2017/08/18

やまむらはじめ 「SEVEN EDGE」 2巻 ホーム社

 大震災により崩壊し、大阪に遷都したことによって、日本から見捨てられた首都圏。  そこから徐々に復興しつつある、混乱を引きずった無政府状態に近い状況下において、謎の組織からの指示で<暗殺>を行う組織に引き抜かれることになった青年の活動を描く、そんな<必殺>系のハードボイルド作品です。

 一応、秩序は戻りつつあるものの、銃が普通に使われるような無政府状態の首都圏は、少し前によくあった「近未来の世界」に近いものです。

 作品の世界観は、かなり昔の作品になりますが、「境界戦線」のその後、という位置付けになるかもしれません。

 日本が壊滅的に無くなってしまった訳でもなく、位置づけが中途半端な都市で生き残らざるを得ない人々がいる、というシチュエーションは、どこか80年代も彷彿とさせるような感覚もあります。まあ、近未来モノも色々なパターンがありますが、そんな中では結構私は好きな世界観です。

 内容的には”必殺”と書いてしまいましたが、不法地帯の復興といえば、色々な利権やしがらみ、そして金の流れなどもあり、処罰されない悪も当たり前のように闊歩しています。少しずつでも正常に戻りつつあるように見えて、そのような”悪”が暗躍する、そこに入り込む「暗殺集団」が「EDGE」という組織、という形です。

 ただし、その存在自体が絶対の正義という感触もありません。謎のスポンサーから悪事の証拠を踏まえた依頼が来ることで、ターゲットの暗殺が実行されるわけですが、スカウトされた主人公も、元々は銃を持った学生運動家のようなものに近い、組織的には何人も人を殺してきたガンマン。その腕を買われて(ついでに曲芸師のような暗殺少女との成り行きで)「EDGE」に加わることになったわけで、組織に対する不信感も抱えたまま、活動しているといったところ。

 それだけだとちょっと暗い話になってしまうわけですが、前出の曲芸少女や無表情なスナイパーなど、登場人物はどれも個性的で能力も半端なく、かなり際どいミッションをギリギリの判断力とその能力で切り抜けていきます。

 ある意味では正統派のハードボイルド作品、といったところだと思いますね。そういう意味で、こういう銃を本気で撃ち合う作品が最近少なくなったなあ、と思っていたので、ちょっと喜ばしい限りです。

 P.S 余談ですが。。やまむらさんはマニアックな鳥を描くのが好きで、私もとても嬉しいんですけど、たまに生態的な描写がアレな事になっていて、ジレンマに陥るのです。。この作品ではなく、先日完結した「碧き青のアトポス」(全7巻)で、そんな描写があったので、それについて書こうと思いつつ、ずっと躊躇して今日に至ります。。が、一言だけ書いておきます(今頃すみません)。
 「オオミズナギドリは、(カモメと違って)小さなボートの上に降りられません(体の構造的に)。」
 まあ、、、鳥を知っている人にしか判らない話なのですけどね(種名書いてないですから、言われないとどの鳥か判らないでしょうし)。

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2017/08/15

さがら梨々/岡本健太郎 「ソウナンですか?」 1巻 ヤンマガKCスペシャル 講談社

 女子高生だけの無人島で遭難サバイバル、というフラグが立ちすぎなシチュエーションなんですが、中身はかなりしっかりとした<本気サバイバル>をベースにした構成になっています。

 無人島生活ネタのテレビ番組も結構多いですけど(まあ、、、本人達には過酷でしょうけど、リタイヤは出来る環境ですからね)、まあそれの超リアル版といったところでしょうか。

 飛行機が落ちて海上で干されるところから、本気のサバイバルは始まります。そして何とか陸へと辿り着けるわけですが、水すらも得るのが困難な無人島で、生き延びることはできるのか。。

 女子高生4人を主人公にする、というところは、結構当たっているなあと思います。

 うち一人は、父親に鍛え上げられた、あらゆるサバイバル術を身につけた猛者であり、彼女達の命綱でもありますが、、、当然ですが、普通の女子高生には耐えられないような<モノ>を、飲んだり喰わせたりしようとするわけですね(笑)。

 それに対して抵抗を思いっきり感じつつも、本気で死を感じながら徐々に受け入れざるを得ない、そんな葛藤の日々を、女子高生達の肌感覚を通じて伝えてくれている訳です。ここで男性がいるとまた方向性が変わってしまうと思うんですが、とりあえず皆女子高生という構成は、作品的には正解じゃないかな、と思ったりしました。

 サバイバル術に長けたスーパー女子高生も、何でもできると言えばできるっぽいですが、ある意味ではコミュ症でもあります。そういう苦手意識や距離感も含めて、4人で克服していこうという、そんな物語になっていますので、サバイバル術も本気ですけど、物語としても結構練ってあるなあ、という感じがします。

 サバイバル部分は、「山賊ダイアリー」の岡本健太郎氏なので、特に狩猟部分がかなり拘っている感が強いです(笑)。が、あえて一言だけ言えば、、、、離島にウサギって居るんかなあ?といったところだけ、引っかかりました。。

 離島であれば、野鳥の方が可能性があるような気はするんですが(この島だと海鳥の繁殖地などは微妙な気もしますが、無いとも言えないですし。そういえば、鳥の描写が殆ど無いのがちょっと不自然というか気掛かり?)。

 まあ元々は無人島ではなく、人が住んでいた可能性もあるという設定なのかもしれませんね(まだ本体は見えていませんが、恐らくアナウサギのような気もしますし。実はノウサギだったらちょっとビックリしますが(汗)。結構広い島という想定であれば、アリなのか、、、)。

 という上げ足取りみたいなことは置いておいて、、、ある意味、本気のサバイバル術を楽しく、そして常人の感覚の代弁として葛藤してくれる女子高生を通じて描いた、なかなか面白い作品な気がします。
  

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2017/08/10

園田俊樹 「シンギュラリティは雲をつかむ」 1巻 アフタヌーンKC 講談社

 レシプロ機が飛び交うという世界観の中で、一寸どういう理由かは分からない、合理性がどこにあるかも判らない<人型>の全身翼航空機と出会うことで、戦いの世界に巻き込まれ、、、いや、飛び込んでいこうとする、ある天才工学少年の軌跡を描こうという作品です。

 設定的には「ラピュタ」の世界観を想像した方が判り易いかもしれませんけど、あれはオーバーテクノロジーの話。こちらは人型とはいえ、各方面の天才エンジニアが、その世界での最先端技術を駆使して作り上げた機械であり、足が地に着いているという部分が大きく異なります(まあ、いわゆるロボットではないので立てませんが)。

 ある意味では、レシプロ機などを超えたテクノロジーとも言えますが、大きな問題がありました。それは「操縦用ソフトウェア」が、30箇所もの可動部分があるメカのテクノロジーにまったく追いついていないというか、その機体が開発された当時、誰も開発ができなかったということです。そのため、その「凄いけど使えない」機体は、谷がちな田舎の小さな町工場の中に、ただ佇んでいるだけであったと。。

 そんな機体が、ある意味では天才肌で自己中、そしてある意味ではコミュ症(笑)の少年と出会い、そして予期せぬ外部からの攻撃により、出撃するというシチュエーションが生まれます。。そして、「レシプロ飛行機」の操縦系から開放されたその機体は、想像を超えた機動を始めることに、、、

 と書くと、結構よくあるアニメーション作品の物語の組み立てなんですけど、この作品の場合、ひと味違う所があります。

 それは主人公である少年が、純粋に誰かを助けたいとかそういう衝動ではなく、「この機械を使いたい」「自分を認めてもらいたい」という欲望に対して、素直に行動することを求められていく、というところでしょうか。。
 親父も開発に何らかの形で関わっていたようですが、豪快ながらかなりの曲者です。
 そして少年は、自分の欲求を叶えるためにはどう行動すればいいのか、それを真剣に考え始め、そして実行し始めると、、、、

 戦闘という非常事態を利用し、そしてクラスメイトや市民達を巻き込みながら。。

 そういう精神面の駆け引きが、この作品のちょっと違った味となっている気がします。ちょっとまだ構成にぎこちない部分もあるんですが、先の物語がかなり気になる作品です。

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2017/07/25

岡田卓也 「ワニ男爵」 1巻 モーニングKC 講談社

 落ち着いた紳士風の出で立ちのもの書きである「ワニ男爵」と、グルメ情報をかぎつけては彼を誘いに来る(で、費用は男爵持ち)、ちょっと調子のいい「ラビットボーイ」のコンビが綴る、グルメ探訪コメディーです。

 ワニが男爵、という辺りもあれですけど、実に紳士風に、そして大人な対応に満ちあふれていながら、、、時々なんか無意識に”野生”に戻ってしまうという、お茶目(で済むのか?)な面もあり、憎めないキャラといったところです。

 対してラビット君は、若者というか小僧というか、ワニ男爵の財布をある意味では目当てにしている部分はあり、そしてつい愚痴を言ったり、他人を貶したりと決して性格がいいとは言えません。けど男爵はまったく意に介すことなく、子供じみた行為を静かに諭し、そしてラビット君もその心の広さに感銘を受ける、といった凸凹コンビを演じています。

 人間を動物に置き換えた世界観でありながら、「食い倒れ人形」はそのまんまかい!というツッコミ所もありつつーの、動物コメディーとしてもなかなか個性的な動物が次々と登場し、ワニ男爵と絡んでいきます。

 たまに野性に還ってしまうのは置いておいて(よくまあ、他の動物を食べなくて済んでいますが(笑))、ある意味では紳士に、そして人情味に溢れた男爵の対応は、ちょっといい感じです。

 全国のご当地グルメも色々と登場し、それを美味しそうに・・・・って、ワニに表情があるんかい!という部分がありながら、それなのにメッチャ美味しそうに食べさせているところが、・・・漫画の凄いところだなあ、、と改めて思ってしまいました(笑)。

 グルメ漫画として読むよりかは、人情動物コメディーと思って読む方が正解だと思いますけど、それでも色々な要素をバランスよく、そして非常にセンスよく並べた作品だなあと思います。
  

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2017/07/21

早良朋 「へんなものみっけ!」 1巻 ビッグコミックス 小学館

 博物館に務める学芸員さん達(結構変○)の日々のお仕事を詳細に紹介した、そんな作品です。

 主人公は博物館に派遣された事務局員ですが、そこで様々な<生態>の研究員さん達を”観察”することになっていきます。ある意味では純粋に「第三者の眼」として、(恐らく私以上に)生き物にのめり込み、日々を様々な生物の採集や研究、そして標本の管理などに費やす、そんな人々を描いています。

 ヒロインが鳥類専門で鳥類標識員というのが、なんだか妙に嬉しいですね。この中で、ぶり縄を使って木を昇るというシーンがあります(たった数ページですが)。

 「ぶり縄」というのは、見た目は2本の眺めの太鼓のバチを、長めのロープの端に1本ずつ縛っただけの、何の変哲もない、知らない人が見れば「何に使う道具?太鼓叩くの?」としか思えないものです。
 それを使って10m以上もある樹にガシガシと昇ったりというのは、私は出来ませんけど(体験させていただいて5mくらい昇ったことはありますが)、身近で使える人がいまして。。まあ、信じられないスピードでヒョイヒョイと昇っていくんですね。20m近くあるスギなんかに。そのスピードと不思議なぶり縄の使い方は、あっけにとられること請け合いです。馴れている人は、直径1m以上もあるモミなんかも平気で昇る人もいます(この場合、ロープの部分を少し長くする必要があるので、木の直径に応じて何種類か用意している人もいます)。

 林業なんかでは、最近はもっと誰でも使える簡易なアイゼンみたいなものなどで登る場合も多くて、あまり高くなければ簡易ハシゴで登る場合もあるようですけど、鳥類の調査の場合には、山中でそもそもハシゴなんか運べませんし、樹をあまり傷つけたくないというのもあり、「ぶり縄」を使う場合が結構あります。

 と、鳥のお話だけではなく、水生生物から花の破片の調査から、いろいろな動植物の意外性などや日々の博物館の目的や仕事などが、ちょっと変わった学芸員さん達を通じて描かれていきます。

 著者が博物館でアルバイトをしていた、という経験が、もの凄く役立っているようで、動植物の描写やその取り扱いについては文句なしといったところです。


 このように結構いろいろとトリビアな記載があって(私も知らなかった情報もあり)面白かったんですが、初っ端のカモシカのお話だけ、ちょっと気になったんですよね。。


 血だらけのニホンカモシカの死体を背負って運んでいる、そんなシーンから始まっているのですけど、何度か読み直したんですけど気になる事が。。。

 ニホンカモシカは特別天然記念物です。

 特別天然記念物の死体を発見した場合には、まず国に報告が必要で、当該市町村の教育委員会に連絡する必要があるんですが(その間、その死体は動かしてはいけない)、そういう手続とかがされてる気配がないんですよね。市町村の博物館の職員の場合には、県からこういう業務を委託されていたりもするかもですし(調査員として実際動いているのが博物館の職員ということもあるようなので)、この辺の手続きは必要ないのでしょうかね?

 まあ、博物館の指定は教育委員会がしているわけで、教育委員会の関連機関とも言えますし、手続きは簡略化されていてるのでしょうかね?

 鉄道の仕事をしている知り合いから、山中でニホンカモシカをはねてしまった場合の手続きが、本当に面倒くさくて大変(調査員が来て必ず立ち会わないといけないし、報告内容も面倒)、というお話を聞いたことがありましたんで、そういうのも気になったキッカケなんですけどね。。(まあ、道路で車やトラックではねてしまった場合は、放置する人の方が多そうですが、線路ではそうもいかないようです)。

 他の部分の描写が実にしっかりされているもので(鳥類の標識とかその他)、ここだけが何か手続き的に合ってるのかなあ?、、、ということが気になったのでした。。

 まあ、この辺りを真面目に書き始めたら、これだけで1話分になっちゃいそうなので、省略した方が正しいのかもですけどね(けど、その場合はコラムとかでも書いておいて欲しいなあ、とちょっと思ったりしました)。

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2017/07/12

中村朝 「僕達の魔王は普通」 1巻 ガンガンコミックスONLINE スクウェア・エニックス

 もう表紙で80%くらいネタバレしておりますが、魔王への道のりを弟に譲り(勝手に言っているだけですが)、人間の保育士の道を目指そうとしてしまう、何だかベクトルが変な方向に向いてしまった魔王候補の兄を巡るドタバタ・コメディーです。

 まあ、親の教育その他で覇道を学ばされ、皆の前では<指導者を演じる>ことにも真面目に取り組む、変な話、生真面目な魔王候補が、とあるキッカケで出会った保育園児との交流を通じて、なんだか変なスイッチが入ってしまったといったところです。

 ドタバタの原因は、このどこかネジがずれた主人公もそうですが、いわゆる次男という立場に甘えて、口では「次期魔王は俺だ!」とか言いつつ、本気で譲られたらそんな面倒なものイヤや、という弟もあり、まあその従者達もどこか抜けているというか、ベクトルがそれぞれおかしいという、パワーは半端ない筈ながら、何だかゆるゆるな魔物達。。

 とにかく何というか、生真面目で髪サラサラな兄上様の、何かというと悪に肩入れしてしまうという性格というか性質が、なかなか絶妙です。絵本の読み聞かせをするというのですけど、例えば桃太郎でここまで魔に肩入れしてアレンジしちゃうか!というくらい、それが嫌な監督役の保育士との掛け合い漫才の世界に突入してしまうというか。。

 全体的に<悪魔>といっても、怖さからは無縁でほのぼのとした展開。ある意味、何に対しても気を遣い(園児にも、そして魔物の立場にも)、無表情ながら明るく人間界に溶け込もうと努力する(もう殆ど違和感がないレベルに達してますが(笑))、そんな主人公のキャラが、この作品の雰囲気の全てを作っている感じです。

 どこか歪みつつも、こういう教育もありなんじゃない?と頷いてしまいそうな保育士修業を描く、そんなコメディー作品です。
 

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2017/07/10

井上智徳 「CANDY & CIGARETTES」 1巻 ヤンマガKCスペシャル 講談社

 難病の孫の治療費を稼ぐ為、リタイアした元刑事が再就職した清掃係の仕事は、実は謎に包まれた”暗殺組織”の一端だった。。

 絵柄が前作の「COPPELION」と変わらないので、ちょっとコメディータッチな雰囲気を最初は感じるものの、内容はハードです。何の躊躇もなく相手の頭を撃ち抜く”小学生の殺し屋”に面食らうものの、普通では稼ぎきれない多額の費用が必要な元刑事は、葛藤はいくらかありつつも、その”非合法組織”に脚を突っ込み、”清掃係”をすることを決断していきます。

 しかし、ヤクザ者など相手が相手だけに、何度も銃弾や追跡の中を走り回ることになるわけです。

 普段は何とも普通の女子小学生をしている”殺し屋さん”は、とにかく人を殺すことだけには感情を何も示さない、冷徹で迷いのない完璧な殺人マシーンなわけですが、そのようになった理由は、元刑事であった彼の直感なども踏まえて、徐々に明らかになっていきます。

 そしてその先にうごめくのは、裏で日本を牛耳っていると言われる”謎に人物”の存在であり、散りばめられた謎の点が、少しずつ線として繋がっていく、、、という作品です。

 絵柄の先入観を払拭すれば、なかなか楽しめるハードボイルド作品といったところでしょうかね。
  

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2017/07/04

吉田丸悠 「大上さん、だだ漏れです。」 1巻 アフタヌーンKC 講談社

 男子の「構造」が気になって気になってエロい事ばかり考えてしまうけど、他人になかなかそれが明かせずに孤独に悶々としている、思春期が暴走している女子高生と、なぜか人との接触を極端に避ける、見た目はイケメンだけど無表情で淡々とした男子高生。

 そんな二人がトイレを通じて(?)出会ったわけですが、彼が人を極端に避ける理由は、その体質にありました。。

 彼の特異体質の犠牲となって、次々と<本音>を口走ってしまう犠牲者が続出しますが、そんなシチュエーションを通じて、ある意味、互いにコミュ症であった二人の、ちょっとぎくしゃくした”青春”が綴られていく、そんな作品です。

 ある意味、設定がとてもシンプルなんですね。「本音を口走る」というのも、勿論本人の意図を超えているわけで、混乱も生じてしまいますが、いい方向に転ぶこともあるわけです。

 そしてヒロインの大上さんも、エロいと言っても、なんだか国語辞典でヒワイな単語を検索して、なんだかドキドキしてしまうような、お前は小学生かっっというくらい可愛いものです(・・・まあ、けど高校生ですからね。お互いに。うんうん)。 

 あ、いや。。。けどコンビニの角のコーナーでアレな本をつい読んじゃったりしてるので、、、暴走してますね。やっぱり(笑)。

 もう一人の主人公の方は、あまりに淡々として感情がないのかよっ という能面キャラですが、基本は生真面目で、超が3つくらい不器用。

 そんな二人が、クラスメートとも徐々に交流を増やし、青春していくわけですね。

 なんだか妙に心配で見守りたくなる、そんな二人を描いた作品です。

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2017/06/27

井上知之 「はなまる魔法教室」 1巻 裏少年サンデーコミックス 小学館

 ある日、小学校に魔女の先生がやってきた。その先生の目的は、クラスの生徒の中から優秀な能力を持つ子をスカウトし、魔法使いにすること。そんな先生を巡って、空想好きの主人公や、色々な個性を持つクラスメイト達が、魔法先生の不思議に少しずつ触れていく、そんな物語です。

 魔法は契約すると共に、”種”が手の甲に印として現れ、数ヶ月もすれば孵化するということ。想像力のたくましい少年は、予想よりも早く効果が発揮されたわけですが、、、

 ある意味では、児童文学というか学校の課題図書に出てくるような内容という気もします。が、いわゆる「魔法使いの先生」は、かなりザックリとした性格で、魔女の国でも学生を教えていた(といっても2~3人程度の生徒)、生徒を教えた経験はある先生なわけですが、沢山の生徒のいる教室に憧れていて、授業することそのものが楽しくて仕方ない、そんな感じの明るい、、、、けれど何かしら秘密も秘めた人です。

 ジュブナイル系な作風と絵柄ですが、いがみ合いながらも冒険のようなものにも憧れる小学生らしい子供達と、小学生を教えるのは初めてながら、実に細かく生徒を観察している魔法先生。。

 魔法とはどういうものなのか、その実態はまだまだ謎だらけですが、それを少しずつ紐解きつつ、子供達と楽しく戯れ、普通の”先生”とは違う発想で考えて行動する、そんな個性的な”先生”を描いていく、そんな感じです。

 なんかこう、ちょっとしたワクワク感も感じられ、懐かしさもどこか感じる、そんな作品だなあと思います。

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2017/06/20

山田鐘人 「ぼっち博士とロボット少女の絶望的ユートピア」 1巻 サンデーうぇぶりSSC 小学館

 隕石の衝突がキッカケとなり、病気が蔓延して人が消えてしまった都内において、1台のロボット少女と生活を続ける、コミュ症気味な博士の日常を描く、ちょっとシュールなSF作品、、、。

 であると同時に、無表情で口が悪いロボット少女が、約1ページにつき1回、必ずツッコミを入れるというギャグコメディー作品です。

 日頃は研究所のようなところで、二人でビデオなどを見たりゲームをしたり、何かしらイベントをやってみたりしながら過ごしている、そういう日常系なノリではありますが、辺りには全く人はいません。

 生存者らの僅かな痕跡を辿り、都内を徘徊することもありますが、結局、彼らとは話をすることも出来ない・・・という前に、博士が他人と話を、コミュニケーションがとれるのかという問題が(ry

 渋谷や新宿あたりで、人のいなくなった店舗に律儀にお金を置きながら、必要物資を集めつつ徘徊します。この街に人が沢山いるという状況を見たことがないロボ子は、ある意味では無表情ながら無邪気な質問をしつつ、博士にツッコミを入れながら歩いて行く。。

 生存者は極稀にいるようではありますが、ひっそりと消えていきます。

 そして博士は、災害が起きる前の自分を追想し、現状の自分が幸せなのかを考えています。元々他人とのコミュニケーションが苦手で、ひとりぼっちで何でもやってきた、そして自分の未来に必ず幸せがあると信じて、ひたすら勉強をしてきた日々。。

 孤独に慣れているが故に、ある意味ではこの状況が、実は大して苦でも何でもない博士はいま、幸せになれたのでしょうか?

 素でお約束なボケをかますぼっちな博士と、どんどん口の悪くなるロボット少女が織りなす、近未来のサバイバル(?)漫画、、、という程、なんだか過酷な状況でもないところが、この作品の面白いところかもしれません。
 
 

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2017/06/15

福田泰宏 「まどからマドカちゃん」 モーニングKC 講談社

 雨宿りで軒先を借りた部屋の窓から、無言のまま様々な「お誘い」をしてくる美人と、ただの通りがかりのサラリーマンの、窓を挟んで展開するオムニバス・ショートコントといったところですかね。

 このコントの縛りは、「窓」という枠を通じたコミュニケーションと、互いの不可侵(サラリーマン君が部屋の中に入ったり、また彼女が部屋から出てくることもない)、そしてヒロインが「無口」で身振り手振りで全て伝えるのみで、一言も喋らない、ということ。

 この3点の縛りを踏まえて、ほぼコントというかは不条理ギャグのような、美女とサラリーマンのやり取りが展開していきます。

 部屋の中は異次元ポケットかよ!っというくらい、衣装や内装がガラッと変わるのはまだしも、突如”釣り●”が出来たりと、ほぼ何でもアリな状態。ある意味では、ドリフの大爆笑ショート・コントといった味わいでしょうかね。

 それにプラスして、美人ですからそれなりのサービス・・・は、まあ最低限ありますよ、ということで。

 落語的なノリというか、そういうほのぼのとしたコントや不条理ギャグが好きな人にとって、結構楽しめる作品じゃないかなあと思います。

  私はこういうノリの作品、かなり大好きです(笑)。
  

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2017/06/13

からあげたろう 「コーヒーカンタータ」 1巻 電撃コミックスNEXT 角川書店

 幻のコーヒーを巡って、とある街にやってきた少女のスタートを描く、「コーヒー漫画の皮を被ったガッツリSF」な作品です(笑)。 まあ、SFというかはファンタジーという設定の方が馴染み易いかもですね。

 とあるコーヒーの品種である”カンタータ”で街興しをしている地方都市に、ある”目的”の為にやってきた少女が、ある意味では偶然を重ねながら”一緒に学ぶ友人”を得ていく、というところが1巻目です(その目的地に辿り着くまでに紆余屈折がありまくりなので、まだ”入り口”のところまでしか進んでいませんが(笑))。

 基本的なコーヒーの淹れ方など、そういう”うんちく”も結構満載されています。そういう視点で見れば、グルメ漫画とも言えるかもしれません。が、そこに、「カンタータ」という、ある意味では圧倒的な味を以て君臨する”究極の珈琲豆”の存在があるわけですね。

 少女が辿り着いた喫茶店では、他の沢山の観光客向け喫茶店で出す、”カンタータ”は出さず、マスターが極普通の豆(勿論、厳選されています)を使って丁寧に淹れたコーヒーを出してくれます。ある意味では、それなりに美味しいコーヒーを入れる技術は持っていた少女ですが、同じ豆を使っている筈なのに、その味の違いに圧倒されます。。

 コーヒーって本当に難しいですよね。。

 私も一時、安物の挽いた豆で、ドリップで淹れてみた時期がありましたけど、何ヶ月かやっても、何というかマトモに同じ味で淹れることすら出来ませんでした。同じ豆なのに、毎回なんだか違う味がするんですよね(ただヘタなだけですが(爆))。

 布のネルを使うとか、それで味が変わるのはある意味当たり前としても、湯の温度や注ぎ方ひとつで、千差万別の味になってしまうのがコーヒー。。

 どちらかというと紅茶派(特にミルクティー派)な私ですが、ほんと紅茶って手順とか時間とか守れば、ある程度は誰でも同じ味に持って行けると思うんです。が、コーヒーは本当に淹れる人によって全く味が変わってしまうので、ある意味ではいつも同じ味を提供できるっていうのは、プロだなあ。。。って当たり前の話ですが(汗)、凄いなあと思う次第です。

 まだまだ1巻では入口だけなのですが、これから懇切丁寧に彼女達は、コーヒーを美味しく淹れる技術を学んでいくことになります。

 ただのコーヒーを巡るウンチクだけではなく、ヒロインを取り巻く少女達の性格の違いなど、物語としても中々楽しんで行けそうな、そんな作品です。
 

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2017/06/05

坂崎ふれでぃ 「サバゲっぱなし」 1巻 サンデーGXコミックス 小学館

 少し欲求不満ながらハイテンションなOLが、とあるバーに入り込んだことがキッカケで、「サバイバルゲーム沼」に堕ちていく、、、そんなサバゲー入門的な作品です。

 一般のOLをいかにサバゲ沼に引き入れるか、、、というような技もありながらも、自らズボズボと填まりまくって、廻りまでサバゲ熱に改めて感染させていくという、何か読んでいても楽しい。。。と思うのは、私も「サバゲ」に片足突っ込んでるからでしょうかね(爆)。

 基本的には、バーのマスターまで含めて女性社会人のサバゲチームというかグループによる、野外戦やインドア戦など、ざっと「サバイバルゲームとはどういうものか」という部分は、詳しく解説はしています。

 が、いわゆるチーム同士の戦いであるとかテクニックとか、そういうベクトルで昨今の”サバゲ漫画”は構成されがちですが、この作品の場合、<ガチでサバゲという”宴会”を楽しむ>ことに主眼を置かれています。なので、途中のテクニックとかそういう部分は勿論紹介はされていますが、必要最低限。戦いの描写も最低限。
 その<戦いの前後>の、それぞれテンションMAXな状態を描画しながら、いかに<やってみたら楽しいか!>ということを紹介することがメインなんだと思うんですね。

 お店の協力などもいただきながら、武器である銃を選ぶあたりにも重点が置かれています。

 というか、実際に趣味としてやってみると、私なんかは年間数回しか行けないながら(・・・それもここ2年ほど御無沙汰)、銃を改造したりカタログ見たり、新製品が発売されたらなんか色々と調べちゃったり、そういうことに費やしている時間の方が、数十倍~数百倍であり、またそれも本当に楽しいんですよね。「旅行は行く前が一番楽しい」「行ったあとの想い出も楽しい」というのに通じるところがあるかもしれません。

 恐らく、実際に楽しんでいるOLの方々などにも色々とインタビューしたりして、<リアルで楽しんでいる人達は、どういう気持ちで、楽しさを見いだしているのか>というところに、かなり重点を置いていると思うんです。

 それでいて、何かだたのハウツーもののような説明べたりな感じもなく、主人公のヒロインのハイテンションぶりを眺めているだけで、なんだかお腹いっぱい楽しめてしまうんですね。。

 本来は先輩として色々と教えてあげようと思っていた方々も、その豪快な買いっぷりや突っ走りぶりに呆れながらも、どんどん影響されて楽しくなって来ちゃうという(・・・買い物熱が感染するとも言う・・・)、いろんな意味で何だかこういう人がいたら、本当に楽しいだろうなあ、という集まりになっているわけです。

 しかし、、、カスタマイズされたM16派生銃って(←多分古い人間なので、こういう表現になる(汗))、本格的なロードサイクル並みの値段するのですね、、(大汗)。私はスナイパーなので、VSR-10をカスタマイズする程度で(この辺のスナイパー銃も本格的ショップカスタムだと10万円超えるのはザラでしたが)、サブにスコーピオンを極悪改造(謎)してただけですけど、やはり上には上があるんだなあ。。

 入門書というのとはまた違う部分もある気がしますが(それでも基本的な情報は満載されていますよ。勿論)、特に社会人になって填まる人達にとっての「サバイバルゲームの魅力ってどんなとこ?」という部分については、盛り沢山になっている上に、なんだか読んでて楽しくなる、そういう作品だなあと思います。

 ・・・なんかまたちょっとやりに行きたくなってきてしまった(汗)。
 2年も放置してると、マトモに動かない気がしますが(汗)。

 

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2017/05/29

阿部洋一 「新・血潜り林檎と金魚鉢男」 全2巻 アース・スターコミックス 奉文堂

 頭が<金魚鉢>の背広の紳士が唐突に現れ、金魚鉢の中の金魚が人を襲うと、その人は<金魚>になってしまう。。

 そんな恐怖に怯える街で活躍するのが、スクール水着を着た少女、”血潜り”達で、彼女達でしか金魚男の毒を処置できない。但し、その能力を使って”潜れる”のは、襲われたばかりでまだ金魚になっていない人のみ。金魚になってしまった人々は、もう金魚のままで居るしかない。。

 スク水女子が街中を走り回ってる段階で、なんかもう小さな劇団のアングラ演劇の世界を彷彿とさせますが(・・・アングラは死語かしら?)、まさにそういう雰囲気の漂う作品です。

 敵対する同士とも言える「金魚鉢男」と「血潜り」ですが、ある意味では「血潜り」も特殊な職業。金魚鉢男が消えてしまえば、存在意義は当然消滅してしまいます。既に彼女らも”人ではない”とも言えますし、そんな葛藤を巡る戦いに、話は急展開していくことになります。

 2巻ではとうとう宿敵の「金魚鉢男」を倒すことに成功はしたものの、それによって却って最悪の事態が引き起こされ、街そのものが金魚毒に飲み込まれていきます。その状況を打開するためには、ヒロインである”林檎”の存在が不可欠となる訳ですが。。

 ストーリーや設定が突拍子ないので、なかなかストーリーの説明をするのが難しんですが、この作品自体は「文化庁メディア芸術祭漫画部門」の審査委員会推薦作品にもなっています。

 ところが電撃コミックスジャパンが2012年に休刊。 その後、2015年にコミックアーススターで復活を遂げる、という経緯がありました。電撃コミックスジャパンでの既刊本(全3巻)も再版され、5冊目にしてやっと完結を迎えることになったわけです。

 どこか夏休みの終わりのような不思議な世界観と、唐突に現れる謎の<金魚鉢男>の存在が、何とも独特な雰囲気を作り出しています。

 想像を超えた意外な”結末”を迎えた作品ですが、ある意味では”この世界観を維持しつづけた”ということでもあるのかもしれません。勿論、ここに至るまでのストーリーもなかなか面白く、ワクワクとは違うかも知れませんが楽しませてくれる作品でした。

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2017/05/26

史群アル仙 「史群アル仙のメンタルチップス 不安障害とADHDの歩き方」 全1巻 秋田書店

 作者が自分の不甲斐なさにさいなまされ、誤診による薬物障害で迷走し、ある日やっと”自分を発見”し、そしてネット上で”史群アル仙”が発見されるまでを描いた、ある意味では「史群アル仙のこれまでの足跡」を、ADHDという障害との長い付き合いを通じて淡々と綴った、そんな一作品です。

 作者が抱えていた数々の問題や、自分でコントロールできない感情、情動を淡々と綴っていますが、何かに集中しすぎると周りが見えなくなるとか、ついつい思った通りの事を喋ってしまって湿原を繰り返す、という辺り、私自身も少し経験があるというか、、、思い当たる節は沢山あったりします。。まあ、生活に支障を来すほどの悩みや大失敗、とまではいかない程度ではありますが。

 とはいえ、私自身がADHDなのか、という話ではなく(とか言いつつ、簡易チェックはやってみて陰性でしたが(汗))、ある意味ではその延長線上に、”生活に支障を来す程の問題”となるレベルで悩み続けた作者がいたという、、、つまりはADHD(注意欠如多動性障害)は、病気というわけではなく線引きというか”程度の問題である”という事を、改めて認識させられた、という感じですね。

 現在も別に症状が直った訳ではないようですが、自分自身が何なのか、何故そう行動をしてしまうのか判らない、理解ができない、、、幼少の頃からそんな生活を続け、そしてアルバイトや仕事でも失敗ばかりで、まともに働くことも困難を極め、そして最悪なのは”ヤブな精神科医”(・・・という表現は、作者は極力避けているようですが)に当たってしまった為に、さらにアンコントロール状態に拍車が掛かり、、、とうとう精神病院に自主入院するところまで追い詰められてしまったという。。

 それを救ったのは、いろいろな意味で周囲の人々の気遣いだった、ということなんですよね。

 勿論、周りの人もなぜ作者が極普通と思われることが全く出来ないのか、不思議でしょうがなかったと思います。本人以上に。けど、ある意味では、それも”個性”と捉えて支え続けてくれたということですよね。。

 私はネットではなく本屋さんでの初見でしたが(デビュー作「今日の漫画」)、1ページめくって、2ページめくってと1ページという短編を読み進める中、こんな話をたった1ページに収めるのは凄い才能だなあと思ったんですが。。

 実は、それが完全に<誤解>であったことが、この本を読むことで判ってしまいました。。
 要するに”発見された当時”「1ページというスパンでしか作品を作れなかった」んですね。この症状のために。

 けど、その1ページの中に、何故ここまで訴えかけるような深いメッセージが込められるのか、というのも逆にこの”症状”如何だったような気もしてきます。そして、ある意味では”才能”として開花した部分でもあったのだと思います。

 本人も発表直後、ツイッターのフォロアーが爆発的に増えるのを見て恐ろしくなったでしょうけど、当時”発見”した人達も、本当にビックリしたんじゃないかなあ、と思ったりします。それだけのインパクトが、1ページずつの作品の中に押し込められていましたから。

 ADHDについて理解して欲しいという作者の想いと共に、この作品はある意味では”史群アル仙のautobiography(自叙伝)”とも言えるんじゃないかなあ、と思ったりしました。

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2017/05/24

横山旬 「あらいぐマンといっしょ」 上巻 BEAM COMIX エンターブレイン

 愛用していたアライグマのぬいぐるみを、彼女と一緒になるために捨てようとした際、落雷にあって意識不明のまま病室で昏睡し続けていた一人のサラリーマン、、、数年後にひょんな事から目覚めてみると。。

 奇想天外&ノンストップな、ドタバタ珍道中、といったところでしょうか。

 何を書いてもネタバレになっちゃいそうなので難しいところですが、簡単に言うならば意識のない時にも病院に通い続け、実家に”痕跡”を残していった彼女を、小さな手がかりを元に探して訪ねる、そんな”旅”物語です。”

 けどまあ、旅というかは珍道中、さらに言えば”大冒険”みたいな事になっちゃってますけどね。

 そのお供は病院で出会った、ちょっと何かが足りない大声の大男。ぶっきらぼうで”足りない”ながらも、じつに実直で真面目で人を疑うことも知らない、ちょっと扱いにくい相棒と”ぬいぐるみ”が、様々な出会いやトラブルに振り回されながら、少しずつ目的の核心に迫っていくという、、そんなお話です。

 上下巻なので次で終わるんですけど、そもそも読み始めてからのぶっ飛びぶりが半端ないですね。。

 想像を超えて展開するトラブルと、やけくそな主人公の異様なまでの”順応力”でもって、まさにジェットコースターのようにお話は進んでいきます。

 ただ、途中のトラブルやドタバタや葛藤を省いてしまえば、物語はいたってシンプルで判り易い構図でもあるので、いろいろな意味で脱線と暴走を繰り返しながらも、ストーリー自体を見失うことはありません。

 まあ、<驚愕の事実>が下巻では待ってそうな気もするのですが、、、上巻だけを読んでしまうと、どんだけ奇想天外で想像を超えた事実がそこにあっても、この主人公なら<まあいいか>って(いいかげんに)順応して乗り越えてしまいそうな、そんな気もしたりします(笑)。

 そういう意味で、暴走しまくりな物語ながら、ちょっと安心して読める、ドタバタコメディーといったところですね。
 

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2017/05/23

大宮宮美 「つるぎのない」 全1巻 マッグガーデンコミックス Beat'sシリーズ マックガーデン

 「ゆるゆるファンタジー」というジャンルがあるなら、まさにそんな感じの聖剣と伝説の勇者の物語です。

 そもそも論で、”聖剣が頭に刺さってる女の子”というその設定がかなり突拍子がないわけですが(笑)、その割には記憶を無くしていて、のほほんとした性格のヒロイン。そして聖剣を抜く事ができる伝説の勇者の子孫で、7人兄姉の中では妹よりも”あらゆる才能”がない、いわゆる落ちこぼれの最弱の勇者(結構荒んでいる?)が、何の因果か旅・・・というか兄妹達の追跡を振り払って逃避行を行うことになるという、そんなお話です。

 抜けないと思っていた聖剣が、なんだか意味不明なものを付けたまま抜けてきたり、色んな伝承(例えばドラゴン伝説)が、何だか話が誇張されていたり歪んでいたりして伝わっているのが徐々に判ってきたりと、兄妹達には追われながらも、いろいろな場所でいろいろな人に出会いながら、のんびりゆるゆると”海を目指して”旅を続け、、、、

 そして最後に、全ての伏線は一気に紐解かれ、事態は急展開していくことになるわけですが。。

 正直に言えば、漫画としては、幾らかつたない感じを受けるんですが(コマ割や絵の安定度など。人のこと言える立場ではないですが(汗))、物語というかドラマ自体との構成と設定、そして展開については実に楽しめる作品だなあと。

 ある意味では勇者と魔物が存在し、ドラゴンも存在し、勇者が平和を守るというファンタジー世界なんですが、<絵本>というか<おとぎ話の世界>なんですよね。最後には”魔王”も降臨する訳ですが、そこに至るまでの伏線とストーリー展開、そしてその結末は、「小さい頃に読んだ絵本の世界」に繋がる、そんな作品になっているんですね。

 描いていけば技術なんてのは後から付いてくるものですが(・・・まあ描き続ける事はとても大変な事なんですが、それは置いておいて)、こういう物語の構成力とかセンスというのは、それとは別のものだろうなあと思います。

 オチへの賛否はあるかもしれませんが、読後感はとても良かったので、他の作品もちょっと読んでみたいなあ、と思いました。
  

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2017/05/22

双龍 「間違った子を魔法少女にしてしまった」 1巻 BUNCH COMICS 新潮社

 地球で魔法少女のなり手を捜していた謎生物は(定番設定ですが(笑))、偶然であった”清楚な雰囲気”の少女に、魔法少女になって貰うようお願いします。しかし、彼女の”真の姿”とは。。。

 表紙のおどろおどろしさが全てを物語っているとも言えますが、実は引っかけが一つあります。けっして「不良少女」を選んだというわけではありません。ある意味では、不良少年・不良少女よりも恐ろしい思考回路で行動する、破壊的な少女かもしれませんが。。

 行動は破壊的ですが、行動原理はいたってシンプル。「気にくわない奴は徹底的に潰す」です(別に正義がどうこうとか、そんなのは関係ありません(笑))。

 って書くと結局アレですが、その性格を別に隠している訳でもなく、学校では成績優秀ながらすぐバックれてしまい、授業中も教師無視。気にくわない奴が例え札付きの不良であっても、完膚無きまで粉砕し、破壊してしまうような身体能力を兼ね備え、<筋は通すが沸点が異様に低い、歩く最終破壊兵器>と言っても過言ではない、、、というのが、あくまで変身もしていない少女の素性です。

 敵に追われて傷ついていたとはいえ、潜在能力だけをスキャンしてその場で彼女を<魔法少女>にしてしまった謎生物は、いろんな意味で後悔することになっていくわけですが。。

 けどまあ、変身もせずに敵を撃退してしまうその潜在能力。まさに変身してないのに全身からほとばしる”殺意”は、戦闘能力としては申し分なし。魔法のステッキも彼女にかかれば「物理兵器」でしかない訳ですが(笑)、生来の破壊力が倍増どころの話じゃありません。

 そんな彼女の潜在能力に呼応して、敵のレベルも勝手にアップ。地球にどんどん吸い寄せられるという事態に陥るという、、、結果的には、今のところ全ての敵は粉砕されているものの、いろんな意味で何か間違っているというか、、、、

 タイトルがシンプルながらも、それを踏まえた上でどんでん返しというか、想像を超えたストーリーが展開する、結構奥が深い設定に凝った作品だったりします。

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2017/05/18

おざわゆき 「傘寿まり子」 3巻 KCDX 講談社

 「傘寿=80歳のお祝い」というのをあまり知らなかった私です(汗)。

 主人公はそのまま、80歳でひ孫もいる、小説家のおばあちゃんです。

 旦那さんには先立たれ、息子夫婦と同居をしていたわけですが、もの凄い理不尽な話ですが(・・・けど、実際にあり得る話なのかなあ、、)、家のリフォームを家人で検討する中、主人公の部屋は作らないという強硬な嫁の自己主張(主人公の持ち家ですよ?)に嫌気がさし、家出することにした主人公。。。

 ある意味では、部屋に籠もって小説を書き続けていたために、世間知らずで過ごしてしまい、そして義理で続いていたエッセイも打ち切り目前という現実にも打ちのめされ、、、

 ともすれば、とても暗いお話になってしまいそうなんですが、そこを乗り越えられたのは、異様な程ポジティブで好奇心旺盛な80歳の性格(笑)。ネットカフェで寝泊まりしながら、若い頃に憧れた殿方と出会い、ラブロマンスが生まれたりと、、、”老人の青春”していたりします。

 ただ、楽しいことや好奇心の赴くままに行動する中、必ずそこに立ちはだかるのは「80歳」という年齢です。。

 家出をして部屋を借りようにも、保証人のない、下手すれば何時死ぬかもわからない80歳に、すんなり貸してくれる不動産屋などある筈もなく。あらゆるところで何らかの形で老人扱いという<差別>をされ、一方的な思い込みで怒鳴り散らされ、、、

 それでも彼女は、逆境を噛みしめながらも諦めず、好奇心という武器を片手に、3巻ではとうとう「ネトゲ(ネットワークゲーム)」にまで突入することになりました。すげー!

 いろいろなことを考えさせられる作品ですが、いわゆる老人を主人公とした様々な作品と少し違うところは、主人公の考えの中には「今どきの若いもんは」とか、「昔は良かった」というような、ありがちな感情が皆無であるということですね。

 ある意味では、小説書きに没頭していたが故に、社会から隔絶されていたわけではなかったんですが、意識が社会から遠ざかってしまった期間が長すぎた、、、ある意味では、若い頃から80歳にタイムスリップしたのに近い感覚なのかもしれません。

 なので、自分の身や周囲の人々に起きる出来事を、素直にストレートに捉えて感想を述べている訳です。自分は老人であるという感覚はなくとも、廻りがそう見るという現実、同年代の人々は自分とは違う考え・立場に置かれているという現実、またある意味では、若者と何の先入観もなくコミュニケーションを取れば、いろいろなことを教えて貰え、判ってくるという現実。。

 家族のあり方、老後の過ごし方、そして老人とは一体何なのか、何ができ、何ができなくなるのか。。

 気持ちは若く、ポジティブな主人公の快活さや好奇心に救われながら、様々な重い現実とともに、ある意味では自分の思いや周囲の視線で、思い込みで作られた<老人>という殻を、客観的に捉えて見せてくれる、そんな作品じゃないかなあと思ったりしました。

 また、様々な事件や出会いが次々に発生し、出会いと別れが次々と訪れるもので、ある意味ではとてもドラスティックな旅というより、御老体の<冒険活劇>とも言えるかもしれませんね(笑)。

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2017/05/17

上山道郎 「オニヒメ」 2巻 ヤングキングコミックス 少年画報社

 「剣豪ディスク」と呼ばれる刀の鍔(つば)に宿った剣豪達の技を引き出し、異界からの魔物と戦う、謎の出自の女子高生の戦いを描く、剣豪アクション作品です。

 簡単に説明してしまうなら、「特撮ヒーローもの」と言った方が雰囲気が伝わるかもしれませんね。最近の某ヒーローは色んなカードを装着して技を繰り出すわけですけど、この作品の場合にはそれは刀に付ける鍔状の「剣豪ディスク」な訳です。

 普通の剣術、剣道ものとは一線を画するのは、やはり「ツマヌダ格闘街」で培った、古武術に則った体の姿勢や動きなどのアクションでしょう。

 最低限の動きで、想像を超えた半端ないパワーを生み出す古代剣術を含む古武術・・。その基本は立ち姿を含む姿勢ですが、やはりそれをしっかり描けているからこそ、炸裂した時の迫力が感じられます。これ、普通に動画で見てしまうと、かえって判りにくいかもしれません。。ある意味、漫画だからこその表現である気もします。

 作品自体は、剣豪ディスク同士を使った、怪異との剣術による戦いです。主人公は剣道も習ったこともない少女ですが、その出自に秘密があったり。。もう一人のヒロインは、秘密組織に所属して怪異と戦う戦士の一人な訳ですが、こちらは語り部としての位置付けとも言えますね。

 で、、、、この作品の特筆すべき事は、過去の作品である「怪奇警察サイポリス」と世界観を共にしているということです!(←勝手に興奮しているらしい)。

 「怪奇警察サイポリス」は1995年まで「コロコロコミックス」に連載された全9巻の児童向け漫画です。細かな解説はWikipedia  に任せますが、児童向けという文法は守りつつも、正直、少年漫画として掲載されていてもおかしくないクオリティーの作品だったんですね(※個人の感想です)。

 現在、マンガ図書館Zで無料で読むことが出来ます。 ・・・というか、正直、コロコロコミックスの単行本を全部探すのは、他のコロコロ作品以上に、現在ではかなり難しいでしょう(私もかなり前、探すのにとても苦労した記憶がありますが、ここ10年くらいは古書店で1冊も見たことがありません。ネット古書店を探せばあるのかもしれませんが、、、)。

 当作品のヒロインは、サイポリスの登場人物の血を引き継いでいる、という設定となっています。そして2巻では、勿体ぶらずにモロにその登場人物達が現れるという大盤振る舞い(笑)。

 半ば打ち切りのような形で終わってしまった、20年以上前の児童漫画の設定を蘇らせたのは、やはり古武術への半端ない知識と、特撮ものへの熱い想い(作者本人の)とが融合して結晶した、と言ってもいいんじゃないでしょうか。

 ある意味、児童向けとはいえ細かな裏設定に当時から拘っていたからこそ、青年漫画とのコラボが実現したんじゃないかなあと思うと、なんか感慨深いですねぇ。。

 と、勝手に盛り上がっていますが(汗)、過去作品の下敷きがなくても、特撮ものが好きな人にも、そして古武術に興味がある人にも、それぞれの予備知識が全くなくとも十分過ぎるくらいのクオリティーで楽しめる作品になっているんじゃないかなあ、と思います。
 

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«板垣巴留 「BEASTARS」 3巻 少年チャンピオンコミックス 秋田書店