・フクロウ等の猛禽類のシルエットに対して警戒するので、シマフクロウに対してもモビング行動(簡単に言うと、まあ鳥のトランス状態というか。。ストレスが頂点に達して猛禽の周りで飛び跳ねながら大騒ぎし、攻撃もする行動)もやるのは間違いないと思う。

 けど、鈍くさくて漁も下手な魚食性の鳥、という設定は、この作品には生かされているのかなあ。。まあ、確かにどことなく鈍くさいキャラな気もするんですが(どちらかというと不器用なだけか?)、こういう生態的な特徴が、物語の中で生かされているような気が、どうしてもしないんですよね。。

 いやまあ、漫画だからと言ってしまえばアレなんですが、SF考証と同じように、生物考証というのも私は大事だと思うんです。
 これが「架空の世界」の「架空の鳥」であれば、自由に描けばいいでしょう。スズメのような日常的によく見られるもの1~数種類だけを扱っているのであれば、まあ「この漫画ではそういう設定」というだけで済む話でもあります。

 けど、何種類もの実在の鳥の種類を挙げて物語を描くのであれば、やはりそれぞれの鳥の生態や特徴を踏まえた設定を考え、それを生かして作品を作った方が、その鳥を知っている人にとっては違和感を抱くこともなく、、、また鳥をまったく知らない人にとっても、面白みはそれなりに増すんじゃないかなあ、と勝手に思ってしまう昨今です。。

 いやまあ、全く気にせず読んでいる読者の方もいると思うので、ただの鳥屋さんの戯れ言と思っていただいてもいいんですが、この部分のリアリティをもっと上げると、もう少し楽しく読める人も増えるんじゃないかなあ、と思ったりもしたもので。。

 とりあえず、その部分の設定を抜きにすれば、ストーリーとしてはなかなか楽しめる展開になってるかな、と思います。異性物同士の恋はあり得るのかという命題について、それなりに楽しめてはいます。キャラは立っていますからね。なので、つい心配心だけではなく読んでしまうわけですけどね。

 Σ( ̄□ ̄;)漫画の紹介になってねーっ!

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